偽盲目少女の修羅国生活   作:リーシェン

31 / 42
29・演説

□将都北門前 【大迎撃者】水無月 火篝

 

「早速作戦を始めよう……と言いたいところだが、初顔合わせの者もおるから、まずは各々自己紹介をしてもらおうか。誰からでも構わんが――」

「はいはーい!じゃあ俺から行かせてもらうぜ!」

 

 真っ先に名乗りを上げたのは、俺より後に来たうちの1人だ。

 

「俺は桃金浦(ももきんうら)、【疾風騎兵】だ!」

 

 漢字名、黒髪黒目、とパッと見は日本人のようだが……顔がもろ西洋人だし、名前も語呂が悪すぎる。日本風にキャラメイクした外国の人っぽいな。

 陽キャのコミュ強オーラをバシバシ放出していて、リアルの俺からすると一番接点がなさそうなタイプだ。

 

「それでは、次は私が。【花火師】の百間狭(ひゃっかんきょう) 絶許(ぜっきょ)と申します。本日はよろしくお願いたします」

「【巫女】のマリアです~。今日は頑張りましょうね~」

 

 それに続いたのが、俺より前に集まっていた2人。

 眼鏡で作務衣を着た長身の男が百間狭で、にこにこと笑顔を絶やさない巫女姿の金髪少女がマリアだ。

 2人ともだいぶ肝が据わっているようだな、この状況で臆する様子が微塵もない。俺も見習いたいものだ。

 ただ、気になったのは百間狭のPN。個性的に過ぎる名前だが、ゲームなら名前っぽくない名前も珍しくない。ので気になったのはそこではなく、その文字の並びだ。どこかで見たことがあるような、ないような……上手く思い出せないのがもどかしい。

 

「あ、あの、えっと。りゅ、リュージャです。【従魔師】やってます。はい。よろしくです」

「霧鮫、です……私も【従魔師】、です……」

「その〈エンブリオ〉、【水成神母 エヌマ・エリシュ】だ」

 

 自然体の2人とは対称的に怯えきってるのが残った2人。

 片方がご存知霧鮫、もう片方が見るからに幸が薄そうな顔をした青年だ。

 人見知りの見本のような2人だが、であるがゆえに共感も覚えるようで、ハッとした表情の後、顔を見合わせてコクコクと頷き合ってる。なんか微笑ましい。

 

「【大迎撃者】の水無月火篝です。よろしくお願いします」

 

 最後に俺が挨拶し、自己紹介が終わる。

 この6人が【アイラマティ】討伐のメンバーだ。

 

 

「作戦については、昨日伝えたことから変更はない。皆、覚えてきてくれているな?」

「はい~」

「おう!バッチリだぜ!」

「ならよし。

 ……では皆を送り出す前に、少し話をさせてもらおうか。

 そんなもの要らん、と思うやつもおるだろうが、まぁ、先達からのお節介だと割り切って、しばし耳を貸してくれ」

 

 お、出発前の演説的なやつか?

 士気を上げるにはこういうのは大事だからな。さて、鏡石さんはどんな演説を――

 

「お主たちは、それぞれが【アイラマティ】へ対抗できる逸材であり、それを見込まれて選ばれた者たちだ。

 ――だが見方を変えれば、お主らはしょせん()()()()のパーティーである、とも言えよう」

「!?」

 

 唐突になんてこと言うんだこの人!?

 

「聞こえは悪かろうが、それは事実だ。十数年共に戦った精鋭パーティーに比べれば、連携も信頼も、なにもかも足りん。加えて言ってしまえば、それぞれの戦闘経験も決して豊富ではないからな。咄嗟の連携も満足にできんだろう。パーティーとして評価した場合、合格どころか及第点すら怪しいだろうな」

 

 いや、たしかに言われた欠点は全部事実だろうけど……!

 だからってなんでそれをこのタイミングで指摘してくるの!?

 ほら、桃金浦とかエヌとか、露骨に機嫌悪くなってるし!このままだと、士気を上げるどころか、悪影響が出るんじゃ……。

 

「……だが、此度の作戦においては、そのようなことを気にする必要はない!」

 

 そんな不安を、力強い言葉が吹き飛ばした。

 

「連携ができない、経験がない。ワシらはそれらを承知の上で、お主達ならば討伐は成ると信じ、招集した。ならば、それが間違いのないものになるよう手を尽くすのが道理というものだろう。

 ……聞いて分かっている者もおるやもしれんが、この作戦において細かい連携の類は要らぬ。然るべきタイミングに、自らの役割を全うする。それだけで成功するよう、組み立てたからだ」

 

 さっきまで顔を顰めていた2人の口元が綻ぶ。

 鏡石さんが欠点をあげつらったり、不安を煽ったりしようとしているのではなく。むしろその逆、俺たちが不安を覚えないよう、鼓舞していることが分かったから。

 

「怯えることはない。作戦が、ワシらが導き……なにより、先程も言っただろう?お主らは逸材だ。〈UBM〉など、恐れるに足らず!

 ――これより【【到極王眼 アイラマティ】討伐作戦】を開始する!吉報を期待しておるぞ!」

「「はい!」」

 

 熱のこもった返事が重なる。

 元より好戦的だった桃金浦たちはもちろん、さっきまで怯えていた霧鮫やリュージャすらも、しっかり前を向いて戦意を漲らせていた。……そしてそれは当然、俺も。

 自分は人の上に立つような人間じゃない、なんて言ってるらしいが、なかなかに人を煽るのが上手いじゃないか。

 

 

「よっしゃあ、気合入れていくぞ!」

「ふふ、ワクワクしますね~」

「おっと、火篝とリュージャはこっちに来とくれ」

 

 ガヤガヤと盛り上がる6人に混ざってフィールドに向かおうとして、呼び止められる。

 

「例のものだ。必要量はあるはずだが、無制限ではないからな。あんまり無節操に使うなよ。で、嬢ちゃんにはこれも」

 

 手渡されたのは、俺のとよく似た巾着型のアイテムボックスと、とあるアクセサリー。

 巾着の中に入っているのは、手のひらサイズの紙が束になったものだ。

 これらは今回の作戦に必要ということで支給されたのだ。

 普通のクエストではここまでの好待遇はそうあるものじゃないが、今回は鏡石さん主導のもと、万全のバックアップがなされている。

 とてもありがたいのは間違いないんだが……消費された金額と、そのうちの7割近くが鏡石さんのポケットマネーから出ていると聞いてしまうと、だいぶ複雑な気分になってしまう。

 

()()も人数分用意してやりたかったが……こればっかりは金だけではできんからなぁ」

 

 俺だけに渡されたこのアクセサリーには、反則のようなスキルが付与されている。

 これが人数分あればそれだけでも段違いで成功率が上がったのだが……供給が安定しないらしく、鏡石さんが予備として保管していたこれ1つしか準備できなかったそうだ。

 そんな貴重品を預けられるプレッシャーがないとは言わないが、俺が持つのが一番良いということも理解している。

 

「それを使う事態にならんのが最善だが――万が一の時は、頼むぞ」

「もちろんです。……では、行ってきます」

「で、では!」

「おう!頑張れよ!」

 

 かけられた応援を背に、5人を追いかけて北門を駆け抜けた。




なんとなくお分かりの方もいるかと思いますが、桃金浦の由来は『桃太郎』『金太郎』『浦島太郎』です
日本に憧れるアメリカの学生が、伝統的な英雄(ヒーロー)から1文字ずつ漢字貰った結果、語感が最悪になりました

【アイラマティ】討伐メンバー
索敵・〇〇・〇〇担当:水無月火篝 【盲目視眼 ティレシアス】
〇〇・〇〇担当:桃金浦
〇〇〇〇担当:百間狭 絶許
〇〇担当:マリア
〇〇〇〇担当:リュージャ
〇〇担当:霧鮫 【水成神母 エヌマ・エリシュ】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。