小説版バンドリのヤンデレの様なそうでないような話集   作:現実逃避中

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W.I.N.G.決勝でスター27個取って勝ったな。と思ったら夏葉に32個取られて逆転負けすることが3連続あったので投稿します。


牛込りみ・続

 ついてない、とあなたはベッドで横になりながら心の中でこぼした。ごほっごほっ、と咳も同時についてきた。もう、何度目になるだろうか。

 世間はせっかくの大型連休。晴天が続き気温も落ち着いているまさに絶好の遊び日和! ……なのだが、連休初日から風邪をひいてしまったのか熱を出して咳が出ている。これが多少のものだったら、外出は諦めるが室内でゲームなどして遊んでいるのだが、倦怠感も強く何もやる気が起きず、ベッドの上で過ごす日々を送っていた。

 しかも今でこそ何とか色々考えることもできるようになっていたのだが、連休初日の方はまさしく熱に浮かされた状態であり、意識が朦朧として何をしていたのか何を考えていたのか記憶にない。食事も何を食べていたのか覚えていない。ゼリーとかだろうか? でもそんなもの買ってあったかな……まあ、不都合でないからいいかとあなたは深くは考えなかった。

 

 更に運の悪いことに、連休前に携帯を紛失してしまった。市ケ谷家の蔵に忘れ物をすることはたまにあったりするが、そんな時は有咲から連絡が来るので大事には至らなかった。

 いや、携帯が無いから連絡が出来ないだけか? 有咲に家を案内したっけ? ああでも香澄が知っているから……ということは、やっぱり有咲の家に置いてきてしまったわけではないのか? そんな事を最初の方は考えていたが、熱のせいで段々と考えるのも億劫になってしまった。

 倦怠感のせいで医者にも行けていないので、仕方なく家にある常備薬で対応するしかなかった。食事は食欲もあまりないのでゼリーやらフルーツの缶詰やらで何とかしのいでいる。……そういえば、我が家にこんなにゼリーとか缶詰とかあったっけ? とあなたは最初訝しんだが、体調が悪かったこともあり、自分の勘違いだったことにして特に考えていなかった。

 ごほっごほっ、と咳が再び出てきたのであなたは寝ることにした。もっとも寝すぎていて寝付くのに時間がかかってしまうのだが。せめて連休中に体調を治せるようにしよう、そう考えたあなたは布団を被った。

 

 

 

 

 

 

 ふー、とあなたは息を吐いた。

 結局、連休中は寝込むことになってしまったが、体調を治すことに専念したおかげか、連休明けには元気な状態を取り戻した。

 携帯どうしよう……とぼんやり考えながら、途中まで一緒に登校する香澄の事をいつもの通学路の途中で待った。

 ……のだが、一向に香澄が現れない。ちらりと腕時計を確認するともうそろそろ学校へ向かわないと遅刻してしまいそうな時間に差し掛かって来た。

 どうしたのだろうか? とあなたは首をかしげた。あの幼馴染が遅刻や無断欠席などをするなど考えられない。連絡を取ろうにも携帯電話が無いのでこちらからは連絡が出来ない。向こうもあなたが形態を紛失したことは知らないはずなので繋がらないと首をかしげているのでは……と思ったが、そうであれば家に電話を掛ければいいはずだ。幼馴染だけあって、香澄はあなたの家の電話番号を知っている。欠席や遅刻となればその時間に家に電話がかかってくるはずだが……

 どうしようか、あなたは考えたが。そろそろ間に合わなくなる時間になってしまったので、心の中で香澄に詫びたあなたは学校へ向かって走り出した。

 

 

 

 遅刻ギリギリの時間で教室へ滑り込むことが出来たあなたは、呼吸を整えてクラスメイトにおはようの挨拶をした。

 のだが、何故かクラスメイト達のこちらを見る目が妙に生暖かい。ニヤニヤ笑っている者もいる。

 首をかしげつつ、とりあえず席に着いたあなたに隣の席の友人がニヤニヤしつつ、肘で突いてきた。

 

「やったじゃん! 今日はどうした? もしかして……ヤッたじゃん!? その疲れで珍しく遅刻しそうだったのか!? くー、羨ましいぃ……!」

 

 そう楽しそうに話しかけて来た友人の言葉にあなたが首をかしげているうちに、学校の風紀委員で友人の恋人でもあるクラスメイトの少女が「朝から下品です!」と友人の頭をはたいた。

「何すんだよー」と言いながらも、楽しそうな表情を浮かべる友人に、表面上は怒っている様な言葉を掛ける友人の恋人。いつものいちゃつきが始まったことに、あなたは……否、あなたを含むクラスメイト達は、ご馳走様と溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 放課後、結局友人やクラスメイト達のニヤニヤの理由がわからず下校することになった。スマホどうしようかな……と考えながら歩いていたあなたの目に見覚えのある少女が飛び込んできた。

 長く美しい黒い髪にすらりとした手足、パーカーが標準装備の美少女……花園たえ。

 あなたは体調を崩してスマホをなくしたため連絡を取ることが出来なかった友人に気軽に声をかけた。

 

「あ、あ……えっと……ど、どうもっす……へへ……そ、その……おめでとうっす! じゃ、じゃあ自分はこれで!」

 

 あなたが声を掛けたらたえはびくっと反応した後、泣き顔を無理矢理笑顔で整えたかのような表情をした。

 あなたの想定外の反応をしたたえに呆然としていると、たえはあなたに背を向けて走り出してしまった。

 何がおめでとう? どうして泣きそうなの? と頭の中でぐるぐると疑問が渦巻き、あなたは走り去るたえの背中をただただ立ち尽くして見送るだけだった。

 

 

『あ……おめでとう。えっと……その、君が……うん、君が幸せならそれでいい、かな……あはは。出来ればちゃんと言って欲しかったけど……うん、その、ごめんね。まだ、気持ちの整理が付いてなくて……今日は帰ってくれる?』

 

『はぁ~~~この零点ボーイ……ったく、そういうことならちゃんといいなさいよ……ああもう、おめでとう! これでいいんでしょ!? ……ばか、追ってこようとしないの。最後のミッションよ……』

 

 ヤマブキパンで沙綾に、近くのコンビニで有咲に出会ったが、たえと同じ感じが続いていた。

 正直泣きそうな顔でおめでとうと言われても何が何だかわからない。話を聞こうにも遮られたり、追い出されたりしてしまい叶わない。

 朝からクラスメイト達といい有咲達といい……と、ぼやいたあなたはそっと溜息をついた。

 

「あ、あの……」

 

 そんなあなたに背後から声をかける人物がいた。

 わざわざ確認するまでもない、十数年聞いてきた声であった。

 その声の持ち主──戸山香澄は、やはり有咲達と同じように瞳を少し潤ませていた。

 あなたに声をかけた香澄は俯いてもじもじした様子を見せていたが、やがて顔を上げて意を決したように──瞳は更に潤んでいたが──言葉を吐き出した。

 

「あ、あの……おめでとう! ……それじゃあ、私はこれで……」

 

 背を向けてどこかへ去ろうとする香澄の腕を、待って、という言葉と共につかんであなたは香澄を引き留めた。

 ひぅ、と息をのむ香澄だったがあなたも朝から色々と訳の分からない事を言われているのだ。一方的に言われるだけではなく、少しぐらい話をしてもらってもいいのではないだろうか。

 あなたは香澄に、何故今日あった皆が自分におめでとうと言うのか教えて欲しい、と尋ねた。尋ねてから、少々問い詰める様になってしまったと少し反省した。

 一方、それを尋ねられた香澄は少し首をかしげていた。あなたが何故そんなことを聞いてくるのかわからないといった様子だ。

 

「……だって、付き合うことになったんでしょ?」

 

 付き合う? 香澄のその言葉に今度はあなたが首をかしげた。

 誰と? 何に? 最近スマホを紛失して誰かと連絡を取る暇もなかったあなたには心当たりがない。

 買い物? 練習? いや、どちらにしても、祝福されるほどの事ではない。

 あなたが首をかしげて困惑していることを香澄も感じ取ったのか、香澄もサイド首をかしげた。

 

「えっと、りみりんと付き合う事になった、んだよね?」

 

 りみと? 何を? あなたは首をかしげるばかりだ。

 香澄も首をかしげていたが、唐突に「そうだ」と言ってカバンからいそいそと自分のスマホを取り出した。

 香澄はスマホを操作して、「はい」とあなたにそこの画面に映っていた画像を見せた。

 その画像を見たあなたは────目を見開くほどに驚いた。

 何故なら、その画像には、あなたとりみがキスをしている場面が映し出されていたからだ。

 

 

 

 

 

「お待ちしていたぞ、主殿」

 

 画像の件を尋ねるべく、あなたはりみに会うことにした。

 香澄にスマホからりみに連絡を取ってもらい、待ち合わせることにした。

 最初は香澄にもついてきてもらおうかと悩んだが、りみが「2人きりがいい」と言っていたというので、香澄と別れてりみに会う事になった。

 待ち合わせ場所は花咲川近くのカフェ。男女のカップルが多いことで有名である。

 りみはそのカフェの席の一角に腕を組んで座っていた。

 

「いや、もう主殿ではなく……だ、旦那様と呼ぶべきか、うむ」

 

 頬を赤らめて呟くりみの言葉を聞き流したあなたは、りみの前の席に座った。

 聞きたいことがある、とあなたは会話を切り出した。

 あの画像は何なのか、何故皆が自分とりみが恋人になったと思っているのか、どうしてあの画像が無くしたはずの自分のスマホから送られてきているのか。

 矢継ぎ早になってしまったあなたの質問に対し、りみは「うむ」と前置きし、先に注文してあったであろうチョコレートアイスをスプーンで口に運んでから答えた。

 

「連休初日の方、旦那様が体調が最悪の時に看病したのは、うちだ」

 

 え? とあなたは驚いた。体調が最悪だった連休初日の方は確かにどうやって生活していたか覚えていない。りみが看病していた……? 

 

「粥を食べさせたり、汗を拭いたり……大変だった。いやー、ホンマめっちゃ大変だったで。うちもまだまだシュギョウが足りぬ、それを自覚した」

 

 大変だったと自慢したいのか、りみは薄めの胸を薄く反らして誇るように言った。

 あなたは困惑するばかりだ。

 

「しかし、シュギョウが足りなかろうが何だろうか主殿の看病を止めるわけにもいかない。とはいえシュギョウ不足のみでは疲れは溜まる一方。そんな時にうちは主殿に聞いた、“うちと付き合ってくれへん? ”と」

 

 待ってほしい、疲れたのも大変だったもの分かるがどうしてそうなるのか。

 

「愛する人の世話は疲れないとよくやっているだろう。うちもそれにならった。そしてうちの告白に対し主殿は“勿論”と言った。それで主殿から旦那様へとクラスチェンジしたというわけだ」

 

「証拠もあるぞ」そう言ったりみはスマホをいじり、録音されている音声を流した。

 確かに、りみの告白に対して「勿論」と言っている自分の声があった。

 あなたは唖然とした。何せ全く覚えが無いのだ。しかし、りみはそんなあなたにかまわず話を進めた。

 

「恋人になったらそれらしい事をしようと、眠る主殿にお休みの……キ、キスをした。その写真を撮った。嬉しくて嬉しくて、うちは皆に写真を送ってしまった」

 

 そうだ、何故あなたのスマホをりみが持っているのか? 

 それも疑問だったあなたは頬を赤らめて自身の行いを告白したばかりのりみに尋ねた。

 

「ああ、それは簡単だ。うちがスマホを拾ってそれを旦那様の家に届けたら、そこで病床の旦那様を発見した。それだけ。パスワードは適当に打ち込んだら解けたぞ。もうちょっと複雑なものにした方がいい」

 

 あっさりしているが……まあ、そんなところか。

 パスワード自分の誕生日を反対から入力しただけでは簡単すぎたか。とりあえず、スマホの件は納得した。

 しかし、自分には彼女と恋人になる返事を記憶した覚えが無いのだ。返事をした証拠はあるが、やはり曖昧なままにするのはよくない。

 りみの事は嫌いじゃないけど……とあなたはりみに声をかけた。

 

「旦那様は……うちではダメか? うちは、めっちゃ好きやねん。じゃなかったらキスなんてできないし……」

 

 うっ、とあなたは言葉を詰まらせた。

 りみが一方的にした事と考えてしまうのは簡単だ。しかし、仲の良い相手とはいえ、キスをするぐらい本気だったのも事実だろう。

 りみが顔を伏せた。肩を震わせてすすり泣く様な声を出している。あなたがオロオロして周囲を見渡したら、他のお客から突き刺さる冷ややかな視線に気が付いてしまった。

 う、と再びあなたは言葉を詰まらせた。りみの事は嫌いではない、というか好きである。しかし、その好きが異性に向けた物かと言うと……

 あなたはそっと自分の唇に指をあてた。りみがここにキスをした、そう思うと頬が真っ赤に染まりそうなほど熱を持った気がした。

 熱があったときの自分がどういう気持ちで返事をしたのかがわからない。しかし、そういう返事をしたという事は、今のこの頬の熱が示すものは、目の前で肩を震わせる少女を見て思うものは……

 あなたは一度目を閉じる、数秒立ってから意を決した様に眼を開いた。

 りみ、自分でよければ。とりみに微かな声で、しっかりと意思のある声で言葉を掛けた。

 りみは顔を上げた、その瞳には輝くものがあった。

 

「……うちでいいの?」

 

 勿論、とあのスマホの録音の様に言葉を返した。

 周囲の冷ややかな視線はいつの間にか温かいものへと変わっていった。パチパチと拍手が聞こえて来て、あなたは照れてしまった。

 

「では、これからよろしく、旦那様!」

 

 ニンジャ少女は星の様に輝く笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上手くいった! 星の様に輝く笑顔の裏で少女は暗く笑った。

 

 主殿の()()()()()()()()()()()、拾ったスマホを返すのを口実に主殿の家に行った時、熱にうなされている主殿を見つけた。

 勿論看病はしたが、それ以上ない絶好のチャンスだった。

 朦朧とする主殿に告白した。実の所、体調不良でそれどころではない主殿からの返事は無かったが、好都合だった。

 主殿をつけ狙う“女”どもから護衛をするために、盗聴器を仕込んであった。その中で聞こえた言葉から告白の返事になりそうなものをピックアップして編集した。後は主殿のスマホからキスをしている画像をばらまいた。

 その画像を見て周囲がどう思うか。年頃の少年少女は、誰もがそういう関係になったのだろうと、期待を込めて邪推するだろう。勝手に周囲の方から逃げ場を埋めてくれる。

 後は色仕掛けである。

 

(師匠。やはり師匠は凄い。泣くのがこんなにも効果があるとは……だが、巧遅に過ぎたな)

 

 泣いたのはニンジャ、特にくのいちお得意の演技である。

 敵の存在を知ってから、ずっと磨いてきた。それがついに役に立った。

 この恋人が多いカフェを選んだのも、りみの策略である。周囲の視線も、主殿の背中を押す力になるだろうと、選んだ。

 

(主殿は……旦那様はうちが守る。もう、師匠もベンケー殿もうさぎ殿も獅子メタル殿も手出しできぬだろう。所詮、ドシロート。うちが本気を出せば、相手にはならなかったか……)

 

 ふっ、と内心でバンドメンバーに向けて勝利の息を吐くりみ。

 なお、実のところは運がよかっただけというのもあるが……それを言っても「運も実力のうち」と返されるのが関の山だろう。

 

(出来れば20代の半ばまでにはケッコンしたいな。子どもは何人必要だろうか? ベースを……いや、ドラムやボーカルやキーボードを覚えさせて家族でバンドしたいから最低3人か。ということは夜の相手も……はよ、学んで旦那様を満足させねば!)

 

 これから先のことを考えて、りみは星の様に輝く笑顔を、内心でも浮かべた。

 




最初はもうちょっとヤバい事になっていましたが、沙綾のネタと被ってしまうので変えました。

一応、たえと沙綾の構想も出来てはいますが、色々と変わったことが多くて書く時間がありません……気長にお待ちください。
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