大迫力なバトルが見れそうで今からワクワクしてます
それと、今話に登場する五人組は『8・〈マスター〉接触』『9・〈マスター(高校生)〉談話、【迎撃者】のデメリット』からの再登場です
忘れてしまったという方は、そちらをどうぞ
18・パーティー結成〜高校生ver〜
□将都冒険区冒険者ギルド 【槍士】水無月火篝
ルガリードとの激戦から現実時間で3日、デンドロ時間で9日が経った。
6日前、つまりデスペナ明け初日に俺は、ルガリードのことを報告するために冒険者ギルドに赴いていた。
冒険者ギルドでは〈UBM〉を始めとした強力なモンスターの目撃情報を常に募っており、情報提供料としてそこそこの額のリルが貰えるのだ。
デンドロにおいては、1匹のモンスターだけで生態系を破壊したり数百人単位の死傷者が出たりすることも当たり前だそうだから、金を払ってでも情報を集めるのは妥当だろう。そうして情報収集したモンスターのうち、危険度が特に高いモノには賞金をかけて討伐を働きかけるらしい。
お金が貰えるとはいえ、情報提供するにはいくつかの段階を踏まなくてはならず、結構面倒だ。
だというのになぜそんなことをするかと言えば、ルガリード戦でのデスペナルティのせいである。
デンドロにおける主なデスペナルティは24時間のログイン制限。
だが、それ以外にも不利益なことがある。
それこそが、所持品のランダムドロップ。
装備品やアイテムボックスの中に入れていたアイテムの中からいくつかが死亡したその場に落ちてしまうのである。
そのせいで俺は、所持金の実に7割を失ってしまった。
いやぁ、ログインして確認した時は愕然としたね。
メイン装備である槍やお面、それに砥氷なんかが落ちてなかったのはせめてもの救いだった。既製品の槍はともかく、オーダーメイドのお面やガチャ産の砥氷は失くすともう入手できないし。
そんな訳で冒険者ギルドに足を運んだのだが……。
俺がちょうどルガリードと戦って死んだ頃、「〈UBM〉に殺された」と、デスペナの明けた数人の〈マスター〉が駆け込んできたらしい。
将都直近のフィールドでデンドロの戦闘にも慣れ、意気揚々と次のフィールドである〈魔香森丘〉に乗り込み――そこで〈UBM〉、つまりルガリードに殺されたのだと。
また、直接ルガリードと遭遇したのはその〈マスター〉たちだけだったが、明らかに雰囲気が違う鬼の集団――こちらはルガリードの弟子たちだろう――に殺されたと言う〈マスター〉も結構な人数存在した。
それらの報告を受け、冒険者ギルドは〈UBM〉とその配下が〈魔香森丘〉を根城にしていると断定。
形式上とは言え首都近くに〈UBM〉がいる状況は看過できず、討伐の前段階として斥候部隊を送り……そして、〈UBM〉を発見することができなかった。
半地下に造られた居住施設や作物収穫用の畑など、何らかの集団が生活していたであろう痕跡は見つけられたものの、肝心な〈UBM〉と配下たちが見つけられなかったのだ。
念のため範囲を広げた捜索が数日間続けられ近隣地域の冒険者ギルドにも情報が回されたが、発見の報告はなく、ルガリードたちの行方は完全に闇に包まれた――。
という感じで、俺がデスペナしている間にルガリードの騒動は収束していたのである。
もう、完全に出遅れていた。
これは情報提供しても意味なしか……と落胆していたのだが、そんな予想に反して俺の提供した情報は歓迎され、中々の額の報酬も手に入れることができてしまった。
しかし、よくよく考えてみれば当然である。
俺はルガリード本人と直接話した上で、スキルやら何やらの情報を教えて貰っていたのだ。
前述の〈マスター〉たちは出会って瞬殺されただけであったため、分かっていた情報は名前と容姿だけ。
俺の情報が有り難がられたのも納得だった。
□□□
報酬で失った以上の金を手に入れた俺は、ルガリードとの誓いを果たすべく、レベル上げに集中していた。
この数日を振り返ってみると、学校に行くか課題をやる以外ずっとデンドロに籠って狩りをしている。
すっかりハマっちゃったが……まあ、楽しいしやりがいがあるしな。
その甲斐あって【迎撃者】はレベル50、カンストまで上がった。
本当だったら次は迎撃者系統の上級職に就きたかったのだが、そのためにはまだ満たしていない条件が存在する。先にそちらを満たしてもよかったのだが、ルガリードの時のようにまたいつ不測の事態に巻き込まれるかも分からないため、まずはステータス上昇と保有スキルの増加を優先し、就くだけ就いてサブジョブに置いていた下級職――【槍士】【双術士】【投槍士】のレベル上げをすることにした。
そして今日もまた、帰宅して速攻デンドロを起動。
レベル上げのため狩りに出る……前に、冒険者ギルドに立ち寄っていた。
「【討伐依頼―【魔香樹】】に【採取依頼―【墓標茸】】か……」
何をしているかと言えば、クエストの確認である。
そもそもだが、冒険者ギルドとはクエストの斡旋所だ。
討伐に護衛、収集、その他雑事まで、数多くの依頼が冒険者ギルドに持ち込まれる。
専門的な知識やスキルが必要な場合は各ジョブギルドに回されることもあるが、戦闘職であれば誰でも可能なモンスターの討伐や商人の護衛なんかは冒険者ギルドで依頼が出されることが多い。
前まではレベル上げのために無作為にモンスターを狩っていたが、最近は今後のための金策をかねてクエストも同時にこなすことにしている。
クエスト確認のためにめくっているのがとんでもなく分厚い冊子――クエストカタログだ。
これはギルド側が依頼を承認すると自動的にこのカタログに追加され、誰かが依頼を受注すれば消えていくという、ジョブカタログと同じデンドロ特有の便利アイテムである。
そこには依頼内容と報酬金額、そして難易度が記載されている。
その中でも先程俺が読み上げたものは、レベル上げの狩りと並行して進められ、報酬もまずまずなモノたちだ。
損得勘定で言えばこれらの中から選ぶのが良いのだろうが……。
「……やっぱり、これかな」
結局、ここ数日で見慣れたページで手を止める。
そこに書かれていたのは、【討伐依頼―【小鬼】群】の文字。
ルガリードの置き土産とも言えるクエストだった。
デンドロを始めてから俺が主な狩場にしていた〈緑花草原〉。
そこでは、他のモンスターが滅多にしか見ることができないほど小鬼が大繁殖していた。
その要因となったのがルガリードだ。
とはいえ、直接あいつが何かした訳ではない。
繁殖の直接的な原因となったのは群れの
ルガリードの群れに一度加わりながらも、何らかの理由で逃げ出した小鬼たちだ。
ルガリードのスキルによって下級職を得てはいるが、レベルもほとんど上がっていなければジョブスキルを使いこなすことも出来ていない状態がほとんどの落伍者たち。
だがそれでも、ジョブレベル分のステータスは上乗せされる。
そしてそれは、二桁前半のステータスが当たり前な〈緑花草原〉のモンスターたちに対しては十分なアドバンテージとなる。
結果、落伍者たちがステータスの優位のままにモンスターを駆逐し、それに便乗するように同種の小鬼たちが繁殖していったのだ。
【小鬼】は繁殖力の高さだけが取り柄のモンスターではあるが、であるがゆえに進化の行き着く先は多種多様で、変異進化の末に〈UBM〉となることも決して少なくない。
そんな未来の災厄の芽を摘むため、冒険者ギルドが主導で小鬼掃討のクエストを発行しているのである。
正直、このクエストは俺にとって得となる要素はほぼないと言ってもいい。
同じくらいの労力でもっと報酬が良いクエストはたくさんあるし、今更小鬼と戦っても楽しくもなんともない。
それでも受けるのは、これがルガリードを発端とするというその一点だけ。
別に、この異常繁殖した小鬼たちを倒した所でルガリードに何かあるかと言われてもないのだが……それだけ俺が、強くルガリードを意識してしまっているということなのだろう。
□□□
「……ん?あれは……」
小鬼掃討のクエストを受けるべく、カタログを持ちながら受付に向かおうとして……冒険者ギルドの中へ、男女五人組が入ってくるのが視界に映った。
「今日はどんなクエストにしましょうか?」
「やっぱ討伐だろ!というかもうそろそろ、ボスモンスターに挑戦を……」
「却下。もう一つくらいジョブカンストさせないと危ないって言われたでしょ……って、あ!」
クエストの相談をしていた五人組だったが、その内の一人、銀髪の女性がこちらを見て声を上げる。
「火篝さん、お久しぶりです!」
「……ええ、お久しぶりですね、皆さん」
銀髪の女性――彩夏さんを筆頭に駆け寄ってきた五人に対して、
この5人――正確に言えば四人と一体は、俺が初めてまともに接した〈マスター〉とエンブリオたちだ。
会ったのは……デンドロ時間で言うと、もう2週間前になるのか。
会話を楽しみフレンド交換までしたが、デンドロにおけるフレンド機能はログインしてるかどうか確認できるかだけ。
会話だけでなくメッセージのやり取りすらできないので、交流するのは初対面以来の二回目だ。
「それにしても、よく私だと分かりましたね」
今の俺の服装は、最初に五人と会った時の初期装備のワンピースではない。
レベル50になって装備制限をクリアしたため、後回しにしていた防具変更を行い、紅色の着物へと装いを変えている。
ちなみにこの着物、覇漣さんの工房のお弟子さん製作のモノだ。
戦闘用であるため動きやすい造りになっており、防御力も申し分ない。その上、微量ながらもAGI補正と《ダメージ減少》Lv1まで付与されているというなかなかの一品だ。
流石は超級職門下の職人である(一応言っておくと、今回は普通にお金を出して買った)。
ワンピースにあった『狐面似合わなすぎ問題』も解決したため、顔を隠す目的で普通に被っており、一目で判別するのは難しいはずだけど……。
「雰囲気、って言えば良いんでしょうか。一つ一つの所作が洗練されていて、目を引くというか……」
「それに、お主のプロポーションは完璧すぎる。彫刻の方がまだ人間らしいぞ。お主、本当に人間か?」
「ちょっと、エヌちゃん……!失礼だよ……!」
彩夏に続いて、堂々とした佇まいの蒼髪の女性――TYPE:メイデンwithガードナーのエンブリオ、【エヌマ・エリシュ】が割と失礼な発言をし、そのマスターである黒髪少女――霧鮫が諫める。
しかし、雰囲気とプロポーションか……。
狐面を被るようになったのに注目が減らなかったのは、その辺りが手付かずだったからか。
SPを消費してしまうが、街中でも《隠形の術》を使うことを視野に入れるか……いや、【隠密狐】を捜して、狐面にスキル追加でも……。
「火篝さんもクエストを?」
「はい。今から受注しに行こうと思っていました」
思考の海に沈みかけていた意識が、黒髪の青年――マガネに話しかけられたことで浮上した。
質問に答えつつ、腕に抱えていたクエストカタログを持ち上げる。
「な、なら折角だし、俺たちと一緒にクエスト行かないか?いや、駄目なら別にいいんだけど……」
金髪の女性がその見た目にそぐわない、男子高校生のようなキョドった態度でクエストに誘ってくる。
実際、彼女――いや彼のリアルは男子高校生なのだ。
イリスは俺と同じネカマであり、そして俺と違ってネカマを隠していない。だからこそのこの態度とも言えよう。
しかし、パーティーでのクエストか……。
俺は今のところ、ソロでしか活動をしたことがない。
本当の俺を隠しているという負い目もあるし、ソロで困ったことがないから、戦力は増えるが経験値や戦利品を分配しなければいけないパーティーは損になるということもある。
けれど、一生ソロで行ける保証はないし、むしろ将来的にはパーティーを組まなければ戦っていけないようになる可能性の方が高い。
そのことを考えると、こちらに好意を持ってくれていて、善人と確信できる彼らとパーティー体験ができるのは……俺にとってとてもありがたいことだろう。
「むしろ、こちらからお願いしたいくらいです。パーティーに参加させていただけますか?」
「……!ああ、もちろん!」
初めてのパーティークエスト……どうなるか楽しみだ。