まちがいだらけの修学旅行。   作:さわらのーふ

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はい、またお会いしました。

ワタクシ、嘘を申し上げてしまいました。
次は最終回と言いながら、またまた番外編ヤってしまいました。

……いや、元々そういう意図ではなかったって言うか、成り行きと言うか、前回の引きがそういう感じだったもので……。

悪気はないんです!
ほんの出来心なんですっ!

というわけで、ほんの短い間ではございますが、相模さんの番外編にお付き合いいただければ幸いです。

これ以降、折本さんとか三浦さんの番外編とかありませんのでファンの方には悪しからずご了承くださいませ。


千葉最大の侵略〜花も嵐も踏み倒せ!番外編 MINAMI☆天気予報がはずれたら 前編

 オッス、オラ、相模南! 因縁の相手、比企谷八幡とマリンピアへやってきたぞ!

 これからの展開にオラ、わくわくすっぞっ!!

 

 ……って、突然降ってわいたような比企谷とのデートに相当テンパってるうち。

 

 いや、デートじゃないっつーの!

 

 そんな自分自身へのおかしなツッコミを入れるくらい訳わかんないのよ。

 生憎の、なのか、幸いに、なのかわかんないけど、今日は雨。

 今は互いに傘をさしてて少し距離があるし、雨音にも遮られて会話が無いことは別に気にならないんだけど、このあと何を話したらいいか全然考えがまとまらない。

 

 うちだって分かってんのよ。やらなきゃいけないことくらい。

 

 まずは謝る。

 文化祭でうちがしたこと、その後に悪評を流したこと。

 それから感謝を伝えること。

 そりゃ、コイツがうちを助けんがために屋上であんなことしたなんて思ってないよ?

 だけど、うちは救われた。他ならぬコイツに。そうじゃなきゃ文化祭のあと、周りから責められてたのはうちだもん。

 それに体育祭でもずいぶん助けてもらったし。相互確証破壊とか、言うことと考えることはサイテーだったけどね。

 それとさ……。

 

 とは言え、いくら成り行きって言っても、展開、急すぎない?

 うちだって心の準備が欲しいっつーの!

 まあ、誘ったのうちなんだけど……。

 

 とりあえず今日、可愛い下着でよかった……。

 

 って、こいつとそんな関係になるなんてありえないからね!?

 ほっ、ほら、あれよ!

 うちがこいつに弱みを握られてるのをいいことに襲われるかもじゃん?

 そんな時にイケてない下着とかだったら恥ずかしいじゃん?

 慰みものにされた上に笑いものってもう生きていけないレベルよ。

 

 それはさておきっ、とにかくうちって流されやすいからさ。

 文化祭も葉山くんに推されたからって実行委員なんて引き受けちゃうし。

 そりゃあ、委員長になったのだって自尊心だけじゃないのよ?

 やっぱりうち自身が変わりたい、なんか変えたいって思ってたし、文化祭だってやるならちゃんとやりたいと思ったから平塚先生に相談したら奉仕部?とか紹介されて、サポートをお願いしたんだよ?

 でもね、やる気を出してみたのはいいけど、やっぱ雪ノ下さんと比較されたらやっぱうちってザコじゃん?

 自分で言うのもなんか悲しくなるけどもさ。

 みんなが雪ノ下さん雪ノ下さんって言うもんだから実行委員会の中にうちの居場所なんてなくなっちゃって、陽乃さんが来たタイミングでクラスに逃げちゃったのよね。

 雪ノ下さんがそんなに優秀だって言うなら全部雪ノ下さんがやればいいじゃん、って。

 

 でもね、一緒に防衛軍の活動して分かったことがあるの。

 彼女は彼女なりに不器用だってこと。

 あの時だってうちは雪ノ下さんに委員長のサポートをお願いしたつもりだったんだけど、不器用な分どうしていいか分からなくて、自分で回すことしかできなかったのよ。

 やっぱり知ろうと思わないと分からないことってあるんだね。

 

 そしてコイツ。

 

 奉仕部に相談しに行ったらいたのがコイツよ。

 陰キャだし何考えてるかわからないし目つきだけ見たら性犯罪者だし?

 葉山くんの推薦じゃなかったらコイツと実行委員なんてまっぴらごめんだったわ。

 スローガン決めの時だってとんでもないスローガンぶち上げちゃってくれるし。

 なんなのよ!『人~よく見たら片方楽してる文化祭~』って!!

 ふざけるにもほどがあるってのよ!

 

 まっ、まあ、アレはうちにスマッシュヒットしたんだけどさ……。

 

 最後、うちが屋上に逃げた時に真っ先に現れたのがコイツって、運命の神様はうちをどんだけがっかりさせるのって思ったね。

 その上、ずけずけとうちの一番痛いところついてくるし。

 でも……コイツが一番うちのことを知ってたんだ……。

 

 うちの居場所、うちのこと……。

 

 だけど腹立たしいのはさ、コイツ、うちのことなんて何とも思ってないんだよね。

 ちっ、違うよ? 別にコイツに好かれたいとかじゃないよ?

 だって、うちって自分で言うのもなんだけど結構イケてる方だと思うんよ?

 少しくらいはときめいてくれたって罰は当たらなくない?

 そりゃさ、雪ノ下さんとか結衣ちゃんと毎日のように一緒にいるから、うちなんてザコにしか見えないかもしれないけどさ……。

 それでもうちだって結構みんなからカワイイとか言われるんだから、少しぐらい襲おうって気になられてもよくない?

 

 えっ、コイツに……襲われる……。

 

「おい……おい……」

 

 やっぱりいくらこんなひょろっとした奴でも男の子だし、強引に迫られたら抵抗なんてしても……。

 

「おい、相模!」

 

「ひゃい!? やめて!お願い、乱暴にしないで!優しくして……」

 

「おいバカやめろ! こんな人前で何言ってんだよ‼︎」

 

 んんっ?

 

 気づけばいつの間にかマリンピアの前に立っていて、周りの人からは奇異な目で見られていた。

 うちは、顔がかぁっと熱くなるのを感じて俯き加減に慌てて傘を閉じる。

 

「ほら、比企谷行くよっ!」

 顔を伏せたまま比企谷の手を引っ張って建物の中に入る。

 さすがにこんな感じで1階の店には入りづらいから、そのままずんずんとエスカレーターに乗って上の階を目指した。

 

「あの……相模さん?」

 エスカレーターの途中で比企谷から声がかかる。

 

「何よ!」

「いや、そろそろ手を離してもらえないかと……」

 

 え!? なんかうちら手を繋いじゃってる!?

 

「ちょっと!あんたなにうちの手を握ってんの!いいかげんキモいんだけど」

「いや、手、握ってんのお前……」

「うっさい!!」

「なにその理不尽……」

 分かってるっての! 手を握ったのはうち! 悪いのはうち!

 それに何よ! いくらテンパってたからって、なんでよりにもよって恋人繋ぎなんてしちゃってるの!?

 

「で、離さないのかよ……」

「こんなエスカレーターの途中で離したら危ないでしょ! そんなことも分かんないの?」

「ええ……」

 

 結局、4階にあるパスタのお店に入るまで手は繋がれたままでした。

 


 

「……」

「……」

 ど、どうしよう。

 やっぱり何話していいか分かんないよー(汗)

 

「ちょっと! あんた男なんだからさー、いいかげんなんとかしなさいよ」

「いや、お前、俺に何期待してんの、っつーか、何をどうすればいいんだよ」

「それを考えるのがあんたの仕事でしょ」

「おい、ボッチの非モテ男子にゃ無理ゲーすぎんだろ……」

 ちょっとコイツ何言ったんのよ。もうボッチでも非モテでもないくせにさ。刺されたいの?

 

「ってかさー、結局パスタ食べんならあんたのバイト先でもよかったんじゃないの?」

「バッカお前、ウチの店なんて行ったら、メシ食うどころか仕事でもないのにパフェとか作らされんだぞ。店長の」

「バカとは何よ、バカとは! それに店に行きたくないのだって……」

 他の女の子といるところをあの腐女子に見せたくないんでしょ、と言いかけた言葉をぐっと飲み込む。

 以前のうちなら、コイツが嫌がるならなおさら店に引っ張っていったと思うけど、今回はこいつに謝るのが目的で、とは言え同級生が見ている前でコイツに謝るのは癪だし、それに、もしこいつと腐女子がそこでイチャイチャなんかしてたらうちの方が心折れそうじゃん……。

 

「まあいいわ。でさ、あんたに言いたいことがあって……」

「サラダセットにドリンクバー付いてるんだったよな?俺が取ってくるから何がいい?」

「え、あ、うん……うち、オレンジジュースで……」

「おう。じゃあ待ってろ」

 そう言って、席を立って行っちゃったよ。

 なんでこんな時に気を利かせちゃってんのよ! せっかくうちが話し始めようとした時に、もう!

 

 ホントムカつく!

 

「ほれ」

 比企谷が戻ってきてうちの前にオレンジジュースとストローを置く。

 うちは黙ってそれを見つめる。

 どうも、くらい言ったらいいのに、どうしてもその一言が出てこない。

 

 こんなんでこいつに謝れるの?

 ありがとうって言える?

 

 そんなうちの気持ちも知らないで、こいつは目の前の席にドッカと座ったと思ったら、アイスコーヒーにこれでもかこれでもかと言わんばかりにプチプチとガムシロを入れていく。

 ちょっとあんた、さすがにそれは入れすぎでしょ?

 そんな入れて、将来糖尿病とかになっちゃうんじゃないの?

 べ、別にうちがあんたの将来を心配したって仕方ないんだけどねっ。

 

「飲まないのか? 氷溶けて薄くなんぞ」

「あんたに言われなくったって飲むわよ!」

 うちはストローでガチャガチャ氷をかき回し、それを咥えてジュースを喉に流し込む。

 こいつもほとんどガムシロの味しかしないであろうコーヒーのグラスに口をつけた後、

 

「で、今日は何の用だ? 何か言いたいことでもあるんじゃねえのか」

 と言った。

 やっぱりこいつはうちのことなんてまるっとお見通しなんだ。

 

「ん……」

 うちはストローから口を離して少しだけ逡巡し、ようやくと言った体で重い口をひらく。

 

「あ、あのさ……」

 

 だけど、うちの決心はまたもやくじかれることになる。

 

「あれれー、南ちゃんじゃん!」

「さがみん久しぶりー!」

「ゆっこ……遥……」

 

 そこにいたのはうちと仲が良かったゆっこと遥。

 去年の体育祭実行委員会で仲違いするまでは……。

 そのとき、比企谷のことをジロジロと見廻し、ふっと笑みを浮かべたゆっこの表情をうちは見逃さなかった。

 

「あ、そうなんだー! 一緒に来てるんだねー。あたしたちなんて女ふたり飯だよー。いいなー、青春したいなー」

 この顔は、花火大会の時のうちだ……比企谷と結衣ちゃんに声をかけたうちの顔だ。

 うちって、こんな醜い顔してたんだ……。

 

「何そのテレ東深夜のグルメ番組で使われそうな言い方……」

 そう返しながらちらっと見た比企谷は、いつも以上に何かを諦めたような目で、ふーっとため息をつき、おもむろに口を開いた。

 

「あーあ、お前の秘密を黙っておく代わりにお前のこと好きにしていいっていうからその前に飯くらいはおごってやろうと思ったのによー、怖気づいて友だち呼んでうやむやにしようとしてんだな。あーあ、がっかりだ。お前なんか身体しか取り柄が無いっていうのによ」

 

 なっ……!?

 

「ちょっと! 南ちゃん脅していやらしいことしようとしてたってわけ?」

 

 えっ、ちがっ……。

 

「ほんとサイテーね! さがみん、こんなやつの言うことなんて聞く必要ないよ。あんたなんか二度と学校に来れないようにしてやるからっ」

 

 いやっ、そうじゃ……。

 

「相模、俺の言うとおりできないなら、このままそこのオトモダチとどっかに行って……」

 

「……うるさい」

 うちは低い声で比企谷の言葉を遮る。

 

「うるさいうるさいうるさいっ!」

 

「お前、あのな……」

「あんたは黙って。うるさいうるさい! だいたいいつもいつも何様のつもりなの?」

 うちは比企谷をキッと睨みつける。

 

「そんな嘘ついてうちが喜ぶと思った? 自分を傷つけてうちを救って、それで満足?」

「な、そんなことあるわけ……」

「あるでしょ? あるよね? そんなことしてあんた、自分がどうなるか分かってんの? 文化祭のあと、どんな目にあったか覚えてないの?」

 そうよ、うちはよく覚えているわよ。あんたが周りから責められてどんな酷い目にあったかを。

 

「ゆっこ、遥、こいつはね、あんたらが思ってるようなやつじゃない。あんたらが侮っていいような男じゃないの」

「なっ、何よ、その言い方! あたしらはあんたのことを心配して言ったんじゃない!」

「そうそう、そもそもこいつを一番馬鹿にしてたのはあんたでしょ!」

「ま、まあもどっちも少し落ち着いて……」

「そっ、そんなことうちが一番良く分かってるわよ!」

 なだめようとする比企谷を遮って、うちはさらに声を荒らげた。

 そう、文化祭のあと、こいつが辛い目にあったのはうちのせい。そうなるように仕向けたのは、こいつの悪評を流したのは、うちなんだから……。

 

「だから……うちは反省してるって……こいつに謝ろうって……うちの思いを伝えようって……」

 そして、そこで言葉に詰まる。

 

「相模……お前……」

 

「えっ……」

 目の前にいる比企谷の姿が滲んでいる。

 気付けばうちの瞳は涙で溢れていた。

 

「あ、あれ? うち、なんで……」

「さがみん、やっぱりこいつに脅されて……」

 

「そんなわけないじゃない! もしこいつがうちの身体が欲しいっていうなら脅したりなんかしなくったっていつでも……」

 

「みっ、南ちゃん!?」

「さがみん?」

「相模!?」

 

 ゆっこと遥、そして比企谷までが金魚のように口をパクパクさせなかせら辛うじてうちの名前を呼ぶ。

 

 えっ、何? 何が起こった?

 

 うちは、今、自分が言った言葉を思い返す。

 こいつがうちの身体が欲しいっていうなら……えっ?

 

 あ、ああああ、あぁぁぁ!

 

 いろんなことをすっとばして、あいつに抱かれてもいいって言っちゃってる!?

 気がつけばうちはマリンピアの中を駆けていた。

 さすがに居た堪れなくなってまた逃げちゃったよ……。

 

 やっぱりうち、何も変わってない……。

 

 とにかくいったん熱くなった頭を冷やさなきゃと思い、うちは歩みを緩めながらそのま館内を進んでいった。

 


 

「ちょっと、何、アレ」

「なんか変なこと言ってたよね……」

 

「えっと、相模の友だち……だったかな」

「はっ、はい!?」

「もうすぐ料理が来るんだが、もしいま来たばっかりなら俺達の代わりに食べてもらえないか? 相模を追いかけなきゃだからよ。もちろんその分の代金は置いておくから」

「あんなのほっとけば?」

「いや、泣いてる女をほっといたら後で妹に怒られんだよ」

「何?、あんたシスコン? キモ」

「まあ、そういうことで。あ、デザートも頼んでいいから、あとよろしく」

「あ、ちょっと……」

「行っちゃったよ……」

「ねぇ、このお金……ちょっと多くない?」

「そんなにデザート食べられるかな?」

「そうじゃないでしょ! でも……」

「うちらも泣いたら追っかけてくれるのかなぁ……」

 

「なんかちょっといいな……」

「うん……」

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