ナルトのチャクラとスタミナが十尾以上だったら   作:雲らり

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戦わずして勝つのが真の忍だってばよ

木の葉の里に忍犬を使って捕縛した霧忍の護送依頼を出したカカシは振り返り、ナルトに顔を向ける。

 

「どのみち刺客が迫っているなら話は別だ……ナルト!」

 

「おう! 多重影分身で波の国までの道のりを全部埋め尽くすってばよ!」

 

「違うっ! お前にやって貰いたいのは索敵だ、影分身は消滅時に術者に情報が還元される、それを利用して刺客の居場所を割り出し知らせろ!」

 

「お……おう?」

 

首を傾げるナルトにサスケが補足を加える。

 

「つまり、怪しい奴を見かけたら戦わずに直ぐに分身を解けって事だ」

 

「わ、分かったってばよ……多重影分身の術!!」

 

数百万体の影分身が四方八方に散らばり、森や道を瞬く間に黄色に染め上げる。

 

「ナルト、情報が入ったら直ぐにカカシ先生に知らせるのよ、わかった?」

 

「なんて数の影分身だ……そのチャクラ、ナルト以外のやつが持っていたら世界が滅んでいたな……」

 

「うしししし、そう褒めるなってばよサスケ!」

 

「褒めてねぇよ……」

 

「人の話聞きなさいよ!」

 

(これ程の規模の影分身を展開して息一つ切らさないとはな……これが九尾の力か……ミナト先生はこんなやつと戦っていたんだな……)

 

◇ ◆ ◇

 

ナルト達とほぼ同時刻、別の場所で地形の変容に立ち尽くす者が二人いた。

 

「なんだこれは……幻術……ではないな……」

 

「はい、恐ろしい事に全て実体の影分身みたいですね……」

 

タズナを暗殺する為にナルト達を襲撃する予定だった鬼人再不斬と氷遁の血継限界白は森を蹂躙している黄色に心底困惑していた。

 

「見た目は只のガキだが、この化け物じみたチャクラ量……こんな奴を相手にするのはあまりにも危険すぎる……」

 

「……」

 

「……降りるか」

 

「はい……」

 

(鬼人再不斬の名折れだな……だがこんなところで玉砕する訳には行かねぇからな……)

 

(ガトーさんには悪い事をしましたね……)

 

霧隠れの術と瞬身の術、更には変化の術まで駆使して再不斬と白は慎重に戦場を離脱した。

 

◇ ◆ ◇

 

「結局、特に襲われる事も無く、無事に波の国にたどり着いたってばよ」

 

「どういう事だ、移動中は絶好の機会の筈……刺客は何を考えてやがる……?」

 

「正面から戦っても勝てないと思って寝込みを襲うつもりなのかも……!」

 

「その可能性は十分に考えられる、寝る時は俺一人、お前ら三人の二交代制で寝るぞ」

 

「カカシ先生! カカシ先生! 影分身で家をすっぽり埋めれば寝る時も安全だってばよ」

 

「……土遁で下から侵入したり、時空間忍術で侵入してくる可能性もあるからな」

 

「すっげぇ……忍者ってどこにでも湧くんだな……」

 

「お前にだけは言われたくないと思うぞ……」

 

◇ ◆ ◇

 

タズナの家から少し離れた森の中、昼食を食べ終えたカカシ班が集合していた。

 

「ま……刺客が来るのをじっと待つのも退屈だから俺がお前らに修行を付けてやる」

 

「おう! すっげー術、一つよろしく頼むってばよ!」

 

「お前に下手な術教えるとうっかりで里を消し炭にしそうだから教えてあげない」

 

「マジでやりかねないから笑えねぇな……」

 

「またまたー、カカシ先生もサスケも冗談が上手いってばよ」

 

「……ま、それはともかくとして今回教えるのはチャクラコントロールについてだ」

 

(あの莫大な力、ちゃんと制御して貰わないと本当に里が危ないからな……)

 

「カカシ先生ー、チャクラコントロールってなんだってばよ?」

 

「あー……無駄無くチャクラを練り上げ効率的な術の運用を可能にする……」

 

「こうりつてき? じゅつのうんよう??」

 

首を傾げ、今一つ理解出来ていないナルトを見てカカシは―――

 

「……まぁ、あれだ……強くなる為の必須事項って事だ」

 

「なるほど!」

 

(説明を諦めたわね……)

 

(それで納得するなよウスラトンカチが……)

 

―――説明を諦めた。

 

◇ ◆ ◇

 

カカシはナルト達に修行として手を使わない木登りを命じた。

 

足の裏から微弱なチャクラを放出し、それを利用して木の幹に張り付く、その一連の流れがそのままチャクラコントロールの修行になるのだ。

 

「くっそぉ、何度やっても木がバラバラになるってばよ……!」

 

「逆にどうやればチャクラを放出するだけで木をバラバラに出来るのか知りたいぜ」

 

「あぁん? 嫌味かサスケ……!」

 

「いや、純粋に知りたい、攻撃に使えるしな」

 

「んなもん適当に足の裏からチャクラ放出するだけだってばよ」

 

「適当にやるから駄目なのよ! 出来る限り絞って放出するのよ」

 

「んーっと、こう?」

 

ナルトが足を付けた幹が派手な音を立てて吹き飛ぶ。

 

「駄目だなこりゃ……仕方ない……土遁・土流壁の術」

 

カカシの術で土で出来た垂直な壁が作り出される。

 

「おおー! カカシ先生ってば土遁使えたんだ!」

 

「この壁には俺のチャクラを練り込んである、早々壊れやしないよ」

 

「よっしゃあ! サンキューカカシ先生!!」

 

ナルトが足を付けた壁が派手な音を立てて吹き飛ぶ。

 

「……カカシ先生ェ……カカシ先生?」

 

「……今のは軽いウォーミングアップだ……行くぞ、土遁・土流壁の術!!!!」

 

今度は犬の彫刻が施された巨大で重厚な壁が生み出される。

 

「はぁ、はぁ……げほっ、ごほっ……」

 

「先生……なんかごめんってばよ……」

 

◇ ◆ ◇

 

波の国で建設中の大橋の前にカカシ班は集合していた。

 

「んー、木登りも水面歩行も終わったし、次は……」

 

「カカシ先生! カカシ先生! 壁作る忍術教えてくれってばよ!」

 

「土流壁は数日で出来るものじゃないからやっても無駄だ」

 

「んな事やってみなきゃわかんねーってばよ!」

 

「落ち着けナルト……性質変化の修行は数日で完成するものじゃない、実際に俺の火遁もかなり時間が掛かった」

 

「へぇー……サスケでも無理なのか……」

 

「じゃあ結局何するの?」

 

「ま、無難に体術の組手でもしますか!」

 

「よっし、影分身の―――」

 

「体術の組手って言ってるだろウスラトンカチが……忍術は禁止だ」

 

◇ ◆ ◇

 

結局、待てども待てども刺客はやって来ず、ついに大橋が完成した。

 

「あーあー! 何がBランク以上の任務だってばよ……結局着いてからも変な奴らをカカシ先生が捕まえただけじゃねぇか……」

 

「結局俺は一度も戦っていない、不完全燃焼だな……」

 

修行途中、二人の侍と複数のチンピラがタズナの家に奇襲を掛けてきたが、影分身の見張りにあっさり見つかり、駆け付けたカカシによってすぐさま捕縛されたのだ。

 

サスケとサクラは現場に居合わせず、ナルトは報告最優先の言いつけを忠実に守った為、下忍三人は波の国に着いてから結局一度も戦闘をしていない。

 

「まぁまぁ二人とも、無事に任務終了できて良かったじゃない」

 

不貞腐れるナルトとサスケをサクラが宥める中、カカシが割って入りナルト達に話しかける。

 

「いやー、その件なんだけど、橋が完成したから波の国と木の葉が交易を結ぶらしいのよ」

 

「まぁ順当な流れだな、それがどうした?」

 

「ガトーコーポレーションがこの橋を壊そうと画策してるみたいでな、木の葉としてそれは困るから潰してこいってさ、依頼主は火影様」

 

「で、でもガトーって凄く大きな裏組織でしょ!? 私達だけで倒すなんて……」

 

「いや、今のガトーは忍者を抱えていない、少し前まで強い忍が護衛に就いていたがつい最近離反したらしい」

 

「なるほどな、新しく厄介な忍者を抱え込まれる前にさっさと叩けって事か」

 

「そういう事、話が早くて助かるよ」

 

「結局チンピラ相手かってばよ……」

 

「Cランク任務なんだからそれで良いのよ……」

 

◇ ◆ ◇

 

ガトーのアジト周辺、岩陰に隠れたカカシ班は作戦を再確認していた。

 

「作戦を確認する、まずは俺とサスケとサクラの3人で突入だ」

 

「すぐさまナルトは影分身で逃げ道を塞いでくれ、念のために本体のナルトに影分身の俺が一人付く」

 

「ガトーは殺さずに捕縛、他の連中は好きにして構わない、以上だ……質問は無いな……?」

 

カカシの言葉に三人は頷き、カカシの合図を待つ。

 

「よし……散っ!」

 

◇ ◆ ◇

 

戦闘は直ぐに終了した、忍者が居ないのだから当たり前と言えば当たり前だが、それ以上にアジト周辺をびっしりと包囲するナルトの影分身に心を折られすぐさま降伏してきた事が大きかった。

 

かくして波の国を長年苦しめてきたガトーは滅び、カカシ班の任務は全て終了した。




波の国編終了

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