いろんな読者を置いてけぼりにしながら話は進……んでるのかも怪しいですが。
本日のネタが全てわかる人は確実に40代以上です。
ま、県立地球防衛軍の方が究極超人あ~るより古いので、それを知ってる時点で確実にそうなんですけどね。
怠惰な駄作者がほんっとすみません(汗;)
ちなみに、ここに出てくる某ファミレスのメニューは、話が2020年当時という設定のため現在のグランドメニューとは異なる場合があります。各位にはご承知おき願います。
「というわけで作戦会議よ」
「いや、あの、作戦会議はいいんですが……」
俺と陽乃さん、原瀧で一つのテーブルを囲み、明日のことについて話し合いの場を持っているのだが……。
「はっ八幡、この、リ、リ、リブステーキ、頼んでも大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、原瀧ちゃん。全部経費で落とすから」
「じゃあそれとエビとブロッコリーのオーロラソースパスタを大盛で。それにクラムチャウダーとシーザーサラダも!」
「比企谷、暇してるなら私のパフェを作れ」
「いや、今は電柱組のバイト中ですので……」
本来、機密性の高い打合せだと思うのだが、なんでファミレスなんかで……しかも俺のバイト先……。
「注文決まった?」
えーと、こいつはかわ、かわ……
「いいかげん、本当にぶつよ?」
今、俺、声に出してなかったよね!?
それに一応こっちは客なんだからその言い方はどうなんだ?
「川崎、今の比企谷は客だ」
さしもの店長もこの所業は許せないよな。そして川崎だったな。
「だからお前が私のパフェを作れ」
やっぱそれかー!
「今、海老名が休憩に入ってて人が足りないので、休憩上がったら海老名にやらせます。それまでは我慢してください」
「ちぇーっ」
「と、いうわけで打ち合わせに参加しにきましたー」
いつの間にかスタッフの制服の上にカーディガンを羽織って姫菜参上。そして俺の隣に座る……って、ボックスの4名様席の片側に3人ってさすがに狭いんだけど……。
「あのー、狭いからどっちか陽乃さんの隣に座ってもらえると……」
「八幡くん」「八幡」
「却下♪」
それはまあいい笑顔で、声を揃えて拒否されました。
「じゃ、じゃあ俺が陽乃さんの隣に……」
「駄目だよー」「駄目だな」
「却下♪」
言うが早いか二人に両側から腕を組まれて身動き一つとれなくなる俺。
さらに近いし柔らかいしいい匂い!!
「……そろそろ本題に入りたいんだけどいいかな?」
少し苛立ちを含ませ……るでもなく、いつになく殊勝な雰囲気の陽乃さん。
「明日のグリコーゲンXとの対決なんだけど……」
陽乃さんの前に座る俺たち3人は、ぐっと前のめりに陽乃さんの次の言葉を待つ。
俺は両側から腕を組まされているので、仕方なく前のめりになっているだけだが。
「何も策がないの。どうしよう……」
思わずずっこけそうになるところ、腕に絡みつく二人に支えられてなんとか踏みとどまる。
「さっきはあんなにも自信ありげに……」
「だってそうでもしないと収まらなかったから…… 一応対決の場は手配したけれど、どうしたら勝てるかなんて……」
「そんな弱気でどうするのかしら、姉さん」
前の席に座っていた雪ノ下が突然立ち上がり、長い髪をなぴかせてこちらを振り返る…って、お前、そんなところにいたのかよ!!
「カラオケ対決、私と結衣も参加するわ。弱気な姉さんに代わって私たちがあの怪人を倒すわ。私たちが歌えばどんな相手でも負けるはずはないもの」
雪ノ下が無い胸を張ってとにかくすごい自信を迸らせている……なんて考えていたらギロリと睨まれたでござる……俺、今、口に出してなかったよね!?
「雪乃ちゃん……これは遊びじゃないんだよ?本当に危険なの。 できれば雪乃ちゃんを巻き込みたくないの」
「そこの男や海老名さん、原瀧さんは巻き込んでも、私は身内だから特別扱い?ふざけないで!そんなことで私が喜ぶと思うの?著しく不満!不愉快!不本意!ああ~脳が震えるっ!!」
ゆっ、雪ノ下が愛に、愛に目覚めた!?
「……こほん。それに本校の生徒である三浦さんが傷つけられているのに危険だからと逃げ回るのは、千葉県立地球防衛軍の沽券かかわるのよ」
何事もなかったかのように取り繕っても、お前、今怠惰だったからな?
「決意は固いんだね?」
陽乃さんは雪ノ下の目をじっと見すえて、確かめるように言う。
「愚問ね」
雪ノ下は、つややかな長い髪をファサッとかき上げながら答える。
「比企谷君も……歌ってもらえる?」
「俺が歌!?……って、断れる雰囲気でもありませんしね。押してダメなら諦めろ、押すもダメなら諦めろ。やりますよ。勝てるかどうかは分かりませんが」
「じゃあ、八幡はあたしとデュエットで!」
「いいえ八幡くんは私と……」
「原瀧、姫菜、すまん。ボッチだからデュエット曲なんて歌えないんだ」
「それじゃ今から特訓、というわけにもいかないだろうな」
「そうだね。今度二人きりでカラオケ行こうね☆」
「お、おう……」
ウインクしながら姫菜にドキドキが治まらない俺。もうボッチなんて言えないんだったな。今度、一人でカラオケ行って練習しとこう。
「むう」
原瀧は少し不満そうだが、仕方ないだろ?姫菜は俺の、俺の……何だろう……。
「それでどうやったらグリコーゲンXに勝てるかなんだけど……」
「別に勝つ必要はないでしょ?」
「えっ?」
意外そうな顔をする三人。いや、雪ノ下を入れると4人か。
「カラオケ対決で勝つのが目的ではないでしょう?あいつを止める、そして三浦の仇を取る、それだけです」
「……手段と目的を取り違えていた……そう、そうね。由比ヶ浜さんの依頼を思い出すわ」
「ああ、だからカラオケで勝つ対策なんて必要ないんだ。だいたいどうやったら勝ちかなんて基準なんか無いだろう?」
「それ以外の戦力を整えるべき……か。でも、相手は大分県警の精鋭部隊も撃退されたほどの実力の持ち主よ。戦闘の記録が送られてきているけれど、どれだけの戦力を揃えれば相手を抑え込めるか分からないわ」
陽乃さんの疑問はもっともだ。それでもやらなければならない。
「奴の能力については原瀧から聞きました。それで陽乃さんに急ぎ用意してもらいたいものがあります」
俺は対グリコーゲンXの備えに陽乃さんに揃えて貰いたいものを告げる。
「……分かったわ。今すぐ準備する。それじゃ、私は先に失礼するわね。ここのお代は心配しなくてもいいわ」
陽乃さんは店を出ようとすぐに立ち上がる。
そして、俺を見据えて、
「危険なこと、自分を犠牲にするようなことはしないでね。これはお願いじゃなくて命令……いえやっぱりお願い。私の心からのお願い」
少しだけ心許なげな声でそう言った。
言葉こそ発しないものの、雪ノ下も陽乃さんと同じ目で俺を見つめていた。
それと同時に両側から抱えられた腕にもぎゅっと力がこもる。
「そんな心配いりませんよ。もう間違えることにも凝りたんで」
それが成長なのかどうかは分からない。変わったのは俺自身ではなく周りのほうだ。今までは孤高を気取り周りからの干渉を拒んでいたから何も変わらずにいられただけだ。ただ、その周りというやつを受け入れられているあたり、やっぱり俺は変わったのだろうか。
「おい八幡、大丈夫か?気持ち悪いぞ」
心の中で苦笑していたら酷い言われようをされたでござる。泣くぞ?
「信じていいんだね、比企谷君」
未だ不安を隠しきれない陽乃さんに向かって、大きな声を張り上げる。
「だーいじょうぶ!まーかせて!」
仁王立ちに中指を立てて、自信満々に応えてみたが……。
「……」
やめて!そんな白い目で見ないでくれ!!
「比企谷、それは少しネタが古いな」
てっ、てんちょおぉぉぉぉ!心温まるツッコミありがとうございます!!一生付いていきます!
「分かった。君のことを信じる。でも、困ったことはまだあるんだ……」
依然として陽乃さんの憂いは晴れない。
「この際だから何でも言ってください。どんな困難でも俺が」
「いいの?甘えても」
「ええ、まあ、できる限りで……」
請うような陽乃さんの視線にちょっとだけトーンダウンしてしまう。
だって俺だぞ?
「じゃあ、言うね……」
一瞬コップの水を口にした陽乃さんが再び口を開く。
「比企谷君がグリコーゲンXにLiveDAMを約束してたけど、私が用意したのはJOYSOUNDだったの……」
どんな真剣な話が来るかと思ってたらカラオケの機種の話かよーーーー!
「比企谷君に騙されたグリコーゲンXが怒り狂ってその怒りの矛先を君に向けたら、君がどうなっちゃうんだろうって思ったら不安で不安で……」
「いやいやいや、それ不安に思うくらいなら今すぐ第一興商に電話してください!」
てか、別に俺が騙したわけじゃないけんだけど!?
「そっ、そうだよね。うん、今すぐ都築に電話させるねっ」
スマホを取り出して都築さんに連絡を取ろうとするのだが、
「おいこらそこの女、お席での電話の通話はご遠慮しろください」
店長!通話を止めるのはいいけど、お客さんに対する言葉じゃないぞ、それ。
「ご、ごめんなさい。ちょっと下で待ってる都築のところ行ってくるね」
都築さんまた一人で待ってるの!? 誰かファミリーコンボの辛味チキン&ポップコーンシュリンプ持って行ってあげて~~~!
陽乃さんが席を立つと、入れ替わるように俺の前に席に雪ノ下が座った。
「両手に華でずいぶんと嬉しそうね。鼻の下伸ばし谷くん」
雪ノ下さんや、それはいくら何でも語呂悪すぎじゃないですか? いや、むしろうしろゆびさされ隊並みに語呂が良くなってる……!?
「別に鼻の下なんか伸ばしてねーし?なんなら身の置き所がなさすぎて縮んでしまうまである」
そんな益体もない返事をして、いつものように雪ノ下が呆れた顔を見せ……てはいなかった。
「ふふっ、まるで部室にいる時のようね。ほんのひと月会ってないだけなのに、もう何年も会えずにいたような気がするわね」
静かに微笑みを湛える彼女の瞳は、しかしほんの少しの憂いと悲しみを宿す。
「ゆ、雪ノ下?」
「夏休み、千葉村から帰って学校が始まるまでの時間は、あなたに事故のことを言えずにいたことで会うのが少し怖かったのだけれど、同じ一か月でもこの一か月は早く貴方に会いたい、あの部室で紅茶の香りに包まれて今のようになんてことのない会話をして過ごしたいって思っていたわ」
「おっ、おう」
「姉さんはバイトだからってあなたを呼び出していつでも会えるけど、部活ができなければ私は……」
話すたび瞳に滲んでいた涙は、とうとう堪えきれずに一筋、紅潮する頬を伝って流れ出した。
こういう時、リア充イケメンならなにか気の利いた言葉で慰めたりできるのだろうが、生憎長年ボッチを拗らせていた俺はそんなスキルなんて持ち合わせちゃいない。
「べっ、別にお前に会いたないというわけじゃないんだから、連絡くれればバイトのない時間の空いているときに顔を合わせるくらい……」
「だって、私はあなたの連絡先を知らないもの……」
そうか、由比ヶ浜には無理やり連絡先を交換させられたけど、雪ノ下とはしたことなかったな。
「しかしそれは、前に俺が友達になろうと言いかけたときにお前が断ったからだろ」
「それは……一度目は初めて会った時であなたがどんな人間かよく分からなかったから」
彼女はその白く細い指で零れ落ちた涙を拭う。
「二度目は……あなたとは、その……ただの友達じゃ嫌だと、思ったの。その気持ちが何なのか、その時は良くわからなかったのだけれど」
そして、まだ涙に潤む瞳はじっと俺の目を見据え、桜の花のようにほんのりと赤みを帯びた唇は、静かにその気持ちを告げる。
「今は知っている。その気持ちを、あなたを……」
もしもこの言葉をあの修学旅行の前に聞いていたら、俺は……。
「おい八幡! なに二人の世界に浸りきってるんだ!? 」
いっ、いててっ! 原瀧に左側の頬っぺたを強く引っ張られて現実に引き戻された。
「お前、あたしらがいること忘れてただろ!!」
正直忘れてました……。
「雪ノ下さんよぉ、あたしたちのいる前でいつまでアンタのターンが続くと思ってんの?これで終わりだ、お・わ・りっ!」
「チッ」
ちょっ、今、雪ノ下舌打ちした!?
姫菜も怒ってるんだろーなー、と恐る恐る右を向くが、
「わたし、そろそろ仕事に戻るね」
彼女はそう言い残すと、寂しそうに微笑みながら席を立つ。
「姫菜……」
去っていく背中をただ見つめることしかできない俺に原瀧が、温もりを込めた声で語りかけた。
「若鶏のディアボラ風とティラミスを追加で頼んでもいいかな?」
……もう好きにして。
「よっしゃ! エスカルゴとポップコーンシュリンプも追加で!!」
俺の半熟卵のミラノ風ドリアも頼んでくれ……。