彼は”対象”に対して、”対象”のいる世界とは別の異世界、フラリアムへと誘います。
そして”対象”は自然に『フラリアムとは?』という疑問を浮かべます。
そんな疑問に対する答えを、青年は話し始めます。
気がつくと、不思議な場所に居た。周りには多くの本棚が並んだ、古い書庫のような、そんな場所。
意識ははっきりとあるにもかかわらず、体の感覚がない。当然動くことも、視界を動かすこともできない。まるで映像のように。
そこへ《コツコツ》と誰かが歩いてくるような音がする。そしてその正体、白髪の青年は視界の中心へとやってきた。
「こんばんは、それともこんにちはでしょうか? ここは貴方の夢の中です、私は貴方に……そうですね、宣伝を私にきた、とでも言いましょうか。まあ、前置きは重要ではありません。端的に言いましょう、私たちの世界、異能都市 フラリアムへと転生して見ませんか?」
異能都市 フラリアム? なにそれ?
自然と湧き出た疑問。すると青年はそれを察知したかのように小さく
「なるほど、当然ですね」
と呟くと本棚から一冊の本を取り出して開くと、あるページを見つけ出し、そこを確認しながら語り始めた。
異能都市 フラリアムは全ての者にとっての楽園、『Second Atlantis』を目指す異世界です。
皆さんのいる世界にはあらゆる苦しみが存在していることでしょう。我々は皆さんをそんな世界から救済し、この世界を楽園として幸せに生きてほしいのです。残念ながら我々の力が不十分であるために、いまだこの世界からも全ての苦しみを排除できたわけではありません。
しかし我々は皆さんの欲望を糧にあらゆるエネルギーを作り出す技術を発見いたしました。そう、我々が皆さんを救済しようとする目的はエネルギーを生産するために必要なエネルギー源、すなわち皆さんの欲望をいただきたいのです。
どうでしょうか? こちらが提供するのはこの世界にいる限りの安否の確保と皆さんの望む形の幸福、対価としていただくのは皆さんの欲望。
よい提案だと、私は思っています。
別に無理に誘うわけではありません。もしも貴方がその世界にやり残したことがあるのであれば、それを終わらせてからでも構いません。
私はいついかなる時であろうとも、貴方がこちら側へ来たいと望むのであればいつでもご案内いたしましょう。その時私と貴方の間では契約が結ばれ、先ほどの交換条件が成立します。
ご安心ください。もちろん契約を破ることなどはいたしません。私、悪魔は契約を重んじる種族ですので。
おや? なるほど……説明不足でしたね。我々の世界にいるのは貴方のような種族だけではないのです。全ての者にとっての、ですからね。
失礼、話が逸れてしましましたね。
ともかくとして我々はいつでも、貴方がこの世界へ来ることを望むその時をお待ちしております。
ではその時にまた、お会いしましょう。
青年の言葉が終わりに差し掛かった時から、だんだんと視界が曇り始め、最後に青年が深く頭を下げてい流のが微かに見えた。そして真っ白になった視界は次の瞬間真っ黒、だが少し光を受けているような状態へと変わる。
いや、違う、先ほどまでとは違い体の感覚がはっきりとある、そしてまぶたが開き、意識が本当の意味で、覚醒した。
どうやら変わった夢を見ていたようだ、にしてははっきりとした夢だったが……