ロックマンキラーズ纏め編   作:グルルre

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vol.10 我らはナンバーズ

朝、私が目を覚まして部屋を出ると他のナンバーズ達の間に微妙な空気が流れていた。

無理も無い。昨日の一件以来、フィーネの事で皆は頭が一杯なのだろう。

「・・・フィーネは?」

「ああ・・・彼女ならエンカーとテレビ見ているぜ」

私の問いかけに答えるのは唯一あの場を逃れたナンバーズ、マースである。

彼からしてみればいつの間にか状況が一変しており、それに困惑としているといった様子である。

「彼女泣いちゃったんだって?」

「うむ・・・・」

「テングマンが話しかけようとしたら目も合わさずに行っちゃったって、本人が凹んでいたぜ」

マースは私だけに聞こえるように小声で話す。

見れば部屋の隅で萎れた格好で肩を落としているテングマン・・・・。

ある意味で今回はテングマンも被害者なのだが。

「まだ仕事まで少し時間がある・・・話をしてこよう」

そう言うと私はフィーネがいるという兄の部屋に向かって歩き出した。

 

 

「控えおろう!!この御方をどなたと心得る!!」

兄の部屋に入ると兄のエンカーとフィーネが一緒にテレビを見ていた。

兄が見ているのは隠居した老人が旅をするニホンの時代劇のビデオである。

「おう、パンクか。今日は休みなんでな。前にヤマトマンから貰ったビデオをフィーネと一緒に見ているんだ」

「毎回いつものお約束のの時代劇をか・・・・」

私は溜息をつく、これに限らず大衆向けの時代劇と言うのは毎回ワンパターンで・・・何と言うかマンネリ感が否めない。

「てめぇ・・・・同じって言うんじゃねえよ・・・。いつ見ても面白いって言うのが時代劇じゃねえか!てめぇはだいたい和の・・・!」

私の言葉に顔に青筋を立て怒鳴りかける兄だったが、隣にフィーネがいるのに気がつき、言葉を切る。

「・・・まあなんだ。人の好きな物にいちゃもんつけるな。って言う事でな・・・・」

明らかに勢いの削がれた兄の言葉、子供は嫌いと言っていたがさすがに邪険に扱う気はないらしい。

「・・・フィーネ」

私はフィーネに声をかける。

「・・・・・・・・・・・」

しかし彼女からの答えは無い。

私の背を向けたまま彼女はテレビを見続ける。

「フォフォフォフォフォフォ!!ハッハッハッハッハ!!」

テレビの中の隠居した老人の笑い声が部屋に響き渡る。

老人の笑い声の性か・・・私の苛立ちは頂点に達してきた。

「・・・・・・フィーネ!!返事をしなさい!!」

「まあまあ、昨日の事もあるし今日は俺に任せておけ・・・」

兄はそう言うが私としてはいままでずっと一緒にいたのだ。自惚れに過ぎないかもしれないがここにいる誰よりもフィーネの事を理解していると言う自負がある。このまま黙って引き下がる事はできなかった。

「フィーネ・・・昨日の事は皆、反省している。お前の気持ちも分かるがお前がずっとこのままだと皆が心配する。だからいつもの元気なフィーネに戻ってくれ」

私はなんとか昨日考えた言葉をつなぎ彼女に声をかける。

彼女が先ほどから私の顔を見ないばかりか微動だにしない・・・。

「私・・・皆に嫌われちゃったね・・だってさ、勝手に怒って挨拶もしないもんね・・・」

「・・・・・・何?」

フィーネの意外な言葉に私は目を見張る。

「いい子にしてなきゃ駄目だよね・・・今までしてたのに・・・頑張ったのに」

「・・・・・・・・」

「皆に気に入られようとして・・・馬鹿だよねわたし・・・。自分で全部台無しにしてさ・・・・」

「・・・くだらんな」

私の言葉にフィーネはビクッと体を震わす。本当にくだらない・・・所詮子供の浅知恵か・・・・。

フィーネはフィーネなりに努力をしてきたのだろう、周りは誰も知らない者ばかりでその中でどうにかして嫌われない様にあぶれない様に。

だからこそくだらないと思う・・・そんな我慢なぞせずに本来の自分どおりに行動すれば良いものを・・・。

仮にわがままにしてもそんな事で我らが嫌うと思ったのだろうか・・・・?見下げられたものである・・・。

「いつまでもそうしていたいのなら勝手にしろ。私はもう知らん。ついでにお前の世話係も降りる」

そう言うと私は踵を返すと兄の部屋から出てそのままの足で仕事に向かう。

 

 

「あいつもきつい事言うなぁ・・・・・」

部屋に取り残されたエンカーはぽりぽり背中をかきながら気まずそうにテレビのリモコンを操作する。

「・・・・・・ッ」

フィーネは座ったまま手を握り締め唇を噛みながら声も無く泣いていた。

そんなフィーネの頭にエンカーが彼にしてみれば優しく手を置く・・・。

「ま、この「遠山の金さん」見たら。後で街でも行こうぜ、最近おいしい茶店ができたんだよ」

「・・・うん。・・・ねえパンクおにいちゃんも私の事嫌いになったかな・・・?」

「んな訳ねえだろ。パンクも含めて他のやつに謝りづらかったら俺も一緒に謝ってやるからさ」

フィーネの頭を優しく撫でながらエンカーは笑っていた。

(こりゃまあ、誰でもある試練って事で・・・・)

エンカーにしてみればこれは誰しもがまずぶつかる問題だろう。

(若いっていいねえ・・・)

そう言うほど彼も年寄りではないがかつては自分も当たった壁だ、彼女も乗り越えるだろう。そうエンカーは確信していた。

 

 

「おい!!パンク!!そこ不良品!!不良品!!」

工場長の声があたりに響き渡る、見れば目の前に明らかに不良品の缶詰が生産ラインに流れようとしている。

それを私はあわてて取るとなんとか事無きをえる・・・。

こんな事は今日で5回目である。

「大丈夫か?今日はえらい調子が悪いな」

「すいません、今後気をつけます」

工場長の言葉に私は何度も頭を下げるしかない。

今日はどうもフィーネの事で頭が一杯で作業に集中することができない・・・。

言い過ぎた・・・・それが私の中で何度も後悔の念となって現れる。

イカンイカン、今は作業に集中することが何よりも先決である。

その後フィーネの事を振り払い集中しておかげかその日の作業はそのまま何とか何事も無く終える事ができた・・・。

 

その日はそのままダイムの所へ向かう・・・。

しかしここでも・・・。

「帰れ!!お前の顔なぞ見たくない!!」

一瞬自分の事かと思ったが、身に覚えがない。

どうやら工房の中でダイムと誰かが言い争っているようだ。

「せっかくアンタに活躍の場を与えようと持っているのにねえ・・・」

ダイムと話すのは四十代ほどのスーツを着た身なりの良い男だ。

話しぶりからするとダイムにビジネスの話でも持ちかけにきたのだろうか?

「この工房も古臭いじゃないか・・・アンタみたいな腕の持ち主をここで腐らせるには惜しい」

「古臭いじゃと!ふざけるな!ワシから大事な物を奪っておいて何を言うか!」

「やれやれ・・・まあ、今日は客も来たみたいだし帰るよ」

私の存在に気がついた男はそのまま工房の外に出る。

ふと私の姿を見た男は驚愕の表情をする・・・明らかに客ではないのは分かるだろう。

「・・・驚いたな、まさか・・・ここで働いているとか言うロボットってのは君かい?」

「・・・そうだが」

「・・・ふん、あの頑固爺がまさかとは思ったがねえ」

そう言うと男はそのまま私の目の前から去る。

私はその後姿を訳も分からず見ていたが、考えても意味がないだろう。そのまま工房へと入る。

「お前は・・・」

ダイムは憔悴した顔で私の顔を見る。

「・・・スマン、今日は帰ってくれ。仕事をする気分じゃない」

明らかにいつもの調子とは違うダイム・・・。

「・・・そう言うのであれば」

そう言うと私はすぐに工房から出る・・ダイムと男の関係が気になった。

ダイムの過去に一体何があったのだろうか?だが彼のあの姿を見ると生優しい物ではないのは明白だ。

・・・・それよりも困った事はこのまま工房で夜まで過ごす予定が狂ってしまった。

このまま帰ればフィーネと会ってしまうだろう。気まずい、本当に気まずい。

 

「・・・・・ハァ」

私は街の路地を歩きながら今日何度目か分からない溜息をついていた。

とりあえずまだ夜までは早い、とりあえずローズの店に行って時間を潰そうと私は考えていた。

同じ女性である彼女に相談をすればフィーネの事で何か突破口も開けるかもしれない。

「・・・・・・・・・・」

ローズの店があったはずの場所は見る影もなくなっていた。

辺りには物や破片、料理の材料などが散乱していた。

「あ・・・パンク」

「・・・何があった?」

彼女は物陰にじっとしていたが私の姿を認めるといつもの様に話しかける。

「この前のショバ代請求して来た奴でさ・・・アンタが追い払った時の仕返しにきたって訳」

例のゴロツキ共を追い払ったのは私の中ではまだ記憶に新しい。

「私の父親が飲んだくれでさあ・・・とんでもない借金を残して逃げちまったんだよ。で借金の催促ついでにこうして嫌がらせをしていくんだよ」

「・・・・・・ふむ」

「やっぱりどんだけ努力しても無駄なのかな。あたしの力じゃあ無理なのかな・・・・。ヘヘッ・・・ごめん湿っぽくなっちゃったね」

ローズは涙ぐむがすぐに元に戻る・・・まだ二十歳にもならないというのに強い娘だ。

「少なくともお前の作るクレープは美味い、私はどんな事があろうともここの常連だ」

「ありがとうね・・・今日は無理だけどまた明日・・・・・って!忘れてた!!それどころじゃないよパンク!!」

礼を言いかけたローズは思い出したように声を上げる。

「アンタの所のフィーネ!!あたしの店にたまたまいたんだけど因縁つけられてあいつらに連れ去られちゃったの!!あの後エンカーって言う人にそれを伝えたんだけど・・・」

「何!!それは本当か!?」

私も驚きを隠せない・・・・ローズの話によると今日の昼ごろにフィーネは兄と一緒にこの店に来たと言う。

その後、例の刑事ジョージに兄はたまたま発見されローズにフィーネを任せて逃げてしまったのだと言う。

そしてゴロツキどもがローズの店を襲撃した際にフィーネはローズの身内に勘違いされてゴロツキ共に連れ去られてしまったそうだ。

返して欲しくば借金を返せとお約束の言葉を残して・・・どこまでやり方に反吐が出る奴らである。

私はその時、物陰に潜む気配を感じ取る。

「・・・・シャドーマンか?」

「・・・・・・うむ」

私が声をかけると物陰からいきなりシャドーマンが姿を現す。

ローズはそれに驚くが私の仲間と言う事は分かっているので何も言わない。

「兄は・・・エンカーはどうしている?」

「・・・今、一人で奴らのアジトに乗り込む気の様でござるよ」

「・・・兄に自重してくれと言ってくれ。ついでに基地にいる全ナンバーズに声をかけてくれ」

「・・・む?」

私の言葉にシャドーマンは一瞬、怪訝な顔をするが私の意図が分かったのだろう。

「・・・了解した」

シャドーマンはそう言うとすぐに影に溶け込むように姿を消す。

「ね・・・ねえパンク?何するつもりなのアンタ達?」

目が点になっているローズに私は不敵な笑みを浮かべる。

「な~に!!奴らにちょっと早いホワイトデーだよ。ついでにローズ、お前に二度とちょっかいをかけん様にするだけさ」

「はあ・・・?」

「我々の大切な妹に手を出した事に後悔させてやろう・・・フフフフッ!!」

久しぶりの戦いの予感に体を震わす・・・・我々ナンバーズを舐めた事を一生後悔させてやろう。

私はフィーネが連れ去られたと言う奴らのアジトに向かいゆっくりと歩み始めていた。

 

・・・・・・そんな私がアジトへの道をシャドーマンに聞くのを忘れていた事に気づくのは三十分後の事である。

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