今回話が一歩も進んでないよっ!
12分咲きが現実のものになろうとしているよ!!
次からは巻いていかないとなあ……。
「はあ……」
「せんぱい、どうしたんですかー? そんなゾンビブレスばかり吐いてると生者が逃げていきますよー?」
いや、ゾンビが来たら生者は普通逃げるだろってゾンビじゃねえしっ!
「誰のせいだと思ってるんだ、誰のっ」
「えー、こんな美少女にキスできたんですよー。喜びの声を上げこそすれ、ため息なんか出るわけがないじゃないですかー。それともアレですか、キスだけじゃ我慢できなくていますぐ襲いたくなっちゃったげどできなくてため息ついちゃいましたかわたしとしては全然やぶさかではないんですけど間違って千葉県内全域と一部関東地域及び兵庫県と大阪府の皆様にせんぱいとわたしの愛の営みを覗き見されてしまうのはちょっと興味ありますけどほんの少しだけ恥ずかしいのでやっぱり初めては二人きりでお願いしますごめんなさい」
「いったい俺は何回フラれればいいんだかね……」
「むぅー。せんぱい、いい加減気づいてくださいよー」
いや、全裸で俺の部屋にやってくる女の子の気持ちに気づかないなんてさすがにありえないよな。それでも以前の俺なら葉山に対する予行演習だと思って……さすがにそれは無いか、うん、無いな。それでも……一色の気持ちに応えることができない以上、俺は……。
「おい、八幡っ! お前、いつまでイチャイチャしてるんだ? 」
いつものレオタード姿でつかつかと歩み寄ってくる原瀧。
「べっ、別にイチャイチャなんかしてねーし」
「そうですよ。わたしとせんぱいの心は固く結ばれてるんだから、これはイチャイチャじやなくて恋人同士の自然な営みです!」
「だっ、誰が恋人だ!」
「えー、だって私たちせんぱいの部屋で全裸で抱き合った仲じゃないですか~」
「ばっ、ばかっ! 全裸だったのはお前だけだっ!!」
「そうですよねー。せんぱい一人着衣で全裸のわたしに……」
一色ぃ~! 誤解を生むような言い方をやめろっ!!
「ほーん、あたしは八幡と全裸で風呂に入ったこともあるし、同じベッドで一晩中あんなことやこんなこともしたけどな」
原瀧ィ~! お前まで対抗意識燃やして何言っちゃってんの!? "あんなこと"なんてした覚えは全くないっ!……"こんなこと"の方はされたかもしれないけれども……(赤面)
「うふふふふふっ……」
「んふふふふふっ……」
ちょっ、ちょっと! 向かい合う二人の間に炎が見えるんだけどっ!?
「二人とも、児戯はやめよ」
「はいっ、せんぱいっ!」「はいっ、八幡っ!」
二人とも、それはまあいい笑顔で……思わず項垂れつつ右手で顔を覆う。
「八幡さ、お前、なに深刻な顔してるんだよ」
「いや、俺は……」
「お前の気持ちはわかるよ。そりゃ、好きな女の前でほかの女とキスして、それをまざまざと見せつけたんだからな。あたしはもう、慣れたって言うか呆れるだけだがな」
そりゃそうだよな……こんな男、愛想を尽かされて当然……。
「あたしも海老名も愛想なんか尽かしゃしねえよ」
だから、地の文読まないでくれるかなー。
「今のは地の文じゃなくて読んだのはお前の顔だ」
俺、そんなに分かりやすい顔してるか? じゃなくて、今、やっぱり地の文読んだよね!?
「ただまあ、今はそういう顔して欲しくは、ないな……」
そ、そうか。こんなカラオケ大会ではあっても、今はグリコーゲンXとの対決中だよな。俺の個人的な感情で沈んでる場合じゃ……。
「今回は『県立地球防衛軍』のターンなんだぞ。『県立地球防衛軍』は笑かしなんだから、そういうシリアスな雰囲気は困る」
そんな理由かよーーー!!!
真剣に考えて損したぜ、まったく。
「だからさ、海老名にゃ海老名の考えもあるだろうが、今は信じて対決のことを考えろ。お前も歌うんだろ? せいぜい頑張って笑かしてくれよ」
俺の歌は笑かし前提なんですね。そのほうが俺的には気は楽なんだが。
「ま、海老名が愛想尽かしたってあたしがいるからさ」
そう言って、ポンと俺の肩を軽く叩き、片手をヒラヒラと振りながら去っていく原瀧。
最後にニカっと笑った顔は、その、少し眩しかった。
ありがとうな、原瀧。
「むー、せんぱい。いろはちゃんだっているんですからね。いつだって身も心も捧げる覚悟です! 何なら今ここでからだを捧げても……」
「そこまでせんでいい! 話が元に戻るだろうが!! けどまあ、ありがとな。俺を励ましてくれて」
「えっ! せっ、せんぱいがデレた……ひょっとして、今日で千葉が終わったりするんじゃ……」
「ちょっといろはす酷くない~!? 略してひどはすじゃない~!?」
「せんぱい……なんか戸部みたいで気持ち悪いんですけど」
いろはす本当に酷いな……。
一応、戸部、君の先輩だよねえ⁉︎いくら本人の前じゃないとはいえ呼び捨てアリなの?
「でも……せんぱいが感謝してくれるならその気持ちを形にしてくれても、いいんですよ……」
シュルリ……。
「いっ、一色さん? なぜ制服のリボンを外す?」
パサッ……。
「こっ、こら、制服の上着を地面に落としたら汚れる……」
プチッ、プチッ……。
「お、おい……なんでブラウスのボタンを上からひとつひとつ……お前、こんなところで……」
「こんなところでなーにしちゃってるん?ヒキタニ君」
「とっ、戸部」
「俺たちの出番近づいてっからリハしようと思ったらヒキタニ君いねえべ? 俺っち、チョー探しまくりんぐよー」
「なんですか、せんぱいと二人きりのところへなに邪魔しにきてるんですか戸部」
こっ、こらっ!あざとさ仕事しろ、一色ぃぃぃ!
ボタンが外れて下着の見えかかっていたブラウスの前を隠しながら悪態ついてるけど、一応君の先輩だからね?
さすがに本人の前で呼び捨てやめようよー。
「ちょっ、いろはすナニ怒ってんのー? あー、その格好……そういうこと……」
これはマズい……今の一色の恰好を見たら二人の関係を誤解されても仕方ない。
いくら俺が一色に一方的に迫られていると言っても誰にも信用されないだろう。
あまつさえ俺が無理やりこんな場所で一色を脱がしにかかっているという噂まで出かねん。
むしろ普段の俺の評判を考えたらそっちの噂の方が広まる可能性が大だ。
そしてこのことは、戸部の口を通じて同じグループである姫菜にもすぐに伝わるだろう。さっきのステージを見られて上でこれでは、どんなに言い訳したところで誤解は解けない。
ましてや戸部は 姫菜のことが好きだ。戸部だって馬鹿じゃない。この機会に姫菜の心の自分に向けさせるためこのことを利用しようとするだろう。
だが、それが分かっていたとしても俺にはそれを止める術も資格もない……。
「いろはすもヒキタニ君とのどぢまんに出ようと思ってるっしょ? でもそれ、無理だから〜。 もうとっくの昔にエントリー終わってるし、ヒキタニ君は俺っちと出ることになってっから。ホントざ〜んねん‼︎」
ざ〜んねんなのはお前の頭だ、戸部。
まあ、俺はそのおかけで助かってるけど。
「そ、そうだな、そろそろ出番だものな。行くかー、戸部!」
俺は戸部の肩を抱きながら一色を置いてその場を離れようとする。
「せんぱいっ!」
背中の方で一色が叫ぶ。
「わたし、諦めませんからっ! ずっとずっと諦めませんからーっ!!」
俺は、振り返ることができずただ前だけを見て歩く……。
「だからエントリー終わってるつていうのに、いろはすも諦め悪すぎっしょ」
戸部の頭が残念で本当に良かったわー……。