東方偽人録   作:ミツバチ

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動き出す巫女と魔法使いとその他一名

「まだ出てるな…」

「そうね…」

 

俺は外に広がる紅い霧を見つめてそう呟いた。

これでもう3日目になる。この赤い霧が出ている所為で太陽の光が遮られて洗濯物がなかなか乾かない。加えて、問題はこの霧が普通の人に有害であることだ。霧を浴びすぎると体調が悪くなるらしいく、人里に住む人間は皆家の外に出ずに中に閉じこもってしまった。慧音も寺子屋を開けないと嘆いていたし、俺も生活が困る。

 

というか、この霧──妖霧が出た日からずっと、このマイペースで気分屋の巫女をさり気なく危機感を持つように仕向けているのだが、この巫女さんは一向に動こうとせず、気付けば3日も経ってしまっていた。

だが、3日目にしてやっと気が乗ってきたらしい。神社の鳥居の下、石畳の階段に腰をかけて空を覆い隠す紅い霧を、無愛想な表情で睨んでいた。

 

「全く…何なのかしらこれ。こんな調子じゃあ、いつまで経っても陽が当たらないじゃない」

 

そう言って、霊夢は宙へと手を翳す。その周りには、うっすらと紅い霧が纏わり付くように浮遊していた。

 

「霧…?…いえ。これじゃあまるで妖霧ね…」

 

そんな得体の知れない紅い霧について、彼女は何かを調べるような素振り一つ見せる事もなく、それが何なのか本能的に察しているようだった。

 

「なあ霊夢、これってやっぱり異変じゃあないか?」

「ええ、間違いなく異変ね」

「………」

 

呆気なく、実に呆気なく、俺が3日も言えずにいたことを横に座る巫女は肯定してしまった。ホント、この俺の努力はそんなもんだと言わんばかりの呆気なさであった。

 

「はぁ……」

「何よ?」

「いや、別に…」

 

だが、こんなことでへこたれる訳にはいかない。やっと霊夢がヤル気になってくれたのだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。

 

「じゃあ解決しなきゃなんないだろ?博麗の巫女なんだから」

「わかってるわよ。私もそろそろ解決しに行こうと思ってたところよ」

 

何ともゆるりとした調子で言うと、霊夢はその腰を上げた。

 

「仕方ないわね。いい加減この霧の原因でも突き止めるとしましょうか」

 

そうして、いつも通りなんとなくの勘だけを頼りに、幻想郷の空へと飛び立って行くのだった。俺は黙ってそれに続く。この半年で霊夢との接し方もほぼ定着しつつあった。

 

 

───因みに、この巫女さんの勘はあまり外れないのである。

 

 

 

魔法の森。

 

いつか穂鷹が迷い込んだ幻想郷の森の中に、霧雨邸は存在する。別段誰を招くという事もなく(偶には招く事もあるかもしれないが)、こぢんまりと建っている。建物の内部は、一度地震でも起こってしまえばマジックアイテムの雪崩で大惨事が巻き起こりそうな様相を呈している。この家の家主には掃除スキルなど無いに等しかった。

 

そんな雑然とした家の主である霧雨魔理沙は、なんとはなしに箒に跨り、こちらは普通程度の勘を頼りに紅い霧の元凶へとなんとも普通に空を飛んでいた。紅い霧の発生から既に3日経っているが、それは異変解決の為の準備をしていたからであった。そう、これは異変だ。魔理沙の普通程度の勘がそう言っている。

だが、いざ解決に!と思ったは良かったが、普段から整理整頓が出来ない彼女のこと。使う道具が見つからないのは当たり前。見つかったと思っても壊れていたり、使えないものが大半で、やむなく整備に時間を割くこととなった。それを受けて穂鷹に掃除を頼もうと思ったとか思わなかったとか。どちらにしても自分でやる気はさらさらないことは確かであった。

 

「………ん?なんだ、あれ?」

 

そんな彼女の視界に映る湖の全貌が、より一層濃い紅い霧によって捉えきれなくなっている。

 

「やっぱりこの湖が発生源か…。とすると、あの館も何か関係があるのか?」

       

人間だって湖のある所に集落を造るのだ、きっと化物も水がなければ生きていけないに違いない。

これ以上なく人間らしい思考を巡らせた彼女は、あの館に何か目ぼしい物がないかと探しに行く事にした。

 

「そろそろ霊夢のやつもが動き出す頃だろうし、私が先に行って一人で解決してやる!」

 

少しばかり楽しそうな笑みを零すと、魔理沙は跨った箒の速度を上げた。そうして、なんとも彼女らしい動機の下、幻想郷の空を翔け抜けて行くのだった。

 

─────言い忘れたが、この魔法使いの少女は目立ちたがり屋でもあり、達の悪いコソ泥でもあった。

 

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