影グルイ   作:花火師

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前回の投稿した段階で『お気に入り』71だったのが気づいたら3000越えになっていた。これがポルナレフ現象というやつか……。
ウボァーーー!!息抜きのはずがががが。安易に下手なもの出せないなこれ。

虎を画きて狗に類す(恥かく人)。それが作者なんです。ゆるーく読んでやって下さい。

いざ、投下



第4話

神を呪わずにいられなかった。

 

世の中には運命論なるものが存在するという。

運命論、もしくは宿命論。

全ての物事、事象はあるべくしてあり、成るべくして成るという説。

世界の有りとあらゆる出来事には《結末》が(あらかじ)め定められており、努力を重ねたところで抗えるものではない……みたいな、元も子もないそんな考え方だ。

 

 

 

その日、運命という名の悪夢の始まりは、爽やかな朝の一幕からだった。

それはクラスメイト、鈴井涼太の口から告げられた。

 

「明日、転入生が来るらしいけど。どんな人だろうね」

 

朝日が優しく俺たちへ降り注ぐ中、意気揚々と登校している最中のことだ。その日は、いつものように盛り上がりに欠ける出だしとは少し違った。

転入生……それはなんだか……違和感というか、嫌な予感を覚えるワードだ。

 

「……へぇ、転入生ね。こんな学園にねぇー。物好きもいるもんだ」

 

「へぇ、って……聞いてなかったの?先生が先週から言ってたじゃないか。ダメだよちゃんと話は聞かないと」

 

鈴井は少し咎めるような口調で言った。

おまえは俺のオカンか。鈴井は保護者力あり過ぎなんだよ。このオアシスめ。

 

「いやだって、ホームルームとは言え顔上げてると誰かと目が合いそうだし。それで勝負吹っ掛けられるなんてゴメンだから」

 

「ポケモントレーナーじゃないんだから目線が合っただけで勝負にはならないよ」

 

あ、ポケモンは知ってるんだ。意外。

あ!やせいの すずいが とびだしてきた ▼

 

「だとしても、俺は万が一に備えて下を向いて本を読むね。絡まれるのを避けられるし、本を有意義に読めるし、万々歳じゃないか」

 

「もう、またそんなこと言って」

 

あー、なんか面倒くさいスイッチが入りそうだ。

次の話題次の話題。

 

「で、来るのは女子?男子?」

 

「誤魔化した……まぁいいや。これは先生じゃなくて早乙女のグループから聞こえてきたんだけど、えーと。珍しい名前だったんだよね……」

 

 

 

何気ない朝に、かつての悪夢が帰結する。

 

 

 

「あっ、そうそう!たしか、転入生の名前は──」

 

 

あるべくところへ、そうなることが決まっていたかのように。過去は(いびつ)を描いてすぐ背後まで迫っていた。

 

 

 

「──鈴井、今、なんて言った?」

 

 

「え?……聞こえなかった?」

 

「聞こえなかった……というか、うん。もう一回言ってくれ……」

 

両耳を抑えたい気持ちを堪えて、俺は立ち止まり鈴井を真正面に見つめた。

合わせるように止まってくれた鈴井は、朗らかな笑みで言うのだ。

 

 

 

 

「転入生の名前は、蛇喰(じゃばみ)夢子(ゆめこ)さんだよ」

 

 

 

 

失神して保健室へ運ばれた。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「で、何かしらこの書類は」

 

桃喰(ももばみ)綺羅莉(きらり)。彼女は生徒会長を名乗る痴女。もとい生徒会長を名乗る生徒会長。まあ肩書きはともかく、いつもいつも俺を追っかけてはちょっかいをかけてくる厄介な女である。

が、今日に限って話は変わってくる。天使と悪魔は紙一重と聞く。聖書だかどっかの宗教じゃ、悪魔は元々天使だったという話だが、今回ばかりは彼女は天使である。ウワッ、ウツクシー!

学園のトップ、これ以上のコネクションはあるまい。

 

「クラス編成変更申請書です、俺は他所(よそ)のクラスへ行きます!」

 

「それは、なぜ?」

 

「今のクラスが嫌だからです!」

 

「どうして?」

 

生徒会の机をビシバシ叩いて催促する俺に会長は首を傾げて、知りたがりの子供のような幼稚にもとれる質問ばかりを返してくる。

 

「怖い女が転入してくるからですよ!」

 

「怖い? …………ふふっ、あははっ!面白いことを言うのね。貴方にこの学園で怖いものがあるの?」

 

「何が可笑しいんすか!ありますよそりゃあ!」

 

心底可笑しそうに笑う会長。それを引き吊った表情で横目に、あからさまな警戒を顕にする男が一人。彼の名は生徒会会計、豆生田(まにゅうだ)(かえで)

エクセルの入力も途中だろうにそれを中断した。ため息と共に眼鏡のブリッジを中指で押し上げると、まるで異星人を見るかのような視線を俺たちに向ける。

 

「……なんだよ(かえで)、その目は」

 

「馴れ馴れしい、豆生田(まにゅうだ)と呼べ。……自覚がないのか。俺だって白い目にもなる。まったく貴様の馬鹿さ加減には頭が痛い。……お前は転入生が怖いだのなんだのと言っているが、いま誰を前に(わめ)いてるのか分かっているのか?」

 

「なんだよ、分かっているっつの」

 

「分かってないと言っている!」

 

バチーン!神の一手でも極めそうな勢いでパソコンを閉じた楓は勢いのまま立ち上がると、どこから取り出したのか、分厚い縦線グラフの資料を俺の前へ広げて見せた。

眼鏡をもう一度持ち上げ、「いいか?」と資料を指差したどっていく。

 

「これが会長が就任してからの我が校の資産の変動値だ。明らかに前年と倍率も桁も違う上に名高い権威者たちがこぞって尻尾を振るようになった。この学園に関わる数多の権威者一人に睨まれるだけでもう日本では生きていけん。貴様からすれば、そんな魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)する学園でトップを飾っている人間とも取れない人物がそこにいるんだぞ!!」

 

「……そう。楓は私のことを人間とも取れないと、そう思っていたのね」

 

「あっ……。い、いえッ!!違います会長!!今のは言葉の綾というもので、決して本心ではッ!!」

 

脂汗を流しながらアセアセと忙しない会計、豆生田楓。眼鏡キャラのくせにどこか抜けている憎めない男。

……にしても、よく本人の前でそこまでこき下ろせるなオイ。俺もびっくりしたわ。

 

「そうだぞ楓、言い過ぎだ。俺みたいな庶民からしたらあんまり実感ないし実際理解しきれてないだけなんだろうけどさ……」

 

フォローしようとするも、俺はあまり口が回る人間ではない。だがそれはこの楓も同じ。いや、下手をしたらコイツは俺以上に不器用な奴だ。せめて俺が優しい言い回しをしなくては。

 

「確かに会長は変人だし、変態だし、変わってるけど」

 

「……お、おい?」

 

俺の口が開く度に顔色が悪化する楓。

 

「……でも突き詰めちゃえば、人一倍好奇心が旺盛なだけだと思う」

 

そのフォローに会長は目をパチパチと、今まで見たことのない意外そうな顔をしていた。

 

「この学園では怖い部類の人なのも知ってる。でも今の俺にはもっと怖いものがあるんだよ!」

 

会長はまだマトモ……ではないけど、好奇心旺盛なだけでまだ理解できる。裏では好奇心に負けてトンでも建築とか倫理的にアウトなこともやってるという噂も、まことしやかに流れているらしい。

例えば。学内きっての狂人、生志摩(いきしま)(みだり)に目玉の裏側を見たい(・・・)からとギャンブルで作った途方もない負債と引き換えに好奇心を満たした(・・・・)、なんて話も。

それを知った当時は俺も全力でビビって会長を見かける度に脱兎の如く学内を駆け抜けたものだ。

しかし後から楓に聞いた話によると、名医揃いの病院をきちんと用意し安全に手術の手配をする予定だったらしい。そこで暴走したのがあの狂人、生志摩妄。なんとその時その場で、ペンで自分の目玉を(えぐ)ったんだとか…………。

目の裏側がどうとか、そこまでの好奇心は頷けるものじゃないけど、でももし。もし会長が本当に狂人ならば、生志摩妄の目玉を抉ったのは生志摩妄本人ではなく、会長が自身の手で、その場でやっていただろう。

ソウ、ダカラ会長は理性ノアル人間ダ。会長は常識のあるニンゲンダ。会長ハ、コワクナイ。コワクナイ。常識テキナ、チョット天然ナダケノ美人。

 

ダカラ、ベツニ怖クハ…………ナイデス。コワ、クハ……。

 

 

 

…………むりだぁ

 

 

怖いわ。

ダメだ、無理だ。

どれだけこの女が狂ってはないとか好奇心旺盛なだけーとか自己暗示をかけても無理なモノは無理だ。自分の目玉(えぐ)るやつも怖いけどさ。好奇心でくり()こうって女だって怖いわ!十分に頭可笑しいですわ!

なんでそんな事態があったのにここの人間たちは「会長ー!会長ー!」と(おが)みながらのうのうと平穏な日常生活を送れるんですか?普通に事件ですよ、事件!

楓も含めて正気の沙汰とは思えませんがな。そら口調も可笑しくなりますがな。

 

 

…………しかし。だからと言っていま俺は引くわけにはいかない。あの蛇喰夢子がここに来ると分かっている以上、絶対に。

 

では比べてみよう。

会長はギャンブルや負債さえ受けなければ手荒な真似はしてこないし、週に5回くらい相手をしろと誘いにくるだけ。断れば強要してくることもない。今のところは。今のところはね。まぁまぁ、とりあえずある程度の常識は持っていると見ていい。

 

比べてあのギャンブル狂いは365日だ。祝日平日休日に一切関わりなく毎日毎日何度も何度も側にへばり付いて「ギャンブルしましょうギャンブルしましょう、ギャンブルギャンブルギャンブルギャンブル」と壊れたラジカセのように囁いてくる。妖怪子泣き爺ならぬ、妖怪ギャン泣き女だ。……はしょるとこ間違えた。意味が全く違うわ。

 

兎も角、奴は通常時ならば常識的な女なのだが、ギャンブルが絡むとちゃぶ台をひっくり返す勢いで常識なぞ知らんと暴走機関車化する。

あの子は何をしでかすのかマジで分からない。いつだってガンガン予想の範疇(はんちゅう)を越えてくる。『常識』という川を高跳び棒でポーンと軽やかに渡ってくるのだ。『常識』はあつ森じゃねえんだぞ。

加えて病み気質まで持ってるし!怖い人たちの事務所まで連れてかれて麻雀をしましょう、とか言い出した時は本気で正気を疑ったね。

あの時、人生最大の死の危険を感じたのを今でも鮮明に覚えている。

 

 

……思い出すな、余計怖くなってくる。

 

 

 

あああくそもうっ、なんだよもう、どっちも怖いよ!!

でも交渉可能な悪魔とホーミングしてくる悪魔、どっちが良いかと問われればそりゃどっちも嫌だけど……。選ぶとするなら交渉可能な悪魔だ。

選択肢があるようでないんですよコレ。

 

まあ会長とは、多少だが良好な関係のはずだ。すぐにOKしてくれることは間違いないだろう。と言うか断られる理由もないし。

いやあ、次のクラスにも鈴井みたいなマトモな奴がいるといいな!いるよね!出来ればそのポジションにいるのは素朴で普通な女の子がいいなー、いい加減ちゃんと青春したいし。泥の中にだって蓮の花は咲くんだ。よっしゃ、なんかモチベーション上がってきた!

 

「そういう事なんですよ会長。なのでクラス編成変更の手続きを。手続きをお願いします」

 

「イヤよ」

 

「ありがとうございます!!いやあ、そう言ってくれると思ってましたよ。本当にすみませんねえお手間を取らせてしまって。それじゃ今から移動の準備してきますね!では、俺はこれで…………あれ、いまイヤって言いました???」

 

「言ったわ」

 

「…………ウソダ…………ウソダァー」

 

「死んだ顔しているところ悪いが、事実だ。認めろ朝土」

 

会長は笑う。好奇心にまみれた青い瞳を、爛々と猛禽類のようにたぎらせて。

 

「貴方の恐怖、実に興味深いわ。是非見たいの。貴方の怯える姿も、貴方を怯えさせる相手も。見てみたいわ」

 

「いや、だから……カイチョ?おれね、今のクラスはね、いやだーって話をね、さっきしたわけですよ?……あ、あはは、もしかして聞いてませんでした?」

 

「私の好奇心は人一倍、なんでしょう?覚えてないかしら?そんな私の欲だけを抑えることができると思って?」

 

「自ら墓穴を掘るとは……っ!」

 

「貴方が生徒会に入ることが条件よ。……どうしてもと言うならギャンブルで決めましょうか」

 

「なんと卑劣な……!!どう思うよ楓、この悪辣(あくらつ)な手口!酷くないか!?」

 

生徒会なんて莫大な金の動く場所へ所属してみろ。数ヵ月とたたず金の嵐に呑まれておっ()んじまう。教室で寝たフリを続けて生き永らえてる男になんてこと強要しやがる。鬼か。鬼かあんたは。

 

「馬鹿な奴め。卑劣でもなんでもない、元々ここはそういう学園だ。いい加減腹を(くく)れ。それと楓ではなく豆生──」

 

「お願いですよ!本当に本当に困ってるんですよ!会長!おねがいかいちょー!」

 

「ゲームは何がいいかしら。手っ取り早く『蛇と梯子』でもする?」

 

「まだ根に持ってんすか!手っ取り早くもないですし!」

 

「貴方が勝ったらクラスを変えてあげる。私が勝ったら貴方もついに生徒会入りよ」

 

「イヤっすよやりませんよ!なにが悲しくてこんな修羅の部屋に自ら入って行くようなリスクを負わなきゃならないんですか!勝てればいいですけど負けたら人生終わりかねないんですよ!」

 

「当たり前じゃなくて?ギャンブルとはそういうものよ」

 

んなギャンブルが当たり前であってたまるかい!

ダメだ当てにならん!そもそも俺はギャンブラーじゃないと何度口酸っぱく言えば……!

こ、こうなったら副会長にお願いしてみるしか……。でもあの人ずっとお面してるし会話も頑なにしてくれないからどうすればいいのか分からないんだよな。……扱いに困るという意味ではナンバーワンだ。

くそ、生徒会の誰を味方につけたところで会長の腕のひと振りに全部薙ぎ倒される未来しか見えない。

 

「落ち着け朝土。考えてもみろ」

 

気が立っている俺には、眼鏡を中指で押し上げる楓の姿にすら苛立ちを覚えた。なにその中指。いや、たぶんこれただの逆ギレなんだろうけどさ、お前それ眼鏡の位置直すふりして俺に死ねって言ってんの?それ本当になるかもしれないんだぞ?割りと本気で洒落になってねえんだぞ?

 

「クラス編成の権限は会長と副会長にのみある。そこで権利を獲得する為にはどちらかに勝たねばならん。しかし実際お前が勝ってしまえば生徒会に入らざるを得ない」

 

「え、いやだよ。つーか、生徒会に入るのは負けたらって話でしょ?」

 

「二人はここのトップで、国でも有数の王者だぞ。万が一……いや、億が一にでも会長、副会長に勝利した者が生徒会入りの権利を断ったとて『はいそうですか』と背後の権力者たちが、名家の生まれでもない貴様を放置してくれると思うか?」

 

「……例えば、例えばだよ?勝ったとして、入らなかったらどうなるの?」

 

「"ギャンブルに強い"。今の政財界はそれだけで強力な武器になる。もし、もしも上手く生徒会入りを断ったとしよう。そうするとお前は何の後ろ楯もない、技術だけ卓越した人材……つまり、道端(みちばた)に置かれた一億円のような扱いになる。拐われることもあるだろう。使われることもあるだろう。処分されることもあるだろう。最悪、両親や親戚、友人知人にまで被害がいくことにも──」

 

「泣いていいですかッ!!」

 

選択肢がねえ……!

あれ、おっかしいな、賭けが成立すらしてませんねえ!?

 

負けたらクラスはそのままに、蛇喰夢子の餌食になり生徒会行き。

勝ったとしても、生徒会入りを断れば世間の肉食獣たちに四肢を引き裂かれて死ぬ。もうそんなん、ここで諦めて蛇喰夢子に絞め殺されるしか道がないじゃん!!詰んでるじゃん!!

 

「………………」

 

何も言えない。どこへ行こうと俺を待っているのは地獄の扉だ。全方向羅生門とか、斬新すぎて笑えないわ。芥川さんもびっくりだわ。

 

「悪いが、俺では何の手助けも出来ん。決めるのはお前だ。やりたいようにやれ。ただ、生徒会に入るなら俺の補佐になれ。お前の高い能力は俺とて買っている。悪いようにはしないさ」

 

打ち(ひし)がれる俺の肩を、楓は哀れむように叩いた。

 

「…………ありがとな、でも、ごめん。生徒会はちょっと……俺にはハードル高すぎるよ」

 

落ち込む俺に「そうか」と柄にもなく優しく呟いた楓は、パソコンを開いて作業を再開した。

ここから先を決めるのは俺次第、これ以上の口出しは俺を更に追い詰めかねない、とか思ってるんだろうな。いいやつだこいつ。好き(直球)。

口下手を治して感情表現さえどうにかすれば、すぐ人気者になれるのにな。

 

……しかし、微塵も空気を読まない生徒会長は、意味ありげな微笑みを浮かべたまま俺へ問いかける。

 

「で、どうするのかしら。クラスを変えるのか、変えないのか」

 

そんなの、答えがあってないようなものじゃないか。

鬼畜め……ッ!この鬼畜めッ!見た目だけ天使の悪魔めッ!!極悪なだけじゃなくて可愛いから尚のこと質が悪い。いっそのことビッグマムみたいにハナから悪者感出してくれよ!見た目が黒髭みたいであってくれよ!

 

「……現状維持で……。お願いしますッ…………」

 

「あら、残念」

 

ここまで心の籠っていない言葉を聞いたことがあるだろうか。俺はないぞ。残念だなんて一ミリも思ってない返答だ。それどころかちょっと楽しそうまである。

俺が地獄の門一歩手前でフォークダンス(マイムマイム)踊らされてる様な状況だというのに、この女と来たら……ッ!

名家の出じゃなけりゃあ……男だろうが女だろうが全力で張り倒してやったのによお!!

 

あ"ーーーーもうっ!!なんだこの生徒会!癒しは楓だけか!どいつもコイツもギャンブルだー、ドMだー、公平だー、生爪だー、後輩が可愛いだーと、もうイヤアアア!!一般高校へ帰りたい!!もういっそ武偵高でもいいよ!緋弾のアリアでもいいよ!あっちの方が生存率高そうだもん!あんなん弾丸避けてればいいんでしょ!?アッハーーッ楽勝ですわ!いや無理だけどね!!

でも右を向けば大金、左を向けば借金。前進は生徒会、後退はヤンデレの四面楚歌だよ!どれにせよ詰んでんだよ!いったい俺になんの恨みがあるの!!

 

「貴方が生徒会入りしてくれれば、全て解決するのよ?」

 

「……無理っす。この学園に知り合いのコネで入れてもらったのに、一生返せないような借金作って首回りません、なんて、それもうまともに顔向けも出来ないじゃないですか俺。というか生きても帰れないじゃないですかおれ……」

 

あたまがいたくなってきた。

 

「勝てばいいじゃない。勝者であり続ける限り、貴方も、貴方の周りも得をするのよ?」

 

「常勝不敗なんてのは夢物語ですよ。巨像だろうとワンダに負けますし、G級ハンターもモスに負けることもあるんですよ」

 

「わんだ……?」

 

そうよね、ゲームしないよねこの人。

 

「兎に角、人間生きてる限り勝ち続けるなんてあり得ないんですよ」

 

実際、俺はこの人生負け越してばかりだ。老人にはボコボコにされ、ボコボコにされ、ボコボコされ、ボコボコにされている。

負けてばっかの人生だ。勝てることを想定して生きるなんてアホらしい。

 

「そういうことで、もういいですー!お邪魔してすみませんでした!失礼しましたねっ!!」

 

「……あら、そう」

 

 

間を置いた台詞にしては、寂しさなんて一切合切感じられない、それこそ戦隊モノの次週の放送を待つ子供のように弾んだ声だった。

 

だから余計思うのだ。

未知を夢見る子供のようだなと。それが善いことか悪いことかは置いておいて。前のめりに劇的を求めるその姿勢には背筋が凍るようだ。そんなもの、蛇喰夢子と同じ。衝動に身を任せて何をしでかすか分からない、まさしく人の形をした爆弾と言わずして(なん)としよう。

 

 

「俺もどうしよう」

 

 

………………結果、なにも解決してない。

ついに明日、蛇喰夢子が来てしまう。

 

さて、この眠れない夜をどう過ごすべきか。

 

 

 




もうちょっと報われてもいいと思うの。頑張ってるよ彼。

誤字報告、感想、評価、お気に、もろもろありがとうございます!非常に助かっております!
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