「おい・・・なんだよ。それは!」
フィーネを部屋で寝かせた後、私が持つケーキに気がついたメタルマンの大声が基地に響き渡る。
酒で酔っ払い達が悪くなってはいるメタルマンは私の持つケーキを指を指しながら硬直している。
「それなんだよ?パンク」
さっきも同じことを言ったような気がしたが・・・・・。
「バレンタインで作ろうと思って余ったらしいのでバイト先の女性から貰ったのだが・・・・」
「嘘つけ~!おーい!パンクの奴がチョコ貰ったってよ~!」
メタルマンは他のナンバーズも呼びつけわあわあと騒ぎ立てる・・・勘弁してくれ・・・。
「自分で買ったんだろう!いやもしくは脅してむりやり作らせたんだろう!」
まったくそんな事までして手に入れる価値もないと思うが・・・・。
メタルマンはなおも私が他人から貰った事を認めようとせずに指を突きつける。
「・・・・・・ならば確認すればいいだろう」
ややあってこの基地にいる全ナンバーズが見守る中・・・ケーキの箱が開けられる。
そこにはいかにも手作りと分かるチョコレートケーキがあり、真ん中の板チョコには「パンクさんと家族様へ」と書かれており
ケーキに同封されたカードにルーテの字で「いつもうちのおじいちゃんがお世話になっています・・・パンクさんとその御家族様へ。どうぞお召し上がってね」と言う文が添えられていた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
場には重苦しい空気が流れる・・・・。
沈黙破ったのはメタルマンの絶叫だ。
「うそだぁーーー!俺だって貰った事ないのに!どうしてこんな格好のパンクがもらえるんだよ!」
「・・・・知らん」
私はもう、明日のために寝なければならなかったのでこれ以上付き合いたくなかったのだが結局、皆でケーキをつまみにしてのパーティになってしまった。
「俺も欲しい!バレンタインでチョコを女の子から欲しい~!」
・・・酒で酔っているメタルマンはうっとうしい事この上ない。
皆で分けたケーキを食べながらもメタルマンは叫びだす。
私はフィーネの分もとっておこうとひとつをラップで包み冷蔵庫に入れておいたのだが・・・・。
それをテングマンは勝手に食べようとし、私達の鉄拳制裁を受ける羽目になる。
まあいつもの事だが。
しかしメタルマンも含め他のナンバーズもどことなく私を見る目が厳しいような・・・そんな気がした。
そんなにバレンタインと言うのは重要な物なのか私にはさっぱり分からなかった。
「女の人からチョコがもらえるなんて、もてもてだね・・パンク」
「・・・そうなのか?でヒートマン、お前もチョコは欲しいか?」
「欲しいね、僕だったらすぐに溶かして直接お腹の中に流し込むよ」
そう言いながら溶けたチョコを指でねちょねちょさせながらヒートマンはそれを飲み込んでいた。
「・・・腹を壊しそうだな」
掴みどころの無いヒートマンと話をしながらも私は横目に地面で手をバタバタさせながら暴れるメタルマンを見る。
いい歳こいて情けない・・・ワイリー軍団最古参と言うのにその威厳ぐらい保って欲しいものである。
そんな私の頭の中に一つの妙案・・・いやある種の賭けが浮かんだ。
「そんなにチョコが欲しいならフィーネに作ってもらえばよかろう・・・」
ピタッ・・・・・・。
私の独り言に近い言葉にメタルマンの動きが止まりゆっくりとこちらを見る。
「それだ!それだよ!パンク!あの子に作ってもらえばいいんだ。いっつも男所帯だから気づかなかったぜ」
目を輝かせ私に詰め寄るメタルマン・・・・・。
「だけど、彼女・・・チョコなんか作ったことないだろう?材料とかもどうすんだよ」
ストーンマンが疑問を口に出す。
確かにこの基地にチョコを作れるような料理器具や材料は一切無い。
「大体料理の腕もどうなんだか・・・」
ナパームマンも微妙に不安のようである。
「そう言う事なら言いだしっぺのパンクが面倒見ろよ」
兄のエンカーは関係ないと言いたげに私に言い放つ・・・。
兄は和風の物しか受け付かない体質なのでケーキも一口しか食べおらず、自分で入れたお茶をすすりながら和菓子を食べており完全にこの話には蚊帳の外であるのだが。
その一言で流れは一気に変わってしまう・・・。
「じゃあパンクが手伝うって事でいいと思う奴!手を上げろ」
またしてもメタルマンが多数決で決めようとする。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もはや私はあきらめ全てを成り行きに任せるしかなかった。
・・・結局、そのままフィーネがチョコを作る事になり、その手伝いを私がする羽目になってしまった。
意外であったのはフィーネにバレンタインの件を教えた所、彼女自身が乗り気で基地に居るナンバーズ全員にチョコを作る事を了承した事だろう。
ナンバーズ達が見送る中、私とフィーネはチョコの材料の買い出しに街へ繰り出す事になる。
なるのだが・・・。
一人の少女といかつい外見のロボット・・・これほど異様な光景もめったに見れないだろう。
周りの人間の目がそれを如実に表している。
「・・・あの子誘拐されてんじゃないの?」
「あんなロボットと二人きりにさせるなんて親は一体・・・・」
そんな声がどことなく聞こえてくるが・・・我慢する事にする。
「ねえねえ後、どの材料が必要かな?」
抱えるように両手に袋に入ったチョコや調理器具を持ったフィーネが声をかける。
「むう・・・調べた限りではこれで大丈夫なはずだ」
「なんか足りないような・・・あっ!」
ドスンッ・・・・・!
目の前の注意がそれたのだろう、目の前を歩いてきた人間に当たるとフィーネは両手に抱えた荷物を撒き散らしながら盛大に音を立てこけた。
その人間は見て見ぬ振りを決め込むとそのまま歩き去る。
私はそれに憤りも覚えたがそれよりも今にも泣きそうな顔をしているフィーネをどうにかしようとしたのだが・・・・・。
「えーーーーーん!」
泣いてしまった・・・・私はフィーネをあやそうとするが彼女の声はますます大きくなるばかりである。
「フィーネ、フィーネ!荷物も大丈夫だし・・・い、痛いところは無いか?すぐに直すからそれで泣き止むんだぞ」
我ながら情けない・・・私とした事が完全に狼狽していた。
「ねえ・・・アンタ、こんな趣味持ってたの?」
後ろからかかる声に私は振り向く・・・その声の主を見て私の顔は険しくなる。
金髪をポニーテールした10代前半の少女・・・あの憎きロックマンの妹的存在のロールその人である。
「ほーら大丈夫、何も怪我してないから大丈夫よ」
彼女はフィーネににっこりと笑顔を見せながら話しかける。
それも聞いたフィーネも次第に落ち着きはじめた・・・。
「・・・でこの子、どこからか誘拐でもした訳じゃないでしょうね・・・」
じとりとロールは私は見つめるがこの外見ゆえのあらぬ誤解である。
「言っておくがその子は我々と同じナンバーズだ」
「ふ~ん」
半信半疑ながらも私の言葉を聴くロール。本当の事を言っているというのに・・・。
「なら、お兄ちゃんなんだからもっとしっかり面倒見なきゃ駄目でしょ!」
「・・・・申し訳ない」
彼女にそこまで言われる筋合いはないのだが気づけば私は頭を下げていた。
最近フィーネといる事が多いせいなのだろうか私の調子は狂いっぱなしである。
「・・・で、何してるのこんな所で?」
「むう・・・実は」
私は私が持ってきたケーキのせいでこのフィーネにバレンタインチョコを作らせる羽目になった経緯をロールに説明をした。
「あんた達って・・・・・・」
うむ・・・分かっている、分かっているからこそ言わないで欲しい・・・・。
「・・・馬鹿よねえ」
「それには反論をしないでおこう・・・」
予想通りの彼女の言葉に私は肩を落とす。
「ふ~ん・・・あんた達も大変ね」
ロールは私の向かいの椅子に座るとクレープをおいしそうに食べていた。
「いつもこの店で食べてるなんてずるいよ!おにいちゃん!今度は私も一緒に連れてって」
「分かったフィーネ・・・今度から一緒に食べような」
私の隣に座るフィーネは顔を膨らませながらもチョコ味のパフェを食べる。
あの後ロールにチョコ作りの意見を求め足りない機材や材料を購入し、それが一段楽したので私の行きつけの店であるローズの店で休憩がてら食事をしているのである。無論私の自腹だが・・・・・。
「パンクに妹がいただけでも驚きだけどまさか・・・彼女までいたとはねえ」
店主のローズが笑いながら言うがそれを私はあわてて否定する。
「彼女とはただの・・・か、顔馴染みなだけだ。そういう関係ではない!」
「ふ~ん、人から見るとそう見えるのかしら?」
明らかに狼狽する私とは違い、ロールは腕を組みながら思案している。
「でも結構パンクってさあ、女性にもてるタイプだと思うんだけどな・・・ほら見た目はあれだけど中身は結構真面目じゃん?そのギャップに弱いって人もいるんだよ」
ローズは説明するがそんな物なのだろうか?女性と言うのは。
「・・・参考にしておこう」
「そうそうそれなんだよね、いちいち答え方が真面目なんだもん」
そう言うと大笑いをするローズ。
「確かにそうかも」
「おにいちゃんはまじめだからえらいんだよ~」
ロールとフィーネはそれぞれ勝手な言葉を言い始める・・・どうにでもしてくれ。
「さあ、必要な物も買ったしそろそろ基地へ戻ろうか」
昼も過ぎそろそろ基地へ帰ろうと椅子から立ち上がる。
「あ、それなんだけど」
慌ててロールは椅子から立ち上がる。
「よかったら私の家でチョコを作らない?今日はライト博士も仕事で出かけているし、ちょうどこれから明日のバレンタインチョコを作ろうと思っていたし・・・」
「・・・フィーネだけならともかく私まで行って問題ではないのか?」
ロールの申し出はありがたい、フィーネと私が作るよりも効率的にいいだろう。だがやはり日頃の敵の本拠地にまたしても行くというのは気が引ける。
そんな私の考えを見透かしたのかロールは私ではなくフィーネに話しかける。
「いいの、いいの。ね?フィーネちゃん」
「は~い、ロールおねえちゃん」
「わかった、わかった!ただしフィーネ。あんまりあちらではしゃぐんじゃないぞ・・・」
「は~い」
私に笑顔で向ける2人に私は折れざるを得なかった。
どうも私は女性の扱いとやらは本当に苦手の様である。
・・・そしてまたしてもライトの研究所へと足を踏み入れる事になった。
「わあ・・・きれいな家だね、うちとは違うねえ」
「パンク・・・あんたらの基地、掃除してるんでしょうね?」
フィーネの言葉にじと目でにらみつけるロール。
あそこは前線基地も兼ねている・・・完全に清潔にするのは無理なのだが。
「おかえりなさいダス、ロールちゃん。今日はかわいい女の子も連れているダスね。ワシの名前はライトットダス」
「私、フィーネ!よろしくライトットさん」
フィーネはライトットにぺこりとお辞儀をする。
「これで2度目だな・・・また失礼するぞ。ライトット」
「・・うひょ!あ・・あんたもダスか!?って言う事はこの子もワイリーナンバーズダスか?」
私の出現に明らかにびびるライトット。
「そうだ・・・ワイリーナンバーズだよ」
「あんたと言い人は見かけによらないもんダスなあ・・・」
どういう意味だと問い詰めたくなったがフィーナの手前、私はぐっと堪え他無いのであった。