東方偽人録   作:ミツバチ

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はい、毎度ながら(というほど話数ないけど)出たとこ勝負の投稿です。
間がかなり空いた割に文字数少なめです。
ついでに初めのあたりは駄文満載。
ちょこちょこ直してくんで、その辺は勘弁してください。
それでは艇のいい言い訳も済んだところで、スキマのお姉さん登場!
胡散臭さ満載の会話をご覧ください。


スキマのお姉さん登☆場☆!!

 

十分後───

 

橙に抑えられ、九尾の妖怪はやっと落ち着きを取り戻した。

 

「私の弾幕を避けるとは……その怪我で中々やるな人間」

「そう思ってるんならもう少し早く止めて欲しかったよ……」

 

割と本気で息も絶え絶えで返す。寝起きの急激な運動は身体に悪いのでやめましょう。

 

「それとこれとは別だ」

「やっぱり理不尽だよ、この狐!」

 

俺が何をしたってんだ。

過保護なのか、溺愛しているのか。

どちらにしても、橙に対しての反応が過剰過ぎませんかね?

 

「それはそれとして。落ち着いたところで聞くけれど…」

「何だ?」

 

まだ若干視線に危険な色を滲ませながらも、怪訝そうに狐が尋ねる。

 

「部屋、こんなにして大丈夫なのか?」

 

穂鷹がボロボロになった部屋を見回しながら言う。

天井はボロボロ、畳は穂鷹が寝ていた場所を除いて完全なる穴空き状態、襖に至っては跡形も無く消し飛んでいた。

自分がさっきまで何処に寝ていたか、本気で疑いたくなる風貌に様変わりしてしまっている。

 

そして、それを成し遂げた当の本人は───。

 

「……」

 

畳を見、

 

「…………」

 

天井を見、

 

「………………」

 

襖を見た後、

 

「…………はは……は……」

 

顔が段々と青くなり、力無く引きつった笑みを浮かべた。

かなりヤバいらしい……。

 

「え〜と……とりあえず片付けようか。ここの家主が帰って来る前に直せば問題ないんじゃないかな?」

「そ、そうだな!直してしまえばどうということはない!」

 

どうやら簡単なフェイクにも気づかないほど焦っているらしい。

前向きな思考は評価すべきところなのだが、いいのか?家主に仕える身として。

 

「それじゃ道具と材料を取ってきてくれる?俺はこの家の間取りは分からないから」

「承知した。橙も手伝ってくれ」

「は、はい藍さま!」

 

藍と橙が急いで部屋を出て行く。

部屋から足音が聞こえなくなってなってから、穂鷹は静かに呟いた。

 

「人払い完了っと…そろそろ出てきたら?」

 

一見すると、何もない空間に投げ掛けられた言葉。

しかしそれは、確かに何者かに向けて発せられていた。

応える者はいないこの部屋で、しかし応える声が穂鷹の背後から挙がる。

襖が中心から破られるかの様に、その空間が開いた。

目のようなものが多数浮いている気色悪い空間。

その空間から1人の女性が現れた。

長い金髪に白い帽子、白と紫色の衣装で奇妙な形の傘を持っている。

10人中10人が振り向いてもおかしくないほどの美女。

だが、その雰囲気はどこか胡散臭さを醸し出しており、穂鷹個人としてはあまり関わり合いたくなかった。

 

「あら、よくわかったわね。いつから気付いていたのかしら?」

「冗談はそれぐらいにしろ。元から隠す気なんかなかっただろうが」

「さあ、それはどうかしらねぇ?」

 

雰囲気通りの胡散臭い笑みを、扇子で隠す。

美人が浮かべるとそれすらも妖しい魅力を備えてしまう笑みは、到底隠せきれるものではなかったが。

 

(はぁ…胡散臭さはうちの部長とタメ張れるな…)

 

あのトンデモ部長の満面の笑みが見えた気がして、強烈な既視感からくる嫌悪感と倦怠感に早くも気が折れそうになりながらも、言葉を続けた。

 

「それで?俺に話があるんじゃないのか?」

「あら、何のことかしら?」

「惚けるな。俺をこっちに連れてきた挙句、妖怪に襲われた時にも遠くで覗き見てただろ。気になってまともに戦えやしねえ」

「あら。私は覗いてた覚えなんてないわよ?」

「わざわざ妖怪を嗾けておいて?」

 

妖怪は生きた長さに相応する知能を持っている。だが森の長であるにも拘らず、白狼は一度も声を発していない。それに加え、あの銀狼は一本たりとも森の樹木を薙ぎ倒していない。あれだけデタラメな脚力があるのなら、あの程度の太さの木々など貫けないはずがないのだ。にも関わらず、白狼はまるでそれを避けるかのような攻撃しかしてこなかった。

穂高はそれをずっと疑問に感じていた。人間をただの餌だと思っていたと言われればそれまでだが、この女妖怪に会った時点で確信した。

白狼に襲われた時に僅かに混じっていた別のモノの匂い。

それがこの女のものであった。

 

「ふふ…やっぱり貴方、唯の人間じゃないわね」

「唯の人間だよ。何処にでもいる唯の大学生だ」

「異空間に干渉したり妖怪相手に戦い慣れしてる大学生が、唯の人間だとは到底思えないのだけれど?」

「胡散臭い奴に毎日毎日拉致されたり見殺しにされかけたりと濃ゆーいお付き合いしてるもんでな。胡散臭くて食えない変人の対処は慣れてる」

「へぇ…それで、その対処法は?」

「黙って受け流す」

 

変人と言われた当の本人は、いつも通りの胡散臭い笑みを浮かべながらも何処か面白いものを見るかのように目の前の人間を眺めている。

異様な雰囲気の中でしばらく無言が続き、

 

「はははは」

「ふふふ」

 

まもなくしてどちらともなく笑い出した。

 

「お互い、腹の探り合いはここまでにしとこうか」

「そうね、藍も戻ってくる頃だし」

「直ったら呼ぶから、話はまたその時に」

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

話を切り上げた女妖怪が、入ってきた時と同じ様にあの不気味な穴を開ける。

そこに足を踏み入れる直前に、ふと振り返った。

 

「そういえば、名前はなんていうのかしら、唯の人間さん?」

「穂鷹、灼馳穂鷹。そういう君は?胡散臭い妖怪さん?」

「紫よ、八雲紫」

「そう、それじゃ紫…」

「ええ、それじゃ…」

 

「「さようなら」」

 

そして、不気味な穴は閉じられた───。

 

 

あの後、道具と材料を取って戻ってきた藍と橙と一緒に1時間掛けて部屋を修理した後、見計らったように帰ってきた紫と共に客間へと移動した。藍がお茶の用意をしてくれていた。

 

「さて、まずは自己紹介かしらね」

 

先ほどとは打って変わり、紫の方から話を切り出す。

 

「私の名前は八雲 紫。ここ幻想郷の創設者であり、境界を操るスキマ妖怪」

「幻想郷?」

「ええ。貴方の世界の常識がここの非常識であり、非常識こそがここの常識」

「幻想郷、ね……そんな地名は初めて聞いた」

「地図には載っていないから当然よ。そして、こっちの二人が───」

「八雲藍。見ての通り九尾の狐であり紫さまの式だ」

「橙です。藍さまの式です!」

 

紫は悠々と、藍は堂々と、橙は元気良く。

三者三様の自己紹介であった。

まあ、既に知ってたりするんだけどね、そこは伏せておいた。

 

「さて、次は貴方よ」

「ああ。俺は灼馳穂鷹。人間です……って言った方がいいか?」

「ふふ、お好きな様に。さて、貴方にはまずお礼を言わないといけないわね」

「お礼?」

 

お礼を言われるようなことをした覚えはないのだが、はて……?

何方かというと謝罪されるようなことはされた気はするんだがな。

そういう気を込めて紫を見るが、またあの胡散臭い笑みを浮かべただけで意に介した様子はなかった。

 

「ミャ〜オ…」

 

事の真意を理解しかねていると、一匹の黒猫が擦り寄ってきた。

よく見ると、黒猫の後ろに付き添うように、一回り大きな猫が座っている。

 

「ああ、あの時の子猫か。親猫に会えたんだ、よかったな。でも、ここにいるってことは…」

 

子猫を撫でながら尋ねる。

 

「はい…その子は私の配下の猫なんです……」

 

橙が申し訳なさそうに告げる。

 

「その子はまだ産まれたばかりで、森を散歩してる時に逸れてしまって…」

「で、行方不明だったこの子を俺が助けたと」

 

橙は無言で頷く。

 

「ごめんなさい。私がちゃんと見てなかったから……」

 

今にも泣き出しそうな表情で謝っている。

 

「気にしなくていいよ。この子も無事だったんだし、ね」

 

猫の頭を撫でた後、同じ様に橙の頭を撫でながら笑顔で応える。

 

「穂鷹……さん、ありがとうございます……」

「ほら、だから泣かない泣かない。せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」

 

ハンカチを取り出し橙の涙を拭いてやる。

 

「ウオッホン!」

「わおっ!?」

「ニャッ!?」

 

すると、いつの間に回り込んだのか、背後から藍の咳払いが聞こえた。二人して慌てて離れる。

危うく先ほどの二の舞になるところであった。

 

「ふふ…。仲が良いのね」

 

間接的にピンチを招いてた奴が呑気に笑うな。

 

 

さて。藍が淹れてくれたお茶も一通り味わえたし、そろそろ聞くか。

 

「それで?なんで俺はこっちに呼ばれたんだ?」

 

目の前の女妖怪に、頃合いを見計らって一番聞きたかった質問を投げかける。

 

「率直に言うと単なる暇潰し。この頃はやることが少なくて済んでるから暇なのよ」

「………」

 

聞いた俺が馬鹿に思えてくるほど、理由がしょぼかった。

とりあえず思ったことが一つ。

こいつムカつく!!

 

「そのやることが何かは聞かないでおいてやるから一発殴らせろ」

「いやよ」

「大丈夫だ。死にはしない」

「人間如きに殴られた程度で死にはしないわよ?」

 

ホントこいつムカつく!!

 

「なら殴らせろ、全力で」

「いやよ。痛いもの」

 

拗ねたように口を尖らせる姿は可愛いもんだが、これぐらいは甘んじて受けてほしいぐらいだ。昨日の俺の仕打ちに比べれば、パンチ一発ぐらい安いものだろう。ついでに、殴れない黒猫の分も上乗せしておこう。

 

「えっと…二人とも何やってるんですか?」

「あ、おかえり橙ちゃん」

「は、はい。ただいまです」

 

片付けを手伝っていた橙が戻ってきて、それに完全に毒気を抜かれてしまった。

 

「はぁ…もういい……」

「あら、根性のないこと」

 

やっぱこいつムカつく!

 

「ところで、紫は何の妖怪なんだ?」

「私?一応、周りからはスキマ妖怪と呼ばれているわね」

「スキマって………あれか?」

「ええ、これよ」

 

そう言って、またあの不気味な空間を開ける。あの目玉がギョロギョロした空間はスキマというのか。ついでに言うと俺が落とされた穴もそうか。あ、思い出したらまた怒り込み上げてきた。やっぱり後で殴ろう、うん。

 

「どうやって出してんだ?それ…」

「私の能力を使って、よ。境界を操る程度の能力。それが私の能力よ」

 

境界を操る程度の能力、ね…。なんで程度が付いているのかはわからないが、使い方次第では恐ろしい能力だということは容易に想像できる。

 

「にしてもスキマ妖怪なんて聞いたことないけど…」

「私も聞いたことがないわね」

 

際ですか。

まあ、こんな気持ち悪い空間を生み出す奴がうじゃうじゃいたら世界存続の危機です。いろんな意味で。

 

「そうそう。とりあえず聞いておくけれど、貴方、元居た世界には戻りたい?」

「そういう重要な話をさらっと言うのやめてくれ。反応に困る」

「あら、ごめんなさい」

 

しかもとりあえずかい。謝ってないことは分かり切ってるから、その胡散臭い笑みを隠す気もない扇子で隠そうとするのもやめてほしかった。正直胡散臭さがウザさに変わるレベルです。

 

「うーん…いや、特に帰りたいとは思わないけど」

 

戻ったところで、あのトンデモ部長に振り回されるだけだ。遠江先輩には悪いが、これはいい機会である。

 

「そう。ならしばらくはここに住みなさい。この幻想郷での生き方に慣れるまで面倒は見てあげるわ」

「結構です」

 

速攻で拒否した。

いや、だってねぇ?どっちかというと面倒そのものが目の前にいる訳ですし?面倒を避けるどころか自ら飛び込んでいく形になるし?正直言うと、早くここからオサラバしたいです。持病の胡散臭さアレルギーが疼き始めましたよ。

 

「あら、つれないわね♪」

 

ワザとだ!この女、絶対ワザとだ!!

 

「まあいいわ。明日にでも神社に連れていくから、そこに泊めてもらいなさい」

「そっちの方がよっぽどマシだな」

 

精神面的な意味で。

 

「ていうか神社って?」

「博霊神社。様相は想像にお任せするわ」

「神社の様相って、そんなほいほい思い浮ぶほど選択肢ないよな…」

 

別に仏教に帰依してないし。

鳥居と石灯籠と本殿ぐらいしか思いつかないし。あと御神籤引くところ。

 

「詳しい話は明日にしましょ。まだ傷も治っていないのだし」

「まあ確かに、誰かさんの戯れのついでに負った傷はまだ完治してませんね」

「まあ、大変」

 

こいつホント素でムカつく……

 

もう何度目かもしれない愚痴を溢しながら、穂鷹は用意された客間へと戻った。

 

正直、寝付ける気がしなかった。

 




我が家には二匹の飼い猫がいますが(ロシアンブルーと三毛)、まあ何とも可愛いことこの上ない。
この季節には炬燵を引っ張り出してきて、飼い猫と取り合いながら温まるという日常風景が繰り広げられております。
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