東方偽人録   作:ミツバチ

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皆様いかがお過ごしでしょうか、ミツバチです。

実に一カ月ぶりですね。大学の入学式とか授業登録とか色々と忙しいかったです。サークルも面白いとこばっかりでより取り見取りでした。まだ何に入るかは決まってませんが、何らかのサークルには入るつもりです。

さ、一カ月放置してつい数時間前に書き始めた言い訳はここまでにして、早速始めましょう。今回こそは予告通りに行こうと思います。

フランと穂高の弾幕ごっこ(?)、ついに始まります。

では、何話目か忘れた紅魔郷編。
まだまだ続く(かもしれない)吸血鬼姉妹の物語。
始まり始まり!



悪魔の妹

 

この世で最も恐ろしいものとは何か───。

 

まだまだ大学に入ってあまり時の経っていない頃、穂高の所属している部活の部長であり、世に言うところの稀代の天才であり、そこに存在しているだけで周りに不幸を撒き散らす、まるで嵐か台風のような、そんな女性───檟谺に、そんな問いをされたことがあった。

 

その問いに対して一体何て答えかは全く憶えてはいないが、恐らく俺は一言も喋ることもなく、その問いは終結させられたのだろう。あの、常人の話など聞くに値しないと平気で言ってのける女のことだ。俺が憶えていないということは、つまりはそういうことだろう。だから思い出すのは俺の『解』ではなく、あの女の『解』となるわけだが。

 

兎も角、自身で出した問いに、あの女はこう答えていた。

 

『───この世で最も恐ろしいものとは何だろう?

 

多くの者は答えに困るだろうね。

 

例えば、拳銃と答える人もいるだろう。

例えば、毒と答える人もいるだろう。

例えば、爆弾と答える人もいるだろう。

中には核と答える人もいるかもしれない。

 

だが、ここには考えてほしい大前提が発生するわけだ。

 

今挙げたものは、全て『物』だということだ。それは人が作り出した武器ないし兵器だということだ。如何なる強力な兵器も、必ず使用者がいなければ意味を成さない。

 

使用『者』、つまりは人間だ。

 

重要なのは使用する『者』であり、使用される『物』ではない。

 

使用者がいなければ、武器は武器として、兵器は兵器として成立しない。たとえそこにミサイルがあったとしてもそれが未来永劫、誰にも触られなければそれは大量の火薬が詰まっただけのただの鉄の塊でしかない。当たり前なことだね。

 

扱う『者』がいてこそ、それらは目的ある『物』として存在できる───力は力として成り立つのだから。

 

───と、そうなると重要なのは力を扱う『者』へと焦点が移るわけだ。

 

頭に覚えのあるであろう一握りの者が『物』という存在を超え、この選択肢へと到達するだろう。だからといって、この問いの答えが『者』であり『人間』であるというのは、些か聡明とは言えないね。『物』でなければ『者』というのはあまりに安直すぎる。残念なことに世界に存在する殆どの人間はここで解としてしまうのだけれど。

 

だが、もう一歩踏み込んでみよう。

 

最も恐ろしい『物』を操る最も恐ろしい人間とはどういう『存在』なんだろうか。

 

人間という生き物は、思考という厄介なものを持ってしまったが故、全ての行動に理由を必要とする。

 

生きる為に空腹になる。空腹だから物を食べる。物を食べる為に身体を使う。身体を使う為には生きていなければならない。

 

欲望───そう。欲望だよ、穂高くん。

 

人の一番の欲求を例に挙げてみたけれど、結局のところ、『行動の為』の理由というのは『欲望の為』の理由なわけだ。今こうして君と話しているのだって、私が君に話したいから話しているんだ。迷惑だからやめろ、と君が言ったところで話は止まらないから諦めることだね。

 

話を戻すけれど、欲望、その答えも正しくもあるが30点といったところだね。まだまだ赤点は免れないよ穂高くん。

 

人の欲望とは、つまりは心情だよ。

 

先の例も同じだよ。あれは生きる為に食事を摂らねばならないという欲望だけれど、その裏にあるのは『食べなければ死んでしまう』という、この世で人間の奥底に確固としてある根源的な『恐怖』という名の心情だよ。人間という存在の最も奥底にあるものだ。

 

歴史に名を馳せた武人は、負ければ死ぬという恐怖故に、戦い続けた。

 

冷血な独裁者は、自身以外のもの全てに裏切られるのではないかという恐怖故に、全てを疑い、淘汰した。

 

平和を愛した先導者は、自身も含め世界の全てに争乱の種が埋められていることを知り、それらに自身が巻き込まれるのではないかという恐怖故に、全ての争乱から目を逸らした。

 

全て、恐怖という心情によるものだよ。

 

だが、同じ恐怖という心情でも、人によって結果は千差万別。それを、人は個性───人格と呼ぶんだ。こうも違いが生まれるのは、偏に僕らに人格というものがあるからだ。

 

だから最初の問いとは、つまりは最も恐ろしい人格を持つ人間とは何か、ということになるね。

 

そしてこれが、僕の出した解だ───』

 

かくして、長ったらしい話の殆どを脚色で記憶しており、約9割が間違いである可能性があるわけだが、その時の彼女の解はしっかりと憶えている。

 

この世に数多ある人格の中で、最も恐ろしい人格者とは。

 

 

 

 

 

 

 

《無邪気な者》───である。

 

 

 

 

 

「いや。いやいやいや…うそお───」

 

人が死ぬときには、そこには何かしらの『悪』が必然である。

 

人が人を殺せば、殺した者が『悪』い。

それが冤罪ならば、法律、または裁く者の頭が『悪』い。

そして、全く誰の関係もしないところで不慮の出来事により死んだとすれば、それはその者の運が『悪』かったのだ。

 

これもまたあの女の受け売りなのだが、この場合はどうなのだろう。

 

全く、これっぽっちの縁も繋がりもない初対面の者に。

不慮でも何でもない、予想内の出来事(・・・・・・・)により殺されたならば。

それは何が『悪』かったのだろうか。

 

対し、きっと彼女はこう言うだろう。

 

───それは、殺されたそいつの頭が『悪』かったのだ。

 

「───まじっすか」

 

だが生憎なことに、そいつはまだ死んではいなかった。

男子学生であり魔法使い・灼馳穂高は生まれて初めて、人生における危機というものに直面していた。という表現はあまり正確ではなく───そもそも、ならばあのサークル活動擬きはどうなのかと言われればそれまでである───、状況をより客観的に正しく申告するならば、後方から追われるように危機に迫られていた。

 

追跡されている、イメージ───。

逃げている、ヴィジョン───。

 

色合いとしては後者の方が強いが、しかしそんなものは追いつかれてしまえばどちらにしたって同じことである。終わりとはいつだって唐突なもの。時計の電池のように───はたまた落雷による停電のように唐突に、それは訪れる。

 

現在時刻午前六時。

場所は大図書館、庭へと続く二階のそのまた一つ上の階に設置された窓から覗く外の景色はこの季節には珍しい土砂降り。本来ならいるはずの図書館の主とその従者の気配はそこにはない。穂高はそんな状況で、一人、整然と配置された本棚の間を縫うように駆けていた。

 

その僅か後方から奇怪な翼の金髪幼女に追われながら。

 

「きゃははは!どうして逃げてばかりいるの?もっと遊ぼうよ!」

 

これが逃げずにいられるものか。彼女の背後に展開された魔法陣のような物から発せられた無数の光る弾丸が襲い来る。その一つ一つが、相手を壊すことにのみ特化した物量攻撃に過ぎなかった。これが何かの映像作品なら、その綺麗さに目を奪われていたかもしれない。けど、生憎当事者であった。

 

嬉々とした表情で、本棚を次々と破壊しながら逃げる穂高を追ってくる金髪幼女は、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットの妹───フランドール・スカーレットである。

 

彼女が繰り出す非殺傷どころか、喰らえば跡形無く消え失せるような殺傷用弾幕を、咲夜との闘いで見せた瞬間加速のみで器用に躱していく。

 

「───反則でしょう、これは」

 

逃げる穂高の右腕には手首よりその先が無かった。

 

 

 

つい数分前のこと。

パチュリーの仕掛けた術式により雨が降り出す少し前、ある部屋に穂高はいた。

 

そこは何から何まで紅い部屋だった。カーペットもキングサイズのベッドも腹から綿が出たヌイグルミもタワーを作っている絵本の表紙も真っ赤。広い部屋だが他の部屋に続くドアは見当たらない。家具はベッドと本棚と鏡だけだった。

 

その鏡の前に彼女───フランドール・スカーレットが立っていた。

 

レミリアと瓜二つの顔。しかし、それ以外は全くと言っていいほどに違っている。髪の色は異なり、背中に生えた羽は実に非生物的形をしており、まるで宝石の生る枯れ枝である。最早、吸血鬼であることすら疑ってしまう、姉妹の違い。

自分を映さない鏡をじっと見つめていたが、ふと鏡に映った穂高と目が合った。

 

「だれ?」

 

振り向いたフランドールの紅い瞳が興味深げに穂高を見る。

 

「あ。この前、咲夜と遊んでた人だ」

「ん?どうして知っているんだ?」

「お姉様に教わったの。自分がいる場所とは違う場所を『見る』方法。地下は退屈だから偶に見ているの」

「そりゃあ不思議な特技だな。灼馳穂高。執事だよ、新しく入った」

「ヒツジさん?絵本で見たのと違う。モコモコしてない」

「いや、羊じゃなくて執事だ。咲夜と同じだよ」

「咲夜と?男のメイドさんなんて初めて見たわ」

「いや、それもおかしいんだけど、強ち間違いではないとこが何とも…」

「ふうん……人間?」

「一応、人間の魔法使いだね」

「それじゃあ、パチュリーと同じだね!男の魔法使いなんて初めて」

「はい、デジャブが見えたからこの話はお終い!」

 

思ったよりも話し易く、無駄話が過ぎた。彼女は咲夜から聞いていたよりも話は通じ、聞いていた通りに心が幼い。前者は嬉しい誤算ではあるが、逆に予想通りの後者は穂高の目的にとって弊害でしかない。

 

「俺はフランドールを……長いな、フランでいいかな。フランを外に連れ出しに来たんだけども」

「ふ〜ん…穂高も嘘つくんだ。嘘つきは舌抜いていいんだよ?」

「嘘じゃないよ。ていうか、そのトンデマは誰から聞いたのさ」

「お姉様」

 

ああ、はいはい。そういや久しぶりだなぁ…いつぶりだっけか。まあ俺も一応の常識人で通ってるわけだし?あまり大っぴらに声を上げることはなかったのです。だがしかしですよ?いくら常識人であっても、一年に一度ぐらいは声を大にして言いたいことはあると思うのですよ。逆に言いたいことを溜め込むのは人のストレス耐久値的に悪いので、たまの発散もいいでしょう。では、久方ぶりのツッコミを入れてみましょう。せーの───

 

(レェミリアァァアアアアアア!何吹き込んでんだてめぇ!見ろあのフランドールの笑顔!超輝いてる!例えれば新しい玩具を買ってもらった子供の顔!もしかしてとか思いながらも、やっぱ姉だし、そんなことはないよね?とか、必死で言い訳紛いのことを考えてた俺が馬鹿だったわ!フランの気がふれているとか関係なく、こいつの異常性加速させたのお前だよねお嬢様!?これ絶対そうだよな?もう決定だよ?だって何しても言い訳できないぐらいな証拠が目の前にいるんだもの!!以上です裁判長!!)

 

さすがに初対面の女の子の前で大声で叫ぶわけにもいかず、心中で一息に大絶叫してみるが、これはこれで恥ずかしくはある。心読まれたら確実に赤面ものだ。特にあの胡散臭い奴にだけは絶対に知られたくはなかった。それをネタにして弄ってくる光景が容易に予想出来る。

 

「それより遊びましょ。お姉様と咲夜以外と遊ぶのは久し振り!」

 

さっきよりも物凄い良い笑顔のフラン。本当はあのツッコミから色々と会話があったのだけど、いい加減読者の皆さまを待たせるのもあれだろう。というわけで、始まりの最後。二人の『遊戯』の始点で、『会合』の終点。その僅かな時の会話は実にシンプルである。

 

「いいよ。何して遊ぶ?」

 

向けられる狂気の笑みに、穂高は表面だけの笑顔を浮かべる。如何なる状況にも対応出来るよう、開いた空間(・・・・・)の中から愛用の刀をすぅっ(・・・)と抜き出した。対し、紅く輝く瞳でその姿を見据えたフランはこう告げた。

 

「弾幕ごっこ!」

 

その言葉と共に、紅い弾幕が四つ放たれる。対し、穂高の行動は早かった。抜いた刀を把握した弾幕の軌道に添える。狙いは確か、弾幕の側面に力を加えて逸らす為であった。

しかし、完璧なタイミングで対応出来たはずの穂高は否応無く己の失態を思い知らされる。

 

「───っ」

 

血と肉が飛び散る。

 

迫り来る紅弾は、往なそうとした刀ごと穂高の右手首を消し飛ばした。

 

 

 

 




一万文字は夢だった。

そう思うことにしています。
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