東方偽人録   作:ミツバチ

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はいどうも。

今回も遅くなってすみません。
しかも短いです。

今回は穂鷹が初めての弾幕ごっこに挑む!!

それでは始まり始まり───


初めての悪戯

 

「っと。こんな感じでどうだ霊夢?」

「ええ、初めてにしては良かったわよ」

 

どうやらさっきのは杞憂だったらしい。霊夢はいつもの調子に戻ったようだ。よかったよかった。

 

「んぅんん…」

 

そして穂鷹が背伸びをしようと視線と共に肩を上に上げる。と、その時遠くの空から近づいてくる気配に気づいた。

それと同時に猛スピードでこちらへ突き進んでくる黒い点が目に入った。何事かと目を細めてその黒い点の正体を見極めようとした次の瞬間、その黒い点は穂鷹と霊夢のとなりを通り過ぎ、境内に激突する寸前でフワリと宙に浮き上がった。

ゆっくりと目の前に降りてきた人物を見て、霊夢は微笑んだ。

 

「あら、魔理沙。今日は何の用かしら?」

 

魔理沙と呼ばれた人物は、服に付いていた雪を大袈裟に払って、霊夢に向けてニヤリと笑った。

 

「おいおい、私がここに来る理由なんてないぜ。ま、強いて言うなら昼飯を集りにきた」

「言い方が露骨なのよあんたは。ま、残念だけど昼食の時間は終わったわよ?」

「ちっ!今日は豪華な食事にありつけると思ってたのによ」

「本当に露骨すぎるわね…」

 

下心を隠す気すらなかった。それどころか溢れ出ていた。この露骨さは何処かあの部長を思い出させ、霊夢とは違う理由で溜め息をついた。だが、そこでふと思い付いたかの様に霊夢が俺を見て、その顔に黒い笑みを浮かべた。

あ、なんかヤバそう……。

 

「ねえ、魔理沙?」

「ん?なんだよ?」

「あんた、こいつと弾幕ごっこやって」

「「は?」」

 

まさかの発言に二人揃ってハモってしまった。まだ一言すら話してないにも関わらず。そのあまりにも無駄な幸運に心底呆れてしまった。何かの幸運はそれと同等の不幸で精算されると言われてるのに、神様とやらは随分と適当なんだな…。出来るならもっと他のことに幸運とやらを使って欲しかった。これで受ける不幸など高が知れているが、それでも良い気はしないものである。この手の幸運は女子高生にでもくれてやればいい。二秒で話題にするから。

 

「いきなり何言ってんだよ霊夢…」

 

そして、もう一人の当事者は、さすがに霊夢との付き合いが長いのかそれほど驚くことなく話を続ける。

 

「こいつとやって勝てたら昼食奢ってあげる」

「よし!私がそいつと弾幕ごっこをやればいいんだな?」

「いや、おい」

 

びっくりするぐらいあっさりと手の平を返した。何?昼飯がそんなに大事か?さっきまでの多少の驚きはどこいった?

 

「…ていうか、こいつ誰だ?」

 

うん、順番がおかしい。そして気付くの遅い。普通、自己紹介とかの方が先だよね?それが名前も知らないような奴と決闘の予定が先に出来上がってしまっていた。だがこれは霊夢の思惑もあってのことなので、一概に魔理沙が悪いとは言えない。しかし、それを抜きにしても姿ぐらい見たら気に掛けて欲しかった。無視されたと思って若干落ち込んじまったじゃねえか。

 

「俺の名前は灼馳穂鷹だ。好きに呼んでくれ」

「そうか。なら穂鷹、早速だが弾幕ごっこだ!」

「いや、俺やるなんて言ってないし」

「問答無用だぜ☆」

 

そう言って魔理沙が弾幕を出した。数え切れない数の───まさに弾幕といった感じだ。

だが───。

 

「だから俺はやるなんて言ってないんだけどっ!?」

「知らないね、そんなこと!私の豪華な昼飯が賭かってるんだ!嫌でもやってもらうぜ!!」

「自由人!!」

 

弾幕を辛うじて避わしながら、魔理沙に向かって叫ぶが暖簾に腕押し、柳に風だった。

 

「よく避けたな。だが甘いぜ!!」

 

俺の言い分など完全に無視して、さらに弾幕を撃ち出してくる。しかも今度は弾幕の隙間を縫うように弾幕を重ねてくる。

 

「ったく……!」

 

放たれた弾幕をステップで避けながら気持ちを切り替える。魔理沙の考えを返させるのは難しいと諦め、弾幕ごっこへと思考集中させる。さすがに弾幕に慣れていない俺が、ここの住人である魔理沙の放つ弾幕を余所見をしながら避けることなど無理に等しい。かと言って、集中しただけで勝てるとも思っていない。だから、まずは相手と弾幕の動きを観察した。

 

(弾幕は魔力弾──火と光か?それと、あの箒での移動速度は以外に早いな…。俺が普通に撃っても当たりそうにない、か……)

 

そして、その上で作戦を立てていく。弾幕ごっこで圧倒的不利なこの状況を打開する策を練っていく。

 

「どうしたどうした!避けてばかりじゃ追い詰められるだけだぜ?」

 

確かに、先に被弾した方が負け、それがルールなので攻撃するに越した事は無い。だが、まだまだ感覚は掴めきれていない。だがらまだ避けつづけることに専念する。

 

「……出来るもんならどうぞ!」

「言ってろ!!」

 

その瞬間、ただでさえ大量の弾幕がさらに激しさを増す。それに吊られて逃げ場は次第に無くなってきたが、何も考えていない訳ではない。

弾幕に隙間が生まれるタイミングを狙って予め用意しておいた術式を発動する。飛行ではなく飛翔、ただ飛び上がるだけの簡単な術式である。それを使って真上に飛び上がり、一気に弾幕の範囲から逃れる。

 

「へぇ…。穂鷹、お前も魔法使いって訳か?」

「まあ、ね!」

 

続けて放たれた弾幕を飛んで避わすが、今のはタイミングがギリギリだった。

 

(やっぱり問題は早さか……)

 

箒で飛んでいる魔理沙のスピードはかなり早い。そこから放たれる弾幕もそこそこのスピードがあり、気を抜くとすぐに追い詰められてしまいそうだ。それに普通に弾幕を放っても回避されて終わりだろう。目では追えているが、出来れば隙が欲しいところだ。

 

「なあ……」

 

何の攻撃もしてこない事に疑問を感じたのか、魔理沙の目には警戒心があった。

 

「無抵抗もここまで来ると不気味だぜ?」

「ただの考え事だ。君の弾幕は参考になる。とりあえずまだ回避だけしておくさ」

「へっ!……だったら、これを避わしてみやがれぇぇっ!!!!」

 

攻撃しない事を手を抜いていると解釈したのだろう。隠す気のない怒気をその声に含ませながら、魔理沙は懐から小さな八角形の火炉?を取り出して此方に突き出した。その火炉を中心にしてさっき迄の弾幕とは比べものにならない量の魔力が急速に収縮していく───凝縮していく。俺の本能的な部分が───未だ完全に掴めきれてない「弾幕」に対して───ヤバイと告げていた。

 

「ちょ、ちょっと魔理沙!?それは…!」

「恋符『マスタースパーク』っ!!」

 

刹那、その声に合わせて極限まで凝縮した魔力が解き放たれた。それは視界を覆い尽くすほどの極太のレーザーとなり襲い来る。

 

「穂鷹!避けて!!」

 

霊夢の叫ぶ声が聞こえるが、それが耳に届く前に俺は動いていた。だがそれは意識して動いたのではなく、身体が咄嗟に動いたと言った方が等しい。

だがそれでも避けるのは不可能だと分かった。あまりにレーザーの幅が広い。その太さは近づくにつれて更に増していく感覚さえ生み出す。咄嗟に動かいただけでは完全には避けきれないことを思い知らされた。

だから、咄嗟に───今度こそ自分自身の意思で───身体を動かした。

霊夢たちに見えないように空間を開き、刀を掴み取る。そしてその刀に素早く魔力を籠め、抜刀術の形式で振り抜く───魔理沙のレーザーをぶった斬った。

 

「なっ!!?」

「……ぅあっ!!」

 

霊夢も魔理沙も目の前の光景に驚きを隠せないでいた。

二人には恐らく、俺が何処から出したか分からない刀でレーザーを真一文字に斬った様に見えていただろう。

 

斬った後に分かったことだが、レーザーに沿って逃げ道を塞ぐように星形の弾幕も同時に放たれていたようだ。

 

(なるほど、迂濶な回避は被弾に繋がる、か……)

 

そんなことを頭の片隅で考えながら、次の行動を起こす。いくらレーザーを斬ったところで勝ちにはならない。弾幕を相手に当てて始めて勝利と言えるのだ。

だから、ここで終わらない。本来の目的ら忘れていない。

 

(見切った。いや……)

 

レーザーの性質まで理解出来たのなら、多分言い方が適切では無いだろう。

だから、訂正しよう───

 

「………『把握』した」

 

鋒を相手にむけ、刀を身体の中心に構える。その刀に改めて魔力を籠める。

 

(魔法式───火、光。構築式───形成・展開)

 

その魔力を魔法式へと変換し構築していく。さっき自分が見た光景を鮮明に、忠実に再現する為に───。

 

(──────完了(complete)

 

それに呼応するように、刀を中心に一つの大きな魔法陣が出現する。そこでようやく、驚きに呑まれていた魔理沙が攻撃の気配を察して態勢を整える。

だがそんなことは関係ない。既に反撃の過程(プロセス)は完了した。

 

「なっ!?それは……まさかっ!?」

 

さすがに気付いたようだ。だが、それも関係ない。気付いて当たり前なのだから。何せこれは───この魔法は───魔理沙、お前のものなのだから───。

 

「…………ぅっ!?」

 

慌てて回避行動を取るが、遅過ぎた。

 

「恋符『マスタースパーク』」

 

刀の魔法陣から放たれた極太レーザーが、魔理沙を呑み込むべく突き進んだ。

 

だから言っただろう?

参考になる、と。

 

先程見た「マスタースパーク」を、その性質や撃ち方、全てを『把握』した。正直今の俺が勝てる要素は、剣術とこの眼力しかない。全てを見切り、見透かし、見通すこの眼力は、俺の生まれ持っての唯一の才能と言えた。その眼を使って分析し、相手の動きや技をコピーすることは出来る。それを弾幕で出来るかは半信半疑だったが、案外やれば出来るものである。

正直、俺自身も驚いていた。もっとも、魔理沙のように星形の弾幕までは撃てなかったが。あれを再現する為には、経験と技術が少な過ぎた。

俺が放ったマスタースパークを、魔理沙はギリギリで回避した。驚いても反応出来るとこらはやはり経験者だろう。

だがこれも、この展開も『把握』している。

 

「一応ルールを確認するが───」

 

俺の声に、魔理沙の肩が跳ね上がった。その声は前からではなく後ろから、つまり魔理沙の背後から聞こえていた。

 

「降参は有りか?」

「…………っ」

 

その声に魔理沙は歯を噛み締めることしか出来なかった。魔理沙の首には刀の刃がピタリと添えられていた。

 

「……ええ、有りよ」

 

黙り込む魔理沙の代わりに霊夢が穂鷹の質問に答える。

弾幕以外での勝敗は無効となる。

だが、もしこれが弾幕だったなら───

 

「─────ぅ」

 

魔理沙の敗北は火を見るよりも明らかであった。

 

(さて、そろそろ……)

 

「……あ~もうっ!!分かったよっ!!降───」

「降参、俺の負けだ」

「参───は?」

「え?」

 

うんホント、色々と限界だ。

 

俺の突然の降参に、二人ともキョトンとしているが仕方ないものは仕方ない。何せ……

 

「弾幕をさっき始めてやった俺が、マスタースパークなんて撃てるわけないだろ」

「あ」

「へ?」

 

普通に考えれば分かること。確かに「マスタースパーク」は魔力で形作られたものだが、しかし弾幕用にアレンジされた魔法だ。ただの魔法式なら、魔法の知識を持つ俺ならばそれほど苦労せずにコピー出来ただろう。だがあれは弾幕ごっこ用の弾幕の一種だ。恐らく霊夢が説明してくれた必殺技のスペルカードだろう。

それを、弾幕も表面を撫でたぐらいの知識しか持たない俺が、形だけでもコピー出来たこと自体奇跡だった。その不完全な「マスタースパーク」を無理に撃った為に、体に大きな負担を掛ける羽目になってしまったが。

 

「お蔭で正直立っているだけでも辛い」

 

まぁ、それでもやりたい事はやったから構わない。体をそのまま倒して満足感を味わっておく。

うん、満足だ。初めての悪戯だったから。

 

 

「なっ!まさか勝ち負けじゃなくて、初めから私を驚かせようとしただけだったのか!?」

「ああ。ただの悪戯だ」

 

弾幕ごっこは魔理沙の勝利に終わり、魔理沙は念願の昼食、ではなくみんな揃っての夕食を食べている。どうやら、決着の仕方に納得いかなかったらしい霊夢が、俺が休んでいる間に魔理沙をこき使ったらしい。その所為で昼食を食べ損なった魔理沙はご機嫌斜めだった。それが夕食一つで笑顔に戻る辺りがポジティブというか素直というか…。

そして先程の話の続き───。

 

「お前にいきなり攻撃されて若干頭にきたんでな、どうにかしてお前を驚かしてやろうと思った訳だ」

 

要するに仕返しだった。ま、弾幕ごっこを『ゲーム』と呼ぶのなら、これぐらいの悪戯は許されるかもしれないと思っての結果だった。

 

「そして、魔理沙はその悪戯に見事に嵌った、と」

「その通り」

「くうぅぅぅ!!なんかそう聞くとムカついてきた!!穂鷹、明日もう一回勝負だ!」

「やだ」

 

まさかの再戦申し込みが明日だった。いや、もう少し間を開けようよ。俺まだ弾作るぐらいしか出来ないんだよ?頼むからもう少し練習する時間をくれ。

 

「…というか魔理沙。あんた、初心者の穂鷹にスペルカード使うなんてどういうつもりよ」

 

霊夢が魔理沙にそう怒鳴りつけた。

 

「悪い悪い、ついな…。でもまさか私のマスタースパークが切られるとは思わなかったぜ」

「そうか?あれくらいならなんとかなるぞ?」

 

不意に不規則で落ちてくる落石とか斬るよりよっぽど楽だし。

 

「あれくらいならって…普通は無理よ」

「慣れればなんとか」

「いや、あれは慣れとかそんなもんじゃなかったぜ…?」

 

そんなこんなを話しながら夕食を食べた。ちなみに夕食は霊夢の手作りである。大変美味でした。

 

「あれ?そういや何か忘れてる気が……」

 

食後に居間で一服している時にふと思いだした。

 

「そういえば……。何だったかしら……?」

 

霊夢も首を傾げている。駄目だ思い出せない……。俺が何かを忘れるなんて珍しいな。

 

「そういや、なんで穂鷹はここにいたんだ?」

「そりゃあ、博麗神社に泊めてもらおうと……」

「「あ!」」

 

そこでようやく忘れていたことを思い出した。

 

「「紫っ!!」」

「へ?何?あのスキマ妖怪がどうかしたのか?」

「どうかしたもなにも……」

 

そもそも、俺が博麗神社に泊まれるよう色々と説明してくれる手筈だったのだが、その本人は完全に雲隠れしてしまっていた。

 

「あのにゃろう…。どこ行きやがった」

「さあ……」

「あいつの考えてることなんか私には分かんね!」

 

結局、この日一日、スキマ妖怪が博麗神社に現れることはなかった。

いや、いい加減にしなさいな、あんた。

 

 

『やれやれ、全く御前様は無茶をする。

『儂がいたから良かったものの…

『分かっておるのか御前様よ。

『御前様の感覚は全て儂と繋がっておるのじゃぞ?

『つまり、御前様が傷付けば儂も傷付くという訳じゃ。

『疵継くという訳じゃ。

『分かったらこれからはもっと気を付けろよ、御前様?

『やっとあの忌々しい女共から離れられたのじゃ。

『少しくらい儂が落ち着けるような日常を送ってみい。

『ん?

『なら、早く寝ろじゃと?

『御前様に言われんとも分かっておるわ!

『今回は、色々と鈍い御前様に念を押しに来ただけじゃ。

『あまり儂を起こすな。

『この先、生き残りたければな』

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