vol.1 プロローグ
摩天楼のそびえる街並みにじゃかじゃか耳障りな音楽・・・。
一人顔を不快げにしかめながら一人の青年が歩いていた。
短髪の黒髪に浴衣姿、その上なぜか顔にはグラサン。
異様ないでたちの彼をよく見ると勘の良い者ならば気づくであろう。
体が動くたびにわずかだが起動音が聞こえる。
そう彼は人間ではない。
ロボット・・・・。
彼はロボットなのだそれも戦闘用の。
「なんであんな音楽がいいのかねえ・・・・。」
ロックマンキラーズが一人、エンカーは街並みを歩きながら不快な気分で一杯だった。
彼は和風の文化をこよなく愛する。無論騒がしいものが嫌いなのではない。
花火大会でもやっていようものなら勝手に参加をして皆とわいわい楽しむことだろう。
彼は和にこそ真の美や芸術があると本気に信じきっている。
今時流行りの音楽など耳障りなものでしかなかったのだ。
キングの起こした一連の反乱から二つの季節が過ぎようとしていた今日。
ワイリーの世界征服もなりを潜め世界は平和そのものだった。
それを象徴するがごとくエンカーの憂鬱な気分をよそに空は雲ひとつない青空一色であった。
不快な気分いっぱいだったがどうせいつもの事だと気を紛らわせエンカーは知らず知らず歩く速度を速めていた。
彼には今日行かなければならない場所があった。
自らの宿敵のロックマンでもなければ生みの親のワイリーの元でもない。
人々が集う公園の先の横断歩道を右に曲がりそのまま直進すること10分。
彼の目指す目的地は人でごった返していた。
「整理券ヲオ持チノ方ハコチラヘ~」
「ソコノ オ客サン割リ込マナイデクダサイ~」
列を整理する警備ロボット達の悲痛な叫び声があたりからこだまする。
中には順番を守らず、警備の注意も聞かなかったため列の最後尾に引きずられていく人間の姿もあった。
「来たか・・・どうせなら昨日のうちに並んでおくべきであったな。」
エンカーは後ろから声をかけられ振り向きざまに言った。
「まあな・・だが見てみろここに集まった連中は皆、和の芸術ってやつを理解しているやつらだぜ。
それを聞き、ややため息をつきながらもサムライの姿をしたロボットはうなずいた。
「それにしてもシャドーマンはどうした?」
「あいつはワイリー様からの特別な任務があるから来れねえってよ、あいつも運がないぜ」
「そうか、まあ急用なれば仕方がない・・・」
サムライ姿のロボット、ヤマトマンがそう言いつつ紙切れを手渡した。
「・・・・?なんだこれ?」
「整理券だ、無理を言って3枚とったがひとつ無駄になってしまったな」
やや残念そうにヤマトマンがつぶやく。
「だがありがとよ、これで早く入場することができるぜ」
彼らが目指していた物、それは本場の日本でしか味わう事ができないはずの歌舞伎の海外公演だった。
歌舞伎界の大御所、海老一族がおりなす公演・・・エンカーなどから見れば見逃すわけには行かなかったのだ。
「しめた事にあいつはここに来てない様だな」
エンカーはあたりをキョロキョロと見回したその時
ビュウウウウウルルルル・・・・・・・!
そこに一陣の風が人々を掻き分けるようにして降り立った。
エンカーやヤマトマンは一瞬身構えるが相手の姿に気づき緊張を解いた。
そこには天を突き抜くように鼻を出した、一体の戦闘用ロボットの姿があった。
「フフフフフ・・・!下らぬ下賎の者共がうじゃうじゃおりますなあ・・・」
自信ありげに周りを小馬鹿にしながら続けて
「果たしてここに来たもののうち一体、いくらがこれの素晴らしさを理解できるのやら」
鼻を突き上げ高笑いをするロボットを見つつエンカーは憎憎しげに睨んだ。
「テングマンてめえ・・・・目立ちすぎだこの馬鹿!」
「ほうこれはこれはエンカー殿、貴殿達もここに来ておられましたか!これより始まる和の集大成・・・存分に体感できますな」
嫌味全開で偉そうに話すテングマンを見てエンカーは半ば後悔した・・・。
「こんな奴の事、かばうんじゃあなかった・・・」
話は二年前このテングマンがキングの軍門にくだりワイリーナンバーズを裏切った頃に戻る・・・。