まちがいだらけの修学旅行。   作:さわらのーふ

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セカンドシーズンの2話目です。
前回の修羅場の続き。
バラダギ様と八幡のオリヒロ,オリ主感がハンパないっす。
誰だこれ?っていうレベル。ゆきのんもキャラ崩壊。
はいそこ,石投げない!
葉山君が潰されてしまいますが決してアンチヘイトではないのです。
違います。違う,よね?
駄作者がほんっとすみません。


まちがいつづける修学旅行。② ~下総争乱編~

「いやよ……」

 

 雪ノ下の発した言葉に,俺が,そしてその場にいる全員がゴクリと唾を飲んだ。

 

「ひきがやくんはゆきののものなの!ゆきののひきがやくんとっちゃいや!いや!いやあ!」

 その場にいた全員の目が点になった。

 あの雪ノ下が幼子のように駄々をこねて泣きだしたのだ。だいたい6歳児といったところか?普段の凛とした雪ノ下からは微塵も想像つかない今の姿である。

「おねえちゃん!おねえちゃん,どこ?ゆきののひきがやくんがとられちゃう!はるのおねえちゃん,なんとかして!おねえちゃん!」

 雪ノ下はとうとう喚きながら雪ノ下さんの名前を呼びだした。強い精神的ショックを受けたせいか完全に幼児退行している。幼いころの雪ノ下はおそらく雪ノ下さんといつも一緒に行動し,雪ノ下が可愛い雪ノ下さんは雪ノ下のわがままを何でも聞いてくれていたのだろう。だが,今,ここに雪ノ下さんはいない……

「八幡,雪ノ下と雪ノ下さんがゴチャゴチャして分かりづらい」

 原滝!モノローグに突っ込みを入れるな!

 とにかくここには雪ノ下さんはいない……

「雪乃ちゃんどうしたの!」

 ガシャ,バターン!と部室のドアを蹴破る勢いで飛び込んできたのは雪ノ下の姉の雪ノ下陽乃。普段の雪ノ下はこの人を嫌うそぶりをし,この人も雪ノ下にちょっかいをかけては嗜虐的に悦んでいるように見えるが,実はこの二人,互いに好きがこじれてこんなことになっているのではないかと俺は常々思っていた。それにしてもなんであんたここにいるんだよ……

「おーよしよし,おねえちゃんがきたからもう安心だよー。いったい何があったの?」

 雪ノ下さんが雪ノ下を抱きしめて……ややこしいから俺のモノローグではこれから,陽乃さん,とするが、ともかく陽乃さんが赤子をあやすように雪ノ下の背中をとんとんしている。雪ノ下も少し落ち着いてきたようだ。

「あのね,おねえちゃん,グスッ。ひきがやくんはゆきののものなのに,ゆきのからとりあげようとするの」

 陽乃さんの美しい仮面が,まるで般若のような歪んだお面に変わり,周りの人間を睨みつける。

「誰?誰なの?私の雪乃ちゃんを泣かしたのは!雪乃ちゃんのものを取ろうとしたのは誰!!」

 由比ヶ浜に三浦,あまつさえ平塚先生ですら陽乃さんの憤怒の表情に一言も発することができずその場に固まってしまった。

「それなら隼人くんに決まってるでしょう? ヒキタニくんのモノは隼人君のもの! はやはちこそ究極! はやはちこそ至高! 隼人くんの激しい責めに初めは抵抗していたヒキタニくんもいつしか素直に,そして自ら積極的に受け入れるようになり,やがて二人は……ブフォー!!」

 海老名さんが別府の竜巻地獄のようなすごい勢いで鼻血を吹きあげ,そのまま後ろに倒れこむ。

「は~~や~~と~~!よくも雪乃ちゃんを~~~~~!!」

 陽乃さんは,入ってきた時以上の勢いで,暴走機関車のごとく部室から飛び出していった。

 せめて葉山の命だけでも残るよう祈ってやるか。祈るだけだがな。

 


 

「お,おい!大丈夫か?」

 床に落ちるすんでのところで海老名さんの体を抱き留める。あの体勢のまま倒れていたら,後頭部を激しく打って大変なことになっていたかもしれない。

「ヒキタニくん,ごめんね。腰が抜けて立ち上がれない……」

 力なく笑う海老名さん。別府タワーの時とは違い,本当に脱力して俺に身体を預けている。それほどの恐怖だった。俺なんか少しちびっちゃったかもしれん。それにしても海老名さんの胆力には心底驚かされた。あのマッスル日本をはるかに上回る魔王・雪ノ下陽乃の恐怖に一歩も怯むことなく,葉山という尊い犠牲を払いながら,見事魔王をこの場所から遠ざけることに成功したのだから。

 

「ていうか,八幡,お前最低だな」

 原滝が海老名さんを抱く俺の耳元でぼしょりとそんなことを言った

「おい,俺のどこが……」

「お前さあ,ここにいる女子全員に何をしたか,胸に手を当ててよく考えてみな」

 いったい俺が何をしたと……原滝の言うとおり胸に手を当てて考えてみる。むにゅ。ムニュ!?︎

 

「バ,バカヤロー!自分の胸に手を当てるんだ!なんであたしの胸に手を当てる~~~///」

 あ,うっかり原滝の胸に手を当てちゃった。テヘッ☆

「ヒキタニくん……さすがにそれはないよ……」

「ヒッキー……」

「ヒキオ……」

「比企谷……」

 床にへたり込んでしくしく泣いているゆきのちゃん(6歳相当)を除く全員の冷たい視線が……

「ヒキタニくん、さっき私の胸を散々触ったのにまだ足りなかったの?だったらもっと触っていいよ?」

 力を取り戻した海老名さんが俺に抱きつく。柔らかいいい匂い!

「ひ、ひ、ひ、姫菜、何をしてるし!そもそもヒッキーはおっきなおっぱいが好きなんだよね?部活の時、いつもあたしの胸を見てるもん。だからおっぱいを触りたいならあたしの……///」

「いや、あーしだって大きさとか形とか?結衣にも負けてないし///」

「はっはっはー!大きさなら私が一番だな!それに張りだってまだまだ君たちには負けてないぞー。ほら,比企谷,私と結婚したらこのおっぱいを毎晩貪り放題だ!」

 向けられていたのは熱い視線でしたー。由比ヶ浜に三浦までが何で張り合ってんの!? そして先生,あんた教師だろ!校内で何言ってるんだよ!もちろん校外でもアウトだが。本当に誰か早くもらってあげて!!

 


 

「で,ヒキタニくんは誰のおっぱいを選ぶの?」

 海老名さんが俺に抱きついたまま,問いかけてくる。

「ヒッキー?」

「ヒキオ?」

「比企谷?」

「なるほど。これが修羅場というやつだな」

 原滝がニヤニヤしながら俺に聞いてきた。

「何を他人事のように言ってやがる。こんな事態を招いたのも,元々はお前がここに来たせいだろうが」

「おいおい、あたしのせいにするな!どう考えてもお前があっちこっちでチューしたり乳をいじくり回しとんのが原因やないかい!しかも,最後のトドメはあたしの乳を揉んだからだろうがー!」

「大変申し訳ありません!」

 得意の華麗なるド・ゲ・ザを決めてみせる俺,うん。カッコ悪い。

 

ピーポーピーポー

 その時、グラウンドの方から救急車のサイレンの音が聞こえてきた。いったい何がー(棒)

 


 

 そして,またゆきのちゃん(6歳相当)が声を上げて泣き出した。

「えーん!みんなおっぱいがあるのにゆきのだけないのー!ゆきの、ひきがやくんに嫌われちゃう。おねえちゃーん!おねえちゃーん!」

 お,おい!今,そんなこと言ったら……

 

 ガシャーン!

 

「雪乃ちゃんどうしたの!」

 戻って来ちゃったよ……恐怖の大魔王が……

「おーよしよし,雪乃ちゃん。悪い隼人は退治してきたからね,もう心配いらないよー」 

 葉山退治されちゃったのかよ……心配しかねえよ……

「おねえちゃんっ,みんなが,みんながずるいの……」

 しゃくりあげるように泣きながら,雪ノ下が陽乃さんに訴えている。

「ゆきのちゃん,誰がどうずるいの?おねえちゃんが根絶やしにしてあげるから言ってみなさい?」

 怖えよ!根絶やしって何だよ!

「あのね、みんなおっぱいがおっきいのにゆきのだけちっさいの。ゆきのだけひきがやくんに嫌われちゃうの」

「ゆきのちゃん……」

陽乃さんが雪ノ下をヒシと抱きしめる。

「ゴメンね。おねえちゃん、それだけはどうにもできないの。不甲斐ないおねえちゃんでごめんねぇ」

陽乃さんがさらにギュッと抱きしめると、その豊かなバストが雪ノ下の顔に押し付けられる格好になった。

「お、おねえちゃんのバカー〜〜〜」

さらにびえぇと大きな声で泣き始める雪ノ下。そして、グハッと言って膝から崩れ落ちる陽乃さん。あんた、妹好きすぎだろ!

 陽乃さんの心が折れてしまった今、もはや雪ノ下をなだめることのできる者は誰もいなくなったかに思われたが、意外な伏兵が現れた。

「雪ノ下さん,大丈夫だよ。私もそんなにおっきくないけど,ヒキタニくんは喜んで揉みしだいてくれたよ」

 やめてーーーー!人聞きが悪すぎるだろ!揉んだかもしれないけど,しだいてはいない……はず。

「それによく考えてみて,ヒキタニくんの好きな人を。小町ちゃんに戸塚くんに隼人くんにわたし,みんなおっぱいが小さい人ばかりでしょ?ヒキタニくんが好きな人はみんなおっぱいが小さいんだよ?だから,おっぱいが小さいことは全然悲しむべきことじゃないの。むしろ誇っていいんだよ!」

 おい!戸塚はいいが葉山を入れるな! そして,こっそり自分を入れてやがる。

「ほんと?おっぱいちいさくていいの?」

「そうだよ!さあ,わたしの後に続けて。ちっぱいは正義!」

「ちっぱいはせいぎ」

「貧乳はステータス!」

「ひんにゅうはすてーたす!」

「はやはちこそ至高!!」

「はやはちこそ……」

「幼子に何言わせんの!自重しろし!」

 さすがオカンだ! 三浦が海老名さんの後頭部に丸めた雑誌をクリーンヒットさせたぞ!

 ドサクサに紛れて幼子になったぺドのんに腐教活動をしようとは,海老名姫菜,恐ろしい子。

 


 

「で,結局何しに来たんだよ。お前」

 騒動の元凶である原滝に改めて問いかけてみる。

「はじめから言ってるじゃないか。八幡とでえとをしに来たと」

「いやいや,俺,サイゼに連れて行ってやるとは言ったけど,デートするとか言ってないよね?」

「何を言う。若い男女がオシャレなイタリアンレストランで食事をするんだろ?これをデートと言わずして何をデートと言うか」

「いやいや,サイゼはそんな大層な……」

「さいぜりあというのはオシャレではないのか?」

「サイゼリヤ,な。ばっかお前,サイゼといえば最高にオシャレな……アレ?」

「やっぱりオシャレなイタリアンなんだろ?やっぱりでえとだな!」

 ドヤ顔の原滝に,俺はぐぬぬと唸る。 俺のサイゼ愛が完全に裏目に出た格好だ。

「それにディスティニーにも連れてってくれると約束したからな。明後日は空けといてくれよ」

「いや,明後日はアレがアレでアレなもんで」

「よし。なんの用事もないんだな。じゃあ、日曜日、メインエントランス前に7時半集合で」

「早えよ!それにディスティニーはどさくさに紛れて言わされただけだろ!約束なんかした覚えはない!」

「おっぱい揉んだ……」

「謹んでお供させていただきます!」

 再び華麗に土下座を決めて,ついでに明後日の予定も決まってしまった。

「ちょ,ちょっと!なんでハッキーとヒッキーがディスティニーに行くことになってるし!?」

 由比ヶ浜が俺と原滝のデートに異議を唱えた。いいぞ,もっと言え!俺のニチアサを守って!

「あたしも行きたい!みんなで行ったほうが楽しいよ!」

 ちーん。比企谷八幡,死亡。

「ならあーしも行くし」

「比企谷が不純異性交遊を起こさんとも限らんからな。保護者として私もついていく必要があるだろう」

 なんで先生まで!?カオスすぎる……こうなったら戸塚も呼べば……

「え?なんで八幡とあたしのでえとにみんな付いてくる話になってるの?ふたりきりで行きたいんですけど」

「だって……ハッキーは,ヒッキーのこと,好きなの?」

「いやそんな,この前ちょっと拉致ったばっかりで,まだ好きとか嫌いとかは」

「だったら!」

「まあ,由比ヶ浜。そんなにいきり立つな。デートというのは必ずしも好きあった同志がするものじゃないぞ。例えばな,婚活パーティーで意気投合すると、とりあえず好きかどうかは置いといてデートするだろう?そこで初めてお互いを知り,だんだん愛を育んでいってやがては結婚に至るというわけだ。だから,原滝の言うデートは特に付き合っている男女が行うそれとは別の意味だ」

「平塚先生、先生はそうやってデートを重ねてるんですか?」

 俺の説明が思わぬ方向に飛び火した形だが,由比ヶ浜の何気ない質問に,先生は一瞬こめかみの辺りをヒク、とさせたが、つとめて平静さを装いながら答えた。

「ははは、まあ意気投合すればそういうこともあるんじゃないかなー」

「ほえー、それなのに先生、どうして結婚できないんだろう?」

「ぐはっ!」

 由比ヶ浜、やめろ!その発言は先生にスマッシュヒットしてるぞ!

「こんなに優しくて美人でスタイルも抜群なのに。そりゃ、ちょっとガサツで暴力的でだらしないところもあって時々おっさん臭かったりするし」

 由比ヶ浜〜〜〜〜!

「あと,タバコ臭いし酒癖悪いし食べ物の趣味とか古い少年マンガ好きとかビミョーに女子力低いけれど」

 ちーん。平塚静、死亡。

「あと……」

 頼むからもうやめて差し上げろ。先生,息してないぞ。死体蹴りみたいになってるからあ!

 


 

「ま,まあ,要は,俺と原滝は別に付き合ったりしているわけではないが,男女で出かることを原滝はデートって言ってるだけだ」

「だから,なんでハッキーとヒッキーが二人でお出かけする話になってるのってこと!」

「そりゃあ,まあ,アレがアレでアレだから……」

「あたしが八幡に依頼したんだ」

 由比ヶ浜の厳しい追及にしどろもどろになっていた俺を見るに見かねたのか,原滝がはっきりとした口調で由比ヶ浜に言い放った。

「このご奉仕部ってのは,依頼者のお願いを聞いてくれる部活って聞いた。だからあたしは八幡にあたしとのでえとを依頼したい」

 だから,ご奉仕部はやめろ!

「そんなのだめだよ! 奉仕部のりねん?っていうのに反するから。奉仕部って言うのはね,魚の釣り方を教えてあげる部活なんだよ?」

 由比ヶ浜,それじゃ釣り教室だろうが。言葉の足らない由比ヶ浜に代わり,俺が説明する。

「正確には,飢えた人に魚を釣ってあげるのではなくて魚の釣り方を教えてあげる,悩みを解決してあげるのではなくて,自己変革を促し,悩みの解決へと導くんだそうだ」

「じゃあ問題ないな。あたしは八幡とのでえとを依頼する」

「なんでそうなるし!」

 原滝の言い分に由比ヶ浜は全く納得していない。

「あーしも分かんないな。やっぱそのへん曖昧なままなら認められないし」

 いや認めるも何もあーしさん,奉仕部じゃないよね?

「まあ,大した理由とかあるわけじゃないんだけど」

 カップに残っていた紅茶をぐっと飲み干し、原滝が話を続けた。

 


 

「八幡は前に聞いたと思うけど、私の両親、羽田沖で照明弾喰らって死んじまってさ、身寄りもないもんだから町に出て豆腐屋の2階に下宿して電柱組のバイトで高校通ってるのね」

 たしかに前にも聞いたが,相変わらずサラリと重いことを言うな,コイツ。

「学校でも友達がいないわけじゃないし,下宿先のご夫婦も良くしてくれてるんだけど,高校生が一人で生きていくために,学校が終わったらすぐにバイトへ行って,バイトが終わったら下宿に帰って飯食って銭湯へ行くだけの毎日。仕方ないって分かっていてもやっぱキツいんだ。この修学旅行だって、バイト先の仲間がカンパしてくれたり,下宿屋のおじちゃんおばちゃんの仕事を手伝ったら過分にお小遣いもらえたりして,ようやく来ることができたんだ。だからせめてこの旅行の間だけ,少しでも青春らしいことをしたい、どんなものなのか知りたいって思ってる」

 みんな黙って原滝の話を聞いていた。三浦なんか少し涙ぐんでいたかも知れない。やっぱりオカンだ。

「でも,でも,どうしてヒッキーなの?それだったらさ、隼人くんとかもっと相応しい相手が……」

「隼人はダメ。潰しちゃったから……」

葉山ェ……陽乃さん,一体ナニを潰しちゃったの?

「ほ、ほら。さっきのお面の人とかもイケメンだったし」

「アレは部下だから。最近はパワハラとかうるさいし。それにアイツ彼女いるしな」

 チッ、やっぱイケメン男は彼女持ちかよ。爆ぜろ。

「八幡。お前そんなこと思ってると、大分県全人口以上の数の男子から怨みを買うぞ」

 だからモノローグにツッコミを入れるんじゃねーっての。ちなみに大分県の人口は114万人で、福岡市の人口158万人より若干少ないぞ。それでも九州では福岡県、熊本県、鹿児島県、長崎県に続いて5番目に人口が多いんだぞ。

「あたしさ、クラスの中で話をする女子はいても,普段あんま遊んだりする相手とかいなくて。だから,拉致してるときに八幡からイタリアンレストランに連れてってくれるって言われて,あたし,本当に嬉しかったんだ。ほんと嬉しかった。その上、ディスティニーにも連れてってくれるっていうしな」

 いたずらっぽく俺に向かってウインクしてみせた原滝の嬉しそうな顔を見てしまったら、最後のはドサクサまぎれに誘導されたやつだろう、と言い返す気にはなれなかった。

 

「あたしみたいなのがこういうお願いしちゃダメなのかな?」

「分かりました、原滝さん。奉仕部部長としてあなたの依頼をお受けします」

「ゆきのん……」

「雪ノ下……」

 ペドのんはいつのまにかいつもの雪ノ下に戻っていた。

「何かしら?その気持ちの悪い生暖かい目は?」

「ゆきのん、お帰り!」

「由比ヶ浜さん?わたしはどこにも行っていないのだけれど?」

「いや、お前さっき幼児化して泣き喚いて……」

「何を言っているのかしら、この男は。何のことかは分からないけれどとりあえず通報するわ」

 おい!何か分からないなら通報するな! 千葉県警はそこまで暇じゃないんだぞ!

「雪乃ちゃーん!」

 いつもなら由比ヶ浜が抱きつくところ、今日は陽乃さんが雪ノ下に抱きついている。

「ねえさん、ちょっと、暑苦しいのだけれど」

「雪乃ちゃん、またおねえちゃんって呼んで?」

「ねえさんは何を言っているのかしら。わたしがそんなこと言うわけないじゃない」

 いやいや、君、さっき言ってたからね。ペドのん、おねえちゃんて言ってたからね。

 ……言ってたよね?

「えーん、比企谷くーん、雪乃ちゃんが冷たいー」

 いつもなら嘘泣きのところ,今日の陽乃さんは本気で嘆き悲しんでいるようだ。

「とりあえず八幡、部長様の許可も出たし、さいぜりあ?に連れてって」

「サイゼリヤな。分かった分かった。じゃあ雪ノ下、俺たち行くわ」

「そうね。そろそろ完全下校時間だし、わたしたちも帰りましょう。おねえちゃんも帰るわよ」

「ゆ、雪乃ちゃん、今、おねえちゃんって言った!?」

「言ってません」

「今、言ったよね?ガハマちゃんも聞いたよね?」

「わたしがそんなこと言うわけないじゃない。ね?由比ヶ浜さん,いえ結衣」

「いやー、その、何て言うか、たははー」

  由比ヶ浜は陽乃さんと雪ノ下の板挟みになってあたふたしている。

「行くぞ原滝」

 このまま居ると面倒ごとに巻き込まれかねないので、原滝の手をひいて急いで部室を後にする。

「で、でえとって言ったけど、八幡、意外と大胆だな」

 ひとまずこの混沌とした場を離れるため、あえて難聴系主人公を貫くことにした。

 慌てて繋いだ原滝と俺の手がの指が絡まり合い、いわゆる恋人繋ぎと言うやつになっていたことなど全くあずかり知らぬ話である。ほ,ほんとに知らないよ。

 

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