キッテル回想記『空の王冠』   作:c.m.

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※2020/3/16誤字修正。
 すずひらさま、佐藤東沙さま、水上 風月さま、ご報告ありがとうございます!


62 愛の表明-ターニャの記録22

 ターニャが私を信じてくれているという事実を知らないまま、彼女の心に疑心と不信が芽生えてしまった事を手紙から読み取った私は、執務室で思わず頭を掻き毟り、苦悶の呻きを肺腑から漏らしたくなった。

 丸一日訓練に打ち込もうがびくともしない五体の全身から汗が噴き出し、手紙を持つ手が石のように固くなっていた。

 もし、ここにターニャが居て、自らに魅力がないのだと勘違いしていた事を知っていたら、今すぐにでも抱きしめて、語彙の限り魅力を語ってみせただろう。

 もし、ここにターニャが居て、指輪を手に私を信じていると微笑んでいた事を知っていたら、私は歓喜の涙を流して手を取り、まるで式の日であるかのように永遠の愛を誓っていただろう。

 

 だが、ここに。このレガドニア協商連合にターニャの姿はなく、この時の私に彼女が何を考えているのかを知る術はなかった。いっそ、捕虜であるタネーチカ政治委員とのやり取りを事細かに手紙に書き留めて潔白を証明しようかとも考えたが、すぐに止めた。

 共産主義への共感など演技に過ぎないとしても、女性捕虜と談笑などというのは字面にするには最悪だ。第一、他所の女と和気藹々と喋っている様を見せつけられて、喜ぶ恋人が何処にいるというのか。三行半を付けられたとて、文句など一言も言えはすまい。

 

 墓の下まで持っていけ。フォン・エップ上級大将の呟きを、あの時は悪魔の囁きだと一蹴したものだが、今にして思えばそれも選択肢としては……いや、無い。有り得ない。

 人の口に戸は立てられぬ。男女のそれなど、何処からともなく確実に漏れるだろう。ましてや最愛の婚約者を相手に鉄面皮で頬かむりを決め込めるほど、私は器用でもなければ不誠実でもいられない。

 結婚後の何処かで自供して、そこから冷えた夫婦生活が幕開けたに違いないことを考えれば、決して間違いだとは思えない。

 

“だが、どうすべきだろうか?”

 

 日付を見るに、ある程度の時間が経ってから綴ったのだろう。つまり、それまでは信を置いていたが、次第に不安ないし不信の芽が出たと見るべきだ。

 タネーチカ政治委員との会話は、報告書類として提示する以外の一切を秘匿していたが、言い換えれば、婚約者に対して説明を怠っていたという不実でもある。

 かといって、仔細を話せば機密漏洩。八方塞がりとはこのことで、どうにか状況を打破せねばなるまいと唸り続ける。

 最も確実なのは、女性捕虜に気があるのは私でなくシャノヴスキー参謀少佐だと伝えること。そして二人は結婚する予定なのだと伝える事だろう。

 尤も、これを説明するには経緯も併せて語らねばならない。いきなり部下と敵国の捕虜が恋に落ちたと言われても納得など出来ないだろうが、そこはこれまでのやり取り通り、行間を読んで貰う事に期待するしかない。

 

 私は不安に駆られながら手紙を認め、その日からというもの、返信が届くまで不眠と胃痛に悩まされ続けた。

 

 

     ◇ターニャの記録22

 

 

 春季攻勢までひと月と半という頃になって返信を受け取った私、ターニャは、ニコには悪いことをしたものだと思いつつも、顔は喜色満面の笑みで便箋を開いていた。

 

『親愛なるターニャ。

 私が如何様な言葉を貴女に綴ったとしても、意味を成さないとは承知しています。

 それでも私は貴女への愛を証明するため、貴女以外の女性が、この瞳に映りはしないのだと述べずにはいられません。

 女性捕虜の保護という私の行いは、一個人として、公人としては善良であろうとも、婚約者に対しては不誠実なものであったと理解しています。

 貴女ならば分かってくれるだろうと、その深謀と聡明さに甘えてしまった事を恥じてもいます。

 お伝えしていませんでしたが、私は一葉の、貴女の写真を持っております。私たちの交際を知った中央参謀本部が、気を利かせて私に贈ったものです。

 色鮮やかな写真に写る貴女は大変に可憐で、物言わぬと承知していながら、私は幾度も絵姿の貴女に語り掛けたいという思いを抱いてしまい、その度に、思いの丈を直接お伝えするのだと、言葉を呑み込んでおります。

 貴女と直接触れ合い、語らえる時には、私は貴女の瞳を捉え、誠実に身の潔白と愛を表し、無垢な心を傷つけてしまった事を、心の全てを込めて、謝罪するとここに誓います。

 貴女のその花の茎のような身を抱きしめ、口付けることが出来たならば、私はどれほど幸福なことでしょう? 今は遠く、冷たい北風が運ぶこの地では、貴女の温もりが切に恋しく思います。

 再会の日には、どうかその花弁のように美しく、淑やかな唇に、私の唇を重ねることをお許し下さい。この世のどんな言葉よりも雄弁に、愛を表明したいのです。

 それが今叶わない以上、私は夜には貴女を夢見、朝日と共に響く小鳥の囀りのように、貴女の声が近くあるもののように感じながら、無聊の慰めを続けましょう。

 最愛の人の前途が、幸多からんこと。戦場の天と地ではなく、温かな祖国で再会出来る日を一日千秋の思いで私は待っています』

 

 読んでいるこちらの方が赤面しそうな内容なだけに、私は最後まで目を通しきれずに便箋に文を入れ直した。もう一枚残っているが、流石にそちらまで目を通し切れる自信がない。

 周囲の視線が痛い。兎に角痛いのだ。私の顔は耳朶まで染まっていて、それが誰にも分かるものだから、一層に羞恥が込み上げてたまらなくなる。

 

「そのご様子ですと、杞憂だったのですね!」

 

 安堵致しましたとセレブリャコーフ大尉は満面の笑みである。こいつ、他人の恋路を楽しんでいやがるとここに来て副官の真意を悟ったが、まぁ、この手の問題に関しては世話になりっぱなしであるのも事実。

 それに、今後この手の問題が発生した場合でも、唯一相談できる間柄であるだけに、おいそれと邪険には扱えない。

 

「セレブリャコーフ大尉。貴官は食い意地を張りすぎだ」

 

 Kパンすら美味そうに頬張る上、恋話まで齧り付こうというのだから悪食も此処に極まれりだ。深く、大きく溜息を。しかし、同時にこうも感じて止まない。

 多少歳が離れているとは言え、今生、同性と恋の話で盛り上がるような、年頃めいた行為などした事がなかったなと。

 

「口外しないと誓えるなら、読ませてやる」

「宜しいのですか!?」

 

 実に良い食いつきぶりだな。いや、年頃の子女ならばこういうものに興味があるのは知識としては理解できるのだが。

 一先ずは一枚目だけを渡してやり、私は未読の二枚目に目を通す。

 

『追伸。臨時として私の副官を務めるシャノヴスキー参謀少佐が、めでたくも婚約の運びとなりましたので、この場をお借りしてご報告申し上げます。

 かの参謀少佐は公人として大変優秀かつ模範的な将校であると同時、一個人としても善良かつ誠実な男性であり、私人としても、私の良き友であります。

 女性の出自と戦時下たる事情故、二人の間には多くの困難が続くでしょうが、私は二人の門出を心から祝福すると共に、その前途に幸多からんことを祈っています。

 ターニャには面識などないと承知していますが、どうか婚約者の友というよしみ故、参謀少佐の婚約者たる女性共々、幸福をお祈りくださいますよう、お願い申し上げます』

 

“……ああ。そういう”

 

 手紙の内容で大凡察することが出来たが、何ともドラマ溢れる展開である。下手をせずとも上官たるニコは苦心しつつ骨を折る形になっただろうが、私としては僅かな憂いや胸のつかえもこれで消し飛んだ。

 

「セレブリャコーフ大尉、どうやら大佐殿の副官が婚約したそうだ」

 

 こっちはお前の期待する内容ではなさそうだなと笑うが、セレブリャコーフ大尉はキャーキャーと声を上げて手紙を読み耽っている。

 餌を与えすぎたと察しても後悔先に立たず。暫し間を置いて、ようやくキラキラとした瞳と、にやけて緩み切った口元を抑えきれないまま手紙を返してきた。

 

「満足したようで何よりだよ」

「中佐殿、今後も是非相談がありましたら」

 

 分かった分かったとあしらう。どうしてこう女という奴は、他人の色恋が好きなのだろう? いや、女の身であるはずの私が異常だとは承知しているのだが、こればかりは未だにさっぱり分からない。

 

「ああ。その時は手を借りるよ、ヴィーシャ」

「中佐殿、今」

「公人としては問題だが、友人としてならば問題なかろう?」

 

 嫌なら止めるがね、と愛称で呼称した私に、セレブリャコーフ大尉はいいえ、いいえ! と首を振った。

 

「なんでしたら、私人としてはお姉ちゃんでも大丈夫です! そして存分に頼って下さい!」

「調子に乗るな、たわけ」

 

 私が姉と呼ぶのは、コンスタンツェ姉様だけだ。

 

 

     ◇ニコラウスの回想記

 

 

 破局という最悪の事態は回避し得た。それをターニャからの手紙で察し、安堵の吐息を吐くと同時に、私は愁眉を開いていた。

 この時の心境は、銃殺を免れた兵士か。はたまた絞首台に上がる寸前に、無罪放免を言い渡された囚人のそれに近いだろう。

 いずれにせよ、私は潔白を受け入れて貰えた。逼塞(ひっそく)は打破されたと考えて良い。

 

 すなわち。今後は憂いなく戦争の準備に取り組めるという事だ。

 

 捕虜の保護などという空軍の職責を逸脱する仕事を押し付けられたが、ようやく私は自分の仕事に十全な時間と意識を割ける。

 なればこそ、ここから先の仕事は実に捗った。元より職務に手を抜く事など有り得ないが、それでも気の持ちようというものはモチベーションを大いに改善し、ひいては作業効率もこれ以上なく押し上げてくれる。

 対価としてはレガドニア空軍の血液交じりの汗と、そして悲鳴すら上げる事の叶わない渇き切った喉を捧げることになったが、それが後のエースを生む秘訣と信じて疑わない私は徹底的に仕込みを続けつつ、航空部品をダンメルク州から陸路で輸送して貰う。

 レガドニア空軍の軍用機は劣悪という程ではないものの、列強国内では一歩劣る上、軍用機の恐竜的進化に追いつけていなかった。早期に敗戦した国家であり、賠償金等の制約があった以上、軍事技術の停滞は致し方ない反面、これで圧倒的物量を誇る連邦を迎え撃とうというのは無謀に過ぎる。

 

 そもそもの話、協商連合方面から侵攻することは、デメリットの方が多いのだ。

 唯でさえ広漠な連邦領を正面から相手取るだけでも厄介だというのに、兵力を二分せねばならないなど冗談ではない。

 冷酷な将校として意見すれば、いっそ協商連合を戦力と見做さず、協商連合領に敵を誘引し、協商連合の国土を戦場にして殲滅を図るのが最適解だろう。

 

 だが、私人としては、スオマ奪還という亡国者の悲願を果たしてやりたい思いもあったし、何より、如何に勲功を重ねようが、空軍では高級将校の不足から将官級の権限を与えられる大佐の肩章を着けようが、所詮私は軍機構における歯車の一つであって頭ではない。

 ド・ルーゴ少将の方舟作戦のような例外を除き、為せと命じられれば、かくあれかしと与えられた職責の中で結果を出すしかない。

 

“そして、その為の策もある”

 

 どれだけの敵野戦軍を駆逐したところで、工業基盤が十全であるならば、連邦は物量で押し続ける事が可能であり、ならばこちらは、その策源地と工場を徹底的に潰してやれば良い。

 未だ敵航空機は、こちらの最新鋭爆撃機を追尾できる技術を確立し得ていない。やるからには、連邦がこちらの技術に追いついていない早期に潰す事が望ましい。

 とはいえ、如何に連邦が国際法の外にあるといっても、現時点では都市部に無警告爆撃を行おうという程ではない。国際世論というものは可能な限りにおいて味方につけておきたいし、こちらがルールを守って戦う紳士だと相手が侮れば、後々はそこに付け込めるからだ。

 

 東部戦線では、爆撃機が出撃可能な気温になった時点で伝単が撒かれる予定であり、着々と準備が進められている。

 勿論、事前警告がある以上は奇襲になりえず、爆撃に対する相応の抵抗も覚悟すべきだが、間違いなく彼我の性能差からやり遂げられるという確信はあったし、何よりもこちらにはフィーゼル・セカンドがある。

 伝単を撒いた先に向かうのは、決して爆撃機だけではない。正確な座標を知るために第一手は航空機に譲るが、そこから先は徹底的にミサイルを注いでやれば良い。

 

 何より補給網の構築が容易な北方(レガドニア方面)は、東部戦線と比較して、従来通り地上軍の火力優勢と空軍の対地支援ドクトリン……ライン戦線で散々にやった手がそのまま使えるのも大きい。

 

“問題は、爆撃の成功如何ではなく、次の冬季までに何処まで進軍出来るかだ”

 

 私は敵を侮る気はない。経験は平等に技術と戦い方を教授する以上、時間は連邦軍を成長させてしまうし、何より連邦軍の学習意欲には目を見張るものがある。

 スオマで散々に狙撃兵に苦しめられた連邦がいち早く狙撃部隊を配備し、狙撃兵学校まで開設したのは、その勤勉さを十分過ぎる程に物語っていた。

 必要とあらば取り入れるその姿勢がある限り、こちらも常に積極に努めねばならないだろう。複数戦線にかまけたくないのであれば、今年中にはスオマを解放して戦線を整えられるようにすべきだが、目標通りに動けるのは創作や遊戯の中だけだ。

 

“功は焦るべきでない。損耗は最小に。これを鉄則としなければ、物量差という悪夢が待ち構えているのだから”

 

 

     ◇

 

 

 一九二七年、二月。帝国軍が着々と反攻準備を推し進める中、連邦軍は先んじて動きを見せた。雪解けには今少し早いが、連邦軍にとっては勝手知ったる母なる大地だけあって、行動は早く装備も十全。

 その上、協商連合の動きを察知して帝国の時と同様、宣戦布告もせず侵攻を開始してくるのだから始末が悪い。

 協商連合が帝国に拠って立つ大義名分を与えられたとは言え、奇襲が出来なくなってしまったのは痛手だった。

 

“とはいえ、やる事は変わらんがな”

 

 上空から敵戦車の砲塔部分を吹き飛ばす。帝国空軍や魔導師は分厚い装甲を引き裂くことから、敵戦闘車輌の破壊を缶切りと称したが、私は早々に『缶切り職人』という新しい渾名をレガドニア空軍から与えられ、後にこれは、対戦車撃破に精通した空軍や魔導師に贈られる一般的な尊称にもなった。

 

 久方ぶりの空に気を良くしている私だが、唯一残念なことがあるとすれば、私の後ろにシャノヴスキー参謀少佐の姿はなく、私はゾフォルトに乗ってはいないという事だ。

 今回私が搭乗しているのは魔導攻撃機でなく、従来の戦闘爆撃機にして傑作機たるJä001-1Fヴュルガーを、更に対地攻撃に特化させたJä001-2Fだ。

 硬芯徹甲弾を装填した三センチカノン砲を両翼に四門備えた機体は、速度こそ多少落ちたがゾフォルトとは比較にならず高速で、威力も申し分無い。

 ただ、欲を言えば空力ブレーキが欲しかったと思う。あれさえあれば垂直降下が可能であるし、何よりこの機体は急降下より緩降下に向いた設計である為に、慣れるまでに時間がかかったが、そこは攻勢に向けて入念に準備をしてきた為、出撃時点までには間に合った。

 それに、速度以外では無敵であるかのように語ってきたゾフォルトにも、その実多くの問題があったのも事実である。

 

 まず以って挙げるべきは、そのコストだ。魔導師が装備する演算宝珠一つでさえ、希少金属を多用する為に主力戦闘機や戦車以上に高額だというのに、ゾフォルトは消費魔力を軽減する為に、演算宝珠に換算すれば四機分。航空機で言えば、中型爆撃機一機にもなる高級機材を組み込んでいる。

 全体の戦果で見るならば爆撃機を製造する方が遥かに良い上、パイロットも二名分のコストを投入しなくてはならないし、複座式故に部品数は多く、整備性にも難がある。

 それでもエルマーは希少金属を極力削減出来るよう日々改良していたし、その技術はフォン・シューゲル主任技師と共有することで、演算宝珠をはじめ、各種魔導機器にも活かされている事を考えれば、決して無駄ではないのだろう。

 だが、戦車や演算宝珠の製造ラインに響かせてまで、旧式化しているゾフォルトの生産を続ける必要が果たしてあるのかという疑問の声は前々から上がっていた。

 シャノヴスキー参謀少佐が軍大学に入校し、他の後席手も後方勤務のノウハウを日夜叩き込まれているのも、やがて魔導攻撃機という分野が消失した際に備える為のものなのだ。

 

 そして、ゾフォルトの最大の武器である攻撃性能という面に関しても、魔導に頼る必要性は失われつつあった。ロケット技術の加速的進化は恐ろしいもので、航空機搭載型の小型ロケット弾もライン戦線中盤には完成し、配備まで済んでいたのだ。

 オルカンと称されるこのロケット弾は主翼下左右にレール上に配備され、一斉射と同時に円形弾幕が展開される仕組みである。

 命中精度・速度は共に良好で、ロケットの一、二発でも命中すれば爆撃機さえ撃墜可能という高威力は大変に魅力的だった。

 現に、オルカンが実戦投入されてからというもの、ライン戦線でのフランソワ・アルビオン空軍の爆撃機は徹底的に駆逐され、帝国軍が一方的に敵地上軍を蹂躙する結果になった。

 帝国軍が数年に渡り列強各国と戦争をしながら、未だ東部戦線で十全に力を奮えているのは、空からの蹂躙劇が一方的なものであった為に、損耗を限りなく抑えられたという結果があったからでもある。

 

 今、こうして対地攻撃を仕掛けている私の機体の両翼にも対戦車用八センチロケット弾たる『パンツァーブリッツ』が装備されており、連邦軍が新規開発したのであろう重戦車を爆砕していた。

 この威力ならば、魔導攻撃機とも遜色ない。弾数にこそ不満はあるし地上への制圧力も欠けるが、コストを考えるならば致し方ないと割り切るべきだ。

 爆裂術式で地上を一掃出来ないのは歯がゆいが、それでも地上にカノン砲を掃射すれば相応の戦果はあるし、機関銃座や野戦砲を優先して排除すれば、味方地上軍はかなりの楽が出来る。

 何より、今戦いに必要なのは間違いなく数だ。高価な一点物よりも、航空機の足りていない協商連合には一機でも多くの戦力を欲して止まない。私がどれだけの戦果を上げようとも、所詮それは個の力であり、戦争そのものを左右出来る程ではないのだから。

 

 尤も、そんな泣き言より、今はすべき事をすべき時だ。協商連合に押し寄せた戦闘機を、同じく戦闘機で狩り尽くし、その後は爆撃機が大地と赤軍を混ぜたフレッシュミートを拵え、それを見届けた後は戦闘爆撃機で一輌でも多くの戦車や装甲車、或いは砲を潰して行く。

 前線勤務においては、常に同じ作業の繰り返し。今も昔も、航空機に乗ればやる事は変わらないなと思いつつ、しかしこれまでの戦場とは、明らかに違う点があった。

 

“終わりが見えないな”

 

 戦線は押している。戦局は安定している。だというのに、敵兵も物資も無尽蔵に湧いてくる。連邦の兵士は畑から採れるという言葉を本当に信じてしまいそうなほどだ。

 間違いなく我々は敵の工業地域を、策源地を爆撃した。だというのに、敵は決して尽きはしない。それを、時の流れと共に空恐ろしく感じたが、事実を知れば当然のことだった。

 我々は、一国を相手にしていると考えていた。

 敵は、共産主義者だけだと信じていた。

 それが間違いだったと分かるのは、遠くない日のことだった。

 




【主人公のラブレターを、秋津島のヲタが再翻訳してみた】

『ターニャたぁぁんっ!
 拙者、ターニャたんに浮気とか疑われたくなかったので色々ごまかしてしまいましたが、ターニャたん一筋でござるぅぅ!
 ターニャたんの萌え萌えブロマイドは、片時も手放さずに常時(*´Д`)ハァハァ中でござるよフヒッ!
 二四時間三六五日片時も手放さず気はないですよ婚約者として当然のたしなみでコポォ!
 オゥフ! でもぉ! 写真だと匂いとか嗅げないしホンっと辛いので、今度お会いする時には存分にハグしてクンカクンカするご許可をお許し下さりたい所存!
 そのプリッとしたやわらかーい唇の感触と、甘い幼女的ミルクな香りを、存分に味わいたいのでござるよおっと失敬! 欲望が出てしまい申した!
 朝も晩もアレな最中も、ずっとターニャたんの妄想で一〇年は戦えるぐらいは頑張っておりますブヒw
 それでは、名残惜しいですがお別れアデュー!』

 こ  れ  は  ひ  ど  い。

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