砂漠の姫君   作:豊饒 ゆう

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捏造注意報。
原作で出てたら誰か教えて下さい。


二話 何時か新世界で起きた話

 濛々冷気の立ち込む氷上にソレはいた。

 肌色過多な純白のサマードレスに身を包み、上から毛皮のコートを羽織った小さな影。素肌が一瞬触れるだけでも凍傷を負いかねない凍結の大地へと立ち尽くすソレは、服装が服装であれば靴すらも履いてはいなかった。あまりにも場違いで酷な装いに在って、しかもソレは身動ぎ一つみせやしない。異常。非常識。到底まともな神経ではないことがありありと窺えた。

 

「ちょっとぉガープさん? (やっこ)さん平然と立ってるんですけど……」

 

 クザンはソレを遠目に嫌気が差していた。

 自身の上司であるガープに唆され──或いは強制的に拉致されて「おいクザン、ちょっと全力で能力使ってみ」と、云われるがままで己のチカラを行使した結果。遠く水平の果てまで凍てつき──どうだ見たかとドヤ顔晒せば、その十数秒後に彼方の果てから砂嵐が物凄い速度でやって来た。

 ここ一~二年、海賊海軍両界隈で「砂」というキーワードは非常に危険視されている。何せ航海途中の晴天下、突発的な砂嵐に数多くの船が沈められていたのだ。何が起こっても当たり前の新世界にあってさえ異常と云わざるを得ない自然災害は、海行く全ての人間を震わせていた。そんな自然災害が実は、人為的災害であったと知れた事実はクザンの記憶にも新しい。

 

「おう、噂通り中々の別嬪だな!」

「確かに! いやでも小さすぎて俺はって、いやいやそうじゃなくて!」

 

 肩口で切られた夜色の髪に月を思わせる白い肌と黄金が瞳。

 おとぎ話に出る妖精が犯人と知れた世界の衝撃は如何程で、さらには妖精が世界を脅かす大海賊──金獅子海賊団船長シキを打ち破ったという情報はどれ程の人間が度肝抜かれたであろう。

 

「どーすんのよこれ……ガープさん」

「そりゃおまえ、おれたちは海軍。あの嬢ちゃんは海賊でつまり────」

 

 戦う他に道はなく、それを証明するようにガープは五〇〇メートル程先で佇む少女へ向けて躊躇なく得意の一撃を投げ放つ。放物線など描かない。直線で、空気を切り裂く一撃は大海賊をも翻弄した。その一撃が、たったひとりの小さな少女へ向けて牙を剥く。

 

「────妖精狩りだぁぁああっ拳骨隕石(ゲンコツメテオ)ぉお!」

「うわぁ会話もなくやったよこの人……ま、悪く思うなよ────」

 

────バロックデゼルト海賊団船長

    「砂漠の妖精」ミス・クロコダイル

 

 

 

 

 すべてが凍てつく海の上。

 クロはひとり静かに立ち尽くす。普段は遠く鬱陶しい程に見える鳥の姿も、数分前にすべてが固まり落ちて砕け死んだ。海中は窺えないが空ゆく鳥すらも死した環境下である。命ある尽くが生命活動を止めたのは容易に想像できるであろう。

 

「派手な挨拶ね」

 

 誰にともなく零れた所感はクロの本心である。

 挨拶──遍く存在を死へ至らしめた一撃は、クロにとって正しくそれでしかなかった。例え身の丈一三八センチで打ち止められた、成人にして幼女と見紛う容姿であってもクロは他を圧する強者なのだ。この程度でどうこうなる程に軟な戦いを経験してはいない。なんならひと月前には挨拶代わりで軍艦落とす傍迷惑の塊と雌雄を決していた。それと比べれば凍結なぞ────。

 

「いや、どっちもどっちかな……個人的迷惑度合ならシキね。あらゆる意味で」

 

 執拗な、それこそ秘宝を求める海賊さながらの勧誘で辟易させられた相手。金獅子のシキを思いだし、生涯二度と訪れないであろう空中の激闘に嫌気が差したクロは今や空中戦最強と目されていた。主に海軍と、シキを知る者たちからだ。フワフワの実を真骨頂たる空で下す。それがどれ程の難易度かは、戦った当人が一番知っていた。

 

「目的達成に一歩近づいたとはいえ……少しやりすぎたかな」

 

 お陰でクロは名を上げたい者たちに、昼夜を問わず襲撃されている。

 弱小海賊であればいい。吹けば飛ぶ──新世界での弱小は他で十分に脅威足りえる──存在であり、クロは片手間で船ごと沈めてしまう。問題は新世界の本物たちだ。彼ら彼女らは挙って能力者である。中でも偉大なる航路(グランドライン)外からの新世界移住組は猛者が多く質が違う。いくらクロが覚醒者であり、能力と本人の調和性がずば抜けて良くとも限度はある。覇気は消耗するのだ。

 どれほど強く連戦連勝を誇っていても、立て続けに来られてしまえばいずれはクロとて負けるであろう。

 

新世界(ここ)での目的は達した。後は偉大なる航路前半の海(パラダイス)に戻って静かに機を待つだけだったのに…………少しは空気を読んだらどうだァ!? クソジジイッ!」

 

 顔目掛けて飛来した黒い塊を回避しつつ、クロは爬虫綱が黄金の瞳へ殺意を灯し声高に叫ぶ。

 快活な表情に巫山戯た態度。戦闘域に立ちながら寝るわ食うわの傾奇者。海軍きっての問題爺──英雄ガープは距離にして五〇〇メートルの位置で投擲姿を晒していた。その横にはガープを軽く追い越す長身クザンが立ち尽くす。

 

「誰がジジイかぁぁーっ! おれはまだまだ若いぃぃっ!」

 

 距離のためかジジイ発言が原因であろう。

 クロと同じく声高に叫ぶガープは、続けざまに砲弾を掴み連投する。

 空気を切り裂く飛翔音。本来であれば物理法則へ従うはずの砲弾は一切放物線など描かない。最短距離を最速で、そこらの木端には視認すら危うい弾速を以て襲い来る。

 

「噂通りかァ……チッ! 砂漠の(デザート)────」

 

 覇気をふんだんに込められたガープの一撃──拳骨隕石(ゲンコツメテオ)と派生系である拳骨流星群(ゲンコツりゅうせいぐん)は、回避以外の対処法が一つしか存在しない。即ち覇気だ。それもただ纏うだけでは意味がない。ガープの一撃を上回る覇気が必要とされ、ゆえに多くの海賊はガープの一撃で沈みゆくがしかし。クロにとっては造作なきことであった。

 

「────黒剛宝刀(ネラスパーダ)ッ!」

 

 砂と化した右腕を横へ薙ぐや、小さなクロから身の丈を無視した四つの砂刃が放たれる。砂によって構築されているであろうその凶刃はしかして黒く砂鉄を思わせた。

 刹那。

 黒砂の刃が黒球を両断するやいなや爆発。

 黒煙吹き上げ両者の視界を奪い尽くした。

 

 

 

 

────砂嵐「重」(サーブルス・ペサード)

 

 仕掛けたのはクロであった。

 視界の奪われた戦場にあって覇気を行使できる者は苦とも思わない。見聞色。それを十全に扱うクロは、目蓋が下りていようと百発百中の一撃を放つがしかし。ガープ、クザン両者も条件は同じであった。

 

「ぬ、剃ッ」

「ア~イス(ブロォック)

 

 黒煙を穿ち迫りくる砂嵐の砲撃に、ガープは離脱しクザンは氷塊で対処する。足元が迫り上がり壁を得たクザンは、余裕綽々に氷越しで前を見て固まった。氷塊の厚さ分おおよそ五メートルの位置。円錐状に渦巻く砂で武装した左手を、今まさしく突き出さんとした流動体のクロが其処には居た。

 

砂漠の金剛杭(デザート・ラパーロ)

 

 クロとクザンの視線が氷越しで交わる。

 その一瞬、クザンは己の死を然と垣間見た。

 呆気無い終わりだ。実に容易く氷塊は砕け散った。直径三メートル程の削岩機がごとき働きをみせた一撃は、揚々とクザンが胸部へ吸い込まれてゆく。世界のすべてが動きを遅め、死に逝くクザンは思う。

 

(あーこの嬢ちゃんホントキレイだなぁ……これでボン・キュッ・ボンなら云うことね────)

「何をボサっとしとるか戯けがッ! 指銃ッ! ついでに受け取れィッ嵐脚二連ッ!」

 

 舌打ち一つ。剃からの月歩によって中空で流れを見ていたガープは、愛弟子とも云えるクザンの窮地に血相変えて飛び込むがしかし。

 

(ヌッ!? コヤツ……)

 

 クロは砂と成ったままでガープの覇気纏う攻撃を受け流した。それは偉大なる航路前半(パラダイス)やそれ以前の海で度々見受けられる、覇気を知らない者と自然系(ロギア)能力者の戦いを彷彿とさせる一幕だ。

 

(おれの攻撃を流体のまま受けきりおった)

 

 自然系能力者は凶悪で強力な肉体の変化──質量を無視──を行えるが、武装色を扱う者にとってそれは的が巨大化しているも同然である。そういった輩を数多く屠っているガープは、対自然系が玄人中の玄人。今更に下手を打つなぞ有り得ない。

 

「歯を食いしばれクザンッ!」

「ガァッ!?」

「チッやるじゃねェか老いぼれが」

 

 刹那の判断であった。

 数秒と掛からず串刺しになるクザンを、ガープは最小限度の覇気入り嵐脚で吹き飛ばす。覇気を込めたのはそうしなければクザンの身体が砕け散り、実質的にクロの一撃を回避できなくなるせいだ。

 クザンはものの見事に吹き飛び、身体を氷と化して砕いた後で瞬時に再構築。冷気を吹きながら立ち上がる。その表情は険しく、瞳には死の恐怖が宿っていた。

 

「クハハハッ! 殺せはしなかったがァ、今ので怖気づいて身体が崩壊すると思ったんだがナァ……根性あるじャねえか雑氷(ザコ)海兵」

 

 風に吹かれて舞い踊る砂塵と化したクロは、下半身は砂としたまま上半身を構成。地上十メートルの位置でガープらを睥睨する。瞳には不満の色がありありと覗いていた。

 

「随分と覇気を極めているな……聞いちゃいないがもしやお嬢ちゃん……ワノ国へ行ったか?」

「チッそれはテメェもだろうがァ……エェ? 英雄ガープ中将さんよォ」

 

 クロは今の一戦でクザンを確実に仕留めようとした。何せ現状は度重なる激戦の疲労により長期戦を行えないのである。

 そのために危険を承知で切り札が一つ、未だ世間へ知られていない「未来予知の流動回避」を用いてまで獲りにいったのだ。それが不味かった。ガープは確実にクロの脅威度を跳ね上げ厳戒態勢、さらには殺し損ねた自然系能力者のクザンがいる。クザン自体はどうとでも対処出来るクロはしかし、ガープと共闘されれば不利となろう。ならば。

 

「……アア、仕方ねェ。こいつァ特別なんだが…………まァシキに使ったし今更か」

 

 クロは徐に両手を合わせ、覇王が威を込めればそれは十秒と掛からずにできた。

 黒い、真黒な砂の渦。圧縮に圧縮を重ねた結果、爆発四散寸前の縮小された砂嵐の塊。クロでさえ抑えるのがギリギリなのか、小さな両手は小刻みに震え続けていた。

 

「────クザンおまえは逃げろぉぉお! 全力でだァアア!」

 

 獣の本能とでも云うべき第六感がガープを無意識に動かす。

 氷が大地を蹴りつけ即座にクロへと殴り掛かるも──一瞬遅い。

 

「生きてたらまた会おう────」

 

 小さな手の平に包まれた、赤黒い雷鳴をも内包するソレは砂塵の一粒に至るまで覇王色が注ぎ込まれた砂塊。砂嵐の卵。過去。現在。未来。すべてにおいて最強最悪と謳われる広域殲滅絶技。

 

────砂獄の黒嵐(デゼルト・ラスインフェルノ)

 

 自然系であろうと容赦なく身を削る、殺意と悪意に満ち溢れた特大の黒い砂嵐が爆発した。

 

 

 

 

────新世界の海域で何が起きたのか!?

 

────突如として発生した超大な黒く渦巻く砂嵐!

 

────赤い稲妻に黒い雷光が天空を迸る!

 

────犯人は新進気鋭のあの海賊か!?

 

────シキを破った幼女、今度の標的は一体誰だ!?

 

────新人(ルーキー)バロックデゼルト海賊団、ついに手配書更新!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────WANTED

    DEAD OR ALIVE

    CROCODILE

    B1,296,000,000-

         MARINE

 











シキって懸賞金いくらよ。
でもまあ倒したし、色々やらかしたし、懸賞金は12億でファイナルアンサー。12で1・2(ワニ)、96で9・6(クロ)みたいな!
技名? 中二? え? 私よくわかんないです。



高評価を頂き嬉しく思います。
やはり見てくれる方、評価してくれる方がいるといいですね。もしももう少し人気が出たならば、本作品に本腰を入れて書き上げようかと思います。
それまで続くことを祈ってお待ち下さい。
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