まちがいだらけの修学旅行。   作:さわらのーふ

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はい、またお会いしました。
前回の引きから予想されていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。
戸塚くんの短編です。
最終話までの最後の短編です。
そして、初めに謝っておきます。
パクリです!
パクってます!!
あ、石は投げないでっ!!


千葉最大の侵略〜花も嵐も踏み倒せ!番外編 SAIKA☆さよなら友達(ⅰ)

 僕は戸塚彩加。

 

 緊急事態宣言が明けて学校が再開して一週間後の月曜日、テニス部の練習の後に奉仕部の部室に顔を出したんだけど、なぜか友達の八幡に助けを求められたんだ。

 事情はよく分からないけど、とにかく八幡の手を引いて逃げ出し、今は二人で校外の道を駆けている。

 

「……か、……塚」

 

 これまで僕が八幡を頼ることはあっても、八幡から僕を頼ってくれるなんてなかなか無かったから、頼ってくれて少し嬉しいんだ。

 八幡は、なかなか分かりづらいけど、誰かが困っていたら助けずにはいられない、本当はとても優しい人。 

 僕はそんな八幡に憧れて、いつか八幡のような男になりたいと思ってたから、これで少しくらいは近づるかな?と思ったり。

 でも……。

 

「戸塚!」

 

「はぅん!」

 

「毎日俺のために味噌汁を作ってくれ」

「もう! 八幡はいつも僕をからかって! 僕、男の子だよ!」

 そう、八幡はいつも僕をからかってくる。やっぱりまだまだ男らしさが足りないのかな……。

 

「いや、すまんすまん。ちょっと声が可愛かったもんでな。それより、もうそろそろ大丈夫じゃないか。あいつらも追ってこないようだし」

「あ、そうだね。無我夢中で走ってたから気づかなかったよ。僕は運動部だから大丈夫だけど、八幡は大変だったよね」

「いや、俺も大丈夫だ。お前と手に手を取って逃避行なんて、明日死んでももう悔いはないからな」

「そんな……死ぬとか軽々しく言っちゃダメなんだよ! もし八幡が死んじゃったら……僕……」

「わわわー、悪かった! 俺が悪かったから泣くのだけは勘弁してくれ!

「ふふ、何馬鹿なこと言ってるの。そんな泣くだなんて……アレ?」

 なぜか僕の頬を一筋、何かが伝っていく。

 

 なんで?

 

 そのことを想像しただけで悲しくなったの?

 それって、八幡が僕の親友だから?

 

「ほれ」

 八幡は僕にハンカチを差し出してくれた。

 

「ありがとう」

 やっぱり八幡は優しいなあ。こういうところも僕は好きなんだ。

 

 好き……?

 

「とにかく助かったよ、サンキュな。あのままお前が来てくれなかったら、俺、あそこでどんな目に遭わされていたか……」

「んもう、八幡は大袈裟だなー」

 そうは言ってみたものの、八幡の顔色はかなり悪くて、思い出しただけで少し震えているようだ。

「そっ、それで戸塚は何をしに部室に来たんだ?」

「あっ、そうだった。あのね……」

 そう言った時に繋いだ手を離されて、

 つい、

「あっ」

って言っちゃったんだ。

 

 なんでだろ? 

 八幡の手の温もりがなくなるのが名残惜しかった?

 いや、今はそういうことじゃなかった。

 

「学校は再開したけど、部活って午後4時半で終了しなきゃじゃない? だからなんか体を動かし足りなくて……もし八幡がよかったら一緒に汗を流してもらうればって」

「いっ、一緒に汗っ!?」

 どうしたんだろう? 八幡、もうすでに大量の汗流しちゃってるんだけど……。

 

「ダメ、かな?」

 ちょっと上目遣いにお願いしてみた。そうしたら、

「もっ、もちろんだ! お前のお願いを断ることができるだろうか? いや、無い」

って。

 八幡、国語が得意なだけあって反語表現なんだね(汗)

 でも、嬉しいな。

 嬉しすぎて思わず八幡の腕に僕の腕を絡ませて腕を組んじゃった。

 だけど、友達だからいいよね?

 八幡はなんかアタフタしてるけど。

 

「でも、このご時世、やってるスポーツ施設なんてあるのか?」

「大丈夫。営業してる施設じゃ無いけど、場所を借りる許可はもらったんだ」

 僕らはお話ししながらその場所に向かった。

 腕はずっと組んだままで。

 


 

「ここだよ」

 僕はある建物の前に八幡を連れて行った。

「戸塚、ここって……」

 着いた場所に少し驚いているみたい。

 

「雪ノ下建設って書いてあるんだが……」

「うん、そうだよ。ここの福利施設を貸してもらえることになったんだ」

「なにそれ。俺、ここでバイトしてるのにそんなのがあるの知らないんだけど!?」

「そう? 僕は雪ノ下さんのお姉さんに聞いたんだけど」

「あの人かー! でもお前、あの人とどんな繋がりが?」

「え? ああ、えっと、ほら、卒業式の時のパーティーでね。ほら、僕がうさぎさんの格好をしたのも、城廻先輩を驚かそうとしたお姉さんのアイデアだったし」

「ああ、そんなこともあったな。そういえば、あの夜のお前のドレス姿……」

「んもう! 八幡、恥ずかしいから思い出さないでよ!」

「すまんすまん」

「でも僕もあの時のダンス覚えてるけどねって、八幡、なんで泣いてるの!?」

 

「へえー、このビルの地下にこんな施設があったとはな」

 八幡とやってきたのは、地下3階にあるスカッシュコートの部屋。

 

「うん。ここなら誰にも見られないから、このご時勢でも後ろ指刺されることもないしね」

「そうだな」

「僕と八幡の、二人だけ……だよ?」

「うっ、ちょ、ちょっと、俺、着替えてくる……」

「うん。僕はもうウェア着てきてるから待ってるね」

 その後戻ってきた八幡はやけにスッキリした顔してたけど……。

 

 スカッシュは4面を壁で囲まれたコートの中で、小さい、中が空洞のゴムボールをテニスよりも少しスマートになったようなラケットで交互に打ち合うスポーツ。

 インドアで壁に向かってボールを打つんだけど、短時間でかなり汗を流すことができる結構激しいスポーツなんだ。

 八幡は初めてって言ってたけど、やっぱり筋がいいんだね。

 最後は僕の方がスタミナ切れになっちゃった。

 肩で息をするようになって、はぁはぁって息遣いが荒くなっちゃったんだけど、そしたら八幡もハァハァ言い出しちゃった。

 八幡も普段あまり運動してないみたいだから大変だったのかな?

 

「汗、いっぱいかいちゃったね」

 そう言って、テニスウェアの襟元をパタパタさせていると何故か八幡が目を逸らしてる。

「戸塚、それなら風呂でも入ってくか?」

「えっ、お風呂とかもあるの?」

「そっちは戸塚も知らなかったんだな。俺は花見の季節にバイトで牛糞撒いた後使わせてもらって知ったんだけどな」

 牛糞!? 牛糞を撒くバイトって何?

 

「そっか……でも、僕、ちょっと体に欠陥があって、お父さんから他の人と一緒にお風呂に入っちゃダメだって言われてるんだ……」

「そっか……いや、何か悪いこと言っちゃったな。お前が悩んでること気づかなくてすまん」

「ちっ、違……八幡が悪いわけじゃないから!」

 本当に八幡が申し訳そうな顔してて……八幡は知らないだけで何も悪くないのに……。

 でも、八幡なら……本当に八幡が僕の親友なら、受け止めてくれるよね?

 怖い……でも、本当の親友になるためには、覚悟を決めなきゃいけないこともあるんだ。

 

 僕は、立ち去ろうとする八幡の手首を掴んで、

「八幡が気味悪がらないでいてくれるなら、僕、八幡と……」

「あ、ああ、もちろんだ! お前のことを気味悪いとか思うわけないだろ!! 約束する! お前にどんな秘密があろうと、全部俺が受け入れてやる!!」

「ありがとう!」

 やっぱり八幡だ! 僕は嬉しくて少し泣きそうになっちゃった。

 そのまま手を繋いだまま、八幡の案内で大浴場に向かった。

 

「八幡……やっぱり恥ずかしいから先に入ってもらっていいかな……?」

「ん、ああ分かった。それより無理すんな。ダメそうなら無理に入ってこなくていいからな」

「ありがとう!」

 やっぱり八幡は優しいな。

 今でも不安は残ってるけど、八幡の気持ちに応えるためにももう逃げることはできないんだ。

 

 八幡が服を脱いで、先に浴室に入っていく。

 僕は、その背中を見届けてテニスウェアの上を脱ぎ始める。

 


 

「おっ、おじゃましまーす」

 やっぱり恥ずかしいから前を隠しながら浴室に足を踏み入れた。

 だって、さっき見た八幡の……はずいぶん立派だったし……。

 それに比べて僕……。

 

 八幡はカランの前に座って頭を洗っていた。

 僕もその隣に座って身体を洗い始める。

 

「八幡、そのままで聞いてもらいたいんだ。さっき、僕、体に欠陥があるって言ったんだけど……」

「べ、別に嫌なら無理に言わなくてもいいんだぞ」

「いや、八幡には聞いてもらいたから」

「おお、そうか。分かった、聞かせてくれ」

 八幡が頭の泡を流し切るのを待って話を続けた。

「僕……」

 まだ髪の毛の雫が垂れ、下を向いたままの八幡のゴクリという息を飲む音が聞こえた。

 

「まだ生えてないの!」

 

「は?」

 

「僕、まだ生えていないんだ……」

 

 八幡がクックックって笑う声が聞こえる。

 

「酷いよ……僕、真剣に悩んでるのに……」

「いや、すまんすまん。お前を笑ったわけじゃないんだ。ただ、この年で生えてないなんて別に恥ずかしいことじゃないからな? 俺も修学旅行で他の奴らと風呂に入ったけど、まだ生えてないやつなんて普通にいたぞ?」

「えっ、本当?」

「俺が嘘言ってるように見えるか?」

 僕は八幡の目をじっと見る。

 

 八幡、いつもみんなは君の目を腐った魚のような目だなんて言うけど、僕は大好きだよ?

 

「戸塚……ちょっと顔が近くないか?」

「あ、ごめんね。でも八幡が嘘なんて言ってないことは、よくわかったから」

 近いって言われてなんか意識しちゃったせいか、急に恥ずかしくなって下を向いちゃった。

 八幡も赤い顔してるけど……。

 

「だったら、せっかくだから見せ合いっこしないか?」

「え、でも、恥ずかしいよ……」

「男同士、恥ずかしがることなんてないだろ?」

「でも、前に海老名さんが見せてくれた本だと、葉山くんと八幡がお風呂で互いのアソコを見せ合った後、葉山くんが八幡に……」

「わーーー! 姫菜のやつ、戸塚になんちゅうもんを見せるんだ! あれはあくまでも創作だから! 本物の俺はそんなことしないから!!」

「そ、そう、しないんだ……」

 あれ? 僕、なんかガッカリしてる? いや、あの本では八幡はされる方だったし、そういうことだよね?

 

「じゃあ、見るぞ……」

 八幡が僕の閉じた膝を両手で開こうとするけど……やっぱり恥ずかしい〜!

 それでも、僕が足を閉じようとする力より八幡の腕の力の方が強くて、強引に……。

 八幡は俺のも見ていいからって言うけど、やっぱり八幡は凄くて、それに比べて僕は……。

 急に八幡の動きが止まり、僕の顔を見る。

 

「……戸塚……無いんだけど」

「だから言ったじゃない。生えてないって!」

「いや、俺はてっきり毛の話だとばっかり……」

「今はまだ付いてないけど、男らしい男になったらアレ生えてくるってお父さんが言うから……」

「そ、そうか、そうだよな。こんな可愛い子が男のはずがないよな……」

 その言葉を残して、八幡は鼻血を噴き上げながら後ろ向きにお風呂場の床へ倒れて行った。

 

「はっ、はちまーーーん!!」

 


 

「それで私が呼ばれたと?」

 

「陽乃さんもいないし、今、ここで頼れるのはお前だけなんだ」

 八幡がそう言うと、海老名さんは「はぁー」っとため息を吐きながら、僕のズボンとパンツの中に片手を突っ込んできた。

 

「海老名さ……あン……だ、ダメ……」

 股間をひとしきり触られて、つい声が出ちゃった……。

 八幡の見てる前でこんなことされてこんな声出すなんて、凄く恥ずかしい……。

 

「八幡殿、此奴、やはり女子めにございまするぞー!」

 えっ!? 何言ってるの? 僕は男の子なのに……。

 

「姫菜、すまん。戸塚にちゃんと説明してもらえないか?」

「分かった……仕方ないね……」

 海老名さんが何か諦めたようにそう言い、僕は彼女に手を引かれて、女子トイレの個室に連れ込まれた。

 そこでいきなり海老名さんにパンツを下ろされた時は悲鳴をあげそうになったけど、その後彼女から聞いた話は驚くことばかりで、海老名さんは手に持ったテキストを使って、僕に男の子と女の子の違いについて詳しく説明してくれたんだ……。

 その結果……。

 

「八幡……僕、もう八幡みたいにはなれない……」

 そう、僕は男の子じゃなかった……。

 

「僕は今まで八幡を欺いていたんだね……ごめん……」

「とっ、戸塚が謝ることじゃないさ。お前自身は知らなかったんだろ?

 

「八幡……」

 八幡は優しいからそう言ってくれるけど、僕自身が僕を許せないんだ……。

 

「僕……八幡みたいな男らしい男の子に憧れて……いつかそうなりたいって……でも……」

 その頃には、僕は涙が溢れて声を出して嗚咽を漏らしていた。

 すると八幡は正面からふわりと僕を抱きしめて、

 

「泣くな、戸塚。お前が男だろうと女だろうと、俺たちが友達であることには変わらないだろう?」

 そう言って優しく背中をさすってくれた。

 

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