「どうすりゃいいんだ・・・俺どうすりゃいいんだよ・・・」
電話越しながらも相手が憔悴しきっているのは声でわかる。
例のお騒がせロボット、カブキマンの事件が終結してから一週間ほどたったある日、早朝からの電話に私は追われていた。
電話の話し相手はあのグランドマンである。
どうやらあの後、皆には秘密であのジェットキングロボ改の機動テスト行ったらしい。
らしいのだが・・・・ナパームマンらのせいで当初の予定を超えて大幅に巨大化。
現在のエンジンでは動くことすら間々ならないほど肥大化していることがわかったのである。
これに全てをかけるグランドマンにとってはそれは悪夢以外の何者でもない。
「起動する事はするんだけど全然!キャタピラとか回らないんだよ・・・!あれじゃあただのでかい箱だって!」
「まあ・・・待て、エンジンを新しい物に変えるとか増設するとかでどうにかならんのか?」
私はグランドマンに提案するがそれを彼は情けない声で否定する。
「今更エンジンなんて増設しても・・無駄だって・・・。だってあの二人、どんどんでかく改造してるから意味が無いじゃねえか・・・」
どうやらあの二人は私が見た、あの時よりもさらに大型化を進めているようだ。
「俺・・・なんだか自信がなくなってきたぜ・・・。今すぐにでもあんたらの所に入りたくなってきた・・・」
ついに戦士としてのプライドまで捨てかけぼやき始めるグランドマン。
「て言うかもう・・・警察に出頭しようかな・・・ハアァ・・・」
いかんな・・・かなり欝に近くなってきているではないか。
「わかった!わかった!あの二人には言っておくからとりあえず我慢してくれ」
「頼むぜ本当に頼むぜ・・・」
グランドマンのネガティブな言動に朝から悩まされていたが、時間は私に安息を許さない。
「おーい、パンク!ちょっと顔貸してくれ」
グランドマンを何とか説き伏せ、その後ナパームマン達をなんとか納得させ一息ついている所に声がかかる。
私に声をかけるのは兄のエンカーだ・・・ロックマンキラーズ記念すべき第一号であり。
対ロックマン用に開発された敵の攻撃を利用する武器、ミラーバスターを使いこなす歴戦の戦士でもある。
もっとも最近では「和風同盟」なる訳の分からないものを結成しているのだが。
そんな兄の趣味には私は一切興味が無い。
・・・が少々、ナンバーズ以外のロボット、特にヤマトマンらを巻き込んで結成しているのは問題だと思う。
「何考えてんだ?まあいい・・・実はワイリー博士から連絡があってな・・・」
思案する私に詰め寄る兄だがワイリー様の連絡の方が重要らしい、連絡の内容を簡潔に言う。
「・・・まあとにかく新しいナンバーズがロールアウトしたからこの基地に送られてくるらしい。でいつもの俺らで新人研修だとよ」
基本的に作られたばかりのロボットは基本的な言語や知識などはインプットされているがそれ以外の知識はあまりなかったり、微妙に偏りがあったりする。
いろんなトラブルの対応など経験が必要な物もある・・・それに人間を間近で見て学ぶ事も多い。
新しい兄弟を迎える為に私と兄はこの基地にあるドッグへと急ぐ・・・どうやら今、ワイリー様がいる秘密基地より輸送機でここに送られてくるらしい。
待つこと30分ほどで輸送機は基地に到着する。
輸送機の扉が開き、タラップが降ろされる。・・・この瞬間ほど緊張する物も無い。
まずは第一印象が大事である、そして我々はワイリー軍団の中でも古参の者、新人に舐められる訳にはいかないのである。
正直な話、この時期に新人につけあげられると後々厄介である。
更生したテングマンはまだ良くなったが、フォルテなどは未だにやっかいである。
ナンバーズの問題児のフォルテに関しては正直あの時期、甘く対応しすぎたと思う。
せめてろくに経験もつんでいない時期に一回でも良いから痛い目にあわせておけばあそこまでひどくならなかったはずだ。
今更考えても、もう遅いか・・・ともあれ年長者としてなめられる訳にはいかないのだ。
タラップから降りてくる一体のロボット・・・初めて会う相手にちょっとプレッシャーを出しながら見上げる。
・・・・・と思ったら降りてきたのはテングマンだった。紛らわしい奴め。
そんな私の気持ちを知ってか知らずかテングマンは手に鼻を乗せるように持ちながら地面に降り立つ。
「おお!エンカー殿にパンク殿!拙者を出迎えてくれるとは恐悦至極に・・・」
「てめえじゃねえよ!新しい奴はどこだ?」
兄のエンカーはテングマンに怒鳴りつける・・・いつもの事だがこのテングマン、風を操る能力を持ちながら場の空気が読めないのが欠点である。
「おお!そうでありました!拙者は護衛も兼ねて来たのであります。ささどうぞ。怒っているのがエンカー殿、そっちの赤いのがパンク殿ですぞ」
テングマンは後ろの機内に向かいそう声をかける。
機内からタラップを降りて来る一体のロボット?
・・・ん?
目が点になるとはこの事なのだろうか。
タラップから降りて来るのは金色の髪をツインテールに分けたなんとも天真爛漫と言った少女である。
元気よく少女は私達の目の前に立つとぺこりとお辞儀をすると口を開いた。
「はじめまして!私フィーネ!よろしくね~!」
・・・・・・。
場の空気が固まる・・・この少女が新しいナンバーズなのか・・・?
あまりの予想外の展開に私達は面食らう。
「・・・・・・でテング。この子どこでさらってきた?」
笑顔でテングマンに話しかけるエンカー・・・まずい。こう言う時の兄は確実に怒っている。
「・・・拙者そういう趣味はありませんぞ」
ほう・・・と顔に青筋を立てながら兄は言うが私も信じられない、こんな小娘が新しいナンバーズだと言うのか・・・。
「ワイリー博士が作ったのが本当だとしてもこれ、俗に言う愛玩用なんじゃないのか?」
兄は疑問を口にするが博士にそんな趣味があったらとっくの昔に作っているだろう・・・大体そういう扱いを受けるロボットはワイリー様からすれば到底許す事ができないはずなのだが。
「拙者も驚きましたがワイリー博士は新しいスペシャルナンバーズとはっきり言っておりましたぞ」
そんな兄の言葉を否定するテングマン・・・その彼の鼻を持ちながら兄は詰め寄る。
「本当だな・・?嘘だったら鼻へし折るぞ・・・」
「失礼な拙者、嘘は言いませんぞ!イテテ・・・鼻が曲がりまする・・嘘は言っておりませぬ!」
このままでは埒が明かないのでテングマンと兄に助け舟を出すことにした。
「とにかく兄貴。この子に直接聞いたほうがいいんじゃないか?」
私の言葉にエンカーは気を取り直したのか今度は彼女・フィーネに声をかける。
「フィーネちゃんとかいったかな?君は何の目的で作られたのかな~?」
「う~ん・・・フィーネはフィーネだよ~!」
ブチッ・・・・兄の血管が切れるような音がした相手は子供、我慢だ兄よ・・・。
「じゃ・・・じゃあフィーネ。君は何かすごい能力とかはあるんだろう?一応スペシャルナンバーズなんだし・・・」
兄のその言葉にフィーネは目を閉じ考えるような仕草で唸っている・・・もしかしたらこのかわいい外見であのフォルテやキング並の性能でもあるのだろうか?
「う~ん・・・・」
フィーネの答えを皆が固唾を呑んで見守る。そしてフィーネが口を開く。
「私わかんな~い!」
満面の笑みでそう答えるフィーネについに兄の堪忍袋の緒が切れた。
「ハハハハッ!フィーネ今からお兄さんと一緒にいい所に行こうか~」
そう言うときょとんとした表情のフィーネの手を持つとずるずると引きずる様にして基地の奥に連れて行く。
兄はいきなり実戦形式で彼女の実力を見定めたいらしい。
「テングマン・・・本当に何も知らんのか?」
「拙者、彼女を護衛してここに連れて来る事しか言われてないですぞ・・・」
テングマンは曲がりかけた鼻を直しながら私に言う。本当に知らないようだ。
「しかし・・・彼女」
一瞬テングマンの顔が本来の・・・戦士としての表情になる。その鋭い瞳が彼女がいなくなった奥の通路に向けられる。
そう言えばこやつは、今の我々よりも彼女といる時間が長い。もしかしたら隠された実力を感じ取ったのか?
「・・・下着の色は白でしたぞ!パンク殿!」
「・・・ほう。そうか。期待した私が馬鹿だった」
次の瞬間、私の拳はテングマンの顔を正確に捉えテングマンの体を数メートル吹き飛ばし、私の拳をまともに受けたテングマンの鼻は見事にへし折れていた。