オリジナル短編




活動報告で書いた、復讐ものを自分なりに書いてみたものです。



元勇者の語りです。


勇者さんは、無自覚系な性格してます。悪意はありません。たぶん。

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無自覚系が一番怖いような気がする、というかそういう性格したマイペース系しか書けない自分がいます。


仮題名『裏切りへの徹底的な復讐を』

 

 なぜ?って顔をしてますが?

 

 さっきまでの態度はどうしたんですか? さっきまでみたいに私を勇者を名乗る無法者だと詰ればいいじゃないですか。それがどうしたんです? 周りにいる私の元仲間が五体満足じゃなく、ご自慢の兵士たちが全員死んだからですか?

 

 なにをいまさら…、私はこれでも魔王と、彼らが信仰していた邪神をも倒すため徹底的にレベルとスキルを磨いてきていて、レベルマックスなんてとうに超えています。元仲間や、あなた方の兵士なんて虫刺されにも劣りますよ。

 

 いや~、まさか邪神の世界から帰ってきた途端に、危ないからって残してきた元仲間からは武器向けられるし、しかも百万の兵士たちまで待っていたなんて思いませんでしたよ。元仲間は四肢を切ってお土産にして確認のために来ましたけど、まさか本当にあなた方の仕業だったという真っ黒ネタ…だとは…。

 

 えっ? 化け物? なぜです? 私にはあなた方が今まで恐れてきた魔物や魔族のような爪もないし、角も牙もありません。鍛えただけの人間ですよ?

 

 どうしました? なぜ失禁しているのです? ついにで脱糞まで…。臭い臭い。何を食べてるんですか? 仮にも王族でしょう?

 

 いや~、それにしても、私が邪神を倒しに行っている間に、ずいぶんと根回しまでされていてびっくりですね。この城下町はおろか、小さな村の隅々まで私を悪者としてお触れを出していたなんて。おかげさまでここへ来るまでに無駄な時間食いましたよ。

 

 えっ? 助けてくれ? なんでもするから?

 

 うーん。別になにも要求なんてしませんよ。そうですね……、ただお願いがあるのだとしたら…、生きてて…ほしいかなって。

 

 なに意外そうな顔をされますね? てっきり死ねって言われるかと? まさか! 私はただの人間ですよ!

 

 ただ…、これから大変なことになるでしょうが…。

 

 えっ? なぜかって?

 

 実はこちらに帰る途中、私を勇者に選定した女神を名乗る方が降臨されまして、私に、死ねって…、それで、うっかり返り討ちに…。どうやら私が神の世界で実権を握っていた邪神を倒したから用済みだったそうです。

 

 でね、その後なんですよ…、そしたら別の神様が来られて、頭を下げられました。その方は、私が倒した邪神の親戚だそうでして、人間の絶望を糧にして魔族を守護するっていう、神様の世界ではあまり力がない方だったそうです。

 

 親戚ですよ? 私は身寄りのない者です…、ですから家族を失った悲しみの報復を受けるつもりでした。ところがですね、その方、あろうことか私と再契約をしてくれないかって持ちかけ来たんですよ。

 

 私を勇者にした女神が死んだ今、私の契約相手の神の枠は空っぽ。この世界は何かしらの神の守護がなければ、このままだと死後の世界に魂を運ばれないからということで、私は再契約を結ぶことにしました。

 

 ここからは、その新しい守護神様からのお話なのですが…。

 

 その方が神の世界で実権を保つには、力の源である人間の絶望が大量に必要なんですって。まあ、そういう神様なのですから当然といえば当然ですね。

 

 でね、そのためには、人間には絶滅してもらっては困るから、適度に繁殖してもらって、世界のために絶望してもらわないといけないから、魔族主権の世界を新しく発足するって言ってましたよ。えーと、つまり、魔族が世界のために人間を奴隷にして虐げて繁殖させて絶望させないといけない世界になるらしいですよ。

 

 えっ? せっかく魔王と邪神を倒したのに振り出し? 前以上に最悪? そう言われましても…。私はもう勇者じゃありませんから。ええ、再契約時に勇者の称号は失いましたよ? そもそもあの称号は私が倒してしまった女神が与えたもうたものですから。

 

 えっ? 自分がやったことが分かっているのかって? 知りませんけど…。だって、私は自分の役目は果たしたので。ここへ来たのはただの確認のためでした。

 

 ま、そういうわけですので、私は失礼します。

 

 あ、そうそう、忘れてました。新しい私の守護神様からの伝言で、私を裏切った元仲間たちと、私を醜いからと勇者として役目を果たしたら最初から切り捨てる御つもりでした裏切ったあなた方王家の方々は、死なない呪いをかけてやるそうです。そして、人間族が世界のために絶望する原因として人間族から憎まれ、そしてその絶望を世界のために捧げろって言われてました。頑張ってくださいね!

 

 それじゃあ、私は、残りの余生を、滅ぼされた私の故郷の跡地で過ごします。神の世界の毒気で、私の余命はもう…、では、お元気で。

 

 えっ? 見捨てないでくれ? 助けてくれ? いや、謝れてましても…、ゴホゴホ…っ、もう死ぬ気で自分を鍛えられないし、戦う気力も…ないんです。ここまで来るのは大変でした。

 

 今度こそ、さようなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっ? 分かってるくせに、分かってないふりをしてる? 余命が少ないって嘘ついてまで?

 

 なんのことやら…。ゴホゴホ…。

 

 ああ…、でも…、新しく生まれ変わる世界を見て回れなかったのがせめてもの、心残りかな?

 

 魔族が世界のために人間族を絶望させる世界か…。どんな世界が生まれるんだろう……。

 

 

 




登場人物↓

元勇者
 とある女神に選定された孤児。人間族に裏切られその事実確認のために王都へ。
 倒した邪神の親戚の邪神と再契約して、勇者の称号を失って強いだけの人間になった。
 神の世界の空気が合わず余命が短くなっている。


邪神の親戚の邪神
 人間の絶望を糧にして力を増す邪神。人間族が全体的に主権を握っていたため神としては弱かった。
 実験握っていた親戚が倒され、その後実権を握った女神も倒されたため祀り上げられる形で即位し、魔族主権の世界で人間族を世界のために絶望させる新たな世界の秩序を構築する。
 神としての性質はアレだが、根は優しいらしく、余命の短い元勇者のために死後の世界へ送り届けるために再契約をもちかけるなどする。
 元勇者が受けた仕打ちを見て、人間族を心から軽蔑し、徹底的に救済方法を奪う。


元仲間たちと、王家
 勇者を最初から切り捨てる計画を練っていた。
 逆に返り討ちにあった上に、邪神の親戚の邪神から死ねない呪いを受け、魔族主権の新世界で他の人間族から未来永劫恨まれる対象になる。


人間族
 たったひとりの勇者を裏切ったことですべてが絶望のどん底に落とされることになった種族。
 邪神の親戚の邪神により、あらゆる救済の道を断たれる。(異世界からの勇者召喚もできないし、新しい勇者の誕生もない)


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