TSロリが逝くダンまちゲーRTA   作:原子番号16

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 章ごとに10話区切りを目標にしていたのですが、早くも達成不可能なことを察してしまったので初投稿です。
 かなり難産でした。10話区切りって思ってたより……難しい……難しかった(瀕死)。配分を考えるのが難しいですねこれは。

Iris Kleine様、Kuzuchi様から誤字報告をいただきました。ありがとうございます。

 佐藤東沙様から誤字報告をいただきました。ありがとうございます。


mp.6『再会/グッドフェロー』

 ついに【魔法】をお披露目するRTA、早速始めていきます。

 

 

 前回、【魔法】を獲得し、社宛てのお手紙を作成した翌日から再開です。

 

 起床した所で、まずは【魔法】を使います。

 起床した直後に打ちます(再掲)。

 本来、中堅派閥に所属している場合、魔法の試射イベントは先輩魔導士兄貴の引率の(もと)、ダンジョンの適当な広間(ルーム)で行われます。が、素直にその道筋を辿りますとチュートリアル含めてテキスト量が凄まじいです。

 なので、色々な手順をすっ飛ばしての魔法行使がタイム短縮に繋がるんですね。

 それでは、うれし恥ずかしの魔法のお時間です。

 

 

 ───【悪戯妖精(グッドフェロー)悪戯妖精(グッドフェロー)、夜を彷徨う浮かれもの。妖精王に傅く道化。夏の夜空に虚実を唄い、溺れる夢を囁いて】!

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───【ディア・オーベイロン】。

 

 

 貴方が詠唱を完成させると、何も起きなかった。

 

 光も生じない。

 音もない。

 宛てがわれた一室は平時のまま、早朝の冷気とうららかな陽光に満ちている。

 ただ、精神力(マインド)の抜け落ちた感覚が、魔法行使の証明として、貴方に少々の倦怠感を与えていた。

 

 貴方はこの結果を嘆いてもいいし、特に気にしなくてもいい。

 

 

 

 

 →【気にしない】

 

 【悲しむ

 

 

 

 

 貴方はふむ、と形のよい眉を僅かに歪める。

 詠唱に不備はなかった。

 燃料となる精神力も消費されている。

 となれば、単純に《魔力》を含む魔導士としての実力が足りていなかったか、【恩恵(ファルナ)】に記載されていない隠された条件があるか、あえて記載しなかったか、大まかに分けてこの三種だろう。

 三つ目かなぁ、というのが素直な感想だった。

 貴方の脳裏に、出会って二日となる主神の顔が思い浮かぶ。

 妖精の招来。警戒すべき特異な【魔法】(レア・マジック)

 己の知る【ステイタス】に何かしらの『不備』が設けられている可能性を頭の片隅にそっと置いて、貴方は身支度のために寝台(ベッド)から退いた。

 

 

 その、瞬間である。

 

 貴方の足が、()()

 

 

 敷物を敷かれているとはいえ硬質なはずの床が、ぐにゃり、と変形する。

 貴方に知識があれば、極東の甘味、寒天のようだと思ったかもしれない。ひどく反発する寝台(ベッド)、あるいは踊る粘液(スライム)のよう。

 柔らかなそれは、貴方の小さな足を容易く受け入れる。

 くるぶしを飲み込み、ふくらはぎを越えて、大腿(もも)に達した所で、ようやくその変形を終えた。

 さて。

 圧迫された『柔らかな床』は、包み込んだ貴方をどうするだろう?

 

 

 はたして、貴方は『床に弾き飛ばされた』。

 華奢な身体がトランポリンのそれのように───尤も貴方の知識にはないものだが───宙に打ち上げられ、飛んでいって、天井すれすれまで上昇し、()()()()()()

 

 

 ───貴方は【ステイタス】不相応に達者な体捌きで受け身を取り、負傷することなく床に戻ってきた。

 敷物の敷かれた硬い床だ。

 着地すると同時に、貴方は妖精眼(グラムサイト)まで起動しての索敵を行うだろう。

 懐のナイフを取り出し、寝台の横に置かれた鉄刀を手に取る機会を窺うことだろう。

 そんな様子を嘲笑うように。

 ケラケラと。

 心底愉快そうな笑い声が、なんの変哲もない部屋に響き渡る。

 

 

 『それ』は、其処(そこ)にいるのが当然のように、貴方の肩に座っていた。

 

 

 「───ごきげんよう、我が王様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いきなり判定ふっかけてくるのは止めようね(殺意)。

 

 というわけで、悪戯妖精のパック兄貴が仲間になりました。やったぜ。なんか馴れ馴れしいなお前(失礼)。

 これもおそらく『使役』と『招来』の差異なのでしょうが、先程の受け身判定は初見だったので少し焦りました。本来取るはずだった『使役』の場合は、虹色の金平糖三つをリリースした感じの邂逅になるのですが……まあ誤差だな! むしろタァイム的にはうま味です!

 

 それでは身支度を済ませまして、ご飯を食べに行きましょう。

 食堂に着くと、昨日同様に同行してくださる団長殿と、本日の魔法試射イベント限定でパーティに入ってくる魔導士兄貴もしくは姉貴が席についています。パック君を伴ってそちらに向かいましょう。

 このイベントに参加する魔導士兄貴の位階は、例によって主神からの好感度と、派閥内での評価で決定されます。試走の段階では中堅どころのおじさん(Lv.2)でしたが、はたして今回は誰になりますかね……?

 

 ───はい、正直知ってました。

 団長殿の対面に腰かけている小人族(パルゥム)兄貴をご覧ください。とんがり帽子に黒ローブ、まん丸メガネでスリーアウト。見るからに魔法使いな風貌の彼は【アポロン・ファミリア】幹部、魔法大国(アルテナ)出身(脱走)の愉快な魔術師兼魔導士です。

 ……つまり、このファミリアで最高の魔導士です。

 

 団長と幹部と幹部に面識のある新米冒険者、スリーアウトです。

 おそらく同期連中からの好感度は恐ろしいことになっているでしょう。果てしなくどうでもいいですが。立場を高めて幹部プレイしたい方は同期からの心証には気を使おうね! 

 

 んだらば彼等が会話を仕掛けてくる前に、今朝の出来事をお話しましょう。具体的にはパック君を引っ掴んで魔術師兄貴の前に突き出します。これもタァイムのため、卑怯とは言うまいな……

 

 ───はい、魔術師兄貴がパック君を拘束して連行していきました。時間短縮成功です。

 本来の道筋ですと、担当魔導士兄貴の前に突き出したらしばらくして小人族魔術師兄貴が来襲し、第三級に勝てるわけないだろ! になるのですが、今回は直接魔術師兄貴に渡せたので、こちらでも時間短縮になっています。うーまーいーぞー!

 この後パック君は魔術師兄貴によって色々と調べられ、安全であることを確認されてからフリューガーくんの所に帰ってきます。パック君の叫喚が聞こえてきますが無視です。決して邂逅イベントでの仕返しではありません。これだけははっきりと真実をお伝えしたかった。

 

 

 それでは、団長兄貴が死んだ目で頭を抱えている様をスクショしつつ、ご飯をいただきましょう。もっと胃を痛めて♡ おらッ、このリア充が!(足蹴)

 

 

 ここから先、倍速が続きます。

 いかんせんイベントが始まるまではひたすらダンジョンするだけですので殺風景になってしまうのです。よって倍速、倍速、倍速です。

 その間に、Lv.1→2の間にこなすイベントを説明させていただきます。

 

 ざっくり言ってしまえば、邂逅、邂逅、そして決戦です。

 今回、最初のランクアップにワイヴァーン戦のイベントを利用するのですが、そのために必要な物事が実はひとつあります。アイズちゃんとの面識です。

 面識といっても、会話をしたりする必要はありません。こちらの『印象に残る』が達成出来ればオーケーです。それこそじゃが丸くんの屋台で見かけるだけでも十分。今回はアイズちゃんがキラーアント相手に無双する場面で顔合わせを図ります。

 

 『同じファミリア』や『血縁』などを条件とするイベントも多いので、ワイヴァーンのイベントは参加条件が非常に優しい部類です。その分難易度は凄まじいですが。端的に言って地獄を見ます。初心者にはお薦めできません。

 具体的にはブレスへの対抗手段がないとこんがり肉にされてバッドエンドです。火炎吐いてこないインファント・ドラゴンくんはあれでも良心的だってはっきりわかんだね。

 

 そして、アイズちゃん関連のイベント二つに挟まる形で、もうひとつイベントをこなします。こちらのイベントは一切のフラグを必要としない、ランダムイベント一歩手前な代物ですので、起こったら達成して終わりです。

 こちらのイベントは路地裏で発生するので、日々の移動に路地裏を使用していればほぼ確実に遭遇できます。楽でイイゾー。

 

 

 あ、パック君が帰ってきましたね。この間二日。最長記録で草生えますよ。平均は一日と少し、最速はゼロ秒です。第一印象判定の怖いところさんが露呈していますね。

 このゲーム、容姿は良ければ良いほどにいいので、こまめな入浴とまともな服装、最低限、この二つは頭に入れておきましょう。他キャラクター、特に女性からの印象をよい方向に持っていきやすくなります。

 間違っても迫真ずだ袋部・ぼろ布マントの裏技なんてやっちゃあ駄目だゾ!(反面教師)

 

 まあともかくお帰りなさいパック君。シャバの空気はどうだい?

 

 ……おや珍しい。強制連行(ドナドナ)によるパック君からの反撃が来ませんでした。いつもなら暗黒微笑からの《幻惑》なり《スカートめくり》なりぶっぱなしてくるのですが……イメチェンか何か? ままええわ。一応、機嫌直しのために用意していた嗜好品を差し上げておきましょう。

 ほーれ、焼き菓子ですよう。美味しくいただいてどうぞ。……かわいいなあパック君(濁点省略)。

 

 パック君が正式加入したところで、やることは変わりません。イベントが起こるまで淡々とモンスター共を殺して回りましょう。

 

 

 

 

 ───一週間経ちました。伴って新人講習が終了しました。

 新人講習の終了後ですが、この七日間の動向・成績に応じて、自分と同じくらいの実力の方々とパーティを組むこととなります。ただ、この『同じくらい』の幅は広く、同期のみなさんと一緒になることもあれば、ソラール姉貴with二軍メンバーのパーティにサポーターという立場で加入させられる場合もあります。

 つまり、ここで組むこととなる一党の内容はほとんどランダムです。RTAという仕様に真っ向から中指を立ててんなお前な。単独探索の許可を取りたかった理由がこれで、面子が普通の奴等だったらまだマシなのですが、高圧的だったり、〝みんな! ぼくの指示通りに戦ってくれ!〟タイプの人間と組まされるとタイム的にお辛いです。

 

 ……ただし、今回、というより【実験体】のせいでコミュ力がかなり低くなることを前提としている本チャートの場合、同期と組む確率はかなり低くなっています。何故なら、彼等からの好感度が低いからです。

 というのも、団長殿含む幹部の方々、険悪な仲の奴等を同じ一党にする愚行は犯しません。それなりに気の合いそうな人達を組ませてくれます。

 本来のチャートでは、この七日間は同期からの『一緒に飯食おうぜ』『少し話さないか』などの提案を片っ端から断りまくることで、偏屈なやつ、という印象を同期連中に与える予定でした。が、フリューガーくんは幹部とすごい仲良く()していたせいか、同期の冒険者に一切絡まれることなく七日間を終えられました。

 これは……嫌われものじゃな?(凡推理)

 やったぜ()。

 同期の方々は若い人が多く、端的に言ってやりづらいです。なんというか血気盛んですし、こちらが『小人族』というだけでよく思ってこない方もザラにいます。なので、元々アポロン・ファミリアに在籍していた冒険者兄貴達のパーティに加入させてもらうのが理想です。

 つまり何が言いたいかというと、一刻も早く単独探索させて♡

 

 

 そんなわけで、今日で団長殿とはお別れです。元々団長殿が『新人講習』に参加してるのがおかしいという話。アポロン様から極めて好かれていたせいなのでしょうが。

 ここから先、団長殿と会う機会は、少なくともLv1の間はありません。毎日顔合わせてて感覚麻痺してきてるけどこの人けっこう多忙だからね、仕方ないね。

 

 

 団長殿、この七日間面倒みてくれてありがとナス!

 

 

 

 

 ……ありがとナス!

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 あのー、パーティから『オルフェ・リュート』の文字が消えてないのですが。消し忘れか何か? 

 

 えっ?

 あっ。

 ───はい。新人講習の終了と同時に、団長殿と正式にパーティを組むこととなりました。

 

 

 

 

 ?????????

 

 

 なんで? なんで? なんで?

 いや……マジですか。

 これ、報告案件ですね。いやあ驚きました、アポロン様からの好感度が高いとこんな現象が起こるんですね。当時の私の困惑ぶりが映像から察せます。たぶん、この不自然な硬直はウィキを確認してた気がします。走ってる時にウィキ確認とか走者の屑ですねこれは間違いない……

 しかし、この時期に団長殿とパーティを組むとなると……ああやっぱり。新しくもう一人、パーティに加入している子がいます。

 

 団長殿の後ろに隠れてこちらの様子を窺っている黒髪ショタ兄貴オッスオッス、まさかお前とパーティ組むことになるとは思いませんでした。まあこの時期の、というより団長殿とソラール姉貴が死んでない時期のお前なら……大丈夫やろうか……? 大丈夫だな?(確認)

 

 ───はい、『ヒュアキントス・クリオ』が()()()()()()()()パーティに加入しました。お前のせいでガバったらビンタも辞さないからな(脅迫)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 その子は、変な格好をしていた。

 

 頭から袋? を被って、布のマントを身に付けた、とても小さな小人族(パルゥム)

 まだ九歳のぼくより小さいんだから、そりゃあもうとっても小さいのだ。

 正直、こんな小さい人がモンスターと戦えるなんて信じられない。

 ……いいや。

 きっと、そうだ、そうに違いない。()()()()()()。モンスターが怖いんだ。それこそ、かつてのぼくみたいに。

 

 「そんじゃあ、坊っちゃん、ご挨拶出来ますか?」

 

 ───できる。

 オルフェさんの後ろから、しっかりと全身を出して、むん、と気合いを入れる。

 深呼吸をひとつ。

 オルフェさん以外の人との、初めての一党。

 不安だった。

 怖くて、嫌だって言葉が喉奥から飛び出しそうだった。

 けれど、そう、だって、アポロン様からの『お願い』なんだから。

 

 「……初めまして!」

 

 今ならわかる。

 ぼくは、任されたんだ。

 

 「ぼくはヒュアキントス! ヒュアキントス・クリオ! アポロンさまの眷属です!」

 

 きっと、この子も同じなんだ。

 戦いたいけれど、戦う力がなくって、それでも、アポロン様のために戦いたいんだ。

 だったら、やっぱり、ぼくの役目だ。

 オルフェさんから、ソラールさんから、リカルドさんから、トランベリオさんから、沢山のことを教えてもらったんだから。

 今度は、ぼくが───この子の『師匠』になってあげるんだっ!

 

 「ぼくが、一緒に戦ってあげる! だから、怖がらないで、安心してっ! 一緒に、アポロンさまのためにがんばろうっ!」

 

 出来た!

 ちゃんとやれた!

 そうだ、ぼくは任されたんだ!

 アポロンさまから、ファミリアの先達として、この子にたくさん教えて、強くすることを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 「いつも通りでいいから」

 「……その」

 「いつも通りやってくれれば、それでいいよ。あの子もバカじゃないから、それで察してくれると思う」

 「……すみません。小さくて」

 「いや、本当、ごめん、ごめんね……」

 

 

 

 

 

 

 

 




ヒュアキントスくん

 九歳。Lv.1。
 冒険者歴は一ヶ月くらい。
 アポロン様すこすこの民。アポロン様はぼくが生かす、アポロン様はぼくの全てだ……を地で行くショタ。
 アポロンから任せられたお仕事に張り切っている。
 何この子くっそ弱そう! でも安心して! ぼくがちゃんと教えてあげる! だって先輩だもん!(意訳)


 作者としては、正直すまんと思っている。原作キャラを引き立て役扱いとか二次創作の片隅にも置けない所業なんだよなぁ、と。十数話後に見所さんをたっぷり用意しておりますのでユルシテ……ユルシテ……
 Lv.2→3に関わるイベントでえげつないレベルの活躍をする予定。将来的には原作のヒュアキントスより強くなる。ベルくんとガチンコしたらどうなるかな……


団長殿

 本名が割れた人。
 元々ヒュアキントスのことを指導していた所にフリューちゃんの話を持ちかけられた。その流れでヒュアキントスともども受け持つこととなった。
 派閥内でかなり露骨に可愛がられているヒュアキントスと一緒にすることで、フリューちゃんに向けられるやっかみを少しでも軽減しようとする努力が垣間見えている。
 前もってフリューちゃんの実力についてはヒュアキントスに伝えていた。ちゃんと伝えていた。その上でこういう反応を取ることも予期していた。
 フリューちゃんを受け持つ口実として利用しているのもあるが、同時にヒュアキントスを心身ともに成長させるための一計でもある。


フリュー

 なんだこいつ(困惑)
 纏まったお金と一緒に社へのお手紙を出せる日が来たので、ずだ袋の下でわくわくしてるのは内緒だ!












妖精パック、あるいはロビン・グッドフェロー

 タイトルで九割バラしている。
 走者は『なんか親しげやな……』という印象。
 フリューちゃんは謎の懐かしさを感じている。
 『女王様』でないのは露骨過ぎたかも。


 誤字脱字などありましたらどうぞご一報くださいませ。いつもお世話になってます(平伏)。

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