偽盲目少女の修羅国生活   作:リーシェン

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 お久しぶりです。まずは謝罪を。
 かなり長い間投稿せず、本当にすいませんでした。
 今確認したら3カ月半近く、しかも、感想への返信で投稿すると言ってからも1カ月近く投稿していませんでした。
 もうエタったと思われて興味を失われていないか、と不安ではありますが、まだ待って頂いてる方がいることを祈って投稿します。


9・〈マスター(高校生)〉談話

「じゃあ、まずは自己紹介からね。私は甦能彩夏(そのうあやか)。ジョブは【隠密】よ」

「私はマガネです。【傀儡師】に就いています」

「俺はイリス。【剣客】だ」

「わ、私は、霧鮫と言います……【陰陽師】です……」

 

 ティレシアスの《看破》でそれぞれ知ってはいたけど、確認も兼ねてきちんと聞く。【隠密】の娘の苗字、『そのう』なんて読むんだ。新発見だな。

 

「そして、この子が……」

「我は、【水成神母 エヌマ・エリシュ】。TYPEメイデンwithガードナーである、そこな〈マスター〉のエンブリオだ」

 

 五人目の女性が、【陰陽師】――霧鮫を指しながら言う。

 やっぱり、エンブリオだったか。

 “エヌマ・エリシュ”とは……確か、バビロニア神話の創世期叙事詩だったか?

 健の“人魚”なんかとも合わせて考えれば、エンブリオはモチーフとして地球の神話や幻想生物なんかを使っているのかもしれないな。

 ということは“ティレシアス”もそうなのか?俺は知らないが……後で調べてみるか。

 しかし、それよりも気になるのが一つ。

 

「あの、すいません。メイデンって何ですか……?」

 

 《看破》していた時から気になっていた、彼女のTYPE。

 ダッチェスから説明された中にもなかった上に、同じくTYPEが二つある俺の“テリトリー・アームズ”とは違う“メイデンwithガードナー”という表記の仕方。気になるには十分だ。

 

「えっと、ですね……。基本形態が人間であるレアカテゴリー、らしいです……。必ず他のカテゴリーを併せ持っているハイブリット型?だとか。……これ、全部エヌちゃんの受け売りなので、私も十全に理解している訳ではないんですけど……」

「いえ、それでも十分です。ありがとうございます」

「……っ、い、いえ、どういたしまして!」

 

 うわ、ちょっと微笑んで見せただけなのに、真っ赤に照れてはにかんで……この子、チョロ可愛いな。

 

「あ、そうです。自己紹介がまだでした。【迎撃者】の水無月火篝です。よろしくお願いしますね」

「ええ、よろしく」

「おう!」

 

 よし、掴みは上々。

 態度からして言動などに不審感は抱かれてないみたいだし、この分だとネカマだとも気付かれていないみたいで一安心だ。

 それじゃあ、ここでもう一つの疑問も解消させるとするか。

 地雷の可能性もあるが、今は何よりもそれに関心が向いているからな。

 

「あの、イリスさん」

「な、何ですかっ?」

 

 俺が声をかけると、びくっと身体を震わせた後に応答する。

 声も震えており、表情からは緊張と興奮が感じられる。

 その反応をもって、俺はある事を確信し、問いかける。

 

「あなた、リアルは男性ではないですか?」

「っ……ええ、そうですよ」

 

 俺の言葉を聞いたイリスは少し呆気に取られたような顔をした後……普通に頷いたのだった。

 

 

□〈緑花草原〉 【剣客】イリス

 

 

「やっぱり分かっちゃいますか?」

「はい。すごく分かりやすいです。それと、慣れていないのなら敬語はいりませんよ。普通に話してくださって構いません」

「そ、それじゃあ。分かった」

 

 俺の返答に、にっこりと笑って返してくれるこの(天使)は、水無月火篝さん。先程このフィールドで出会い、少し話すことになった。

 しかし……この美貌はヤバいだろ……。

 最初見た時なんか、あまりの美しさに固まってしまった。

 アイドルでも女優でもグラドルでも、ここまでの人は見たことがない。今の俺の紛い物美人とは大違いだな。

 

 

 俺――大塚(おおづか) 大智(だいち)がこのゲーム、〈Infinite Dendrogram〉のことを知ったのは発売発表会見の配信だった。

 それを見て興味を持った俺は、幼馴染の3人を無理やり巻き込……げふんげふん。誘って始めた。

 あのキメラ人間――名前は確か……ジャバウォック?――からチュートリアルを受け、その時のキャラメイキングでふと思い立ち、アバターを女にしてみた。

 その容姿は俺の理想にしようとしたが……結局上手く行かず、途中で妥協した。その結果が、このどこか違和感のある美形だ。

 ログインした後は身体の違いに悩まされたが、三人の助けもあり何とか順応することに成功。

 その後はこの世界を満喫していたが、“女らしくする”というのが意外と難しく、最終的には諦めて男の時と同じように振舞うことにしたのだ。

 そしてそれを今火篝さんに指摘された、という訳だな。

 しかし、やっぱり分かりやすいんだろうか……。

 結構色んな人に指摘されたし、好奇の目でも見られたし。

 こんなことになるなら、素直に男にしておけばよかったという後悔もなくはないが……まあ所詮ゲームだし、それを含めた上で普通に楽しめているからそう重く捉えなくてもいいか。

 それよりも何よりも今はやることがある。この機会を逃さず火篝さんとお近づきに……は性急過ぎるから、せめてフレンドにぐらいには!

 

 

□【迎撃者】水無月火篝

 

 

 まさか、こんなすぐに同じネカマに会うことになろうとは思わなかったな……。

 しかも、イリスはそれを隠そうとしていない。こちらが指摘しても特に狼狽することもせず、普通に肯定している。

 それが知れ渡った時の、周りのプレイヤーたちから反応が怖くないのだろうか?

 気になるが、それをここで聞くことはできない。

 それを聞いてしまったら、俺もそうだということがばれてしまう。それは嫌だからな。

 

「では、皆さんはリア友なんですか?」

「はい。いわゆる幼馴染という奴ですね」

「私は特に興味なかったんですが、そこのイリス(馬鹿)に無理やり……」

「でも、やってみて良かっただろ?」

「ま、まあ……」

「私もエヌちゃんに会えたから……やってよかった……!」

「ふん、嬉しいことを言ってくれるではないか、マスター」

 

 ふむ……美少女と美女が仲良く微笑み合っているのは、見ていていいな。これが“尊い”というものか……初めてリアルで実感したな。

 

「私もリア友に誘われて始めたんですが、やってみて良かったです」

「水無月さんもですか?……あれ?では、その人は?」

 

 俺の発言を聞いた彩夏が、不思議そうに聞いてくる。

 

「その人とは一緒に遊んでいませんよ。別の国ですし」

「え、誘われたのに、ですか?」

「ええ」

 

 俺の返答に意外そうな顔をする四人。

 まあ、それもそうか。誘われたのなら一緒にやるのが一般的ではあるからな。

 ただ、俺と健はそれに当てはまらない。

 俺たちは自分がハマっているゲームがあるとお互いに勧め合うが、それは“一緒に遊びたい”という感じではない。

 もちろん都合が付けば一緒に遊ぶが、お互いに求めているのは“ハマっているゲームの話題を共有したい”という感じだ。

 だから、初期の開始地点が異なっていたり、種族同士で対立しているようなゲームであっても、それを示し合わせたりすることはほとんどない。むしろ、様々な視点からの話題が欲しくて、積極的に別なモノを勧める場合すらある。

 

 それが俺たちの普通だったから、今回も健が俺に初期国家を言ってこなかったし、俺も聞かなかった。

 まあ、今回はそれで良かったかもしれない。

 同じ国に示し合わせといて、俺が女体化をしてしまっていたら、どんな事態になっていたか……想像もしたくない。

 

 それからは、六人で他愛のない話をする。

 四人とも俺と同じ高校1年生ということで、同年代ゆえの気軽さで話が進む。

 それぞれのエンブリオのことや就いたジョブ、戦ったモンスターやそのドロップ品などゲームシステム的なことから、オーバーテクノロジー過ぎるデンドロの話題や、NPCとは思えないティアンについてなど。

 

 俺のティレシアスがもう第二形態に進化していることを伝えると、驚くと共に悔しがっていた(特にイリスが)。

 やはりゲーマー的には、他のプレイヤーが先に進んでいるのは悔しい思いがあるのだろう。その気持ちは俺も分かるぞ。

 

 

 ……ちなみに、だが。

 今の俺はまるでコミュ力つよつよな陽キャの如く、初対面の人達(しかも女子含む)と楽し気に会話しているが、本当の、現実の俺ではこんなことはできるはすがない。

 それが出来るいるのは……今の俺が、“飯沼 葉月”ではなく、“水無月 火篝”だからだ。

 なよなよしていて男気も感じられず、終始人を寄り付けない暗い雰囲気を纏い、トラウマで満足に人付き合いも出来ない、風体も内心も生粋の出来損ないである飯沼葉月(現実の俺)ではなく。

 綺麗で美しくて、誰をも魅了する雰囲気を纏い、当然満足に会話も出来て逆に相手を元気にするような、最早聖人とも表現できるような水無月火篝(理想の私)だからだ。

 いわば、ロールプレイ中なのだ。俺とは正反対の、俺の理想の人間を。

 それはきっと、この世界に降り立ち、今の自分を認識した時から、変わらず続いている。

 俺の理想の人なら、初対面の人だろうと楽し気に会話できるだろう。誘拐紛いのことをされても、誠意を持って謝られれば、すぐに和解し仲良くなれるだろう。不手際で俺へ不躾な視線を集められても、気にせず流し、むしろ相手を気遣えるだろう。

 

 ……今こうやって振り返って思えば、昨日柚芽や茜ちゃんと会った時も、“女らしく”という意識してやっていたことだけではなく、無意識で“火篝(理想)らしく”ということも実行していた。

 茜ちゃんに顔を背けられた時はトラウマが刺激され、本来の俺に戻っていたような気もするが、それ以外はずっと火篝として振舞っていた。

 もし昨日二人と対峙していたのが現実の俺だったら、もし誠意を持って謝られても、内心のどこかでは悪感情が残り、すぐに立ち去っていただろう。不手際で俺に不快なことが起こったら、相手を責めていたかもしれない。それも、面と向かっては言えないから、心の中で。

 

 

 俺は、俺が嫌いだ。

 本当は、もっと人と話したい。もっと皆を気遣える人間になりたい。健のように、一緒に居れば誰かを幸せにできるような、そんな力が欲しい。

 でも、俺には出来ない。今まで積み重なって俺の性根にまで染み付いたトラウマを拭えないから。

 昔祖父に気味悪がられた、昔誰とも知りもしない男に罵倒を浴びせられながら刺されかけた、昔親友目当ての女子に優しくされた後陰口を言われた、その程度のことも乗り越えられない俺が、心底嫌いだ。

 

「……ん……さん……水無月さん?」

「……え、あ、何ですか?」

「大丈夫ですか?急に黙ってしまったので、何かあったのかと……」

 

 どうやら自分の内面に向き合い過ぎて、話が止まってしまったらしい。

 霧鮫ちゃんがこちらをのぞき込み、他の四人も心配そうな表情をしている。

 

「いえ、何でもないですよ。えっと確か、高校の先生の話でしたよね……」

 

 何とか空気を修正し、先程と同じような軽くて楽しい雰囲気にする。

 俺のトラウマ性コミュ障は今始まったことではないのだから、考えるのはまた後で良いだろう。

 それより今は、この会話を楽しまなくちゃな。

 こんなに明るく会話をしたのは何年ぶりだろうか?

 両親とはこんな雰囲気で話せないし、健とは、あいつが馬鹿で陽キャで俺が陰キャだから、大抵健が話かけてきて、それを俺が適当にあしらう、という構図が出来ているから、これもまた違う。

 それ以外だと、学校で3人とは話すが、1人はマジ頭おかしくて意味分からん奴でだし、他2人は健と三人で喋っているのを俺が聞いて、時たま合いの手を入れるくらいだからな。こんなに積極的に自分から喋ったりしない。

 そんな貴重な体験を噛みしめていると……ふと、それに気づいた。

 

 

 それは、俺たちに近づいてくる一匹の子狐だった。

 ゲームの狐というと、尻尾が9本あったり、周囲に狐火を纏わせたり、そういったモノが連想されるが、そいつにそういったものはなかった。

 毛並みが紫であることを除けば、現実の狐と変わらない。

 ここが現実ならば、可愛いーなんて言って近寄っていく者もいることだろう(ちなみに、狐はエキノコックスに感染する可能性があるから、見つけても絶対に近寄ってはいけないらしい)。

 だが、ここはゲーム。一度街から出てみれば、魔獣が蔓延る戦場だ。

 当然、この狐もただの無害な動物ではない。それは、頭上に浮かぶネームプレートと、そこに書かれている名称を見れば一目瞭然だ。

 そんなモンスターが近づいてくるのだから、普通は戦闘態勢を取る。

 

 だが……俺以外の5人は全員とも、そうはしていなかった。

 何の脅威もないかのように、リラックスして談笑を続けている。

 それはまるで、あの狐が見えていないかのような態度だった。

 しかし、それは普通あり得ない。

 俺たちは円になるように並んで話している。

 狐に背中を向けている霧鮫とエヌマ、彩夏は仕方ないとしても、角度的にも距離的にも俺とほぼ変わらない男二人が見つけられないのはおかしい。

 これでは、自分が見ているモノこそ実は幻影かもしれない、というような感覚に陥ってしまうが……あの狐が何か知っている俺ならば、それも納得できる。

 何せこの狐とこの現象が、俺がこの〈緑花草原〉をレベリング場所に選んだ理由の大きな一つだからな。

 

 狐は、急ぐでもコソコソするでもなく、悠々と俺たちに近寄ってくる。それは今まで、誰相手であろうと自分が見つかったことがないからこその余裕だった。

 そのまま霧鮫の真後ろ30cmといった所まで歩くと止まり、力を四肢に込め、霧鮫のうなじに飛び掛かる――少し前に【鉄槍】をアイテムボックスから取り出し《迎撃》でAGIを3倍化していた俺によって、地面へと縫い付けられた。

 

「え、火篝さん……?」

「どうしたんですか?突然槍で地面を突いて……って、それ!?」

「キュ、キュ……」

 

 突然の俺の奇行に、五人は怪訝そうな顔を浮かべるが……槍に貫かれた狐を見つけ、驚愕へと変貌させた。

 

「い、いつのまにこんな近くまで……!?」

「それは、ネームを見れば分かりますよ」

 

 助言しながら、俺ももう一度ネームに目をやる。

 そこには……【隠密子狐】と銘打れていた。

 

「【隠密】……ということはもしかして……!」

 

 それを見た5人の内、自身も【隠密】のジョブに就いている彩夏が最も早く理解する。

 

「ええ、そうです。このモンスター、《隠形の術》が使えるんですよ」

 

 《隠形の術》。

 それは、初邂逅時に柚芽も使用していた、隠密系統で習得できるジョブスキルだ。

 自身の気配を完全に消すことが可能で、たとえ目の前にいたとしても、《看破》や《心眼》などのスキルが無ければ感知することができなくなるのだ。

 

「で、でも、私には《隠蔽感知》のスキルもあるのに……」

 

 そのカラクリを知っても、彩夏は気付かなかったことに納得していなかった。

 確かに、【隠密】は隠蔽に特化したジョブであり、自身が施すだけでなく、それを見破るのも得意としており、その手段が《隠蔽感知》である。

 そのスキルがあれば、他者が施した隠蔽を感知し、無効化することができる。

 しかしそれは……ある条件を満たした時のみだ。

 

「彩夏さん、そのスキル、今何レベルですか?」

「えっと、まだ1だけど……って、あ……」

「そうです。【隠密子狐】は生まれた時から《隠形の術》をレベル2で覚えています。それに、先程の個体はレベルアップもしていて3になっていました。それでは通らないのも無理ありません」

 

 ほとんどのゲームでは、相反する効果を持つスキルがぶつかりあった場合、スキルレベルか、スキルレベルがない場合は対応するステータスや確率が高い方が優先される。

 それはこのデンドロでも例外ではなく、基本的にレベルが高い方のスキルの効果が優先される。まあ、スキルレベルがないスキルや、スキルレベルがあってもそもそもの規格が違うため参考にならないスキルもあるらしいが、基本的にはスキルレベルで判断される。

 そのため、【隠密子狐】の《隠形の術》よりも低いレベルであった彩夏の《隠蔽看破》では見破れなかったのである。

 

「そう、だったの……。……あれ?でも、それならなぜ火篝さんは見えていたの?【隠密】でもないのに……」

「私のエンブリオのおかげです」

 

 そう言いながら今まで閉じていた瞼を開け、一目で作り物だと分かる無機質な瞳……ティレシアスを見せる。

 第一形態の時ですら、《隠形の術》レベル7の柚芽を見破った《見えざる瞳、視る異能》だ。第二形態に進化してそれが強化されたかどうかは分からないが、まず弱体化はされてないだろうし、レベル3程度なら簡単に見破ることができるだろう。

 ……では、なぜそんな完全にこっち側が優位な【隠密子狐】を目当てにここに来たかというと、それは確認(・・)のためだ。

 

 

 俺はエンブリオ、ティレシアスによってこの狐にメタを張れているが、そのエンブリオがないと、俺――というか【迎撃者】――にとって、こいつは完全なる天敵だからである。

 【迎撃者】の唯一の固有スキル《迎撃の心得》は、相手に攻撃された(と認識した)時にのみ発動する。

 それはつまり、こちらが認識できない相手ならば必ず先制される、ということと同義なのだ。

 それは例えば、認識できない場所からの狙撃。例えば、認識できないように仕掛けられたトラップ。例えば、《隠形の術》などで気配を消しての奇襲。

 【迎撃者】は全ステータスが満遍なく上昇する代わりに個々の上昇値が低く、《迎撃》で倍加しない限りは、同レベル帯の者にほぼ確実に負ける。

 そんな低ステータスの状態で先制攻撃を受けてしまったら、間違いなく致命傷となる。

 これが、少し前に考えていた、ステータス面における【迎撃者】のデメリットである。

 “迎撃”と銘打たれているにも関わらず、このジョブは“専守防衛”が出来ない仕様なのだ。

 

 ……だが、そのデメリットは、俺にとって存在しないも同然だ。

 そう、最初にも言ったが、俺にはティレシアスがある。

 視覚結界は全方位をカバーするので死角などは存在せず、隠されているものも見破ることができる。今は200メートルくらいまでしか見えないが、今後進化すればもっと遠くまで見えるようになり、遠方からの狙撃もすぐに気付けるようになる(まあ、次はいつ進化するか分からないので、それを解決する策も考えるつもりだけど)。

 ティレシアスがあればデメリットの一つはほぼ意味が無くなり、ステータスが低いことも“体感時間加速による対象の切り替え”を駆使すれば、ある程度はカバーできる。

 ここまでティレシアスと相性の良いジョブもなかなかないだろう。【適職診断カタログ】さんも良い仕事をしてくれたものだ。

 

「なるほど……眼球状であり、《隠形》も見破り、ずっと目を閉じていても見えていた……察するに、どんなモノでもどんな状態でも見える、言うなれば《千里眼》のようなスキルを保持しているのでしょうか?」

 

 おおぅ、マガネ、すごく鋭いな……。

 ティレシアスの、《見えざる瞳、視る異能》の能力をほとんど言い当てている。まあ、ここまで情報が揃っていれば分かるかもしれないが、それでも頭が回るのは確かだろう。

 

「へえ、そんなエンブリオもあるんだ……まさに千差万別だね……」

 

 そんな風に彩夏が感じ入っているが、俺も同感だ。

 先程聞いた四人のエンブリオもまったく違うものだったし、この分だと他の人のエンブリオも全部まったく違うものだろう。これだけの情報量を保持出来ているというだけで、どれだけの技術力が必要なのかも分からない。

 

 ……ここまでリアルな世界に、生きているとしか思えないティアンやモンスター、数にして一千は下らず、一万にすら届きかねないほど多いジョブにアイテム、トドメに、プレイヤーのパーソナルを読み込み産み出される、千差万別のエンブリオ。

 こうやって羅列してみると、やはり規格外としか思えない。どれだけの技術、人員、資金、年月が費やされたのだろうか?

 だが……それらを幾ら積んだとしても、このゲームが開発される想像ができない。

 では、これは、この〈Infinite Dendrogram〉は、どうやって創られたのだろうか。

 それは、もしかして……。

 

「どうしたんだ?また考えこんで……」

「あ、いえ、何でもありませんよ」

 

 イリスに言われて、思考を遮り、現実に意識を戻す。

 まあ、さすがにありえないだろう。未来か、別次元か、平行世界か。そんなところで創られた、本物のオーバーテクノロジーである、なんてことは。

 

 




 ……投稿前に見直したら、なんか、勢いで付け足した設定とか、今は出すはずじゃなかった設定(主に葉月の過去)も衝動で書いてますね……。
 まあ、今から修正してもおかしくなるだけだろうし、大筋としても大丈夫なはず、です。
 それと、第三話「2・初ログイン、エンブリオ孵化」の後書きにあるティレシアスのデータの“特性”の部分を付け足しました。
 理由としては、今後の展開(主に、ティレシアスをどう進化させるか)を考えた時、今の特性(盲目、視覚結界)ではどう考えても発展させられず悩んでいた所、良い感じのモノが思いつき、理由付けも出来たということで追加したいと思います。
 見切り発車ゆえのガバ設定により、ご迷惑をお掛けします。
 ですが、今の時点では隠しパラメータのようなものですし、今投稿している分が変わったりはしません。絶対見なきゃ話が分からない!なんてことはないので特別見なくても大丈夫です。しかし、今後の展開にも関わってくる(予定)ですので、できれば一度見てくださるとうれしいです。
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