中編、なんですけど話が進まないなあ……。
いつもの茶番屋台もあるんであと1話で終わるのか心配になってきました。
前回みたく数字振るんだった……。
かぽーん。
いや、ビジネスホテルのユニットバスでそんな効果音しないけど!?
てかなんでうち、裸で膝を抱えながらユニットバスの浴槽に浸かってんの?
たしかにお風呂は裸で入るものけどそうじゃないの、そういうことじゃないのよ!
なんかあれよあれよという間に比企谷にマリンピアのすぐそばのビジネスホテルのダブルベッドの部屋に連れ込まれてお風呂に放り込まれて今に至るってことなんだけど。
え? 何この状況。
コレってアレだよね? うちの妄想じゃなくて比企谷に襲われるんだよね?
ええ!?
うち、ここで比企谷に初めてを?
ちょっと! お前みたいなのが初めてなわけないって言ってるの誰?
先生怒らないから正直に名乗り出なさい、って絶対怒るやつよね。
うちは子供の頃、アレで大人の汚さを知ったわ。
それにしてもちょっと失礼じゃない?
そりゃさ、そういう機会が全くなかったわけじゃないよ?
これでもうち、イケてるほうじゃん?
あれは1年の秋だったかな?
結衣ちゃんはいなかったけど、ゆっこと遥と3人で歩いてたら、やっぱり相手も3人組の年上の男にナンパされてカラオケに行ったんだけど。
いつの間にかそのうちのひとりと2人きりにさせられて。
気づいたら明かりを落とされて隣に座ったそいつがカラダを触ってきてうちの服を脱がそうとすんの。
いくらなんでも初めてがそんなムードもへったくれもないのって嫌じゃん?
それでも相手が葉山くんとかだったらその気になったかもしれないけどさ、さすがに全然知らない男とかないわー。
だから、ちょっ、ちょっとトイレって部屋を出て行こうとしたんだよね。
そしたらさ、そいつなんて言ったと思う?
えー、ここですればいいじゃん、って。
無理、絶対無理!
ひきつった笑みを浮かべながらそれはちょっと……って部屋を出ようとしたら、なんで荷物まで持っていくんだってめざとく見てんのよ。
女の子には身だしなみとかあるからって言ったんだけどそれでも置いてけばいいじゃんってしつこいから、相手のズボンとパンツ下ろして、荷物引っつかんで逃げちゃった。
どうよ、うちのヘタレぶり。
逃げることならうちの右に出るものはいないって言っても過言じゃなくない?(過言です)
あとでゆっこと遥に聞いたら、残りの二人もうち狙いだったみたいでさ、別の部屋にいてうちとそいつとのことが終わったら順番にうちらの部屋に来て襲う予定だって言っててドン引きしたって。
おい、だったら助けなさいよ!
やっぱり女の友情は0.01ミリより薄いって本当だったわ。
もちろんこれ、うちオリジナルな考えだけど何か?
ま、まあ、そんなこんなで逃げ女として定評のあるうちだけど、比企谷にはなぜか捕まっちゃうのよね。
文化祭の時だって、今日だって……。
「はぁはぁ、はぁっ、やっと見つけた。お前、こんなとこで何してんだよ」
うちはあの時のように屋上のフェンスに寄りかかり、誰か……いや、今日に限っていえば、こいつが来るのを待ってたんだ。
「あんたなら見つけてくれると思ってさ」
だから……うちはこの場所で……。
「相模の考えを読んで相模を探せゲームのことか?」
比企谷が傘を差しかけながらそんなことを言った。
そっか、これはうちと比企谷のゲーム……。
「お前さあ、見つけて欲しいならもっと素直に本館の屋上にいろよ……いくら棟続きとはいえなんで附属する立体駐車場の、しかも建て増しした一番奥の建物の屋上なんかにいるんだよ」
「だって仕方ないじゃない! レストランフロアからまっすぐ走ってたらいつの間にか立体駐車場にいて、うちだってよくわからないうちにここに着いちゃったんだから」
「おかげでこっちは本館から順に屋上巡りすることになったんだからな。もしここにいなきゃ専門館の屋上まで行くとこだったわ」
「うちが屋上にいることは疑わなかったんだ……」
「まあ、ある意味、俺たちの因縁の場所だしな……」
「そっか……そうだね……じゃあ、やっぱりこのゲーム、あんたの勝ちよ。賞品は、うちでいいかな……くしゅん!」
「なにバカなこと言ってるんだよ。こんな探しにくい屋外で傘も持たずにいるから、びしょ濡れになっちまってるじゃねえか」
「そうだよ。うちがこんなに濡れちゃったのはあんたのせいだかんね。だから、責任とってよ」
「たしかにこんなびしょびしょじゃ電車やバス、タクシーすら乗れないだろうしな……ちょっと待て」
そう言って少し離れたとこでどこかに電話をしだした比企谷。
えっ、ええ? うちをこんだけビショビショに濡らしちゃった責任とってくれるの?
「ほれ、行くぞ」
「ちょ、ちょっと!?」
急に比企谷に手首を掴まれて強引に引っ張られて……。
かぽーん。
だからかぽーんは無いって!
責任……とってくれるってやっぱりそういうことだよね?
なんか急だったけど、身体だってちゃんと洗ったし。
そろそろ覚悟を決めないと、うん。
コンコン
「ひゃい!?」
「相模、俺だ。入るぞ」
「比企谷!?」
ドアの外から聞こえる比企谷の声。
やっぱまだムリムリムリ!
慌ててシャワーカーテンをピッタリと閉めてバスタブに閉じこもる。
そんな急に入ってこられたって、まだ心の準備ができてないっつーの!
「な、何?」
「ああ、お前の服……これか。ちょっと預かっていくからな」
「ちょ、ちょっと待って!」
とは言っものの、ヘタレなうちがシャワーカーテンを開けて出て行けるわけもなく……。
再びガチャリと音がした後、そっとシャワーカーテンを開けて覗き見ると、洗面台の上に脱ぎ散らかした服が跡形もなく無くなっていた。
えっ、下着も……?
Arghhhhhhhhhh!!!!!!!!!!!
とりあえず今日、可愛い下着でよかった……。
ってそうじゃないよ!
え、え?どういうこと!?
うちが逃げ出さないように?
そんなことしなくたってもう……。
いやいや、やっぱうちヘタレだし?
このくらいしないと逃げ出すって知られてる?
そうだよ。さっきだってあいつはうちを見つけてくれたし、うちのことを誰よりも知ってる……。
でも下着……びしょびしょで濡れ濡れのうちの下着を持っていくって……(雨で濡れているだけです)
はっ! うちの下着で何をしようとしてるの!?
今、出て行ったらアイツ、ベッドの上で……。
ど、どうしよう……。
そりゃ一度、弟の部屋のドアをいきなり開けた時に弟が一人でシてるの見たことあるけど。
でもさ、ここに裸の女がいるのに下着でゴニョゴニョとかって、ひょっとしてアイツ変態?
バスタブの縁に手をかけて立ち上がり、シャワーカーテンを全部開ける。
そして洗面台の上の鏡に映った自分の姿を見る。
うち……綺麗かな?
結衣ちゃんほどおっきくはないけど形はいいと思うし、腰のくびれとかプロポーションも悪くないと思うんだけど……。
うん、大丈夫!
ようやく決意が固まりバスルームから出ていこうとして、便座の上に何か置いてあるのに気がついた。
バスタオルとナイトガウン、そしてカップ付きキャミソールとパンツ……?
比企谷が用意してくれたの?
これ、コンビニのブランド……いつの間にか買いに行ってくれたんだ……。
バスタオルで身体を拭いてナイトガウンを身にまとい、出ていこうとノブに手をかけた時、もう一度鏡を見て気がついた。
今のうち、どすっぴんじゃん!
どうしよう……うち、すっぴんだと少し幼く見えちゃうんだよね……。
ひどい顔とかじゃないけど、可愛くないわけじゃないけど……。
こんな顔であいつの前に出てっていいのかな?
こんな顔であいつと……。
と言っていつまでも籠ってもいられないから、うつむき加減でそーっとユニットバスを出る。
「あのさ、比企谷……」
とにかくまず声をかけてみたけれど、ベッドの上は綺麗なまま、部屋の中には誰もいなかった……。
「比企谷、比企谷あーっ!」
うちの声は無人の部屋に吸い込まれていく。
どうして? なんで?
あいつがうちをここに連れ込んだのに……。
ようやく心を決めて出てきたのに、なんで?
どうして、うちを、ひとりにするの……。
やだ、うち、また泣いてんじゃん……。
ガチャ。
突然、部屋の扉が開く音が聞こえてきて、急いで音のした方へ振り向く。
「比企谷?」
「ん、相模、大丈夫か?」
「あんた、どこ行ってたのよ! うちを、置い……て……」
座っていたベッドから立ち上がったうちは、ゆっくりと部屋の中へ歩みを進めた比企谷に飛びかからんばかりに駆け寄り、襟首を掴んでありったけの気持ちをぶつける。
そうしたら、またポロポロと涙が溢れ出てきた。
「おっ、おおう……」
うちの涙に分かりやすく動揺していた比企谷だけど、
「とにかく落ち着け、な」
そう言ってうちの背中をゆっくりと、何度も優しくさすってくれたんだ。
「で、どこ行ってたのよ?」
なんとか落ち着きを取り戻したうちは、ベッドの端に並んで座っている。
こいつはまだうちの背中に手を当てたままだ。うちはこの温もりが消えるのが惜しくてそのことについては何も言わなかった。
「あ、ああ、お前の服を……」
「そう! うちの服! あれどうしたのよ!!」
「それは……」
「その……下着も……見たんだよね? 触ったよね? その……どう……思った?」
「ま、まあ、俺んち、両親とも忙しくて家事も妹と分担しててな、俺が妹の下着を洗濯することもあるから女ものの下着くらいは別に……」
「違うじゃん!」
「うぇっ!?」
「違うじゃん! うち、妹じゃないじゃん! なんでうちの下着に興味持たないの!!」
「だってよ、俺が女子の下着に興味持つとか単にキモいだけだろ? もしそんな素振りでも見せようもんならまた学校で言いふらされたり……」
「そりゃ、今までのうちならそう思われるのも仕方ないけど……でも……でも……」
あ、あれ? なんでまた涙……。
「いや、す、すまん! 悪かった、俺が悪かったから泣くのはやめてくれ、な」
うちの涙に比企谷はまたオロオロしている。
「それはそうと相模さん?」
「何よ……ぐすっ」
「あの……先ほどから、その、ナイトガウンが少々はだけてきてて……中が……えっと、俺の買ってきたキャミソールは……?」
「だって着ていいなんて言われてないし」
「は? じゃあ、下も……」
「当然履いてないわよ」
「いや何でだよ! あんな分かりやすいところに置いてあるんだから普通分かるだろ!」
「え? どうせ脱ぐんだし……」
「えっ?」
「えっ?」
「なんで脱ぐことが前提なんだよ!」
「だってあんた、うちを襲うんでしょ? もう覚悟はできてるけど、うち初めてなんだからやさしくしてね……」
「えっ!?」
「えっ!?」
「……」
「……」
「ちょっと、あんたもうちが初めてなわけないとか思ってんの!?」
「ちっ、ちがっ……」
「違わないでしょ! あんただってどうせ……」
悔しい……。
こいつにそう思われたことよりも、そう思われるような自分が悔しい……。
「そうじゃなくて、どうして俺が襲うことになってるんだって言ってんの!」
あ、そっちか……なんか少しだけ、ホッとしたような……。
「だって、あんた、女の子をホテルに連れ込んで先にシャワー浴びさせて……そしたらあとはやることなんてひとつでしょ?」
「おい、待て待て! どうしてそうなる!」
「えっ? だって……」
こいつはうちを憎んでて、結衣ちゃんのように大事にする必要ないし、欲望のままうちを求めたっておかしくない。
そして負い目のあるうちはそれに従うほかない。
「言っとくがな、俺はお前をどうこうする気はねえぞ?」
「へっ?」
「だから何もしないっての」
「どうしてよ……」
「相模?」
「どうして何もしないのよ!」
「ちょ、ちょっと待て! それじゃまるで俺に襲われたいように聞こえるが……」
「そうよ……」
「はっ?」
「だから、あんたに襲われたいって言ってんの!」
「はっ、はあああ?」
「なのにどうして襲わないの? こんなところに連れ込んどいてそれはないんじゃない? それともいざとなったらヘタレた? うちみたいに」
「ちょっと相模さん、いったん落ち着こうか」
「そんな葉山くんが言いそうな薄っぺらいセリフ言ったってごまかされないからね!」
「お前の中の葉山の評価がそんなものだったとはビックリだわ。あのな、ここに連れてきたのは、はる……雪ノ下のねーちゃんの指示なんだよ」
「……陽乃さんの?」
「あ、ああ」
「それいったいどういうこと? なんでそこで陽乃さんが出てくんの?」
「お前、雨に打たれて全身ぐしょ濡れだっただろ? あれじゃバスや電車、タクシーとかの公共交通機関じゃ帰れないからな。 それで雪ノ下家の車を出してもらおうと思ったんだが……ちょうど出払ってたみたいで、それならとこの部屋を押さえてくれたんだ。考えてみろ、高校生がこんな部屋取れるわけないだろ」
考えてみれば制服を着た高校生だけでチェックインなんかできないよね……そっか……陽乃さんが……。
「でも、でもさ、うちの着てるもの持っていってうちがここから逃げられないようにしたじゃん。それって……」
「それはだな、服を濡れたままにしといたんじゃどうにもならんから、ランドリーで洗濯してるんだよ」
「下着……も?」
「ああ、元々の貸出品にはなかったが、聞いてみたら業務用で使ってる洗濯ネットを貸してもらえたから心配はいらん」
「それはありがとうだけど、そうじゃないのよ!」
「は? 感謝したり怒ったり、いったいなんなんだよ……」
はあ? 全部うちの勘違い? それってバカみたいじゃん、うち。
いや違う。すべてが勘違いなわけじゃない。だって……。
ドンドンドン!
えっ、何? 誰かがドアを叩いてる?
「おーい。比企谷! お前がここにいるのは分かってるんだ。おとなしく出てきて私のパフェを作れ」
「て、店長!?」
「店長ってバイト先の?」
「ああ、今出ていったら絶対に面倒なことになる。ここは居留守でやり過ごすぞ」
さらにドンドンと扉が打ちつけられる中、うちは小さくうなずいてベッドに座ったまま比企谷とともに息を殺して嵐が過ぎ去るのを待つ。
「比企谷~いい加減出てこい! そっちが出てこないというならこの扉を釘バットで破壊して引きずり出してでも……」
「わぁー、分かりました! 出ます、今出ますから!!」
「あ……」
慌てて立ち上がり、バタバタと入り口に向かう比企谷。
いや、そもそも釘バットって何?
あいつのバイト先ってそんなにヤバいとこなの?
そんなことを思っていたら、比企谷がドアロックをかけたままわずかに扉を開く。
するとすぐに二人の話す声が聞こえてきた。
「俺、今日はシフト入ってないですし、たしか川崎がいますよね? あいつに作ってもらってください」
「川崎? あいつはダメだ。私が作れと言ったら食べすぎだから出せませんと言いやがった。あいつは私の母ちゃんかっての」
「それは分かりますが……」
「だからお前、店に来てパフェを作るんだ」
「しかし……」
「四の五の言うなら力づくで連れていくぞ。お前がここに入るのを見つけた舎弟もそぱに待機させてる。とにかくドアを開けろ。でないと……」
「わっ、分かりました! 行きます! 行きますから乱暴は……」
えっ、比企谷が行っちゃう?
やだ! 行っちゃやだ!!
ずっと勘違いばかりだったけど、ひとつだけ、これだけは勘違いじゃないって間違いなく言える。
うちのあいつへの想い……。
それを伝える資格があるかどうかはわからないけど、だからといって無かったことになんかできない。
気づいたら、うちは立ち上がって入り口の方へ向かっていた。
ドアロックを外し、内側へドアを引いて外へ出ていこうとする比企谷の袖を引いて訴えた。
「やだよう、比企谷……置いていかないでよう……」
今日何度目か分からない涙がまた溢れてくる。
「うちを独りにしないで……うちをこんなにした責任とって……」
「さっ相模!?」
「あー、比企谷、どうも取り込み中のようだな。すまん、悪かった。パフェはまた今度でいいから。ごゆっくり」
店長さんはなにやら慌てた様子でドアを閉めて去っていった。
「帰っちゃった、ね」
「それはいいから、お前は服を着ろ~~~~~!」
「えっ!?」
気づけば、途中でナイトガウンが脱げて、いつの間にかうちは全裸になっていた。
「きゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」