今回は霊夢さん登場回です。
ではどうぞ!!
◇
翌朝、窓を開けると、今年初めての雪が降っていた。一面厚い雲でぴっちりと蓋をされた灰白色の空から、途切れなく羽根のような白い雪が落ちてくる。天の白を少しずつ削り取って剥落させたかのような眺めであった。
…こんなことを思考しておいてなんだが、昨日まで夏だったのだ。いきなり季節逆転しちゃってるし。色々あって忘れてはいたが、誘拐事件が落ち着いた今、最もツッコむべきところはそこだったりする。
(まあ大方の理由は分かってるんだけど、正直こればかりはどうしようもないしなぁ…)
本人しか分からない理由で、穂鷹は本日一度目のため息をついた。
◆
「おはようございます!穂鷹さん」
穂鷹が洗面所で顔を洗っていると、後ろから聴き覚えのある声を掛けられた。顔を拭いた後そちらに振り向くと、予想通り橙が立っていた。
「ああ、おはよう。橙ちゃん」
にこやかに挨拶返し。誰かと朝起きて挨拶を交わすのは何年ぶりだろうか。俺の両親は共働きで年に数えるほどしか顔を合わさないし、何より一人暮らしを始めてからは会ってすらいない。なので、朝の挨拶は何気に新鮮だったりするのだ。
ちなみに昨夜泊まったのは紫の家ではなく、『マヨヒガ』と呼ばれる山奥の家屋だ。如何にも日本家屋風情のその家は、橙ちゃんが一人で住んでるらしい。この年で一人暮らしとは末恐ろしいよ、この猫耳幼女…。
(まあ、この子も妖怪な訳だし、見た目通りの歳じゃないんだろうけど…)
他の二人とは一緒には住まないのか?とは聞いてみたかったが、お世話になる身で人様の事情に首を突っ込むのは失礼だと感じたのでやめておいた。
「朝早いんですね。起こしに行こうと思ったら、布団畳んであって驚いちゃいました」
「はは、早起きは得意なんでね」
苦笑い気味に返す。
なんせ、うちの部長にお前それ朝じゃねえだろってぐらいの時間に叩き起こされたことが多々、多々、もう一つ加えて多々あったので慣れてしまった。(大事な事なんで三回言った)
「お〜い橙、穂鷹。起きたなら朝食の用意を手伝ってくれ!」
「了解!」
「はい、すぐ行きます!」
どうやら藍も来ていたらしい。台所の方からお呼びがかかる。急ぎ足で橙と共に台所へと向かった。
◇
トントントン♪
食材を切り分けるリズミカルな音が台所に響く。穂鷹と藍は台所にて朝食の準備、橙は配膳の準備をしている。
「ほう…手際がいいな」
汁物を作りながら藍が訪ねてきた。
「まあね。普段から自炊してるから慣れだよ、こういうのは。そういう藍も結構な手際の良さじゃん」
「ふふん、そうだろう。私も長い間やっているからな。慣れている」
「へえ…ちなみに好物って何?」
「私か?私は油揚げだな。あのジューシーな食感は何度食べても飽きない!」
「なら、きつねうどんも好きなのか?」
「ああ!」
目を爛々と輝かせて力説された。
狐の妖怪なのに好物がきつねうどんとはこれ如何に。
実際に小さな子供たちは、きつねうどんやたぬきそばを狐や狸が入った食べ物だという認識が少なくないらしい。まあ、三歳児辺りの認識結果だが。
「───今日は焼鮭なのね」
神出鬼没が今日も絶好調な女性───幻想郷の賢者『八雲紫』が、料理中の二人の背後に開いたスキマから笑いかけてきた。危ないですよ、スキマのお姉様。
「紫さま、包丁を使っている時は危ないので普通に声を掛けてください」
「うふふ…それじゃあ面白くないじゃない?」
「はぁ…まったく。もう少しで出来上がりますので居間でお待ちください、紫さま」
「もう。つれないわね…」
ちょっとわざとらしく拗ねる仕草が思ったより可愛いかった。
(そろそろ味噌汁はいいかな?…魚もそろそろか)
だが、この場にいるはずのもう一人は、そんなことなど一切無視して黙々と朝食を作っていた。
胡散臭い奴の対処法その1を絶賛発動中である。黙って受け流す、つまり放置だ。
(漬物無いかな・・・)
傍目で主とその式との戯れ合いを流し見ながら、堂々と他人の冷蔵庫を漁る穂鷹であった。
◆
そして朝食の準備が整った。配膳の時に、両手と尻尾に皿を乗せて運ぶというとんでもない器用さを発揮した藍の凄技に驚かせられながら、全員食卓についた。
「「いただきます」」
食卓に並んでいたのは、ご飯に味噌汁、焼き鮭と純和風のメニューだった。
「久しぶりだな、こんな純和風の朝食を食べるのは……」
穂鷹が食卓を眺めしみじみ言う。
「あら…向こうではどうだったのかしら?」
「ん?俺は洋食派だったから朝食は大体パンだったよ。最悪、朝食抜きって事もあったけど」
トンデモ部長の所為で、と心の中で付け加えておく。決して、自分自身の所為じゃない。だって俺、結構料理好きだし。毎日三食キッチリ作ってるし。
「いかんなぁ、朝はちゃんと食べないと1日もたないぞ」
藍が苦言を呈する。だから俺の所為じゃないんです!と声高に叫びたかったが、藍たちは俺の日常なんて知らないだろうし、何より善意で言ってくれてるのにそれを無下にするのは失礼だ。
「すいません。朝は何かと忙しくて……って何故に向こうでの生活リズムを今怒られてるんだろう……」
「言われてみればそうだな…」
「可笑しいですね。ふふふ……」
こうして和やかな朝食は過ぎていった。
◇
朝食が終わり、橙は藍の手伝いの食器洗い、穂鷹は廊下の拭き掃除をする事になった。といっても、これは穂鷹の方から願い出たことだ。いくら誘拐犯の持家とはいえ、一宿一飯の恩がある。その恩返しというわけだ。
「……ふぅ、見た目以上に広いなこの家。さすがに拭き掃除もやり甲斐がある……」
一通り終えた穂鷹は柱にもたれて一休みしていた。その見た目以上に広い家を全て掃除し終わっても息切れ一つ起こさないのは、トンデモ部長のお陰といえる。大変不本意ではあるが。
(そういやあの二人、どうしてっかな…)
先日、富士の青木ヶ原に置いてけぼりした二人の部員のことを考えてみる。そして、すぐに無駄だと結論づけた。遠江先輩はあれでしっかりするところはしっかりしているし、部長に至っては心配するだけ無駄である。普段の姿からは想像出来ないが、いざという時は頼りになる先輩たちなのだ。
「ハックシュンッ!」
厚い雲に覆われた灰白色の空を見上げそんな事を考えているうちに体が冷えてきたらしい。休憩もそこそこに、穂鷹は炬燵で温る為に客間へと向かった。
◆
空には灰の雲がゆったりと流れ、何処までも鈍色の空が続いている。周りを見回しても、白に覆われた山々が見えるだけだ。今は純白の山々に囲まれた形で人里があり、人々はそこで静かに日々を送っていた。
人里から少し離れた山裾に、山の頂上まで続いていると思われる階段がひっそりと木々の間から顔を出していた。その階段を登ってやっと頂上に辿り着くと、目の前にはズッシリとした大きな鳥居が待ち構えている。その鳥居には『博麗神社』と書かれており、その柱に付いた傷跡の数々から長い年月ここに立っていたと思われる。
その鳥居を抜けて参道を辿ると、奥に古ぼけた神社が姿を現した。鳥居もそうであったが、この神社も相当長い年月ここに建っていたことを感じさせる。あちこちの柱は陽の光で色あせ、屋根の瓦は何枚か見当たらなかった。一瞬ただの廃神社なのかと思わせる風貌だが、神社に続く参道は綺麗に掃除された跡があり、神社自体もよく見れば蜘蛛の巣や埃はほとんど見当たらなかった。
里に住む人々は、その神社を『妖怪の住む神社』と呼ぶ───
◇
頬に数滴、冷たいものが当たるのを感じた。思わず重く湿気った溜め息を吐き出す。真冬に加え、空の空気は冷たい。薄い冷気が頬を切り裂いていく。
「───ここが博麗神社」
目の前に続く石段の先に、今は雪を纏っている神社の鳥居らしきものが見えた。雪が落ちた部分から『博麗』という文字も垣間見える。どうやらここが紫の言っていた神社らしい。
「なあ紫。これからどうしたら───」
そして自分をここまで連れて来たスキマ妖怪に聞き返し、振り返ったところで当の本人がいないことに気づいた。背後には今通ってきたスキマが相変わらず気持ち悪い目を浮かばせながら開いているだけであった。その代わりに、今まさに通ってきたスキマから一枚の紙が落ちてくる。
『やる事が出来たから、適当に過ごしていなさい』
……………。
「あんにゃろう……」
いまちょっと本気で殺意が芽生えた。
適当かよ、あのスキマ妖怪…。拉致の次は放置ですか。そうですか。
だが、その殺意を向けるべき本人はおろか、神社の周囲にも人気は全く無かった。
「適当って言ってもなぁ…俺、ここのこと何も知らないんですけど」
なんせ誘拐されてきたからね。未だ根に持っている灼馳穂鷹十八歳。自らに害を及ぼす輩にはとことん器が小さい大学生である。
(……とりあえず参拝でもするか)
そう思い立ち、穂鷹は雪に覆われた鳥居をくぐって神社の境内に足を踏み入れた。いつかこの手のことに詳しい友人が言っていたことを思い出し、真ん中は歩かないように境内を歩く。御手洗は冬のため御遠慮願った。だって寒いし。
(そういや巫女がどうとか言ってたけど…その巫女とやらに会えばいいのかねぇ?)
やがて賽銭箱の前に到達する。興味が湧いたので、中を覗いてみた──。
「葉っぱ3枚……」
無性に居たたまれなくなった。
賽銭を入れようと黙ってポケットから財布を取り出す。そういえば賽銭って普通はどれだけ入れるのだろうか?今まで入れた事が無かったので感覚が分からない。ひとまず、小銭を取り出そうとするが、そこであることに気づいた。
(……1円玉しかないな)
小銭入れの中には1円玉が4枚しかった。いくらなんでも、賽銭に1円玉を使うことが失礼なことぐらい俺にだってわかる。五円玉ならまだよかったのだが。仕方なく札いれを開けてみる。そこにあった3枚の諭吉のうち1枚を賽銭箱に入れておく。さすがに多い気がしたが、今まで入れた事が無いのでその分も含めるとしよう。と言っても、願い事などありはしないのだが。
(無難に、健康安全ってことで───)
ぱん、ぱん───。
しばらく念じて手を離し、一礼。教わった通りの二礼二拍一礼。友人(外国人)が熱心に力説していた作法通りに参拝を終え、賽銭箱の前から離れようと体を回した瞬間──。
(誰か来たな……)
神社の石段を上がってくる気配を感じた。数は一つ。気配の質を探る辺り、どうやらこの神社に住んでいるかそれに従事している人間らしい。
(ま、従事している人間なんているようには見えないし、どうやらお待ちかねの巫女さまのご登場みたいだ)
そして、石段を登りきった気配の主が、穂鷹の前に姿を現した。
(巫女……でいいんだよな?)
歳は穂鷹よりもいくつか年下であろう。顔はそれなりに可愛いものだと思う。しかし、一番気になったのはその服装だ。
紅と白という一般的な巫女さん配色の装束を着てはいるが、なぜか腋の布がない。袖はベルトのようなもので固定されており、胸元には黄色いスカーフ、髪には大きめの赤いリボンをつけている。少なくても、穂鷹の知っている(大して詳しくはないのだが)巫女装束とは明らかに違っていた。
「あら、参拝客なんて珍しいわね」
そう言うと、少女は穂鷹を無視して賽銭箱の中を確認していた。やがて少女は振り返り、穂鷹の肩を掴んで満面の笑みを浮かべた。
「ゆっくりしていってね♪」
「あ、ああ…」
どうやら歓迎はされているようだが、巫女ってこんなに物欲に溢れたような存在だっただろうか?
◆
〜少年説明中♪〜
「ふ〜ん、そんじゃあんたが紫が言ってた外来人?」
「で、合ってると思うよ?外来人てのが何なのかは知らないけど」
神社の境内の裏はどうやら居住地になっているらしかった。家(?)に招かれた穂鷹は、この神社の巫女である
聞いたところによると、霊夢は『博麗大結界』というこの幻想郷を保っている大切な結界を管理する巫女で、この幻想郷で起こる様々な異変の解決などもしているらしい。云うなれば彼女は幻想郷の主要人物なのだろう。
(その割にはかなり切迫した生活をしている気がするんだけど…)
「それで?貴方をここに寄越した当の本人はどこ?」
「さあ?用事が出来たから自由にしてろとしか言われてないし」
「あっそ。相変わらず何を考えてるんだか…。そもそもあいつの頭の中はどういう作りをしてるのかしら」
スキマ妖怪八雲紫。大妖怪な割りに酷い言い草である。
「あいつの頭の中なんか知らないし、知りたくもない」
「ま、それはそうよね」
覗いたらこっちが危なそうである。
「それはそれとして。貴方をここに住まわせるのは構わないんだけど(御賽銭もくれたし)、一応確認しておくわ。貴方、ほんとに帰らなくていいのね?」
霊夢が先程とは違って、真剣な眼差しで聞いてきた。
「ああ。俺があっちに帰る理由も思いつかないし、何よりこっちの方が面白そうなんでな」
「そう…。ならいいわ、別に何も言う気はないし」
どうやら彼女はかなりさばさばした性格の持ち主らしい。自分から言い出したんだから最後まで責任持って完結させてほしかった。歯切れがいいのか悪いのかよく分からない反応で会話が締めくくられた為に、穂鷹は何処か腑に落ちないグズグズとした感情を内に残すことになった。
「さてと、それじゃ幻想郷での生活が決まったことだし、まずは弾幕とスペルカードの説明でもしときましょうか」
「弾幕?スペルカード?」
さっきの様子は何処へやら。聞き慣れない単語に穂鷹は興味を示した。割と根は子供だったりする大学一年生である。
「まぁ、実際に見たほうが早いわね」
そう言って霊夢は自分の周囲に光の玉を数個出現させた。
「これが弾幕に使う弾。これを大量に、かつ精巧に組み合わせたものが弾幕というの」
「弾幕か…それって出せたほうがいいのか?」
「そうね、弾幕を出せないと弾幕ごっこができないし。もしも本当に幻想郷で生活していくなら必要かしらね」
「弾幕ごっこってのは?」
「妖怪の争いが幻想郷の平和を壊さないよう作られた、幻想郷で一番分かりやすい問題解決の方法よ。この弾幕ごっこによって問題を解決したり争いを収めたりしてるの」
「ふ〜ん…」
「で、スペルカードというのは所謂得意技を出すときに使用するカードのことよ。弾幕ごっこはこのスペルカードを使うことを前提としてるわ」
「そうなのか」
「といっても、どちらとも私が発案してまだ日が浅くて、あやふやな形しか取らない薄いルールだけど。まあそれは詳しく話すと少し長くなるから、後でゆっくりと。とにかく今は弾幕を出すことから始めましょうか」
「と、いきなり言われても。どうやって出すんだ?」
「とにかく、初めは弾を出すイメージを作りなさい。そうすれば多分出るから」
(イメージか…。)
自分の周囲に弾を出すイメージで集中する。
「……これでいいのか?」
「………」
「霊夢?」
「え?あ…え、ええ、それでいいわよ」
穂鷹の左右に3つずつ、小振りの光弾が出現していた。一応、第一段階はクリアらしい。
「あなた、魔法使いなのね」
「ん?ああ、よく分かったな」
「当たり前よ。何年ここに住んでると思ってるのよ」
「さあ?なんせ昨日無理やり拉致されてきたばかりだし」
「あら、それは御愁傷様」
「まるで他人事だな…」
「他人事だしね」
ご尤もである。
「弾幕は作れたし、もしかして空も飛べるの?」
「一応は、だけど。元の世界じゃ、そんなにばんばん飛べたわけじゃないし」
下手したら未確認飛行物体扱いの特大スクープものだ。『怪奇!!空を飛び回る黒き影!?』とか正直笑えない。
「試しに飛んでみてくれる?」
「分かった」
いつもやっている通り、全身を薄い膜で覆う感覚で魔力を練り上げる。そして地面から軽く浮いた状態で停止する。
「どうだ?」
「上出来ね」
魔力を抑えて、地面に着地する。
「……」
「どうした霊夢?」
「え?あ、何?」
「いや、別に……」
どうしたのだろうか、霊夢の様子がおかしい。
(なんか嫌な予感するけど…)
ひとまずは考えないでおいた。それよりも初めて体験した「弾幕」を体に馴染ませなければならない。穂鷹は再び意識を集中し、弾幕を作り始めた。
◇
私は今驚いている。驚くというより困惑しているという方があっているかもしれない。それは穂鷹が一発で弾幕を作り出したことにでも、飛んでだことにでもない。その時に穂鷹から感じた力にだ。
(魔力に霊力、妖力、気力……法力まで…。一体何者なのよ、こいつ…)
魔法使いや妖怪、幽霊などはこの幻想郷では珍しくない。それどころかそちらの方が日常なくらいだ。だが、一度にこれ程の力を持った奴は出会ったことがなかった。いや、もしかすれば誰一人として会ったものはいないかもしれない。
加えてこの妖力だ。魔力、霊力などはまだ分かる。人間にも持てる力だし、実際に私の様に神に関わる者は少なからずそれに準ずる力を持つ。だが、妖力だけは別だ。あれは妖怪にしか持ち得ない。穂鷹は生粋の人間だ。人の形をした
(いえ、そんなことより最大の疑念はあれよ!)
思考を続ける自分の横で、黙々と弾幕の練習を続ける外来人を見る。既に出し方のコツは覚えたらしい。彼の周りは優に百を超える弾幕が飛び交っていた。その弾幕が混ざりものだということを、私はすぐに見抜いていた。
(あれだけの種類の力を、反発もさせず相殺もさせずに纏め上げるなんてどんな芸当よ…)
力には言わずもがな性質というものが存在する。一番分かり易いのは光と影、俗にいう『陰陽』だ。陰の妖力・魔力と陽の霊力・法力。そもそも、その一つ一つが扱いが難しい力を、同時に扱えるだけでも異常なのだ。さらにはそれを自然と使いこなすなど正気の沙汰とは思えなかった。目の前にいるこの男が、歪んで見える程に───。
(それに───)
それに、私が幻想郷に残るか聞いた時のあの表情。あの時は流したが、今でも思い返してみると疑問が湧いてくる。
博麗の巫女は幻想郷に迷い込んだ存在を外へと帰す役割も担っている。
だからこそ、外から来た存在───況してやただの人間───が、この幻想の郷で生きることの危険性を私は充分理解しているつもりだ。外から自然と必然を以ってやって来る
ゆくりなく幻想側に入り込んだ存在は、幻想郷から見て謂わば異物だ。現実に慣れすぎた存在が、幻想で満たされたこの地に安易に適合出来ることなどあり得ない。必ず何処かで己が存在に綻びが起きる。さらに外から迷い込んだ存在が幻想郷に適合し、尚且つ生存していくことが可能な割合ともなれば限りなくゼロに近い。
故に博麗の巫女は見極める為にこの問いをする。答えなど始めからどうでもいい。私が見るのはその奥にあるもの。その存在の奥底に秘められた本質を見定める。この幻想郷を護る者として、そしてこの地で生きる者として、これは最優先事項であり最重要事項であった。
だが、その
(ホンット!!なんなのよこいつは───)
そんな表情に私が動揺したことに、きっと私自身はもっと動揺していたのだ。動揺したということは、思考を取られたということ。つまり自分は穂鷹に興味を持ってしまった。自分自身が淡白なのは理解している。その、周りのことにそれ程興味を持たない自分が。自身すらも客観的に見る自分が。特別な感情を持ち合わせるわけでもないこの男に興味を惹かれてしまった。
そう。特別でもなんでもない───。
ただ、何の変哲のないその
呆れるくらい、純粋で───。
呆れるくらい、暖かかったから───。
だから私は───。
この男に───。
灼馳穂鷹の
惹かれてしまったのだ。
(貴方の内に何があるかは知らないけれど───)
私は貴方をもっと知りたい───。
私の思考は先程とは比べものにならない速さで一つの部分に収束した。
◆
以前の自分が書いた文章見てたら、ホントに恥ずかしくなってきた。
毎度毎度駄文ですんません。