もう半年以上更新してなかったことに気付いて驚きました……時間感覚がおかしくなってる……
それと、原作にまんま【魔眼王】が登場したのですが
まだ差別化できそうな範囲の被りだったので、ジョブ名を【魔眼王】から【
□〈魔香森丘〉 【大迎撃者】水無月 火篝
「終わった、かぁ……」
〈UBM〉討伐のアナウンスが届き、強張ってた全身から力を抜く。
終わってみれば戦闘時間そのものはそれほど長くなかったが、終盤の怒濤の展開もあり、精神的疲労は相当のものだ。その分、達成感も大きいけれど。
ぶっちゃけ、今すぐにでもログアウトして爆睡したいが……もし討伐に成功して生き残っている場合、将都に戻って報告する、というところまで作戦の内だ。
……内、なのだが。
「……この状態で、自分の足で帰んなきゃいけないの?」
《祝罪》の影響で欠けた視界は、戦闘が終わったところで戻らない。
地面の凹みにすら気付けず転ぶような、その上、疲労でクタクタな状態で?
……文句言っても仕方ない、か。
地面に突き立った槍を回収し、桃金浦だけでも生き残って欲しかった……なんて益体もないことを考えながら、将都へ向かって歩き出した。
□□□
普段とは逆に【ティレシアス】の索敵を逃げに使い、狐面も駆使しながら、徹底的にモンスターを避けて将都に辿り着く。
討伐パーティの品定めで賑わって出発した時とはうって変わり、北門前は閑散としていた。
北方面への通行は規制され、討伐パーティはいつ戻るか、そもそも戻ってくるのかも分からないため待つ人もいない……
「あれって……火篝さん!?本当に来た……!?」
「な?だから言ったろう?」
「茜ちゃんに、鏡石さん……?」
はずなのだが、そこにはなぜか、見知った2人の姿があった。
「どうしてここに……?」
「少し前、鏡石さんが急に北門に行こうって言ったんです。討伐パーティが戻ってくるだろうから、って」
「北の方から
……なるほど。よく分からないが、とりあえずヤバい技能を持ってるんだな、ということだけは分かった。深入りはやめておこう。
「……その様子を見るに、しっかりと成すべきことを成せたようだな」
「はい。私も、皆も。鏡石さんたちが立ててくれた作戦のおかげです」
「そう謙遜するな。結局、挑んだのはお主たちだ。儂らはあくまで手助けに過ぎんのだからな。
しかし……そうかそうか。確信はしていたが、それでも嬉しいものよ。
――さて、話の続きは冒険者ギルドでにしよう。たっぷりと聞かせてもらわねばな!」
「あはは……疲れてるので、ほどほどでお願いします……」
北門をくぐると、見慣れた将都の街並みに包まれる。
……なんか、すごく安心感がある。
俺自身が討伐に寄与した場面は少なかったが、パーティメンバーが動いてるのを横で見ている間も、帰ってくる間も、心は張り詰めたままだった。この"いつも通り"を見て、やっとそれがほぐれた気がする。
「ん?なぁ、アンタ!もしかして、〈UBM〉討伐に向かったますたーか?」
「はい、そうですけど……?」
通りを進んでいると、露店の店主から声をかけられる。
俺の顔を覚えているとなると、出発前の人混みにいたのだろうか?
「じゃ、じゃあ、〈UBM〉は……!?」
「倒しました。私達で」
「おぉ!本当かい!?よくやったねぇアンタ!」
「なに?〈UBM〉が倒されたって!?」
隠すことでもないし、正直に答える。
すると瞬く間に話が広がっていき、周囲に騒めきが伝播していく。
「これでやっと安心して寝られるってもんよ。ありがとな!」
「〈UBM〉を打ち倒すとは、これは我々武芸者もうかうかしてられないな。もっと腕を磨かねば!」
「へぇ、本当にますたーが……こりゃあ、ちっとは信じるに値するのかね。……おっと、こうしちゃいられねぇ。掻き入れ時だ!とっとと商いの準備しねぇと!」
「え、イベントボス倒されたの?――ふっ、今回は素直に褒めといてやろう。
だが、次にボスを倒し名を上げるのは、【シーク・オマール】を持つこの俺だ!覚えとけよ!」
「だからな、お前、コーヒー……いやもういいや……」
「……~~!」
町人たちからかけられる惜しみない賞賛、商機を見出して慌ただしく動き始める商人たち、喝采半分、妬み半分の言葉をくれる〈マスター〉。
……別に、【アイラマティ】の討伐は俺1人の功績じゃない。パーティーの皆がいなかったら成し遂げられていなくて、その上でたまたま俺が生き残ったからこそ、この場にいて、声をかけられてるだけだ。
それでも……いや、だからこそかもしれない。
〈
□□□
活気付く将都を進み冒険者ギルドへ入ると、藍さんを筆頭にしたギルド職員に待ち構えられており、特典武具を用いて討伐を証明した後は、作戦や状況の推移や【アイラマティ】について、請われるままに話すこととなった。
特に根掘り葉掘り聞かれたのが、【アイラマティ】の能力や生態についてだ。
〈UBM〉は後にも先にもそいつ1体だけ。それゆえ、一般モンスターのように記録したことがそっくりそのまま次の脅威への対抗策となることは少ない。
しかし、まったく同様の能力は存在しなくても、どこかしら似通う部分はある。
どんな性質を持ち、どのような方法であれば対抗できるのか。
そうした知識を何代にも渡って蓄え続けることで、ティアンは理不尽な〈UBM〉たちに抗ってきたのだ、と。
ここまで熱心に聞く理由を問うたところ、そう力説されてしまった。
別に強制ではないとは言われたが……そんな理由を聞かされたのなら、もう全力で答えるしかなく。
俺の休息時間は、更に遠のいていった。
□□□
「これは……間に合うでしょうか……!?」
聞き取りが終わってログアウトした俺は、泥のように眠っていた。
結界の"組み換え"の負荷が現実にまで影響したのか、まったく目を覚ますことなく爆睡し……そして、そのせいで待ち合わせに遅刻しかけている。
【ティレシアス】で周りがよく見えるのはこういう時便利だ。まだまだ《祝罪》の影響が直りきらず、いつも通りには見えにくい今でも、AGIの限りを尽くして走ったとてぶつかる心配がない。
それでも時間はだいぶギリギリだ。
やっとの思いで目的地――冒険者ギルドに辿り着く。
待ち合わせの時間は、【アイラマティ】の討伐から、現実時間で約1日、デンドロ内時間で約3日。
つまりは――
「来た来た!遅いぞー!」
「お、おはよう、ございます……!火篝さん……!」
敷かれた畳の上に、思い思いの恰好で座っていたのは、共に死線を潜った6人。
つまりは、デスペナルティの明ける時間だ。
□□□
「では改めて。【アイラマティ】の討伐、感謝する!」
半円状に並んで座る俺たちに、対面した鏡石さんが頭を下げる。
「お主らのおかげで脅威は去り、町民たちは元の生活に戻ることができた。流通も滞りなく再開し、前と変わらぬ活気もすぐ帰ってくるだろう。
ついては……これが約束の報酬だ」
6人それぞれに巾着型のアイテムボックスが配られる。
報酬金額は、なんと100万リル。
初期配布額の200倍である。
しかもそれだけではなく、売って良し素材にして良しのインゴットや鉱石、レベル制限のないアクセサリーなど、ちょっとした(質を考えれば全然ちょっとではないが)アイテムのおまけ付き。
こんなに貰えていいのかという気持ちは当然あるが……【アイラマティ】のせいで一方面の流通が完全に途絶えていたことから、その損失額とそれを正常化させた功績を考えれば妥当……なのか?
ぶっちゃけ、よく分からないのが正直なところだ。
「うぉぉ!大金だぁ!」
「こ、こんなに……何に使えばいいんでしょうか……?」
「無理に使う必要もないと思いますよ~。今後、必要になる場面もあるでしょうし~」
俺以外の面々も流石の金額を前にほとんどが平常を欠いている。……それでも調子が崩れないマリアはなんなんだろうな、一体。
「〈マスター〉たるお主らが今後、どのような道を辿るのか、儂には想像もできん。
だがいずれにせよ、今回の経験を糧に、更なる活躍をしてもらえれば儂としても嬉しい。
お主らが更なる強者となることを、期待しておるぞ!」
□□□
「お前らはこれからどうするんだ?」
冒険者ギルドから出たところで、一番前を歩いていた桃金浦が振り返る。
「俺は、天地の攻略組で一番を目指す!
少し出遅れはしたけど……その分、他の奴らがしてないようなことを経験できたし、資金も用意できた!
なにより、俺と【アルゴノゥト】なら出来るって信じてるからな!」
攻略組……最近、ネット掲示板で広まりつつある呼び名だ。
街やフィールド問わず、これまで〈マスター〉が足を踏み入れたことのない場所を目指し、ひたすら遠くへ進むことを目的にしている〈マスター〉たちが、某有名VRMMOラノベになぞらえてそう呼ばれているのだ。
桃金浦自身が言ったように、確かに出遅れはしている。だが、これは決まったコースを走るレースではなく、進んでいくのはモンスターの襲撃や危険な環境の渦巻くフィールドだ。
【アルゴー】のような、フィールドの状態を気にせず、素早く移動できる乗騎があれば、先行者に追いつき、抜き去ることも夢ではないだろう。
「……てなわけなんだけどさ。
お前らの知る通り、【アルゴー】が全力を出すには仲間が必要なんだ。
だから――俺の仲間になってくれないか?」
「――え?」
思ってもみなかった一言。
それは俺だけじゃかったらしく、リュージャや霧鮫なんかも顔を驚きに染めている。
「最初集まった時は、変な奴らしかいねー、なんて、正直思ってたけどさ。
一緒に【アルゴー】に乗って、ボスに挑んで……その中で感じたんだ。
こいつら全員、このクエストを成功させようと、本気で、全力で向き合ってるな、って。
俺、現実でもゲームでも、チームでなにかすることってたくさんしてきたけど……それが出来るのって案外少ないんだよ。
俺は仲間にするなら、そういう奴らがいいってずっと思ってたからさ。
だから、どうだ?」
「……」
……皆、嫌がってるという雰囲気ではない。
しかし困惑が抜けきらないのか、誰からも言葉が出ることはない。
「お誘いはありがたいですが、私は遠慮しておきます」
そんな中、一番に口を開いたのは百間狭だった。
「私の目標は、現実と比べれば遥かに制約やしがらみの少ないこの世界において、夢であった美少女百合空間を実現し、運営していくことです。
そのために、所々で腰を据えながら、少しずつ力とお金を蓄えていこうと思っています。
残念ながら、あなたの行動方針とは合致しません」
そういえば、クエストの最中にもそんなこと言ってたっけ……。
いくらデンドロは自由とはいえ、流石に自由過ぎる目標な気もするが。
「そっか。
じゃあ、他はどうだ?」
「私自身は、お誘いに乗らせていただいてもよいと思っておりますが~。リュージャさん次第ですね~」
「えっ?……もしかして、そこ、パーティー組んだの?」
「あ、はっ、はい。集まる前にマリアさんに誘われて。なんか、そうなりました……」
なんと。
生まれていたまさかの組み合わせに驚きを隠せないが、自信なさげに頷くリュージャがむしろ一番信じられていなそうだ。
「えっと、マリアさんはなぜリュージャさんを?」
「そうですね~……強いて言えば、リュージャさんが寂しそうだったから、ですね~」
「……え?それだけか?」
「はい~。
……クエストでの移動中にもお話ししましたが、私は、私の手で誰かを助けられたらいいな、ってずっと思っているんです。
こんな私でも、隣にいて、寂しさを埋めるくらいなら出来ますから~。それに今は、【デメテル】もありますし~」
――〈エンブリオ〉は、〈マスター〉を写す鏡だ。
今、自分の抱える苦しみと……そして、いずれ出来るかもしれない、
誰かを癒せる力を――それも、その時だけのものではなく、その後も寄り添い続けられる力を求めたマリア。
そう考えると、思ったよりも相性がいいのかもしれない。
「ひ、人前で自分の心を解説されるのって、すごい恥ずかしいですね……」
「まぁ、ドンマイ?
……それはそれとして、リュージャ的にはどうなんだ?」
「……僕としては、お誘いを受けたいなと思っています」
「お!ホントか!?」
「は、はい」
初めての色よい返事に身を乗り出す桃金浦。
それに気圧されるリュージャだったが……姿勢を正し、意を決したように口を開く。
「……僕、元々、誰かと繋がりを作りたくて、MMOを探していたんです
でも、実際にデンドロを始めてみたら、結局、誰にも話しかけられなくて、ずっとソロで……。
この機会に、って言うと、利用してるみたいになっちゃいますけど……一緒に冒険してもらえるなら、むしろ、僕の方からお願いしたいぐらいです」
「おいおい、そんな申し訳なさそうにするなって!
俺から打診してるんだから、こういうのは利用する、じゃなくて、持ちつ持たれつって言うんだよ!」
「そう、ですかね?」
「おう!」
嬉しそうにバシバシとリュージャの背中を叩く桃金浦。
叩かれてる側のリュージャも、どことなく嬉しそうだ。
あまりコミュニケーションが得意ではないだろうリュージャからすれば、真っすぐ心を伝えるというのはかなり勇気がいることだったろうし、それを受け入れて貰えたとあれば、それも当然か。
「残りのお二人さんは……」
「あの、えっと、私たちは――」
「マスターは乗らんぞ。なにせ、もうパーティーを組んでおるからな」
「そ、そういうことなので!すみません……!」
まぁ、霧鮫はそうだろうな。
あの3人から離れて1人だけ別のパーティーに、などあり得ない話だ。
「嬉しいお話ではありますが、私も遠慮させてもらいます。
固定パーティーは、組まないと決めているので」
誘われて嬉しいのは、心からの本音だ。
でも、固定パーティーは組めない。
長く一緒にいればいるほど、被った仮面の下を見せてしまう機会が増えてしまう。失望させてしまう。
それは、嫌だ。
「残念だけど仕方ねぇか。
2人も増えてくれただけで感謝だしな!」
「そんなに喜んでもらえると……なんかちょっと、こそばゆいです……」
「ふふ、ですね~」
……いいな。
断った分際でこんなこと言うのはお門違いなのは分かってるが、それでも、こうやって"仲間"になる瞬間を見てしまうと、羨ましさが胸の中に湧き出してくる。
いつかは俺も、こんな風に、誰かと一緒にいれるように
「では、私はそろそろ行かせて頂きます。
――あぁ、そうだ。マリアさん、霧鮫さん、水無月さん。私とフレンドになって下さいませんか?」
「……?いいですけど」
特に断ることではないが、なぜ俺たち3人とだけ……?
「美少女であることはもちろん、クエスト中、貴女方からは百合の波動を感じました。そのため、美少女百合空間が実現した暁には、どうかそこに加わって頂きたい、と。そう思っております」
「あぁ、そういう……」
ぶれないなぁ、こいつ。
百合の波動がなにかは分からんが、まぁ、気にするだけ無駄か……。
「申し訳ありませんが、その、美少女百合?とやらに加わる気はないのですが……」
「ええ、それは察しております。
しかし、もし心変わりされた際のために、繋がりは作っておくべきでしょう?」
「なる、ほど?」
まぁ、一理あるか?
不都合はないわけだし、フレンド登録くらいならしてもいいだろう。
とはいえ、どれだけ心変わりしたとて、俺がそこに加わることはないだろう。
なにせ、美少女どころか、ネカマである訳だし。百間狭にバレた時があまりにも怖い……。
「?あぁ、そんなことを気にしていたのですか」
申請を承認しつつ曖昧に笑う俺に、なにかを納得するように頷くと――
「私は
「……。……。っ!?」
何気ない顔で、爆弾発言が落とされた。
「おっと、お時間を取らせ過ぎました。
では、今度こそ失礼させて頂きます。
いずれ、よいお返事を頂けることを願っております」
表情が固まった俺が目に入っていないのか、入った上で気にせず流したのか。
丁寧なお辞儀の後、スタスタと歩き去ってしまった。
「イミ、テ?ってどういう意味でしょうか……?」
「さ、さぁ?最後まで真意の読めない方でしたねー?」
……いつだ。いつから気づいていたんだ、あいつ!?
というかどうやって気づいた!?振る舞いには気を付けていたはずなのに!
……ああやってぼかした言い方をした以上、俺が隠したがっていることも気づいているだろうから、言いふらされたりはしないとは思うが……。
今後、あいつとは絶対合わないようにしよう。うん。
「マスター、我々もそろそろ行くとしよう。あやつらを待たせ過ぎるのも悪いからな」
「あ、そうだね。
それじゃあ、し、失礼します!
火篝さんも、また、どこかで……!」
「えぇ。イリスさんたちにもよろしくお伝え下さい」
「だったら俺たちも行くか!
とりあえず、これからどう動いていくかを相談しねぇといけないしな!」
「はい~。それではお二人とも、お元気で~」
「お、お元気で!」
霧鮫とエヌが、桃金浦たち3人が、それぞれ連れ立って歩いていく。
……さて、俺も進む準備をしなきゃな。
元々、将都を出て新しい街に行こうとしていたのを、【アイラマティ】が現れたことで保留していた。
補給していた物資は【アイラマティ】戦では使わなかったし、装備もほとんど損傷はない。
軽くメンテナンスだけお願いすれば、すぐにでも――。
そこまで考えて、ふと1つ、やり忘れていたことを思い出した。
□□□
訪れたのは、もはや見慣れた〈緑花草原〉。
わざわざこんなところまできたのは、人目のない場所で戦利品を確認するためだ。
「これが、特典武具……」
【到極魔蓋 アイラマティ】
<伝説級武具>
稀代の職人が作りし魔眼精霊の概念を具現化した伝説の宝物。
視た術と理を解し、我がモノとすることで究極へと到る力を持つ。
※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし
・装備補正
MP+[着用者の合計レベル]×20
・装備スキル
《コネクト・カリキュレーター》
アイテムボックスから取り出したのは、薄く小さい、曲がった金属板。
【アイラマティ】の討伐MVP報酬である。
討伐後、なんだかんだとあり過ぎて、確認するのがここまで伸びてしまったわけだが。
「――武具?」
どこからどう見ても"武具"ではなくないか、これ。
……まぁ、それは一旦置いとくとして、それ以上に気になる部分がある。
「装備スキルって、これだけですか?」
特典武具の性能は、生前の〈UBM〉の能力が深く関係しているらしい。
装備スキルはそれが顕著であり、〈UBM〉が持っていたスキルの劣化版、あるいは討伐者に合わせた調整版を備えていることが多いのだとか。
だから【アイラマティ】で言えば、"悪性結界"や魔法の弾幕、あるいはパーティーを全滅一歩前まで追い込んだあの斬撃――そのあたりが装備スキルになるものだと思っていたのだが……実際は、それらと関係なさそうなスキルが1つあるだけだった。
《コネクト・カリキュレーター》:
パッシブスキル。接触した演算装置との規格を問わない接続と、互いの演算処理の代替が可能となる
なるほど。……どう使えばいいんだ、これ?
このスキルから分かるのは、【アイラマティ】自体に演算機能があること、そして、別の演算装置があれば、それぞれの演算性能を上げることができること。
でも、肝心要の別の演算装置、そんなものを俺は持っていない。
このままでは宝の持ち腐れ、に……。
……待てよ。演算装置?
このデンドロに来てから一度、俺はその単語を耳にしたことがある。
俺が【アイラマティ】討伐に参加するきっかけにもなった、柚芽の口から。
"人の脳は、増えた視界に耐え切れない"。
ゆえに、"【ティレシアス】にはその処理を負担する、演算機構が組み込まれているのでは?"、と。
というか、この形状、大きさ……もしかしなくてもこれ、コンタクトレンズ、じゃないか?
普通の眼ではむしろ前が見えなくなるだろうが、目で見ることのない【ティレシアス】にはなんの問題もない。
直感のままに【アイラマティ】を左眼にはめ、【ティレシアス】と接触させる。
装備したことがきっかけとなったのか、キィイン、と小さな駆動音と共に【アイラマティ】が起動し……
【――Connecting】
無機質な機械音声が脳に届く。
やっぱりそうだ。
自分の推測が当たっていたことを喜ぼうとして……
『こんにちは。初めまして、でいいのかな?』
「……!!?」
脳内に直接響いた、機械音声とは違う声に、全身を跳ね上げた。