魔砲少女プリズマフェイト ~dulce espejismo del destino~ 作:上城麟32
第8話 ~邂逅~
アルフが探知魔法を使うと球体が出現し、球体に光点が現れる。
「よし、行くぞ」
「「うん」」
ジュエルシード集めのために降り立ったのは海鳴市という、
第97管理外世界、極東地区、現地惑星名称・地球の一都市だ。
海鳴市に来てから早3日ジュエルシードのおおよその反応を頼りに、
一志達は順調にジュエルシードを回収していった。
「ジュエルシード集めるの大変かと思ったけど。
今まで順調にきてるし、このままだと、
早めに全部回収できそうじゃない?」
「アルフ、油断したらダメだよ。
確かに今まではあまり苦戦しないで回収できたけど、
もしかしたら、予測できない事態になる時だってあるかもしれないんだから。
今は外に出れないアリシアのためにも全力でやらないと」
話をしつつも、探知魔法で見つかった光点が、2つに分かれていく。
「ジュエルシードの反応が分かれたな。
近いところはフェイトが行ってくれ。
俺とアルフは他のところを捜索してくるから。
フェイトのこと頼んだぞサファイア」
「わかった」
「わかりました」
フェイトのデバイス。
バルディッシュは、カートリッジ使用時の使用者への
身体的な負担を軽減するため、リニスが最終調整している。
そのため、今回の探索ではフェイトをゲスト登録することで、
サファイアと一時的に契約し、カレイドに変身できるように調整したのだ。
そして、フェイトは一志から、
もしものために、とセイバーのクラスカードを渡されている。
一応、使い方については一志から学んではいるし、
何度か模擬戦で試したりもした。
その結果、なぜか自分とセイバーのカードの相性はいいようで、
一志より上手く扱えるとルビーからのお墨付きをもらったほどである。
今回は管理外世界とはいえ、
特に危険な生物がいる世界ではないと調べはついていたので、
本当に念のため、サファイアにフェイトに付いてもらったのだ。
ただ、このセイバーのクラスカードが後に大きな事件を起こすことになる……
━━━━半年前
リニスにプレゼントがあると、言われて渡されたのは、
金色に輝くデバイス。名をバルディッシュ。
運命を切り裂く力、フェイトのために作られたフェイトの相棒。
バルディッシュは、フェイトの力次第で、
全てを断ち切る閃光の刃となるとリニスは教えてくれた。
自分のために一志やリニスが作ってくれたデバイス。
貰ったときフェイトは嬉しくて泣いた。
一志はその時オロオロしていたが。
リニスが優しく抱きしめしてくれた。
そして、リニスは少し強ばった顔で私に、大切な話があると言った。
「フェイト。あなたに大切な話があります。
あなたの生まれについてと……。
あなたのお姉さんについて」
「私のお姉ちゃん?」
あの時のことを思い出して、ふぅーっとフェイトは溜息を吐いた。
「フェイト様?どうしました?飛行速度が落ちていますよ」
サファイアが心配そうに私に呼びかけてくれる。
なぜか様づけなのが気になるけど、
この件はサファイアが全く折れなかったのだ。
様はつけないで、ただフェイトと呼んで欲しかったのだが、
サファイアが、仮であれマスターとなるのであれば、
敬意を払うのは当然です。と故に、フェイト様と呼ばせて欲しいと……。
そのときなぜか一志が「え?!」と驚いていたのは言うまでもない。
所謂、それはそれ!これはこれ!である……。
「ううん。なんでもない。大丈夫だよサファイア」
そう言って、フェイトは自身のモヤモヤを心の奥に仕舞う。
そうだ、今はアリシアが戻ってきてくれるっていう喜びだけでいいはずだ。
なにも間違ってない。
だから、早くジュエルシードを集めて、
アリシアといっぱいお話するんだ。
これからのことと、これまでのこといっぱい。
「ジュエルシードの反応接近」
「分かってる。……あれがジュエルシード?」
そこにいたのは大きな黒豹だった。
黒豹にしては大きすぎるし、爪も鋭い。
どことなく目付きも鋭くなっている。
「サファイア、あれってジュエルシードが変異して?」
「そのようです。
なにかの生物の純粋な欲求を叶えた結果ああなったのでしょう」
「どっちにしても、ジュエルシードを封印して回収する。サファイア!」
「了解!」
新生!カレイドサファイア!プリズマフェイト!爆誕です!!
「……サファイア。今のルビーみたいなの必要だったかな?」
すごく微妙そうな顔で言うフェイト。
そして、ものすごく恥ずかしそうである。
「すみません、フェイト様。姉さんにどうしてもやれと言われてしまって。
断りきれませんでした。フェイト様それよりも、戦闘態勢に」
ジュエルシードによって変質した異相体はフェイトに襲いかかる。
「うん。問題ない」
それを難なくディフェンサーで防いだフェイト。
返す刀でステッキ形態のサファイアに魔力を込めて、
雷斧のようにして、反撃を加える。
止めとばかりに、フェイトは手を掲げる。
天候魔法サンダーレイジ。
フェイトの得意な雷系の天候魔法。
放つ瞬間……邪魔が入った。
「えーい!」
魔力を全身に纏い、ブッパしてきた少女。
「ジュエルシード封印!」
しかし、油断大敵である。
封印するまでの僅かな隙をつき、異相体は逃げだそうとする。
逃げだそうとする異相体にフェイトが追いつく、
「ジュエルシード封印!!」
逃げる異相体の後ろから、雷斧で一刀両断。
フェイトが封印したジュエルシードを回収しようとすると……
白い少女が声をかける。
「あの!待って!
あなたもその……ジュエルシードを探してるの?」
「……それ以上、近づかないで」
雷槍を周りに展開し、警戒を強めるフェイト。
「あの、ただ、私お話したいだけなの。
あなたも魔法使いなのとか。
なんでジュエルシードを集めてるのとか。
だから!……!?」
瞬間。展開していた雷槍が放たれる!
それを危なげなく躱す白い少女。
そこにフェイトの雷斧が迫る。
「待って!私は戦う気なんてない!」
「だったら、私とジュエルシードに関わらないで」
「でも、ジュエルシードはユーノ君が!」
鍔迫り合いから押し負けて後退する白い少女。
━━フェイトは追い打ちをかける。
サファイアは考える。
なぜ、フェイト様はセイバーのカードとああも相性がいいのか。
なぜ、フェイト様はもう身動きも取れないであろう少女に、
雨のように雷槍を降らすのか。
いつもなら決して無闇に人を傷つけようとしないはずなのに。
今はなぜこうも躊躇いすらなく攻撃を続けられているのか。
釈然としない気持ちはあったが、今は戦闘中だ。
そして、自分は一志さんからフェイト様を任された身。
ならば、自分が考えるのはマスターであるフェイト様の勝利。
きっと、間違ってはいない。
敵対した者に対して少し度がすぎる威嚇射撃をしただけだと、
サファイアは熟考するのを止める。
フェイトは自問する。
普段は最小限の攻撃で最大限のダメージを与えればイイと思っている。
しかし、今に限っては違う。
相手を完膚なきまでに叩き潰す。
そんな攻撃だ。まるで容赦がない。
考え事のせいだろうか。さっきサファイアに大丈夫と言ったのに。
でも、考えるのを止められない。
私の胸のモヤモヤは晴れない。
リニスの話を聞いてから、お姉ちゃんの存在を知ってから、
私は……
考えている間にも雷槍の雨は止まず、攻撃は止まらない。
止めようとも思わない。白の彼女を心配する気持ちはあるのに、
なぜか、私は攻撃をやめられなかった。
そして……
「ごめんね」
酷く矛盾する言葉を最後に呟いて、
フェイトはようやっと雷槍の雨を止めたのである。
あれだけ攻撃をくらえば、さすがに追ってはこれないだろう。
「フェイト様。ジュエルシード回収しました。大丈夫ですか?」
「うん。サファイア。……私、話し合ったほうが良かったのかな?」
「こちらの事情の全てを話すわけにもいきませんから。
フェイト様の判断に任せます。
……ただ、彼女達とは、また会うかもしれませんね」
「……そうだね。ただ、今度は手加減できないかもしれない。その時は……」
セイバーのカードを握り締めながら呟くフェイト。
そして、これから3日後。
事態は思いがけない方向に進展する。
「フェイト!セイバーのクラスカードを今すぐ手離せ!!」
「お願いだフェイト一志の話を聞いてよ!」
「フェイトちゃん!」
━━━━━━雷槍の雨が白い少女に降り注ぐ少し前
ルビーの好奇心によって一志はフェイト向かった場所へ来ていた。
近くに身を潜めて、フェイトとサファイアの戦いを観戦していた。
正確には、フェイトのカレイドへの変身シーンを一度生で見たいと、
ルビーにせがまれ、しかたなく一志はこちらに来たわけなんだが。
最後の攻撃。雷槍は1つ2つで良かったはずだ。
未熟な子相手に雷槍の雨を降らせるのはやりすぎなんじゃないか?
下手したら大怪我してしまうんじゃ……。
と相手の子(後の管理局の白い悪魔)のことを心配した一志だが。
ルビーに可愛い子だから助けるってことですね!さすがはロリ好きマスター!
と不名誉な褒められ方をされつつも。
一志はアーチャーのクラスカードをインストールし、
少女(たぶん、なのは)がダメージを負わないよう影から援護していた。
フェイトが去るのを確認してから、ひっそりと出てきて、なのはに駆け寄る。
「おい大丈夫か?」
「あ、あの、ありがとうございます。
さっきの防いでくれたの、あなただってユーノ君が」
「ユーノ?誰だそれ?」
「一志さんアレですよ。彼女の近くにいるフェレットみたいなの」
「なるほど、オコジョの使い魔か」
さすがに、スクライアの家の子だよね?
遺跡発掘とか探査系の魔法はお手の物の……。
なんて言えない……。
「僕はオコジョでも使い魔でもないです。
ユーノ・スクライアです。
あの、あなた達はいったい?」
「ユーノ君はやっぱりオコジョっていうより、フェレットだよね」
「なのは!?」
ツッコミに勢いがあるなオコジョよ。
「俺は一志だ。こっちはルビー。
ルビーこの子、血が出てるから回復しないと」
「やれやれ、可愛い子にだけは優しいんですから。
まぁ、私も否やはないんですけどね~」
「いいから、リニスに治癒についても少し習ったんだから、やるぞ」
「はいはい」
一志が手をかざすと、数秒で少女が流していた血は止まり、傷口は完治していた。
「ふぁー、凄い。ユーノ君の回復と同じくらい凄い!」
「いや、なのは、レベルで言うなら彼の回復は僕の数段上だよ」
「ん?そうなのか?初めてやってみたんだが。
上手くできたようで、なによりだ」
あとで、気がついたことだが……。
回復が上手いのはルビーのリジェネ機能や、
直感スキルが高レベルであるため、
上手く治癒を促進させることができているらしい。
「それで、貴方達はどうしてこの場所に、もしかしてジュエルシードを?」
「そうだ。俺の目的はジュエルシードの回収だ」
「じゃあ、私達と同じだね!
私はなのはだよ!高町なのは。カズ君、ルビーよろしくね!」
「カズ君……ま、まぁ、いいか。確かに目的は同じだな。
だが、俺達はあくまでもアレを利用するつもりだ」
「ダメだ、危険だよ!アレは人の手でどうにかできるものじゃないんだ!」
瞬間、彼の顔つきは驚くほど変化した。
「危険なのは承知の上だ。
そして、俺たちにはアレが必要だ。
例えば、お前達はアレさえあれば救える命を見捨てることができるか?
危険だから封印しろと言われて素直に頷けるか?
救える人間が大切であれば、あるほど、
お前達の今の言葉は上辺だけの言葉に成り果てるんだよ。
まぁ、今のお前たちには到底理解できないだろうがな」
彼の言葉から暖かさと親しみが消えていった。
さっきまでの穏やかな雰囲気は消え。
瞳はまるで別人になってしまったように錯覚するほど、
淡々と吐き捨てる言葉はまるで冷気放っているかのように感じるほどだ。
それでも、少し悲しそうな。
そうさっきの黒い少女と同じような瞳をしたこの少年が、
なのはは気になった。さっきの子には話を聞けずに終わってしまったけど。
この少年なら、少しは話しを聞いてくれるかもしれない。
と一抹の希望をかけて少女は言葉を紡ぐ。
「でも……人の手でどうにかできる代物じゃ……」
「どういうこと?事情があるなら話して!
なにか私達で力になれることがあるかもしれない!」
めんどくさそうに溜息を吐く一志。
「はぁ……断る。
さっきお前を撃った子と俺は無関係じゃない。
悪いがアイツが事情を話さないのなら、
尚更、俺も話すことはできない」
ただ……と彼は続けた。話を聞いてもらう方法がないわけじゃない。
普通、大切な人を救いたい時に人の話を聞く余裕なんてない。
まして、それが他人の言葉なら尚更だ。
私達の言う言葉は軽く聞こえると。
そして、もし、他人じゃなくなれば、言葉は届くかもしれないと。
すぐ言葉を届けたいと願うなら、相手に聞いてもらう環境をつくることだ。
それが例え力づくになろうともな。
そんなことを言う彼は、明らかに楽しんでいて、
それに、なぜか私を試しているような気がした。
「じゃあ、なんでさっきは助けてくれたの?
あのままだったら、私はあの子の攻撃でやられてたはずだよ」
「ただの気まぐれだ。
いつものフェイトじゃなかったから気になっただけだ。
いつもならスタン狙いの一撃だけ済ませたはずだ。
それだけ、君と彼女には差があった。
なのになぜあんな大袈裟な攻撃を放ったのか……。
それに、フェイトは自分と話そうと近づいて来てくれた人を、
無闇やたらと傷つけたりしない。そんなことしたら、後で後悔しそうだしな」
そんな風に話す彼の顔つきは、お兄ちゃんに似ている気がした。
あの子を心配している様子・雰囲気が、
私のお父さんが入院しているときに見せた、
お兄ちゃんに少し似ている。私を心配してくれた。
状況を憂いているような、それでいて私を慈しんでいるような。
すごく寂しいようにも感じるその瞳を私は知っている。
あの子もそんな瞳をしていた。
綺麗で真っ直ぐで、それでいて、すごく寂しそうな瞳。
そんなあの子と関わりがある彼もまた同じような瞳をしてる。
きっと私は放ってはおけないと勝手に思い込んでしまったんだろう。
その瞳を見たときから私がしたいことは決まった。
絶対に事情を聞いてみせる。
そして、彼と彼女、二人と友達になりたいんだって!
だから……
「か、カズ君!私と付き合って下さい!」
「はい?!!」
という声が重なると同時に一瞬で空気が弛緩する。
「な、なのは!?付き合ってっていうのはいったいどういう?」
ユーノが狼狽えながらも質問する。
「うん。カズ君に私のトレーニングに付き合ってほしいの。
私はユーノ君と一緒にジュエルシードを集めることを止められない。
だから、きっとこの後もあの子とぶつかり合うこともあると思う。
今のままだとお話すらできない。聞いてすら貰えない。
だったら……お話、聞いて貰えるようにあの子の隣に立てるくらい、
強くなりたい!!」
なんて紛らわしいことを言うんだ。この白い悪魔は……。
と外面では苦笑しつつも、内心ガックリとうな垂れながら、反論する一志。
「イヤだ。だってそれおかしいだろ。
俺はアイツらの関係者なんだぞ。
なぜ、敵かもしれない奴に稽古をつけないといけないんだよ……」
乗り気になれずに、断ろうとすると……
<一志さん、これはフェイトさんのためにもなるんじゃないですか?
さっきのフェイトさんは少し様子が変でしたから、
なにかあったときに手は多い方がいいですし、
それに、私もあの時フェイトさんが無闇に人を傷つける方法を選択したのが、
どうしてなのか、引っかかってますからね>
ルビーが念話で俺の意識に割り込む。
<それと、彼女を鍛えるのは関係ないんじゃ……。
確かに俺もフェイトが無闇に人を傷つけようとした理由は気になるけど>
一志は若干思案するようなフリをする。
しかし、うるうるしながら、小動物のように、
こちらを上目遣いで見上げる可愛い子を無碍に扱うことできず。
(DTにはかなりの難題だったため)
一志はものの数秒で陥落宣言する。そう、まるで自分を納得させるように……。
「今後も対峙することが多くなるなら、自衛くらいできてほしいからな。
仕方ない。少しだけだぞ、それに基本はデバイスに習えよ。
俺とのトレーニングはそれを復習するための模擬戦形式でやるからな」
「うん!!ありがとう!カズ君!」
満面の笑顔で答えるなのは。
さすがにすごい破壊力のある武器が備わっている。
伊達に、悪魔の名を配してはいないというわけか。
<なに赤くなってるんですか!このロリコン!
まぁ、それよりも……アホみたいな魔力量は、
一志さんと似た感じの子なんですから、
改めて、手とり足とり教えるのも吝かではないんじゃないですか~?>
なんて、お気楽に言うルビー。
まぁ、確かに似たり寄ったりな感じだけど、
俺もリニスに教わって、まだちょっとしか経ってないのに……
人に教えれるかな……。
なんとも前途多難な師弟関係の始まりである。
やっと更新できたー。
カズ君。そうカズ君です。このための名前か!当たり前のパーペキです。