この話はフィクションで出てくるファミレスは架空の店です。
このような店舗も店員も店長も実在しません。
ワグ○リアでもありません。
また,メニューは初出時のもので現在のものとは異なります。
そしてよいこのみんなはファミレス店内で騒いじゃ駄目だよ?
ファミレスでの修羅場はお店と他のお客さんに迷惑がかかるからやめようね。
お兄さんとの約束だよ?
すみません!ワタクシ嘘を申し上げました~~~お兄さんじゃありません。おっさんでしたぁ~~~(ドゲザ
「お、おい、大丈夫なのか?自転車の二人乗りはいけないことなんだぞ」
通学に使っている自転車の後ろに原滝を乗せて駅前のサイゼを目指す。
「悪の組織の幹部が何言ってやがる。振り落とされないように掴まってろよ」
本来ならこの自転車の後ろは小町専用なのだが、今日だけは特別だ。
こんなところをあいつらに見られでもしたら何言われるかわからんから全速力で自転車を漕ぐ。抱きつかれた背中に何かやわらかいものが当たっているような気がするが、気のせい気のせい,無心無心。
京葉線の駅に着いたところで原滝には先に自転車を降りてもらい、駐輪場に停めてから二人で店への階段を上がり入り口のドアを開ける。
「いらっしゃいませ。サイゼリヤへようこ……なんであんたがここにいるのさ?」
「それはこっちの台詞だ。川……川……」
「いいかげんにしないと本気でぶつよ」
いやいや、一応これでも客なんですけど。ぶつよとか言っちゃっていいのかよ。
「川崎」
「店長……」
ほら、ちょっと怖そうな女店長に怒られるだろ。そして川崎だった。
「パフェ」
「店長、お客様の前ですので」
「君は今、コイツをブン殴るとか言ってたじゃないか。揉め事が起きているなら舎弟たちに相手させるが」
ちょっと,舎弟って何!?
「いえ、何でもありません。お客様は、えと……」
「あ、2名です」
「2名様ですね。当店は全席禁煙に……2名?」
川崎、睨むなよ。
「あ、はい。彼氏の八幡と2人でえ」
「あ゛?」
原滝、腕にしがみつくな。川崎、顔が怖ええよ!
「……それではご注文がお決まりになりましたらボタンでお呼びください」
席に着くまで全く生きた心地がしなかった。心のオアシスであるサイゼリヤでどうしてこんな……
「八幡、凄いな!なんかオシャレな絵があるぞ!」
まあ、原滝が喜んでいるからいいか。
「メニューはこっちで適当に決めるがいいか?何か食べられないものはあるか?」
「そうだな!でえとだから八幡が決めてくれ。食べられないものはないぞ。そうだな,しいたけヨーグルト以外な」
「しいたけヨーグルトがどんなものかは全く分からんが、分かった」
呼び出しボタンで店員を呼び出す。
「お待たせいたしましたー」
「あのー、え?」
「はろはろー、ヒキタニくん。ご注文は決まりまして?」
何で海老名さんがこんなところに!?
「おやおや。何でこんなとこに?って顔してるね」
「ナチュラルに心の中を読まないで」
「分かりやすい顔してるからねー」
そんなわかりやすい顔してるのかな。ポーカーフェイスを自認してたのに。
「さっき、サキサキもここにいたんだが」
「だって、この店紹介したの私だもん。なんか前,深夜にこっそりバイトしてたみたいだけど、どこかのおせっかいな人のせいで辞めることになったって。それで予備校と妹さんのお迎えのない日はここで働いてるんだよ。もっとも、わたしは別の店がレギュラーなんだけど、今日はこの店で欠員が出てヘルプなの」
へえ、偶然ってのもあるもんだ。
「それでお客さま、ご注文をお伺いいたします」
「あ、ああ。んじゃ、これとこれと、こっちの……これ、そしてこれはふたつ。あと……」
メニューを指さして注文をし、海老名さんがそれをハンディに打ち込んでいく。
「それでは注文を繰り返します。プ……」
海老名さんが注文を復唱しようとしたところ、彼女の唇に人差し指を当てて止める。
最初こそ目を白黒させていた海老名さんだが、すぐに意図を理解してくれたようだ。ホントはマニュアルに反してるんだけどな、とウインクをしながら去っていった。
「八幡,今回はまあ,模擬みたいなもんだからいいけどさ、でえと中に他の女にデレデレすんのはどうかと思うぞ」
「いや、別にデレデレしてねーし。ないよね?」
「どーだか」
「とりあえずドリンク取りに行くか。何か飲みたいものは?」
立ち上がりながら原滝に聞いてみるも、
「初めてだから何があるか分からん。あたしも一緒に行こう」
確かにそうか。それなら原滝に俺の分も取って来てもらえばいいんじゃね?と、名案を思いついたが、我ながらゲスいので口にするのはやめた。
「八幡はよく知ってるのだろう?何ならあたしが取ってきてやろうか?」
「おっ、それじゃあ……」
バシッ!
突然後頭部に痛みが走る。何かで叩かれたような?
原滝、は目の前にいるから違うよな?キョロキョロと辺りを見回してみるが、それらしい様子はない。まさか幽霊?それとも平塚先生の生霊の仕業……?
俺が首を捻っていると、
「八幡、一緒に取りに行くか」
「お、おう」
原滝がニヤニヤしているのが気にはなったが,とりあえず二人でドリンクコーナーへ向かった。
「むむむ!」
ドリンクバーのベンディングマシンの前で原滝が唸っている。
「八幡,大変だ!」
「どうした,なんかあったか?」
「ドリンクバーにスープが無いぞ!」
「ああ,サイゼにはスープバーは無いな」
「なんだと!? ジョイフルに行ったら必ずスープ3種類を最低3杯ずつ飲むのに!」
スープ9杯はいくらなんでも飲みすぎだ。塩分過多とかにならないのかね。
「スープは別に頼んであるから、ドリンク持って戻るぞ」
「む、八幡、何かオススメはあるか?なんか、ドリンクを混ぜるといいようなことが書いてあったが……」
「やめとけ。モクテルなんて言っても美味くはならん。下手に手をかけずそのままの味で飲むのが一番だ」
「そう言う割に、その手に持っている大量のシュガースティックとコーヒーフレッシュは何だ?そのままの味で飲むんじゃないのか?」
「ばっかお前,ここには千葉の象徴たるマックスコーヒーがないからこうするしかないんだよ。練乳じゃない分,くどい甘さに欠けるがな」
マックスコーヒーがなんでサイゼに置いていないのか甚だ疑問だ。ここのベンディングマシンはコカコーラなのに。
「ジョイフルならカフェモカがあるのにな。ドリンクバーはジョイフルの圧勝だな」
「お前,サイゼを馬鹿にしたな!いいか,千葉にあるジョイフルと言えばジョイフル本田のことなんだよ!千葉に6店舗もあるホームセンターだ。ファミレスのジョイフルなんぞ知らん!」
俺の完璧に近い論陣に原滝もさぞやたじたじになったかと思いきや,
「ほほう。八幡は面白いこと言うな。マックスコーヒーが千葉の象徴だと?だが,今の名前はジョージア・マックスコーヒーで,ジョージアは北九州コカコーラボトリングが開発したブランドだから,チバラギが北九州の軍門に下ったということになるな」
「ぐぬぬ……」
「そして,ジョイフル本田が6店舗?ファミレスのジョイフルは千葉県内に11店舗もあるのだが,八幡は知らなかったのか?千葉県の知識が足りていない,ひいては,千葉県に対する愛が足りないのじゃないのかね?」
ガーーーーン!!!
俺の,千葉愛が,足りないだと……
俺は原滝の言葉に絶望し,へたへたとその場に崩れ落ちた。
「比企谷……」
「川崎……か……俺は……普段あれだけ千葉愛を説いておきながら、実際は千葉のことなんてなーんにも知っちゃいなかった。無様だろ?笑っていいんだぜ」
だが、意に反して川崎は俺に手を差し伸べてくれた。
「立てよ、比企谷」
「川崎……」
川崎の手を掴んでゆっくりと立ち上がる。こいつの手、思ったよりも白くてほっそりしてるんだな……
「こ、こんなところで座り込まれたんじゃ他の客に迷惑だからね。ほら、早くドリンク持って行きな!」
顔を真っ赤にして怒って行ってしまった川崎。そりゃそうか。知り合いがバイト先に押しかけてきて迷惑行為じゃ,あいつも店内での立場がなくなるよなあ。
気を取り直してコーヒーとメロンソーダを手に席に戻る。
「八幡,なんか茶番を繰り広げている間に注文が来てるぞ!」
原滝は料理を前にワクワクが隠せないでいる。それと茶番とか言うな。
「そうか。じゃあ早速食べようか」
手に持ったトレイの飲み物をテーブルに置き、原滝の向かいの席に座った。座ったのだが……
「なんでわざわざ俺の隣に座るんだよ……」
原滝がなぜか席を立って俺の隣に座り直してしまった。
「いいだろ,でえとなんだから隣に座ったって。それにあっちの席はちょっと食べづらいんだよ」
「なら俺があっちに行くからそこをどいてくれ」
「ダメ!それは絶対に駄目だ」
なんであっちの席がダメなのか全く意味が分からないが,無理やりどかしてあちらに行こうとすれば原滝を押し倒すことになり通報は必至。そして,テーブルの下に潜り込んであっちに行こうとすれば,スカートの中を覗いたと言われてやはり千葉県警のお世話になることになる。進退窮まった今,押してダメなら諦めろが信条の俺としては泣く泣く原滝と並んで座ることにした。別にドキドキしたりときめいたりとかしていない。していないったらしていない。
「は,八幡,どれから食べたらいいかな?なんかスープとサラダとハムみたいいなのが来てるが」
「まずはスープからだな。ミネストローネスープな。こっちはパンプキンスープだ。好きなほうを選んでいいぞ」
「これはジョイフルの飲み放題には無いやつだ。迷うなあ。八幡のおススメはどっちだ?」
「両方とも季節限定モノでどっちもおススメだな」
「そうか,八幡は選べないタイプなんだな」
俺が軽くディスられた後,しばらく,ぐぬぬと唸っていたがようやく腹を決めたようだ。
「やっぱり両方たべたい!」
まあ仕方ないかと両方の皿を彼女の前に差し出す。
まずはミネストローネの皿にスプーンを突っ込む原滝。
「八幡!これは野菜がいっぱいとれるな!美味いぞ!」
続いてパンプキンスープをすくって口に運んでいる。すずっ。すする音を立てて食べるのはマナー違反だが、サイゼだし,そこまで目くじらを立てるようなことでもないよな。
「は,八幡!このスープ冷たいぞ!」
「ああ,『冷たいパンプキンスープ』だからな」
「でもカボチャが甘くて美味しいな!」
いちいち感動する奴だな。でもまあ,目を輝かせてスープをすする姿は,まあその,悪くない。悪くないが,その,あんまり美味そうに食べるから俺も食べたくなってきた。
「おい,ちょっと俺にもくれないか?」
「ああ,当たり前だ。両方食べたいって,全部食べると言ってるわけじゃないからな!」
そ,そうなのね。てっきり全部食べちゃうのかと思ってた。すまん,
「ほれ」
んぐっ!
「いやー,美味いよな,パンプキンスープ」
「お,おおお……」
突然起きた事態に唖然として酸素不足の鯉のように口をパクパクしていると,
「なんだ,ミネストローネの方も欲しいのか,ほれ」
うくぐっ,ゴクッ!うん,美味い。
じゃない!
「おまっ!何してるんだよ!」
「ん?八幡にスープを飲ませただけだが」
「いや,そのスプーン,お前が今スープを飲むのに使ってたヤツだよね?そのスプーンを今,俺の口に突っ込んだよね?」
「そうだが。なんだ。あたしは別にジステンバーとか病気は持ってないぞ」
ジステンパーって犬の病気だろうが!人間にはうつらないよ。たぶん。
「やっぱり,あーんとかすべきだったかな?」
「いや,そうじゃなくて……さっきのって間接キキキキキ……」
「なんだ,間接キスとか気にしてるのか」
え?なんで平然としてるの?なんか俺がおかしいのん?
「だってさ,お前,部室であれだけ濃厚なディープキスをぐっちょんぐっちょん人前で晒しといて,いまさら間接キスとか気にすることもないだろうに」
いやん♪そりゃそうだろうけどそうじゃない。それとぐっちょんぐっちょんはやめて!
「……エスカルゴのオーブン焼きとセットのプチフォッカ,半熟卵のミラノ風ドリア,そしてアスパラガスとエビのクリームスパゲティです。お待ちどうさまでした」
そこには,クリームスパゲティの中のエビのように茹で上がって真っ赤な顔をした海老名さんが料理を持って立っていた。
「そうそう,あんただあんた。八幡と,ぐっちょんぐっちょん」
「ちょっと」
「ひっ」
海老名さんの背後に立ったサキサキのかなり低い声に海老名さんが軽く悲鳴を上げる。
「海老名……ぐっちょんぐっちょんってどういうこと?ちょっと店の裏に来て」
「ヒキタニくん,た,助けて……」
海老名さんがガクガク震えている。俺も少しチビリそうだが,このまま放っておくわけにもいかないよな。
「サキサキ,まあその辺で……」
「あ゛あ゛?」
怖え,怖えよ!本当にチビるとこだったよ!
「川崎」
すると件のちょっと怖そうな女店長がまた川崎を呼んだ。まあ客の前でこんな怖い顔してたんじゃ厳重注意だよな。
「パフェ」
うん,八幡分かってた。なんとなく読めてたよ。
「店長,いま取り込み中で……」
「3度目は言わんぞ。川崎……パフェ」
「は,はい!」
あの鬼神モードの川崎がビビッて下がっていった。あの店長どれだけ怖いんだよ……
「た,助かったあ」
へなへなとその場にへたり込む海老名さん。
「まあ助かっちゃいないけどな。後で説明しなきゃいけないだろ」
「それまでに何か言い訳考えとくよ。さっきは止めようとしてくれてありがとね」
「まあ俺のことでもあるからな」
「それでも嬉しかった」
少し頬を染めた海老名さんと思わず見つめ合う。彼女の唇から目を離せない俺は,自然とそこへ引き寄せられ……
「おい,一応あたしとのデートなんだからさ,あたしを挟んでぐっちょんぐっちょんやるのやめてくれない?」
立ち上がっていた俺と海老名さんの間に原滝が座っていたことを失念していた。
「ははは,こんな公衆の面前でそんなことするわけがないじゃないかー」
「そ,そうだよ。いくらなんでも自分のバイト先でそんな,ね」
「どうだか」
呆れたように吐き棄てた原滝の声にすっかり我に返った俺と海老名さん。
「そけじゃごゆっくりー」
トレイを抱え,逃げるように海老名さんがカウンターの方へ戻っていった。
「……食べようか」
「ああ」
席に座り直した俺は,小エビのサラダとやわらかチキンのサラダ,キャベツとアンチョビのソテーにプロシュートなどを小皿に取り分けていく。
「エスカルゴはこの皿から直接取って食べてくれ」
「エスカルゴって,カタツムリか?」
「まあ,カタツムリだな」
「カタツムリなんか食えるのか?」
「当たり前だ。これは食用だからな。味付けだってしっかりしているから安心して食べろ」
「八幡がそう言うなら……」
原滝が恐る恐るフォークを突き立ててエスカルゴを口にする。
「う……ううう……」
「口に合わなかったか?無理して食う必要はないぞ」
「うまい!」
思わずずっこけた。
「これは美味いな!あたしが山の中で取ってきて,茹でて食べたカタツムリとは大違いだ。あれは超絶不味かった」
お前いったい何食ってんだよ!下手したら寄生虫とかで死ぬぞ。
「このドリアは熱そうだなー」
「ああ,俺は猫舌だからすぐには食えん。先食っていいぞ」
「そうか,八幡は猫舌なんだな。じゃあ」
原滝がカトラリーからもう一つのスプーンを取り出してドリアをすくっている。それ,俺のスプーンなんだけど……まあ,追加でもらえばいいか。
「本当に熱々だな」
すくったドリアから湯気が立ち上る。原滝がそれにふぅふぅと息を吹きかけ覚ましている。
「はい,八幡,あーん」
「なんでだよ!ドリアくらい一人で食うから」
「どうした?間接キスが嫌って言うからわざわざ新しいスプーン使ってやったんだぞ。どこに文句がある?」
いやいや,ふうふうあーんとかどこのメイド喫茶だよ!俺が恥ずか死ぬわ。
「別に恥ずかしいことはないだろ?今どきのバカップルだと思えば」
「それが恥ずかしいんだよ!周りの目が気になるし」
「八幡は自意識過剰なんだよ。意外と周りの人とか関心ないから。ねえ,後ろの座席の人。見てませんよねえ?」
「見てませーん」
「ほら,見てないってさ」
いやいや,おかしいから。見てないって返事は見てたってことだから!それに今の声……
俺たちが座っている後ろの席を上から覗き込むと,由比ヶ浜と雪ノ下がこっちから見えないよう姿勢を低くして椅子の背にへばりついていた。
「や、やっはろー」
「お前ら,何してるんだよ」
「たはは、見つかっちゃったか」
「声出せば分かっちゃうだろ。それと由比ヶ浜はともかく雪ノ下まで何一緒にバカなことやってるんだよ」
「バカとは何よ。由比ヶ浜さんはともかく私に対してその言葉は名誉毀損で訴えるわよ」
「二人とも何気に酷い!?」
「何をしてるって、わたし達は勉強をしにきただけよ。ええ、このままだと由比ヶ浜さんの期末テストの成績は壊滅的でしょうからね」
「ゆきのん!?」
お前、何気に由比ヶ浜に対して酷いよな。それに教科書とか参考書広げてないよね?
「ファミリーレストランという公衆の面前で痴態を繰り広げる痴情谷くんに何か言われる筋合いはないわね」
痴情谷くんって何だよ!まったく破廉恥だわ。フレンチじゃなくててイタリアンなのが残念だけど。
「さっき、その二人にあっちからジーッと見られてたから向こうの席に座って食べ辛かったんよ」
「原滝さん!? あなた何を言っているのしら?とうとう比企谷菌に感染して目が腐ってしまったのね。かわいそうに」
比企谷菌感染力強えな!もうパンデミックだよ。最近の出来事は比企谷菌の感染患者が引き起こしてるのかもしれないな。
比企谷菌を研究すれば,モテワクチンとかできるんじゃないかな?もうノーベル賞ものだろ,コレ。フヒッ。
「何かロクでもないことを考えているのかしら。すごく気持ちの悪い顔になっているわよ」
「まじきもい」
由比ヶ浜,頼むからマジ顔で言うのはやめて!うっかりミニフィセルに頭ぶつけて死んじゃうとこだったぞ。
「まあまあ八幡,気を取り直して,ほら,あーん」
うっかり差し出されたドリアをバクッと口に入れてしまう。
「ヒヒヒ,ヒッキー!何あーんされてるの!?」
「由比ヶ浜,これは新しいスプーンで,間接キスとかじゃないからいいだろ?」
「そうそう,それはさっきスープでやったからな」
おいおい,何余計なこと言っちゃってんの!そんなこと言ったら火に油だろ……
「それはまあ,偶然に,本当に偶然わたしたちの目に入っていたけれど,特に言うことはないわね」
「そうそう,無理やりみたいだったし,それに部室で姫菜とのアレを見せられちゃってるからね」
「ね。あんなぐっちょんぐっちょんのを見せつけといて今さら何言ってんだって感じだよな」
いやあああ!もうそのぐっちょんぐっちょんやめてーーーー!!
「……イタリアンハンバーグにパンチェッタと若鶏のグリル,お待たせしました」
さっきよりもさらに顔を真っ赤にした海老名さんがそこに立っていた。
「姫菜……」
それっきり無言のまま立ち尽くす三人。そんな中……
「原滝,お前,この状況でよくモリモリ食べていられるな」
「だって,せっかく作ってもらった料理が冷めちゃったら調理してくれた人に失礼だろう?」
なかなか見上げた心がけだが,サイゼは調理済みの食材を温めてだしているだけなんだな。ただ,徹底した温度管理や品質管理,そして栽培・収穫から加工、調理まで一貫して行うことによりコストダウンを図り,この味と値段を両立させている。
べ、別にサイゼの回し者じゃ無いよ(汗)