まちがいだらけの修学旅行。   作:さわらのーふ

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はい、またお会いしました。
後編の後のエビローグです。

が、

ど・う・し・て・こ・う・な・っ・た

とりあえずさがみん番外編も完結を迎えたところで、千葉最大の侵略〜花も嵐も踏み倒せ!も大団円でございます。
本来なら2話に分けたいところでしたが、キリが悪いので1話にしました。
長いと思ったら一旦ブックマークして2日くらいに分けてお読みください。

ほんとごめん。


千葉最大の侵略〜花も嵐も踏み倒せ!番外編 MINAMI☆天気予報がはずれたら エピローグ

「失礼しまーす、ってあんた何やってんの?」

 

 月曜の放課後、うちらが防衛軍の拠点にしている特別棟の一室、奉仕部の部室とも言うんだけどね、そこに入っていったら、雪ノ下さんと結衣ちゃん、そして生徒会長ちゃんに囲まれて比企谷が床で正座させられていた。

 

「あら、相模さん、ちょうどいい時に来たわね。この逃走中谷君がなかなか口を割らないものだから、あなたからお話が聞ければと思ってたのよ」

 雪ノ下さん、口調は穏やかだけど、目が笑ってない……。

 

「さ〜が〜み〜ん〜、や〜っはろ〜〜〜」

 結衣ちゃん、怖いっ!単純に怖いよ!

 

「相模先輩、飛んで火に入る夏の虫とはこのことですねぇ、ふっふっふっ」

 生徒会長ちゃん! あざとさちゃんと仕事してよっ!

 

「あの、うち、ちょっと用事を……」

 踵を返して部屋を出て行こうとすると、

 

「相模、今きたとこっしょ? もっとゆっくりしていけばいいじゃーん」

「あは、あははは、三浦……さん」

 いつのまにか入口を三浦優美子に塞がれている。

 

「もう諦めた方がいいよ」

 三浦の横にいた腐女子・海老名姫菜が近づいてきて耳元でそう囁いた。

 

 仕方なく、断頭台に登る囚人のような面持ちで三人の鬼の前に立つ。

 今のうちの目、きっと比企谷みたいになってるんだろうな……。

 

「で、聞きたいことって……」

「それは金曜日……」

「そっ、その前にっ」

 一旦雪ノ下さんの言葉を遮り、うちが、

「あのー、このままじゃ比企谷辛そうだから、椅子の上に座らせてあげたらどうかな……」

 と言ったら、結衣ちゃんが、

 

「さがみん、いつからそんなにヒッキーと仲良くなったの!?」

と、目を見開いて驚愕の表情を浮かべていた。

 そっ、そんなに驚くこと!?

 

「別に仲良くというか、単純に可哀想と思っただけなんだけど……」

「いえいえそんなはずないですよ! 相模先輩なら、せんぱいが床に座らせられてたら、『ふひっ、比企谷ざまぁ』とか言いそうじゃないですかー」

 ちょっと!? 委員長ちゃんの中のうち酷くない?

 ま、以前ならその通りだと思うけどさ……。

 

「ま、まあいいじゃん? ほら、比企谷」

 うちが比企谷に向かって手を差し伸べると、

 

「ああ、すまん」

 と言ってうちの手を取って立ち上がった。

 

「……やっぱりあなたたちずいぶん仲がいいのね」

「これだけで仲がいいなんてことはないだろ」

「えー、だってせんぱいなら女の子が手を出してきたとしても『アレがアレでアレだからー』とか訳のわからないこと言って手を取ることを拒みそうじゃないですかー」

「ぐっ……」

 せっ、生徒会長ちゃん、意外と鋭いわね……。

 

「足が痺れて一人じゃ立ち上がれなかったんだよ。背に腹はかえられぬって言うだろ。相模、すまねえな」

「べっ、別に人として当たり前のことをしただけだからねっ」

「だから、その人として当たり前のことができないのが相模先輩ですって」

「ちょっと、それってうちのこと、ヒトデナシって言ってるよね!?」

「コホン、そろそろいいかしら?」

 あ、雪ノ下さんのこと忘れてたよ。

 

「一色さんもそのくらいにして。比企谷君は椅子に座っていいわ。ええと、相模さんの椅子は……」

「今はうちのはいいわ。それより聞きたいことがあるって……」

「そう……だったわね。金曜日のことなんだけど、あなたたち二人はどこでどうしてたのかしら?」

 それやっぱり聞かれちゃうのね。

 これまでのうちなら誤魔化したり逃げ出したりしたんだろうけど、今、ここでうちが逃げ出したらこいつが酷い目に合うじゃん?

 昨夜あいつは逃げてもいいなんて言ってくれたけど、今、自分が救われたってあんたが救われないんじゃそれは救われたことにならないんだよ。

 

「あのね……ここを出て、うちら、マリンピアの4階のパスタ屋さんに行ったのよ。お腹も空いてたし、カフェとかと違って同級生とかいなさそうじゃん? だって、うち……比企谷に謝りたかったから……それを知り合いに見られたくなかったし……」

 そう言うと、奉仕部の部室に、一瞬の沈黙が流れる。

 それを破ったのは結衣ちゃんの一言だった。

 

「で、でも、あたしたち4階も行ったけど二人の姿は見かけなかったよ?」

 あ、やっぱり探されてたんだ……。

 

「それはだな……」

「比企谷君、あなたには聞いてないわ」

「いや、雪ノ下さん? さっきまで俺にさんざん聞いてたよね? 固ーい床に正座させて」

「あなたのことだからどうせ自分を悪者にして相模さんを救おうとするのでしょう?」

「いや、それは……」

「そうなの! うちらが店にいたら、ゆっこと遥……うちの元友達がやってきてうちのこと馬鹿にしてきたのよ。それでその二人にうちを脅してカラダを求めてるとか比企谷が言って……」

 あれ? なんか部室の温度が少し下がったような……。

 それなのに比企谷だけ滝のような汗をかいてるようだけど……。

 

「それでそんなことして欲しくないって、うちが店を飛び出しちゃって……だから、もうそこにはいなかったの」

「比企谷君、これは本当のことなの?」

「……はい、その通りです」

「まったくあなたって人は……」

 これで雪ノ下さんたちの追及をなんとかかわせたと思ったんだけど……。

 

「それで?」

「え?」

「それでそのあとどうしたの?」

 あ、あれで終わりじゃないんだ……。

 

「え……と、それで、逃げ出したうちを比企谷が追いかけてくれて……それだけ……です」

「それだけ……ではないでしょう?」

「おい雪ノ下! なんの根拠があって……」

「小町さんからお兄ちゃんが帰ってこないのだけれど、何か知りませんかと連絡があったのよ」

「小町ぃ……」

「それで相模さんの家に電話をしたのだけれど、友達の家に泊まると連絡があったと……これは偶然かしら?」

「そりゃそうだろ。俺が追いかけて行った先の屋上で相模を罵倒したから、去年の文化祭のことを思い出して友達んとこへ愚痴りに行ったんじゃねえか?」

「ならあなたはどこにいたのかしら?」

「いや、それはだな……俺も友達の家に……」

「嘘ね。だってあなた友達いないじゃない」

「うぐぐ……」

 

「うちだって!」

 とうとう我慢できなくなってうちは大きな声を上げた。

 比企谷と雪ノ下さん、そしてその場にいた人みんなが驚いた顔をしてたけど、構ってなんかいられなかった。

 

「うちだって泊めてくれる友達なんかいないわよ! もうそんな嘘やめて…… あんた、うちに優しくしてくれたじゃん。一緒にいてくれたじゃん……それを……無かったことにするなんて……酷いよ……どんなに罵倒されるよりも……辛いよ……」

 うちはたまらず泣き出してしまった。

 皆んなが見ているのもはばからず……。

 

「相模さん、落ち着いたかしら?」

「ごめんね、雪ノ下さん。もう大丈夫」

 比企谷に慰めてもらえることを少し期待したけど、さすがにみんなが見ていて……特にあの腐女子もいる前で昨夜のように慰めてはくれないよね……。

 

「紅茶を淹れたわ。おかけになったら?」

「ありがとう。でも、まだうちの用事が終わってないから」

「そう……。それで今日はなんの用事で来られたのかしら?」

「そっ、そうだよ!今日はぼうえいぐんの日じゃなくて奉仕部の日だよ?」

「うん。えっとね、防衛軍の隊長じゃなく奉仕部部長の雪ノ下さんにお願いがあって来たんだ」

 うちはそう言ってカバンから封筒を取り出し、雪ノ下さんに差し出した。

 

「……入部……届?」

「ちゃんと漢字で書かれてるな……」

「ヒッキーうるさい」

 

「私たちは3年生で受験勉強とか忙しいと思うのだけれど、大丈夫なのかしら?」

「うん。 もちろん覚悟の上だよ。それに防衛軍の時もそうだけど、依頼がない時はここで受験勉強できるでしょ? 雪ノ下さんとか比企谷とか頭のいい人もいるから勉強も捗りそうだしね。一応、平塚先生には話してあるよ」

「で、でも、どうして?」

「えっとさ……去年の文化祭でうち、自身の成長を依頼したじゃん? 体育祭でもみんなに手伝ってもらったけど、やっぱりあれから全然成長してないなと思うことが最近あって……。それで、今度は自分自身で成長したいと思った……だから……」

「そう……あなたが私たちに成長させてほしいと言うならその依頼、受けることはできないけれど、自身が成長したいと思って行動するのなら私たちは全力でお手伝いさせてもらうわ」

 そう言った後、雪ノ下さんは立ち上がり、

 

「相模さん、ようこそ、奉仕部へ」

 と、右手を差し出した。

 

「ありがとう、お世話になります」

 うちはそう言って差し出された手を握り返す。

 

「さがみん、これで防衛軍に奉仕部と、ずっと一緒だね」

「うん、結衣ちゃん、あの……もしよかったら、また、うちと友達になってくれるかな?」

「えっ、さがみんなに言ってるの?」

 えっ、まさかのここにきて拒絶!?

 さすがのうちもへこむんだけど……。

 

「もう防衛軍で一緒にやってる時から友達でしょ? もちろんゆきのんも一緒に。ね?ゆきのん」

「い、いえ、私は……そもそも友だちになるということの定義が……」

「またそんな難しいこと言って……大丈夫。ゆきのんは照れてるだけだから」

「ありがとう、結衣ちゃん」

 結衣ちゃんとも両手で固く握手した。

 

「相模先輩、よろしくお願いします」

「え、生徒会長ちゃんも奉仕部だったの?」

「酷いですぅー、わたしも今や奉仕部の一員なんですからね」

「相模、よろしくっしょ」

「相模さん、私もよろしくね」

 いつの間にか結衣ちゃんと比企谷の間に椅子を持ってきて座っている三浦優美子と腐女子からも声をかけられた。

 

「三浦さん、海老名さん、あなたたちは部員ではないのだけれど」

「雪ノ下さん、そんな硬いこと言わなくてもいいっしょ? あーしも姫菜も常連みたいなもんじゃん? それに雪ノ下さんも結衣も友だちだし?」

「いつから私たちは友達になったのかしら? そもそも友だちの定義というものが……」

 雪ノ下さんがなにやらブツブツ言ってるのを横目に、椅子に座って早速文庫本を開いていた比企谷の前に立つ。

 

「比企谷……これから、よろしくね」

 こいつは座ったまま、本に向けていた目線をわずかに上げてうちを見ながら、

 

「ああ」

 とだけ言った。

 相変わらず愛想のないやつだけど、今のうちにはそれだけで十分こいつの気持ちは伝わった。

 


 

「それで、相模さんの座る場所なのだけれど、今日は三浦さんと海老名さんもいらっしゃるし、椅子も埋まってるからまずは後ろから余っている椅子を取ってきて……」

「あ、いいよいいよ。うち、いつもの椅子に座るから。おっ、お邪魔しまーす」

 そう断って、いつもうちが使っている椅子の上に座る比企谷の太ももの上にお尻を乗せる。

 

「おっ、おい!」

「なによ。また重いなんて言うんじゃないんでしょうね」

「いや、そうじゃなくてだな……」

「何か既視感が……」

 雪ノ下さんが頭を押さえて渋い顔をしてる。

 

「氣志團?」

 結衣ちゃん、氣志團じゃなくて既視感だよ!

 それと雪ノ下さん、既視感じゃなくて金曜日、まんまおんなじこと見てるからね?

 

「ちょっと相模何してるんだし?」

「え? うち、防衛軍の時はこの椅子に座ってるからいつもと同じ椅子に座ってるだけなんだけど?」

「いや、それ、椅子じゃなくてヒキオっしょ!」

「三浦さん、そう言う細かいことどうでも良くない?」

「細かくないし! それにあんたらが金曜の夜、どこにいたかまだちゃんと聴いてないし! でしょ、雪ノ下さん?」

「そっ、そうね。相模さんも泊めてくれる友達がいないのなら結局どこにいたのかしら? 」

 あちゃー、せっかくうやむやになりかけてたのに〜。

 

「そうだよ! さっきヒッキーに一緒にいてくれたとか言ってたし……」

「え……と、それは……一緒にホテルに泊まりました……」

「ホッ、ホテルゥ!?」

 みんな、声を揃えて驚いちゃったよ……。

 でも、結衣ちゃんはともかく雪ノ下さんや三浦さんを前に嘘をつき通せる自信なんかないし、それにいくらその、ゴニョゴニョ……はしなかったと言ってもあの時間を無かったことにはしたくないから……。

 

「おっ、おい!それは……」

「比企谷君は黙ってて」

「いや、俺も当事者なんだから何か言う権利くらいあるだろ」

「どうせせんぱいが何か言ってもアレがアレでアレだからとかしか言わないんですから。この場合のアレはアレとみなしますからねっ!」

「いや一色の中のアレってどれなんだよ……」

「せんぱい、わたしにナニを言わそうとしてるんですかー。それ、えっちです!セクハラです!!」

「ヒキオ、サイテー」

「ええ……」

 世の中って理不尽だよね。比企谷、強く生きて!

 

「その卑猥発言強制谷君は置いといて」

「おい、聞き捨てならない上に語呂悪すぎだろ!」

「相模さん、その……ホテルの部屋で何をしていたのかしら?」

 うわー、雪ノ下さんからピキピキッって音が聞こえてくるような気がするよ……。

 それでも、ここは正直に答えるしかないし……。

 

「あの……濡れちゃったうちを比企谷が優しく慰めてくれて……それで、一緒に寝ましたっ!」

 

 シーン……。

 

 あれ? 何のリアクションもない?

 周りを見回すと、雪ノ下さんが目を見開き口をパクパクさせて、三浦さんはなんか白目むいて気絶してる。結衣ちゃんはハイライトの消えた瞳でコ○スコ○スコロ○とか小声で呟いちゃってるし、生徒会長ちゃんは不気味な笑みで溶かしちゃいましょうとか物騒なこと言ってるよ。

 

 二人とも怖すぎるって!

 

「で、でも、比企谷からは何も変なことはされてないから」

「今の言葉のどこがそんなふうに聞こえると言うのかしら」

「コ○スコ○スコ○ス○ロス○ロス」

「ほんと違うから!あと、結衣ちゃんは正気に戻って!」

「海老名さん、貴女は何か言うことはないの?」

「うん、私は八幡くんのこと信じてるから……それに八幡くんがもしそんな人だったら、この中の大半がもうバージンを失っててもおかしくないと思うんだけど……」

「そっ、そうだよね。もしそうならあたしだってあの時ヒッキーに……」

「ですです。わたしもせんぱいに何もされていません!」

 凄いなー、やはりこれが正妻の余裕ってヤツなのかな。一瞬でこの場が収まっちゃったよ。さっきもホテルのところで一人だけ驚いてなかったし……。

 

 なんか悔しい……。

 

「あの……相模?」

「なによ」

「そろそろ降りてくんない? いいかげんちょっとヤバいんだけど……」

「ガーン! うちってヤバいほど重い!?」

「いや、そういうことじゃなくてだな……」

 

 んんっ!?

 

「……ねえ、比企谷」

「ひゃい!?」

「うちのお尻の下になんか硬いモノが当たってるんだけど……」

「OH……」

「これって……うちのせい、ってことでいいんだよね? あの時のうちのこと思い出して発情したってことでいいんだよね?」

「おい、発情とか言うな」

「ううん、違う。責めてるんじゃないの。うち、嬉しかったから。比企谷がうちのこと、少しでも意識してくれてることが、あの時のこと覚えてくれてることが」

 うちは身体を反転させて正面から抱き合う形で比企谷の上に座る。

 

「バカ、やめろ。いやほんとやめてください、お願いします」

 そんな言葉には耳を貸さず、こいつの耳元に唇を寄せてそっと囁いた。

 

「あのね、うち、今、スカートの下にパンツ履いてないんだ……あんたのせいでちょっと大変なことになっちゃったから……無理やり振りほどこうとしたら見えちゃうよ」

「おっ、おまっ!」

 

 あ、またちょっと硬くなった……///

 

 すると、突然うちを抱えたまま比企谷が立ち上がった。

 うちは比企谷の首に手を、腰に足を絡ませ比企谷もうちの腰に両手を回してうちの身体を持ち上げる。

 

 ちょっ、この格好!

 

 それに、今にもズボンを突き破りそうなこいつの硬くなった……アレが、うちの……その、部分に当たって……。

 はっ! まさかズボンを突き破った勢いでうちも突き破ろうと!? こんなみんなが見てる前でうちは初めてを!?

 

「比企谷、あの……嫌じゃないけど、ちょっと恥ずかしいかな……あの時も言ったけど、うち、初めてだから優しくして……」

「おいおい、なんでそうなる!?」

 言うが早いか、比企谷はくるりと身体を反転させて、静かにうちを椅子に座らせた。

 えっ、またうちの勘違い?

 うちの覚悟、うちの気持ち……。

 そして、こみ上げる悲しみで涙を堪えることができなかった。

 

「うわああん、ひどい、酷いよぉー。比企谷に、比企谷に弄ばれたぁ!」

「ちょ、お前何言ってんの? 」

「あなた、まさか今の一瞬の間に相模さんの純潔を……」

「えっ、ヒッキー早すぎない?」

「えっ、相模が処女とか冗談っしょ?」

 結衣ちゃんも三浦さんも何気に酷い!?

 

「いや、みんな見てる前でそんなことできるわけないだろ!」

「……うちなら別にみんなが見てる前でも」

「ちょっと黙ってて!」

「ふっ、ふえええん!!」

「あーあ、相模泣かせた」

「ヒッキー!さがみんに謝ってよ!!」

「鬼畜陵辱早漏いじめ谷君、これはさすがに見過ごせないわね」

「おい! 冤罪以前に最低の名前だな!!」

「でも、相模さん泣いてるじゃない。あなた以外の行為でそうなったとは思えないのだけれど?」

「くっ……」

 もちろん比企谷が原因で泣いちゃったんだけど、比企谷が悪いわけでもないんだけどな……。

 

 あ、比企谷がうちの正面の床に座り込んで……土下座!?

 

「相模、とにかく俺が変なことしたせいでお前を泣かせてしまった。すまん」

「ひっ、比企谷……うちが泣いたのは全部が全部あんたのせいじゃないから……それはいいんだけど……」

 うちの言葉で比企谷が少し顔を上げる。でも……。

 

「そこで土下座されたら……見えちゃうから……スカートの中……」

 うちが座っている比企谷の席は長テーブルの外れで隠れるものがない。

 ここの制服のスカートって進学校のくせにやたら短すぎるし、うちも手で押さえたり足をピッタリ閉じたりしてないから、アイツの位置なら見えちゃったはず。

 

「お前、見せびらかすとか、変態……かよ……」

「ちょっと! 誰にでも見せるわけじゃないからねっ! 比企谷……だからだよ……」

 やっぱり見えたのね。

 その証拠に真っ赤な顔して少し目を逸らしてるし。

 まあ、うちの顔もちょっと火照ってこいつの顔を真っ直ぐに見られないけどさ。

 


 

「さて、鬼畜陵辱早漏いじめ卑劣秘部覗き谷君、覚悟はできてるかしら?」

 あ、雪ノ下さんの目にハイライトがない。それにしても秘部覗き谷君はやめてー!うちが恥ずかしすぎるじゃん!!

 

「祈るがいい。せめて命があることを」

 ちょ、ちょっと雪ノ下さん、それコ○しに来てるよね!?

 

「タオす! 私! あなたを!!」

 結衣ちゃん!両手にスタンガン構えるのやめて!

(黒コゲになりますが、安全なスタンガンを使用しております。)

 それ、絶対に安全じゃないから!

 

「普通にコ◯すのではなく、ありえないほどの苦痛を与えるべきでしょう」

 生徒会長ちゃん!? 声が普段より全然低いし、言ってること怖すぎだよ!!

 

「狩りの時間よハサ次郎!お仕置きタ〜イム!!」

 三浦さんはハサミを置いて!あと、キャラブレ過ぎ!!

 

 比企谷、早く逃げて!……って、ガマの油をタラタラ流しながら、完全に固まっちゃってるし。

 ここでこいつの手を引いてこの迫り来る異次元キャラから助けることができたなら、うちもヒロインになれるのかな……。

 

 でもうちも全く動くことができない……。

 うちのヘタレぶりを舐めちゃいけないよ!

 腐女子、腐女子何してんの?

 あんたの彼氏が命の危機だってのに、どうしてあんたはそんな泣きそうな顔してただ見てるのよ……。

 誰か、誰か比企谷を助けて……。

 

 その時、部室のドアが不意に開いた。

 

「おーい、八幡。依頼人連れてきたぞー」

 入ってきたのは、赤髪の……えと、去年末に転校してきた原瀧さんだっけ? それと、戸塚くん?

 

「はちまーん、部活が活動制限であまり練習できないからトレーニング手伝って……って、どうしたの?」

「とっ、戸塚! 頼む! この荒ぶる女たちから俺を助けてくれ!!」

「え?え? なんだかよく分からないけど、八幡が僕を頼ってくれるなら!!」

 そうして、戸塚くんは比企谷の手を引いてあっという間に部室を出て行った。

 

 一瞬の出来事に、呆気に取られる雪ノ下さんたち。

 

「え? 何? 何がどうなった? ひょっとしてあたしの出番これで終わり!?」

 転校生が何か喚いてるけど、とにかくあいつが助かってよかった……。

 

 それでも、あいつはうちを助けてくれたのに、肝心な時にうちはあいつを助けることができなかった……。

 こんなうちにあんたはどんな言葉をかけてくれる?

 

 ねえ……八幡……。

 


 

(ご存知、茶番屋台)

 

「あっ、おじさーん、タクシー呼ばなくていいわよ。あと、グラスのカヴァをお願い」

「あいよっ」

 

「えっと、貴女は……」

「雪ノ下姉じゃん」

「鉄装せんせいは陽乃ちゃんは初めてですもんね。あ、おじさん、鱧の落としですぅ]

「あいよ」

 

「月詠先生は以前どこかでお会いになられたんですか?」

「いいえ初めてですよぉ〜。あ、ここ座ってください」

「じゃあなんで昔から知ってるふうなんです!?」

「そこはそれ、蛇の道はヘビって言うじゃないですかー」

「それ何の説明にもなってませんからね? それでタクシーをキャンセルって、こんな状態の平塚先生、わたしおぶって帰れないんですけど……」

「ああ、安心してください。ウチの車を待たせてますから。あっ、かんぱーい!」

「カンパーイ! で、雪ノ下姉は学園都市に何しに来たじゃんよ? 用もなく入れるようなところじゃないじゃん?」

「いや、平塚先生は以前から特に用もなくこの屋台に来てましたけどね……」

「鉄装! そんな細かいツッコミばかりしてたら、学園都市の闇に取り込まれちゃうじゃんよ? で?」

「これでも雪ノ下建設は千葉県や東京都における公共工事等の入札参加資格でA等級の企業なんですよ? それで今度、この学園都市でも入札参加資格を取ろうと思ってその手続きに。ほら、ここいろいろ事件があって結構建物が壊れたりするみたいだから、なかなかいい商売になりそうでしょ?」

「ふーん……それだけ?」

「ついでに静ちゃん……平塚先生の様子も、ね。どうですか、こっちでの様子は?」

「そうですねースキルアウトの人たち追いかけて楽しそうにやってるみたいですよぉー。でも時々寂しそうな顔してますかねー。あ、おじさん、だご汁ですぅー」

「あいよ」

 

「そうですか。でもなんかうらやましいなー。こうやって自分をさらけ出して一緒にいられる人たちがいて……」

「雪ノ下姉もそういう人を作ればいいじゃん? ほら、あのアホ毛の少年とか」

「私ね……彼の前で、泣けなかったんです……私が『雪ノ下陽乃』だから……」

「そんなの、ただの幻想じゃん。疲れるだけじゃんよ」

「そうですそうですぅ~。そんなふざけた幻想は、上条ちゃんの右手でぶち殺されればいいのですよ~」

「でも、あの少年、ラッキースケベ体質もあるから、おっぱいくらい揉まれちゃうじゃん?」

「そうですねー、せんせいも着替え中に下着姿とか見られちゃいましたー」

「ふふ、みなさん、ありがとうございます」

 

「まあ、何か行き詰まったら、平塚先生みたいにここへ来て浴びるほど飲めばいいじゃん。そうと決まったら駆けつけ三杯じゃん。おっちゃん、ドン・フリオ アネホ、2杯ずつショットで人数分じゃん!」

「あいよ」

 

「黄泉川先生、それ、テキーラですよね? そんなの2杯もストレートで飲んじゃって大丈夫なんですかって、ええっ、私も!?」

「全員で乾杯のやり直しじゃん。それじゃ……」

 

「はるの〜〜〜ようこそがくえんとしへ〜かんぷぁ〜〜〜い!!」

 

「平塚先生はもうこれ以上呑まないでください!!!」

 


 

「ねえ……さっきどうして黙ってたの? あのままじゃ比企谷大変なことになってたかもしれないのに……」

 うちは部室の隅で腐女子……海老名さんと小声で話していた。

 

「そんなことにはならないよ。みんなヒキタニくん……八幡くんのことが大好きなだけだから。本気でそんな酷いことするわけないじゃない」

「それならなんであんたはあんな顔してたの?」

「……みんなあんな感情をあらわにするくらい八幡くんのことが好きなのに、私はどうなんだろうって……私なんかが彼のこと好きになってもいいのかなって思うんだ……」

 そんなこと言われたら、散々あいつのことを傷つけてきた、傷つけようとしたうちなんて全く資格なんかないじゃん……。

 

 そう、うちはあの時、またあいつを傷つけようとしたんだ……。

 

 今、思い返しても苦い思い出……。

 

 


 

 もし比企谷が傷つくなら、うちも一緒に傷つくから……。 

 ごめんね。

 ほんと、ごめ……んっ!

 

 うちが眠ってる比企谷に跨り、腰を下ろそうとした時、ヒュンという音とともに顔の近くを何かが通り過ぎるのを感じた。

 え? 今の何?

 思い直してもう一度、比企谷のハチマンくんを手で支える。

 ふぅーっと息を吐き、そして再び大きく吸ってそのまま息を止め、もう一度……。

 ヒュン!

 今度はうちのほんとに目のすぐ前を何か赤いものが飛んでいくのが見えた。

 その行方を目で追うと、

 

 風車?

 

 赤い風車のついた手裏剣が2本、壁にぶっ刺さっていた。

 まかり間違ってこんなものが身体に刺さってたら大変なことになってたよ!

 うちは、壁に刺さった血のように赤い風車にゾッとする。

 それとともに一時の興奮は冷め、少し冷静に考えた。

 比企谷はこの部屋は陽乃さんが用意したものって言ってたわよね?

 あの人のことだから、無策で若い男女2人を黙って一つの部屋に置いておくはずがない。

 ならば、この部屋の領域守護者がどこかにいて今もうちらを見張っていることは必然だった。

 今も……どこかで……。

 

 ひゃあ!

 

 比企谷を起こさないよう、うちは声にならない悲鳴をあげた。

 もちろんそれは女の人かもしれないけど、そうじゃない可能性だってある。

 今、このからだを比企谷以外の男に見られるのは嫌だ!

 戸塚くんならワンチャンあり……?

 いやいや、戸塚くんも男の子。

 やっぱり嫌だよ。

 慌ててそこにあるシーツを裸のからだに巻きつける。

 一旦熱情が覚めると、こいつの意思を無視してまで最後までしようなんて考えは消え去っていた。

 とはいえ、男の子の……ソレについての興味まで失くしたわけじゃなかったし、弟に見せろとか言って逆に発情されても困っちゃうから、風車に怯えながらも少しだけ、触ったり、いじったりしてみた。

 結論から言うと、最後までするようなそぶりを見せなければ風車が飛んでくるようなことはなかったんだけど。

 

 うん。あれは苦かった。

 

 


 

「ねえ、あんた、うちと比企谷のあの部屋でのこと、見てた?」

「私はみてないよ、私は」

 そう、あんたは見てはなかったけど、誰かが見ていて、あんたもそれを知ってるってことね。

 

「うち、比企谷が好き」

「そう……」

「でもさ、資格で言ったらそんなもんあるわけないのよ。あいつにやる気が無いならうちがあいつを幸せにしてもいいよね?」

「それで八幡くんが幸せになれるのなら……」

「なら答えは出てるでしょ?」

「えっ?」

「あいつを一番幸せにしてやれる奴はあんた以外にいないのよ。うちもあいつに振られたし、結衣ちゃんがあのおっぱいを晒して迫ってもあいつ断ったんだよ! 悔しいけど、あんたしかいないんだよ……あんたしか……」

「相模さん、ありがとう。彼のことそんなに思ってくれて……私、考え直してみる。自分の気持ち……彼の気持ち……」

 これでいい……これでいいんだ……。

 そう思うのに、なぜか涙が溢れてくる。

 なんだ。そんな簡単にあきらめきれないくらいあいつのこと好きになってるんじゃん。

 

「あのーお二人で盛り上がってるのはいいんですけどー」

 いつの間にか生徒会長ちゃんがうちらのことを覗き込むように見てた。

 慌ててこぼれそうになる涙をぐしぐし手で拭う。

 

「せんぱいたちを追わなくていいんですかあ?」

「そうね。先週の相模さんとのこともあるわけだし、何かあってからでは遅いわ」

「ヒッキー、彩ちゃんのこと大好きだしね、それと、あたしとヒッキーのことをなんでさがみんが知ってるのか後でOHANASHIね」

 しまった! 比企谷が知ってたから忘れてたけど、結衣ちゃんは知らない話だったよ……。

 

「えー? 男同士でトレーニングに行ったってだけっしょ? 別にほっといて良くない?」

 そっ、そうよね。なんだかんだ言っても2人とも男の子なんだから……。

 

「あまい!あまいあまいあまいあまいあまいっ!」

「ゆっ、雪ノ下さん!?」

「アナタ……怠惰デスネ?」

 うわっ、雪ノ下さんの脳が震えてる……。

 

「あの男の戸塚くん愛は常軌を逸してるわ。このままほっとけば戸塚くんの貞操が危ない!早くみんなで追わなければ!!」

 そんな馬鹿なことっ……うん、ダメかもしれない。

 

「結衣、一色さん! 三浦さん! 海老名さん! 原瀧さん! そして相模さん! 私たちの戦いはこれからよ!!」

 雪ノ下さん……それ完全死亡フラグだから……。

 ま、なんか楽しくなってきたからいいけど。

 そうだ。こんなことで身を引くなんてうちらしくない!

 うちはうちらしくあいつのことを想い続けよう。

 負けヒロインだって、追っかけるくらいいいじゃん?

 うちのしたいことを考えて行動すればいいって言ったのはあんたなんだよ。

 だからさ、比企谷、覚悟して待っててね♪

 




[あ・と・が・き]

ご覧いただいた皆様

ほんとうに申し訳ありません_(_^_)_

長い!長いよ!
番外編なのに長すぎる!

全体も長いけど、最後のエピローグなんて、それまでの2倍くらいの分量あるじゃん!
勢いで書いてそのまま載せないでちゃんと整理しようよ……俺。
ま、ラストが長いのは作者が無理やり入れた茶番屋台のせいなんですが……。
どこにも需要ありませんが、好きなんです。黄泉川先生。

それと、内容もまあ、焼き直しが多すぎて……もうちょっと考えろよ……俺。

あと、正直、これが一番最初に来ていたら、このシリーズのヒロインは相模さんでしたね。
出会いとかエピソードとか、順番って大事なんですよ。

いよいよ次回は、ラストシーズンへ!

修学旅行シリーズファイナルシーズン
「なのにあなたは京都へゆくの」(仮題)

乞うご期待!

「ちょっと作者、本当に次はファイナルシーズンに行くのかな、かな……?」
「え、陽乃さん!? も、もちろんそうに決まってるじゃないですかー」
「嘘だッ!」

 ごめんなさい……たぶん嘘です……。

 このシリーズとは別のお試しシリーズが全く進んでないんですが、そちらを先に出せればと……。
 累計発行部数130万部の、と言ってましたが、もたもたしてるうちに累計発行部数は190万部になってました……。
 アニメ二期の前にぜひ一話だけでも出したいと思います。
 ま、3話くらいで計画倒産予定ですが(苦笑)

「もちろん、その作品のヒロインは私よね?」
「いえ、陽乃さんはその作品のヒロインというわけでは……」
「重ねて申し訳ありませんが、これからあなたを拷問しようと思っています」

 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ!!!!!
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