TSロリが逝くダンまちゲーRTA   作:原子番号16

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長くなったので初分割投稿です。

鳥瑠様から誤字報告をいただきました。感謝です。

佐藤東沙様から誤字報告をいただきました。ありがとうございます本当……アブゥ(度重なる痴態による幼児化)
so-tak様から誤字報告をいただきました。ありがとうございます。
〝頭陀袋〟は『ずだぶくろ』と読むらしいです。ずっと『ずたぶくろ』だと思ってたゾ……


幕間『なんか変なの』

 団長。

 ファミリアのトップが座る席、主神から認められた者の称号。

 そんな大層なものを僕が賜っている理由は、そう大したものではない。

 ファミリアに二人だけの第二級冒険者、その片割れ。

 もう一人のやつが年若く、彼女自身も団長の席を望んでおらず。

 両親が共にアポロン様の眷属で、生まれてから今の今までずっとこのファミリアに所属していた。

 そんなこんなが重なって、まあ、お前が適任だろうと任されて、はや5年。

 自分なりに精一杯ファミリアに尽くして、それを評価してくれたのか、団員達もそれなりに慕ってくれている。

 

 それが、辛い。

 

 器じゃないんだ。柄じゃない。

 僕はしがない詩人(バード)で、竪琴とかピアノと一緒に歌ってるのがこの上なく幸せな人間だ。そりゃ生きてく上でお金は欲しいし、アポロン様に任せられたお役目には誠実に向き合う所存だけれど、軍を率いる指揮官なんて欠片も望んじゃいないし、怪物殺しの名誉なんてくそくらえだと思う。

 誉れ高きドラゴンスレイヤーだって、そう成りたいからそうなったんだろう?

 だったら僕は詩人がいいよ。団長なんて息苦しくて敵わない。何より辛くて苦しいのだもの。

 

 そりゃあ、愛しいあの娘が『竜殺しして♡』なんて言ってきたなら、話は別だけどさ。

 

 「お前に見てもらいたい子がいる」

 

 そう、敬愛する主神様に言われた時は、こりゃあまた珍しいことがあるもんだと驚いた。

 だって、僕は団長だ。

 新米にいきなり団長をつけるってのは明確な贔屓(ひいき)で、他の新米からすれば面白くないに決まってる。

 入団試験で一番の成績のやつだって、担当するのはあくまで『幹部』の太陽万歳娘(ソラール)だ。単純な武力なら彼女は随一だが、立場で言えば団長の僕より明確に下なのだ。

 そんなわけで、ここ最近は僕が出張る機会は皆無といってよかったのだけれど……

 

 「よろしいのですか?」

 「構わない。手は回す」

 

 そういうリスクを許容した上での命令だと、アポロン様はおっしゃった。

 そうなってくると、本格的に珍しい。

 この男神は程度の差はあれど、男女遍く愛を振り撒くお方で、それ故に、バランス感覚というか、寵愛が理由なく偏重するのを避ける達人といってよかった。

 贔屓にしている子がいたとしても、おおっぴらに愛を与えるのではなく、その子が何かしらの手柄を得るまで待てる人なのだ。感情だけで動く(ひと)じゃない。主神としての体裁はしっかり守ってくださる。団長の務め甲斐もあるというもの。いや後継欲しいけど。

 

 だから、珍しい。

 その新米の情報を渡されても、その感想は変わらなかった。

 

 入団試験をすっ飛ばしての眷属入り。

 年少の小人族。()

 『劇団』の方ではなく、『冒険者』志望。

 容姿を隠蔽する傾向あり。

 そして、『女性嫌い』の傾向あり。

 

 つまり、入団試験を受けてなくて、小人族のくせに冒険者に成りたがっていて、容姿を隠すことを認められていて、女性を嫌ってる新米。

 

 これに『団長に指導されてる』がくっつくのだ。お腹の痛くなる話である。

 自然、こちらの返答も決まってくる。

 

 「わかりました。神命に従います」

 

 団長とは主命を遂行する第一の鏃なれば。

 ……後継、欲しいなぁ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やあやあ初めまして、君がグッドフェローくん……で、いいんだよね」

 

 第一印象は、なんだこの変なの、だった。

 まず、ズダ袋を被ったまま食事をしているのが面白い。

 首から下も厚手のマント───もしや手作りか?───で覆っていて、なるほど〝容姿を隠す傾向あり〟だ。なんて的確な表現!

 何より、小さい。

 くっそちっちゃい。

 小人族つってももう少し大きくていいんじゃないかって程の体格だ。

 これで冒険者志望だっていうんだから、頭が痛い。

 

 「……」

 

 首肯で返事をしてきた。

 なるほど声も出さないらしい。なんたる。

 

 「僕はオルフェ。一応、ここの団長を務めさせてもらってる者です。君の新人講習を担当するんで、まあ、よろしく頼むよ」

 

 ……黙礼してきた。そんなに発声したくないのか。

 

 食事をとりながら今後の予定について伝える。思えばこの作業も久しぶりだ。

 といっても、ギルドで冒険者登録をして、神塔(バベル)で武器買って、最弱のモンスターを殺すってだけ。

 その〝最弱のモンスターを殺すだけ〟が出来ないヤツは多いんだけど、それは伏せておいていいだろう。不安がらせてはいけない。

 ともあれ、話すべきことは話したのだ。ここからは親睦を深めるための会話をしよう。

 

 「僕はオラリオ生まれオラリオ育ちなんだけど、君、出身は?」

 「……極東です」

 

 ───喋った。なるほどイエスノーで答えられない質問には発声するんだな?

 

 「へえ、そりゃあ遠方だねえ。御両親は許してくれたのかい? ひとり旅って訳じゃあないだろう?」

 「……家出紛いです。ここには、一人で来ました」

「おおう見た目によらずいい度胸だ。冒険者になろうってんならそのくらい肝が据わってなきゃあね。キッカケは、やっぱりかの【勇者】に憧れて?」

 

 モゴモゴとくぐもった声と言葉を交わらせる。

 さりげなくふっかけたけれど、最後のは重要な質問だ。

 かの豪傑に罪はないが、【勇者】に憧れて冒険者になって、戦えなくて、早々に引退する小人族は多い。

 もちろん小人族ってのは()()()()()()だが───なんならうちの幹部の一人も小人族だ───この子も同じような手合いだっていうなら、僕の心労は凄いことになるのだけれど。

 

 「……お金が、欲しくて───」

 「ほう」

 

 目の前の変なのが言葉を探してるようだったので、追及を止めて少し待ってみる。

 

 「……私の育った場所は、貧しくて、暖かくて」

 「うん」

 「それが、許せなくて。間違ってると思って」

 「うん」

 「だから、お金が、欲しくて……」

 「うん」

 「……それだけ、です」

 

 なるほど。

 力も栄誉も求めず、金の使い道も地に足ついた柔らかなモノ。

 

 「大丈夫、だいじょーぶ。君なら上手くやれるとも」

 

 いや、まあ。

 実際どうなるかはわからない。かの高名な吟遊詩人は『歌った英雄譚が起こる』レベルだったらしいけれど、生憎僕はそんな埒外の存在ではないし、なれる器でもない。

 この子はゴブリンにボッコボコにされて、泣いて故郷に帰るかもしれない。

 けれど、同じように、緑色のあん畜生をぶちのめして、笑顔で凱旋するかもしれない。

 全てはこの子次第だ。

 だから、上手くいきますように、と願っておいて、損はないだろう。

 

 

 

 

 

 ()の希望で路地裏を歩く。

 女性が苦手ってんなら、自然大通りも苦手になるのだろう。

 チンピラに襲われても、まあ、Lv.3だし、なんとかなるんじゃないかなって判断だった。

 

 「そういえば、僕の二つ名って教えてたっけ?」

 「……」

 「ありゃ、そうだったか。じゃあ今教えておこう、我が賜りし名は【悲恋の奏者(オルフェウス)】! 酷くないかい悲恋って、悲恋って! 正直、これを変えたくってランクアップしたんだよ、僕は!

 そのくせLv.3になっても変えてくれなかったんだ! いやアポロン様のせいじゃない、なにせこの一件で一番悲しんでたのはあの(ひと)だったからね。あの泣きっぷりを見せつけられたら、なんだか色々とどうでもよくなっちまったんだ。あの娘……その、今交際させてもらってる女性も、私は全然気にしない、カッコよくて素敵だって何度も言ってくれたし……」

 「……よかったですね?」

 「その疑問符が全てを物語ってるね……」

 

 それなりに長い団長業(キャリア)を矢筒から引き抜いて、身の上話という名の矢を乱れ打つ。

 やはりズダ袋を被ったまま隣を歩いているグッドフェローくんは、言葉数こそ少ないけれど、その全てに感想をくれた。

 本拠(ホーム)から冒険者ギルドに行って、バベルへと向かっている現在、()についてわかったのは、この子は話しかければ返答(レスポンス)はする、ということだった。

 

 「そろそろバベルだけど、使う武器はもう決めてるのかい? それともまだ考え中?」

 「……湾刀に、しようかと」

 「ほーう……」

 

 基本的に、小人族というのは体格に優れない。何故って小人族だからだ。彼等は総じて只人(ヒューマン)の子供程にしか成長しない。もちろん頭の方は別だが。

 そんなわけで、どうしたって白兵戦の適性は低くなってしまいがちだ。

 体格と近接適性の結びつきは、強い。

 ヒューマンだったならどれほどの武勲を立てただろう、という小人族を見かける度に、やるせなさを感じてしまうのは、きっと彼等に対する侮辱なのだろう。

 体格によって装備不可能となる武具は多いし、手足の短さはただでさえ小さな攻撃範囲(リーチ)を更に狭めてしまうし、小柄っていうのは軽いってことだ。

 故に小人族はその目のよさを生かした斥候(スカウト)盗賊(シーフ)、弓兵や魔導士などの遠距離戦闘といった方面に進むの(ビルド)が正道で、戦士職の道に進む者は見かけない。

 いるにはいるのだろうが、茨の道だ。華奢なエルフが武道家やるようなもんだろう。

 【勇者(ブレイバー)】とか、【炎金の四戦士(ブリンガル)】とか、ああいうのは例外中の例外なのだ。

 

 「んまぁわかるよ。かっこいいよね、アレ。最近は【アストレア】のとこの黒髪美人さんのお陰で流行(ブーム)になってるらしいし」

 「……」

 「僕も一度やってみたいなあ、あの、居合いってやつ。浪漫があるよ、あれは……ってどうした?」

 

 彼は足を止めていた。

 ……ズダ袋のせいで感情が読みづらいな。

 

 「私は」

 「うん」

 「……かっこいいからじゃ、ないです」

 「おおっと……」

 「ちゃんと、習いました」

 

 素直に両手を挙げる(ホールドアップ)、だ。

 そんでもって、ここまで積み上げてきた成果もあった。

 

 「へえ、誰に習ったんだい? 極東出身って言ってたけど……湾刀の術理を修めてるやつだから、噂に聞くサムライってやつ?」

 

 我ながら自然な流れだと褒めたくなる。

 相手の素性を探るときは、こちらから真っ正直に問いかけるのではなく、相手が尻尾を出すのを待つべきなのだ。

 

 「神様です」

 「おおっと……」

 

 もしかして、マジに期待の新人なのか?

 

 

 

 「これがいいです」

 

 ───マジに期待の新人かもしれん。

 何がって、武器屋に入って一分で業物を持ってきやがったからだ。

 しかも無銘の。いや武器自体に名前はあるんだろうが、【鍛冶】持ちの上級鍛冶士の作品じゃないんだから無銘といっていいだろう。

 そこら辺に適当に置かれていた、質のいい武器を、こうも短時間で引っ提げてくるとは。

 

 「うん、僕もそれがいいと思う。……けど、本当に湾刀でいいのかい? 普通の剣より繊細だよ?」

 「……」

 

 こくり、と首肯が返ってくる。ならばよし。

 

 「さて、それじゃあ次は防具だね」

 「───」

 「といっても小人族用のは少ないからなぁ……鉄製のやつと、革のやつ、どっちがいい?」

 「……革の帽子が欲しいです」

 「鎧は?」

 「……」

 

 今度は横に振られる頭。まあいいだろう。少なくとも頭部は守ろうという心がけは評価できる。

 ゴブリン相手に撲殺されるのは稀だし、鎧に手を出すのは痛い目を見てからでも遅くはない。

 そういうのを引っくるめての『新人講習』だ。

 

 「そんじゃ、仕上げだ」

 

 革の帽子の上にズダ袋を被るという器用なことをしたらしい───着替えのシーンは見せてもらえなかった───彼の首に触る。

 困惑した様子のグッドフェローくんに、アポロン様からのプレゼントだ。

 

 「《太陽のネックレス》。役に立つよ」

 

 なにせ第二等級の防具だ。我が主神様も過保護だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンの良心的な所は、燐光に満ちていることだ。

 少なくとも僕が探索したことのある場所で、松明や魔石灯が必要になったことはない。休息(レスト)の際に火を焚く程度。

 そして、ダンジョンの悪辣な所は、相手が無限だということだ。

 敵を倒して進んだ道を引き返せば、敵がいる。

 それをわかっていない零細ファミリアの新人は、えてして引き際を見誤る。

 

 「初ダンジョンの感想はどう?」

 「……明るいです」

 「そうだねえ」

 

 わざわざご丁寧に光源を用意してくださる迷宮というのは珍しいのではないだろうか。

 探索する側としては、火持ちを作る必要がないっていうのはありがたい。

 じゃあ探索される側に利点はあるのかって話になると、たぶん必要に迫られてなのだと思う。

 なにせ、ここら辺のモンスターに、闇を見通す能力は備わっていないのだ。

 

 さて、さて。

 

 「体調はどう? 緊張してる?」

 「……」

 

 少し固まって、首肯。

 

 「怖い?」

 

 これには、すぐに否定が返ってきた。

 素直じゃないのか、強がりなのか。

 息遣いから心中を洞察するのは楽士の嗜みである。

 彼の呼吸が少し荒くなっているのも、心臓の鼓動が早まっているのも、楽士として鍛え上げられた第二級冒険者の知覚はしっかり捉えている。

 

 「戻って、鎧買うか?」

 「要りません」

 「おおっと」

 

 会話はやめない。

 冒険するにあたって、軽口のもたらす物事は意外にも多く、大きいものだ。

 深刻になって勝てるのならそうするのも吝かではないけれど、何も輝ける鎖帷子(チェインメイル)の英雄よろしく世界を救う戦いではないのだ。

 無名の冒険者が、迷宮の一番浅い階層で、最弱のモンスターと、ただ戦うだけ。

 ()()()()()()()()()に緊張を強いるのは、あまりにもバカらしい。

 

 「……っていうのが持論なのだけど、君はどう思う?」

 「道理です」

 「君とは気が合いそうだ」

 

 もちろん、話してもよさそうだったから話したのだ。

 緊張でガッチガチ、いざ乾坤一擲の戦いに臨まんってノリの新米の気炎を削ぐような話はしない。詩人として戦意高揚を促す語りはいくらでも修めている。

 ただ、この子にはこういう話をした方がいいかな、と思っただけだ。

 

 

 

 

 

 『───ギィ』

 

 

 

 

 

 「エンカウントだ」

 

 ゴブリン。

 最弱のモンスター。

 この子にとっては初めての冒険。

 

 「準備はいいかい?」

 「……」

 

 こくり、と首肯。

 出会った時から何も変わらない姿で、彼は武器を構えた。

 携えるのは無銘の業物。鉄の刃。

 息は荒く、戦意は十分。

 こちらも、戦闘続行不可能と判断した際に介入するための準備は整っている。

 

 「よしっ! じゃあ、行け! 《剣を持って走って行って、あのあん畜生をぶちのめしてやれ!》」

 

 最後の仕上げ。即興歌に発展アビリティ【歌唱】と【スキル】を合わせての戦意高揚。

 ───いや、まあ、僕も大概過保護だな。

 

 でも、別にいいだろう。新米の面倒を見るのは久しぶりなのだし、あの子はいい子だ。少し変わってるけど、それでも、どこにでもいるような優しい子供だ。僕はそう感じた。

 傷ついたなら高等回復薬を費やすことに異論はないし、刀が折れたなら別の武器を相談した上で買ってあげよう。鎧を欲しがったなら、ほんの少しからかって、上等なものを用立ててあげよう。

 だから、頑張れ、少年。

 

 そう、突撃してくるゴブリンと相対する小さな背中に、心の中で声援(エール)を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 「《観測開始(スコープ イン)───私は月を奉ずる者》」

 

 

 

 

 首が舞った。

 人外染みた───否、人体の限界を知り尽くした者の肉薄、抜刀、斬殺。

 

 

 「……なんだ」

 

 きっと無意識に零れ落ちた一言。

 明確で、絶望に満ちた、凍えるような失望が込められた言葉。

 

 ……訂正。

 やっぱり変なのじゃないか、この()

 

 

 

 




フリュー

 性別を悟られないためにくぐもった声で会話している。
 恐怖はない。
 一言にありったけの諦観と絶望を込めた。
 どうしてこんなに闇が深くなっているんですか?(電話猫)
 

団長殿(オルフェ)

 なんだこの変なの……
 ↓
 名声欲なし、力も求めない、よし!(現場猫)
 ↓
 これは期待の新人だぁ……(歓喜)
 ↓
 初めての冒険だ! がんばえー!
 ↓
 一挙動で小鬼の首をすっ飛ばす達人じゃねぇか! どうなってんだこの変なの!?

 詠唱の時の声色で性別看破している。お前、女子だったのか……(お嬢様の護衛攻略√)
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