魔砲少女プリズマフェイト ~dulce espejismo del destino~ 作:上城麟32
イロイロと悩みまして……
まだまだ書けない状況ですが、外伝をいくつかはさみつつ。
本編進めます。
「一志はどうしてそこまで尽くしてくれるんですか?」
ある日、バルディッシュ制作中の一幕。
リニスは彼に語りかける。
一体何度目の問答だと、そう思いながらも小さく溜息をつきながら律儀に答える一志。
「俺はあの日記によって生み出されたような存在だからな。
その日記に込められた願いを叶えるのが俺の使命だと思ってる。
だから他の理由を探したいならリニスが勝手に理由を捏造したらいいんじゃないか」
いつも通り適当に流される。使命だなんだと言いつつ照れ隠しなのか理由を濁して伝えようとする一志に苦笑するリニス。いつものやり取りだった。
ただ、これまでと少し違ったのは、いつもは引くリニスが今日はここで終わらせなかったこと。
「ですが、あなたのその献身に対して私が返せるものはなにもありませんよ。正直、そこまであなたがフェイトや私に尽くしてくれる理由が全くわからないんです」
なぜ自分を助けたのかもと小さく呟き、今日ばかりは逃がさないという気概を言外に含む。
日記の話。大切な話を。
自分が尽くすに値する理由をただ日記のためとか、契約や義理なんて思い込みで縛られたくない。何もかもを抜きにしても尽くせるかと自分にも問いかけているような。
言葉だけの信頼をでは足りないけど、それでも、言葉さえ足りなかった今までを甘んじて受け入れていた心地のいい関係を。
ただ、彼の気持ちを知りたい好奇心で壊したい。
迷いや不安の混じった心音に載せられる言葉はきっと。
それでも、彼の言葉はいつも決まっている。大層な理由なんてない。
と、その繰り返しだ。
「理由もなく助けてもらったり、契約によってのみ主従の関係となる。
そんな状態は何だか不安なんです。だから」
安心が欲しいと、見返りを求めないこと、なぜ尽くすか。ずっと、そう感じていた。
あの場は納得せざるおえなかった。だけど……いや、だからこそ。
溜息ひとつ聞こえた後、彼の独り言は始まった。
「ただ、許せなかっただけだ」
誰がとも、何をとも言わなかった彼の意図は私にはきっとわからないけど。
それはきっと誰がということではなかったんだと思う。
事象なのか状態なのか、あるいは自分自身への憤りなのか。
いや、きっと理不尽な何か全てに対して彼は激情を感じていたのかもしれない。
「あの日記は捨てられたもだ。届くことは有り得ないような場所で捨てた日記だったろう。だけど、あの日記は俺に届いた。
諦めて、でも諦めきれなくて、自分でなんとかしたいのに、時間がなくて、誰に頼ることもできない。そんな状態のお前が書いた誰にも打ち明けられない日記。それでも、誰かに、何かに希望を託して、夢を託して。そして、捨てられた日記だったと思う。だから届いたときうれしくて、かなしくて、もう消えそうだったのに戻された」
自分の自我を現世に留まらせるほどの想いの詰まった日記だったと。
「あれは、大切な誰かの幸せを願ったものだった」
だからと彼は呟き
「ただどうにかしたかった。衝動的なもんだ。俺をこの世に留めた日記に込められた想いに応えたいと。受け取った想いに名前を付けるなんて殊勝なことはできないが、それよりなによりも、貰った恩に何も返しもしないのは格好悪いだろう。嘆いてなお、迷ってなお、届ける想いを受け取った。だから願いを託された俺はこれからお前達家族に尽くすから。リニスも馬車馬のごとく俺と一緒にがんばってこーぜ」
彼は照れ笑いうかべながら、少し顔を赤らめて自分のことを想いを初めて語り終えた。
もう勘弁してくれと一方的に彼は話を終わらせた。
自分の問への返答にしては、見当違いな話だったように思う。
いつもそう。信頼を言葉にして行動にして返してほしいと私は欲張る。
それを彼はいつもはぐらかす。その関係が心地いい感じに思えるようになったのは最近だ。
尽くす理由は今も判然としない部分もまだある。
足早に切り上げられたことも納得はしていない。
でも、彼の気持ちは聴けた。
まだまだ時間はある。どんどん問いただしていけばいい。
そう考えれば、その都度困りながらも答えてくれる彼はなんだか可愛く思えてくる。
「ほんと、毎回毎回しょうがないマスターですね」と呟いてリニスはその日から笑顔が増えていった。
お待たせしてます。簡単な幕間です。
そして次は外伝になります。