まちがいだらけの修学旅行。   作:さわらのーふ

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はい、またお会いしました。
ようやく番外編、完結です。
ご都合主義とドタバタ感は否めませんが、それがワタクシの実力なんです。
ヒロインを無駄に脱がしたり、ひょっとしてワタクシは材木座義輝なのではないかと思えてきました。
そう思われたら、本作も温かい目線でご覧いただければ幸いです。


千葉最大の侵略〜花も嵐も踏み倒せ!番外編 YUI☆捨てられた仔犬のように Ⅳ

 次の日、あたしは特別棟にあるあの部室に足を向けていた。

 本当は部活に出られる気分じゃなかった。

 今日はヒッキーはバイトでいなくて奉仕部じゃなくてぼうえいぐん?の日だけど、あの部屋にいたらどうしても昨日のことを思い出してしまう。

 なにより、あたし自身の本当の気持ちが分かってしまった今、ゆきのんにも顔を合わせづらかったんだ。

 だけど、今日は優美子もバイトらしいし、姫菜には水曜日にあんなことをしてしまったから遊びに誘うこともできない。

 それに昨日あれだけお祝いしてもらったのに何の用事もなしに急に休むだなんて言ったら、あのあと何かあったんじゃないかってゆきのんを心配させるかもしれないし。

 ヒッキーを失ってしまった今、やっぱりゆきのんは親友で大切な人。

 ヒッキーに言われたとおり、自分自身に嘘はつかない。

 ちゃんとゆきのんとも向き合おう。

 あたしはそう決意して部室の扉を開け、いつも以上に元気な声で挨拶をする。

 

「やっはろー!」

 

 ただ、そこにいた人物と目が合うと、あたしはひっと小さく悲鳴をあげた。

 

「な、なんでヒッキーがここにいんのよ!?」

「……いや、俺ここの部員だし」

「そ、そうじゃなくて、今日はバイトって言ってなかったっけ?」

「ああ……このご時世でな、ファミレスも営業時間短縮で客も少ないからシフト減らされてんだよ」

「ふ、ふーん」

 正直、昨日のことがあってまともにヒッキーの顔が見られない。

 ヒッキーの方もできるだけ平静を装おうとしてるけど、視線が合わなかったり少しよそよそしい感じが出てたんだろうな。

「あなたたち、ちょっと様子が変ね。昨日あれから何かあったのかしら? もし比企谷くんに何かいかがわしいことをされたというなら恥ずかしいことかもしれないけど泣き寝入りはダメよ。ウチの父の持てる力という力を使って、千葉から、いえこの世から抹殺してもらうわ」

「おい、こええよ! 別に何もなかったってえの」

「結衣、そうなの?」

「う、うん……何もなかったって言うか、ん……本当に何もなかった、よ……」

 あたしの様子でゆきのんは何かを感じ取ったのかな。

「そう……ならいいのだけれど。じゃあお茶を入れるわね」

 それ以上何も言わず、立ち上がってティーセットを用意始めた。

 

 いつもならすぐに携帯をいじり出すんだけど、今は黙って下を向いてた。

 ヒッキーも手にした文庫本を伏せたままだ。

 少しだけヒッキーの視線を感じる。

 やはり昨日のことが気になっているのかな。

 あたしもカラオケでのことを思い出して顔が熱くなって、自然に両手で胸の辺りを隠すようにしてしまった。

 

「……やはり通報が必要なようね」

「おっ、おい! 冤罪やめろっ!!」

「犯罪者の常套句ね。もはや警察権力の手を借りる必要もないかしら」

 

 そんなある意味日常の会話が続いていた時に、不意に奉仕部の扉が開いた。

 

「あー! やっぱりせんぱい!! どうして奉仕部にいるんですかっ!!」

「いやだから俺はここの部員だと……」

「そうじゃなくて、せんぱい今日バイトだったんじゃないですか!?」

 やって来たのは生徒会長のいろはちゃん。ぼうえいぐんには不干渉と言って、ヒッキーのいない日には普通はこの部室には来ないんだけどな。

 

「バイトのシフトがなくなったんだよ。てか、お前はなんでここにいるんだ?」

「バイト無くなったなら生徒会室に来てくれればいいじゃないですか! わたしは書記ちゃんから部室に向かうせんぱいを見たって聞いて、対立組織間の諍いで見過ごせない事態が起こるかもと思い、生徒会長としての責務を果たすためやって来たんです!」

「いや、別に普段から奉仕部として集まってるし、昨日だって一緒にいたし」

「せんぱいは重大なことを見落としてますよ。奉仕部の日と防衛軍の日の大きな違いを……」

「何だよそりゃ……」

 あー、何となくいろはちゃんの言いたいことが分かったような……。

 もし今日の日程変更がちゃんと伝わっていなかったとしたら……。

 


 

「やっほー、結衣ちゃんごめんねー、昨日誕生日祝えなくて……って、なんでアンタがここにいるのさ!?」

 そうだった……ぼうえいぐんの日はさがみんが来るんだった……。

 

「……いやいや、だから俺はここの部員だってえの」

「今日は防衛軍の日でしょ! あんたの居場所なんてないっつーの」

「ま、まあさがみん、今日はヒッキーもバイトが無くなったっていうし、ね?」

「だいたい防衛軍の活動をやるのは勝手だが、部員が部室をいつ使おうがお前の知ったこっちゃねえことだろうが」

「きいい! まじムカつく!! 結衣ちゃんに免じてこっから追い出さないでやるけどさウチらの活動に口出さないでよ!」

「へいへい」

 と、言ったところで、特に何もなければ防衛軍の日だってみんな本読んだり携帯いじったり世間話してだらだら過ごすんだけど。

「結衣、私たちは受験生なのだから勉強もしなければダメよ」

 えっ、 ゆきのんに思考を読まれた!?

 

「てかさー、あんたそこうちの席なんだけど」

「はぁ? ここはいつも俺が座ってる席だし」

「ちょっとあんた!ひょっとしてうちがいない日にうちのお尻が触れた座面に頬ずりとかしてるんじゃないでしょうね!?」

「はっ、バッカお前、いつも雪ノ下が俺が来る前に来てんだぞ? そんなことできるわけないだろ!」

「じゃあ、雪ノ下さんがいなかったらやってたってこと!?」

「そっ、そうじゃねえ、 どうしてそーなるだよ! 冤罪をバラまくな!!」

「どうだか……だいたいそれ犯罪者の常套句じゃん。とにかくあんたはそこから動く気はないってことね」

「ああ、だからお前も後ろから椅子を持って来て勝手に……って、おい!?」

「ちょ、さがみん!?」

 あまりに急すぎて何が起きたか一瞬分からなかったんだけど、さがみんが突然ヒッキーが座っている上にそのまま自分も座っちゃって、まるでヒッキーが人間椅子みたいになっちゃってる!?

 

「おいこらどけ! 俺の上から離れろ!!」

「嫌よ。ここはうちの場所なのになんでうちがあんたの命令に従わなきゃいけないわけ?」

「いやだって普通に重いし」

「ムキー! 乙女に向かって重いとか、ほんとウザっ。マジのマジでちょームカつく!!」

「いやほんと、お願いですからどいてください。色々マズイから……」

 

「……あんた」

「ひゃい!?」

「うちのお尻の下になんか硬いものが当たってるんだけど……」

「OH……」

 おっ、お尻の下の硬いものって、それ……ヒッキーのヒッ……。

 

「うちが座った時からだから、うちのお尻に刺激されてじゃないよね? 何、あんた、年中発情魔なの?」

「ち、違う! これはたまたま……」

「それとも結衣ちゃんのおっぱいとか想像してた?」

「うっ……」

「ちょっと、そのリアクション……まさか図星!?」

 えっ、あたしの……えええ!?

 ヒッキー、昨日のことを思い出して、そう、なっちゃったのかな?

 

「せんぱい、違いますよね? わたしの全裸を思い出してそうなっちゃったんですよね?」

「ちょっ、いろはちゃん!? わたしの全裸って、いろはちゃんもヒッキーに裸を見せたの?」

「……由比ヶ浜さん、今、聞き捨てならないことが聞こえたのだけれど。いろはちゃん『も』って、どういうことかしら?」

「あ」

「それって結衣ちゃんもこいつに裸を見せちゃったってこと?」

「あは、あはははー」

 どうしよう……あたしが答えに窮してると、突然ヒッキーがさがみんを押しのけて立ち上がり、

 

「いやーそれはだなー、俺が昨日由比ヶ浜のショッピングに付き合わされて、こいつ服が試着してたときにうっかりフィッティングルームの中に飛び込んでしまって目にしちゃったんだよ、本当に悪かった! だから通報だけはやめてください」

 そう言ってあたしの前で土下座するヒッキー。

 このままだとゆきのんとあたしが仲違いすると思って、自ら泥を被ろうとしてるんだよね。

 そんなヒッキーの想い、無駄にはしたくないよ。でもね……。

 

「ヒッキー、いいよ、そんな嘘つかなくても」

「いや、由比ヶ浜、でもな……」

 

「ゆきのん、あたしが自分で服を脱いでヒッキーに迫ったの。だからヒッキーは悪くないの」

 そう言って土下座するヒッキーの前にあたしも跪く。

 

「ヒッキーがあたしとゆきのんのために自分を悪者にしようしてたんだよね」

「いや、それはちが……」

「ううん、分かってるから……ありがとね」

 あたしはヒッキーの頬を両手で押さえ、そっと自分の唇をヒッキーの唇に押しあてた。

 

「ゆ、由比ヶ浜さん、あなた……!」

「結衣先輩……」

「結衣ちゃん……」

 何やら口をパクパクさせているヒッキーを床に残し、ゆきのんの前にスッと立つ。

 

「ゆきのん、あたし、ゆきのんにちゃんと話しておきたいことがあるんだ」

「由比ヶ浜さん……いえ、結衣。そうね、私もあなたとじっくりお話ししたいわ」

 ゆきのんとあたしがじっと見つめあって、部室は沈黙に包まれる。 

 その緊張感に満ちた空間を破ったのはさがみんの一言だった。

 

「じゃあさ、今日はもう終わりにしない? あたしたちは邪魔にならないように出ていくから。比企谷、あんたもそれでいいよね?」

「おっ、おおう」

「……ふぅ、分かったわ。今日は部活も防衛軍もお終いにしましょう」

 ゆきのんはため息ともつかない息を吐いて、さがみんの提案を了承する。

 

「じゃあ行くよ」

「あ、ああ、分かった」

 さがみんに促されて立ち上がったヒッキーは、事態の急展開に戸惑いつつ鞄を掴み部室を後にしようとしている。

「それじゃわたしも生徒会に……」

「待って、一色さん。あなたにも聞かなければならないことがあるからここに残りなさい。いいわね?」

「いや、あの、そのー」

 いろはちゃんも二人に便乗して出て行こうとしたみたいだけど、ゆきのんのすごく怖い笑顔を前にしてしどろもどろになってた。

 

「一色、頑張れよ」

「せ、せんぱい、かわいい後輩を助けてくれないんですかぁ〜〜〜」

「これはお前が乗り越えなければならない試練なんだ。せめて命があることを祈っているぞ」

「そ、そんなぁぁぁ……」

 がっくりうなだれるいろはちゃんを置いて、じゃあという言葉を残して二人は出て行った。

 

「じゃあ、改めてお茶を入れ直すわね」

「うん、今日は全部話すから。あたしの気持ち、ヒッキーのこと、ゆきのんのこと」

 そうだ。あたしはもう逃げない。ゆきのんからも、ヒッキーからも。

 そして、全部手に入れるんだ。

 

 そう決意したあたしは、部室が紅茶の香りで満たされるのを晴れやかな気持ちで待っていた。

 


 

(ご存知♪ 茶番屋台)

 

「それじゃ、かんぱーい!」

 

「おじさん、あゆの塩焼きですぅー」

「あいよ」

「いやー、それにしても平塚先生は元気してたじゃん?」

「はあ、毎日悪ガキどもの相手で大変ですよ」

「それはもう、平塚せんせいは黄泉川せんせいの代わりに警備員(アンチスキル)として大活躍なのですぅー。スキルアウトの子たちからは『静の姉御』と呼ばれて、それはそれは慕われているのですよ」

「どっちかというと恐れられている方じゃないでしょうか……」

「鉄装せんせい、物事は悪い方に悪い方に解釈すべきではありませんよぉ。あ、おじさん、城下かれいのお刺身ですぅ」

「あいよっ」

 

「なんかそっちも楽しそうで羨ましいじゃん」

「そっちはどうですか? 比企谷とかちゃんとやってますか?」

「ま、危なっかしいところもあるけど、一応元気にやってるじゃん?」

「いや、そこなんで疑問系なんですか?」

「そうか、鉄装は比企谷知らないじゃんね? まあ、基本的にいい子なんだけど、捻くれてて、そんでハーレム主人公じゃん。いつか刺されないかちょっと心配じゃん」

「はあ、ハーレム主人公」

 

「ハーレム主人公ならこっちにもいますよー。ねー、平塚せんせい?」

「いや、私は上条のことなんか何とも……」

「わたしは上条ちゃんのことなんて一言も言ってないのですよぉ?」

「あ」

「平塚先生、あの少年となんかあったじゃん?」

「それがですねぇ」

「こっ、小萌先生やめてください!」

「上条ちゃんが吹寄ちゃんって女生徒に追われて逃げ込んだ部屋で平塚せんせいがお着替えしてて、せんせい下着姿を見られちゃったんですぅ。それで、平塚せんせいが衝撃のファーストブリットを放った時に止めようとした上条ちゃんの右手が間違って平塚せんせいのおっぱいを掴む形になっちゃって」

「こもえせんせい〜、もうやめ……」

「平塚せんせいその場にしゃがみ込んで動けなくなっちゃったんですよぉ」

「あ、ああああ……」

「月詠先生、それはハーレム主人公というよりラッキースケベ事案なのでは……」

「すごいじゃん! あの少年の右手は超能力と魔法だけじゃなくて平塚先生まで無力化するとは!」

 

「ところで月詠先生はどうしてそのことをそんなに詳しく知ってるんですか?」

「よくぞ聞いてくれました、鉄装せんせい。実はですねぇ、せんせいもそこで着替えしてたんです。あ、おじさん、別府限定焼酎『毎日が地獄です』お湯割りですぅー」

「あいよっ」

「いや、別府限定なのに何であるんですかってそうじゃなくて、月詠先生はいいんですか!?着替え見られて」

「まあ、上条ちゃんとはこれまでもいろいろあったのですよぉ〜、いろいろ~♪」

 

「で、その後少年はどうなったじゃん?」

「追ってきた吹寄ちゃんに引っ叩かれて後から来た姫神ちゃんにぶっ叩かれてシスターちゃんに頭齧られてましたよー、不幸だぁ~なんて叫びながら」

「でもまあ子供のやることじゃん。私ら大人は堂々と構えてればいいじゃん」

「そうは言っても黄泉川せんせい、女は時には女豹になりたい時もあるのですよー」

 

「ああああ、おっちゃん!スピリタス、生(き)で!」

「平塚先生、大丈夫なんですか!? それってアルコール度数96%ですよね?って、ええー! そんな一気にぃ!?」

「おっ、平塚先生やるじゃん、おっちゃんこっちにも同じものを!」

「ちょ、黄泉川先生まで!? いくら明日学校休みだからってどうするんですか? 私、二人はおぶって帰れませんよ?」

「大丈夫なのです。その時には上条ちゃんでも呼び出して連れて帰ってもらいますからぁ」

「いや、先生が教え子におぶわれて帰るってどうなんですか……」

「かみじょうらとぉ、わらひにはひきぎゃやっていう者がぁ〜〜〜!」

 

「おじさん、あと30分したらタクシーですぅ」

「ぁぃょ」

 


 

「相模、助かったよ。ありがとうな」

 

「比企谷に素直に謝られるとなんか気持ち悪いんだけど。それに別に一緒に出てきたの、あんたのためじゃないし」

「それもそうだが……昨日、カラオケで声かけてくれたの……お前だろ?」

「さ、さあ、何を言って……」

「由比ヶ浜はテンパってたから気付かなかったかもだけどな……俺はお前の声、聞き間違えたりしねえよ」

「ひっ、比企谷!あんたって奴は……」

「何だよ、そんなに顔真っ赤にして怒らなくても……」

「はあ、バレたんならしょうがないけど、あれだってあんたのためじゃないから」

「じゃあ何だよ」

「結衣ちゃん、結衣ちゃんがあれ以上傷つくのを見てられなかったのよ……」

「由比ヶ浜のため?」

 

「……うち、一年の時は結衣ちゃんと同じグループでつるんでたのよ。 一応、友だちって言っていいのかな? 2年に上がった時に三浦が結衣ちゃんを自分のグループに入れてから疎遠になったけどね。で、あんたも知ってのとおりうち体育祭で遥とかゆっこと仲違いしたじゃん? あの時は女の友情なんて0.01mmより薄いなんて嘆いてたけど、そのうち防衛軍の活動に参加して、また結衣ちゃんと一緒につるめるようになって、うち、正直嬉しかった。なのに昨日……結衣ちゃんのあんな顔、見たくなかったから……」

 

「そう、だな……。あの時の由比ヶ浜をあのまま強く拒絶しても、その場限りで受け入れても結局あいつが深く傷つくことになったろう。そして、たぶん俺には何もできなかった。俺のためでなくてもお前おかげで助かったのは事実だ。感謝する」

 

「でも、うち驚いたわよ。今日の結衣ちゃん、すごく強くなってた。うちらとつるんでた時や2年のはじめの頃、三浦に振り回されておどおどしてた結衣ちゃんとは全然違った。これもあんたや雪ノ下さんに出会ったからって思ったら、ちょっと嬉しいけどかなり悔しい」

「俺ってことはないだろ。大部分は雪ノ下のおかげだ」

「はあ、あんた、ちゃんと自己評価した方がいいよ」

「バッカ、お前、基本これまで周りにディスられてばっかだったから、そんな肯定的な自己評価なんてできるわけないだろ。だいたいお前だって文化祭のあと、俺の悪評流してたじゃねえか」

 

「あれは……ホントごめん……」

「い、いや、別に責めるつもりで言ったわけじゃねえし、なんかお前に素直に謝られるとなんか調子狂うな」

「なにあんた、ひょっとしてドMなの?」

「そんなわけあるか!お前こそ、南のMはドMのMじゃねえのかよ」

「何言ってんの。相模のSはドSのSだって知らなかった? って、あんた、うちの名前……」

「あ、すっ、すまん!キモかったよな」

「べっ、別にそういうわけじゃないけどさ……っていうか、うちとあんたでこんな話する日が来るなんて思ってなかったわ」

「俺もだ」

 

「くくく……」

「ははは……」

 

「はぁー、なんだかんだで部活早く終わったし、なんか食べに行かない?」

「そうだな、たまにはそういうのもいいかもな」

 

「ちょっと……本当にどしたん? 普段のあんたなら真っ先に家に帰りたいって言いそうなもんなのに」

「……まあ、家には家でいろいろあるんだよ」

「なんか複雑な事情がありそうね。まあいいわ、別に興味ないし。じゃあ稲毛海岸駅前のフレッシュネスとかどう?」

「待て! 駅前はマズイ。俺のバイト先の目と鼻の先で別の店に入って行くところを店長に見られたら釘バットでオシオキされかねん」

「……あんたの店、いったいどうなってんのよ。そんなことだから店名出せなくなってんじゃないの?」

「おいバカやめろ」

 

「じゃあマリンピアの中の店ならいいでしょ? サンマルクとか」

「まあ、それなら」

「んで、あんたの奢りね」

「何で俺が……」

「あれれー? うちに感謝してるんでしょー?」

「はあ、仕方ねえな。高いもんはやめろよ」

「何言ってんの。ダブルバイトで潤ってんだからケチケチすんなっての!」

「分かった分かった。んじゃ行くぞ」

「偉そうにうちに命令しないで。うちが命令する側だから。比企谷、行くよ!」

「結論は同じじゃねえかよ……てか、相模、お前楽しそうだな?」

「何言ってんの。べっ、別にあんたとお茶するのが楽しみとかじゃないんだからねっ! お腹が空いてなんか食べるのが楽しみなだけなんだからね‼︎」

 

「おっ、おおそうか……結構、強烈だな、これも」

「なんか言った?」

「いや、何でもねえ」

「ふふっ♪」

 


 

「結衣、あなたの気持ちは分かったわ。これからは私も遠慮しないから覚悟してね」

「うん、あたしも負けないから! 」

 

「と言うか、まさか一色さんや城廻先輩が比企谷くんの家まで行ってそんな破廉恥なことをしていたなんて思いもよらなかったわ」

 

「うー、しくしく、全部洗いざらい吐かされてしまいましたー」

 

「私も……覚悟を決めて比企谷くんの前で全てをさらけ出すべきかしら……」

「雪乃先輩の身体では、却って逆効果になるのでは……」

 

「ギヌロ」

 

「ひっ、ひえーーー」

「ところでゆきのん、ヒッキーとさがみんを二人きりで帰して良かったの? さがみんも前とは違ってヒッキーのこと悪くは思ってないみたいだけど……」

 

「あ」

 

「雪乃先輩、ひょっとしてそのことに気づいてなかったんですか?」

「だって仕方ないじゃない。結衣の想いに向き合うのに全力で、それ以外のことまで考えが回らなかったのよ」

 

「ゆきのん……」

 

「結衣先輩も感動してる場合じゃないですよ! 早く何とかしないと」

「でもほら、あたしとも結局何にも無かったんだし、さがみんとヒッキーがどうかなるって思えないんだけど……」

「結衣先輩甘いです! なごみの米屋の極上羊羹よりも大甘です! 乙女の戦いはもうはじまってるんですから、ここで一歩でも相模先輩にリードを許したら、後々響いてくるかもしれませんよ!!」

「そうね! 一色さんの言う通りだわ。とにかく二人はまだ遠くへは行っていないはずよ! どうせあの男のことだから行くところなんて限られているし、みんなで探せばすぐ見つかるはずだわ!」

「分かりました! 生徒会からも書記ちゃんを召喚して一緒に探させましょう!!」

「いろはちゃん、それはやりすぎじゃ……」

「そんなことないわよ! 今、私の第六感が比企谷くんの周りに立ち上るらぶこめ臭を察知したわ。もはや一刻の猶予も許されない!! この雪ノ下雪乃が敗北するなんてことはあってはならないのよ。ええ、絶対にあってはならないことなの! 打てる手は全て打たなければ!!」

「それでこそ雪乃先輩です!」

 

「結衣、一色さん! 私たちの戦いはこれからよ!!」

 

(ゆきのん、それは負けフラグじゃないかなあ……でも、まいっか! ねっ♪)

 

 




[いつもすぎる言い訳]

皆様、ご覧いただきありがとうございます。

当初番外編は1話完結のはずだったんですが、だんだん長くなりますね。
本当は本編が1シリーズこのくらいの長さで、番外編1話が理想なんですけど。
まあ番外編はこれで最後だと思うのでご容赦願います。

一応原作のメインヒロインなので、番外編を書いておかないと収まりが悪いということでこれで心置きなく最終回に向かえます。

次回修学旅行シリーズファイナルシーズン
「なのにあなたは京都へゆくの」(仮題)

乞うご期待!

「ちょっと、私の番外編は1話だけだったのに一色さんが3話、城廻先輩と結衣の番外編が4話というのは納得がいかないのだけれど」
「ひっ、雪乃さん……雪乃さんは本編の方で活躍されているので勘弁してください」
「その本編の扱いも最近酷いから文句を言っているのよ。メインヒロイン中のメインヒロインであるこの私をオチ要員に使うとか、いったいどういう了見なの?」
「雪乃さん、原作でヒロインの座を勝ち取ってるんだからいいじゃないですか」
「だめよ。二次創作だろうと私が負けヒロインになるなんて許されないわ。そんな作者はお仕置きです!コキュートス!!」
「ぐぇっ!」
チーン……。

「あ……お兄様、お兄様! 再成をお願いします!!」

「って、私の兄弟姉妹は姉だけのはずなのだけれど、どうしてお兄様がいるのかしら……」

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