魔砲少女プリズマフェイト ~dulce espejismo del destino~   作:上城麟32

16 / 17
待たせたうえに進まない。そして外伝なのに前編って。申訳ない。

本編はまだまだかかります。気長にお待ちいただけると幸いです。


外伝3 ~夢と、願いと、寂寞と~ 前編

とある日、フェイトの日記より

 

 

 

「フェイト、おはようございます」といつも笑顔で、リニスが起こしにきてくれるところから私の朝は始まる。

 

私も挨拶を返して、リニスと二人でアルフを起こす。

 

いつもアルフは私のベットで一緒に寝るからアルフが来てからは暖かくて嬉しい。

 

アルフが起きたら一緒に、トレーニングを開始する。

 

最近は、アルフとの連携強化やタッグ戦を想定した模擬戦。

 

それから、リニスが朝ご飯を作ってくれる。

 

お昼ご飯は私とアルフで料理をお手伝い。

ご飯の後はお勉強。

 

母さんは研究者だから、すごく頭が良いってリニスが教えてくれた。

魔導師としても優秀で私もその才能を受け継いでいるって。

だから、私は勉強が好きだった。母さんに少しでも近づける気がして。

 

たまにアルフと昼寝をする。リニスは勉強も大事だけど、休むときは思いっきり休むことがいいと昼寝タイムをもうけることがある。アルフはこの時間が一番好きだって言ってた。

勉強や読書はもちろん好きだけど、リニスとアルフと一緒に静かに森に揺られて寝るこの時間も大好き。

 

 

勉強をして模擬戦にも慣れてきたこの頃、リニスから「さすがは、プレシアの子です」と褒められることが多くなった。私が母さんに近づいてる気がして嬉しい。

 

 

 

だけど、母さんは一度も私を見に来てくれない。

「研究が大変だから早くフェイトにも手伝って欲しいとプレシアが言っていましたよ」

とリニスはいつも励ましてくれる。

 

優しいリニス、いつも私の側にいてくれるアルフ。

 

それだけでも、本当は充分なのに、いつからか、私は願うようになった。

 

 

母さんと話しがしたい。母さんに私をみてほしい。

 

 

その気持ちを抱えるようになってからか、勉強やトレーニングをしていてもどこか気が入らず。

 

上の空でいる私を二人が心配そうに見ていることが増えていった。

 

「どうしましたフェイト? 心配事でもあるんですか」

 

突然だった、最近はあまり母さんのことを私の前で触れないようにしていたリニス。

 

「大丈夫。リニスとアルフがいるから」

 

そのとき、きっと私は笑えてはいなかったんだと思う。

 

だからだろうか。

リニスに抱きしめられ、アルフも心配そうにこちらに寄り添ってきた。

私はこれ以上、二人に心配かけまいと、なにかを必死に堪えていた。

 

 

いつからか、我慢するようになった。

あまり母さんの話をリニスの前でもしないようにアルフの前でしないように。

我慢する私を見せないように。

 

きっと、もうずっと前から二人は気づいている。

私が母さんのことを聞くのをやめて。

アルフも母さんのことをふれなくなって。

そして、リニスも母さん話題を私の前でしなくなって。

 

 

皆が母さんの話をしなくなっていった。

 

 

 

別にトレーニングしたからとか、勉強したからって見返りを求めていたわけじゃない。

 

私の気持ちを聞いて欲しかったわけでもない。

 

 

 

だけど、ただずっと我慢してる。日々が過ぎていっても、またいつかは……と願いながら。

 

 

いつかは母さんと一緒の日常を。

 

 

 

 

━━━━━━

 

 

叶わない願いと知りながら、何かに追われ焦り願い続ける日々が続いたある日。

 

見たこともないほどの巨大な魔法陣が突然現れた日。

 

その魔法陣から召喚された人によって私の日常は一変した。

 

 

 

私の大切な人達を救ってくれた人。

 

リニスが時折見せる寂しそうな顔を笑顔に変えてくれた人。

 

母さんを救ってくれた人。

 

そして、私の願いを叶えてくれた人。

 

 

 

━━━━━━

 

 

 

「なぁ、フェイト」

 

「どうしたの一志?」

 

「いや、なぜこのコンビなのかと思ってな」

 

「きっと、ルビー達にも何か考えがあってのことなんじゃないかな」

 

まだ言ってると思いながらもフェイトは笑顔で応える。

 

念話で愚痴りながら、きっちりと周辺探索を怠らない。

最近、最も多く模擬戦をしている相手。

 

最初はただ、魔力に振り回される素人だったと思う。

たしかに初対面がアレだったから冷静な判断で見れていたかは別だけど。

 

 

でも、一志の凄さは魔力量だけじゃない。

勘の良さは正直リニスも舌を巻くほどにイイ。

 

一志はほとんど見たことない初見の魔砲を顔色も変えずに対応して防ぎきる。

稀に少し被弾するときもあるから、まだ不安定なときがあるのかもしれないけど。

それでも、一志のあのセンスはほんとに凄いと思う。

 

例えば、魔砲戦闘なんて素人だった一志が一回見ただけで私の動きに合わせてくるようなことがよくあった。

その中でも回避だったり近接での冴えというのは一志以上の人はいないんじゃないかと思う。

 

ただ、回避ばかりに力を入れすぎてたまにリニスに攻撃を任せすぎのこともある。

そのときは回避ばかりしないで下さいとリニスに釘をさされることが最近よくある光景だった。

 

「当たらなければ、どうということはないだろ」

 

なんて言いながら得意げに回避する一志はいつも楽しそうだ。

 

 

そうやって最近一志と一緒に飛ぶことが多い。

空でずっと二人で追いかけっこしたりして……。

 

でもまだ速さでは負けたことないから一志も躍起になって追いかけてくる。

ほんとにそろそろ追いつかれそうだけど、まだ負けない。負けれられない。

 

 

と、いけない今はジュエルシード探さないと。

アリシアもそろそろあの結界にずっといるのは退屈だろうし。早く一緒に遊びたいな。

 

 

 

 

━━━━━━

 

 

 

 

正直に話すと探索には不向きなメンツだと思う。

アルフやリニスが居たほうがもっと手早くジュエルシードを集められるはずだ。

なぜ今日に限ってこうなった。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━およそ数時間前

 

 

 

 

 

 

「今まで通りに組んだほうが早くないか?」

 

「なるほど、一志はそれほどまでに私といつも一緒がいいと」

 

「いやそこまで言って」

 

なんか凄い睨まれていて最後まで言葉を続けられないな。

だいたい今更なぜ変える必要があるんだ?と納得いかない様子。

 

(一志は私と組むの嫌なのかな?そうだよね。あんまり二人っきりで行動したりはないから。

リニスとかアルフといる時間のほうが多いし、きっと私より他の人といたいんだよね)

 

「全く、アホマスターですね~。組む相手を替えてみたいって言ったのは一志さんじゃないですか。だから、今回は前衛オンリーコンビで探索してみましょうという話しですよ。それに~フェイトさんと仲良くなりたいと言っていた張本人がなにを恥ずかしがっているんですか~?」

 

「ちょっ!?」

 

「正直、一志さんとフェイト様を組ませるのは大変遺憾ではございますが。この際、背に腹は変えられません」

 

愕然とした言い分を聞きながらもこれは決定事項なんだと悟る一志。

 

「いやいや、おかしいだろ?俺は探索とかできないし!?そんな器用なことできないぞ。

 探知や探索系の練習とかしてない新人とフェイトを組ませるのは危険だと思わないのか?」

 

必死に説得を試みる一志。

なぜここまで必死かというとめんどくさいと思っているのが7割。

あと3割は彼の欠点が判明したために少し不安があったのである。

 

サファイア、ルビー、リニス、プレシアがある恐ろしい実験をしてわかったことだが。

一志の直感は普段C+までランクが下がっていた。

 

集中している戦闘時などと日常の私生活を送っている状態ではかなりランクに差があった。そのことから、普段から直感が高いと自身への負担相当かかるようで本能的に抑制している可能性があると判明した。

 

戦闘時などに集中力が増した際には相手の行動を予見していたのかと思うほどの直感の冴えを魅せるのだが。

 

この実験は昼夜とわず行われていたようで、日常で少しでも気を緩めるとリニスやプレシアに不意打ちされる日々を10日間ほど彼は体験した。実験期間はまさに地獄のような毎日だったとは本人談である。

 

 

そういった経緯もあり彼なりに一抹の不安があったのかもしれない。

 

 

「確かに、不満はありますが。一度別のパートナーと組むことによって今後の戦術の幅が広がると言ったのはあなたですよ。それに……このコンビに不安があるのはお互い様です」

 

 

なぜか不満があるのにこうなるんだ。しかも最後のあたり若干小さい声になっていたが。

 

 

疑問は感じながらも最終的にはリニス達に丸め込まれた一志。

どうにも今回の突然のパートナー替えには作為的なものを感じる。と一人物思いに耽っていると

 

 

「一志は私と組むの嫌かな?」と不安そうな目でフェイトがこちらを見ている。

 

そんな声で聞いてくれるなフェイト。

 

「むしろ、俺にとってはご褒美です」

 

「そ、そうなんだ。よかった」

 

 

今更な感じのタッグだし、作為も感じる。

 

「けど、まぁ、こうなったら早めにジュエルシード見つけて、リニス達をびっくりさせてやろう」

と文句を言いながらも前向きになる。地味にポジティブな男だった。

 

 

だが、実はこのコンビ結成について、前々からリニス達が親睦を深めようと画策していたことを彼らは知らない。

 

 

何かにつけて模擬戦はするし、人見知りに見えるフェイトも一志相手だとあまり物怖じせずに話していることがあった。それはもちろんリニスの恩人で、フェイトにとっても母との関係を良い方向にしてくれた恩人でもあるからだとリニスは思っていたが。

 

案外、違うのかもしれないと最近思い始めた。

最初の印象はさておき。恩人と感じているからこそ円滑に仲良くなっていった二人だ。

 

ただし、必ず誰かが側にいた。つまり、二人きりでほとんど話してこなかった二人。

逆に言えば、誰かいる状態であればいつも一緒にいた二人である。

 

家族の誰かがいない状態でも、気兼ねなく話せるように二人にはもっと仲良くなって欲しいという想いがリニスにはあった。

 

ただ、そこの仲良くしてほしいという想いには本人としても若干苦心するところがあったらしく、それをサファイアに相談(愚痴)すると……

 

「一志さんが喜ぶだけの計画では物足りませんね。

 最近、模擬戦や魔砲の勉強なども適度に手を抜いてごまかしているようですし。

 ここはひとつ、試練を用意してより真摯に取り組んでもらえるようにしたらいかがでしょうか」

 

そこへたまたま計画を聞いていたルビーが乱入

 

「面白そうなことを考えてますね~サファイアちゃん。

 たしかに最近の一志さんは少し気が抜けていて前より直感も不安定な感じありますしね~

 それはベリーグッジョブな計画じゃないですか!

 なにかハプニ……もとい試練に必須な要素を考えると、ここはやっぱり触手しかないですね!

 ついでにこの間、勉強したAMFとかいう、とんでも機能を触手につけて、

 擬態もできる烏賊マンをつくって試練を与えちゃいましょうよ~」

 

 

こうしてルビーも途中参加したことにより二機のデバイスがノリノリで邪悪な計画を仕上げていった。

 

リニスは後に、あの場で私が止めておけばこんなことにはならなかったのにと後悔することになるのだが、それはまた後の話。

 

 

 




後編も頑張って書いてます。
なんとか早めに投稿できるようにします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。