「全員揃ったな?」
兄の声が裏路地の一角で響き渡る。
「・・・・・・一応これで全員だろう」
私は夜空を見上げながら言う。気づけば既に辺りは日が沈み夜になっていた。
できれば早くフィーネを助けたかったがこの街の各場所に日中は散っているナンバーズを集めるのは至難の業である。
それにただでさえ怪しい戦闘用ロボットが10体近くたむろしていれば普通に怪しいし、それを警察に通報する者もいるに違いない。
その為集合する事すらなかなか難しく、なんとか集合できる場所の確保に手間取っているうちに夜になっていたのである。
「まずは作戦の再確認だが・・・」
兄はシャドーマンが手に入れた。ゴロツキのアジトの見取り図を見ながら腕を組む。
「まず敵の名前はドフォーレ・ファミリーとか言うギャングだ。いつぞやの誘拐事件にも関わっているらしいが警察も証拠を掴んでねえ。金儲けや自分らの為ならなんでもする最悪な奴らだ」
敏腕刑事ジョージによって壊滅した身代金目的の幼児誘拐組織・・・それに関わっていたのであれば下手をすればフィーネの身もただではすまないという事である。
彼女は戦闘用ではないものの現在の最新鋭の技術で作られている。言うなればどんな手を使ってでもそれを手に入れたい者もいないとは限らない。
「で敵の数だけど、機関銃とかで武装した人間と十数人と性能とかは大した事はないが何体かの戦闘用ロボットの確認もされているので用心するように。・・・でまず先陣なんだけど」
「は~い!一番なら僕が行く~!!」
「拙者の汚名ここで晴らしましょうぞ!」
ヒートマンとテングマンがそれぞれ手を上げる。
「じゃあお前ら二人は空からあそこの二階辺りの窓から中へ強襲で決定。で今回パンクの申し出で協力してくれるグランドマンが内部へ進入できるように穴を掘ってるのでそこからナパームマン、マース、メタルマンの三名は進入して派手に暴れまわってくれ」
「ヒヒヒッ!今日はウォッカを3本空けたから手加減せず行くぜえぇ!」
「最初から最後まで派手に行くぜ!!」
「メタルとマースの2人に負けんように頑張るわ・・・」
それぞれ三人が意気込む。
「入り口はパンクがそのままスクリューアタックで一気に突破、そこをエアーマンと俺で後を追いかける形で突入する」
「我が怒りの風を奴らに思いしらせてやる・・・」
「・・・了解」
私とエアーマンそれぞれが言いながらうなずく。
「後、プロトの翁とシャドーマン、アストロマンは混乱した隙にフィーネの救出を目指してくれ。アストロマンはコピービジョンで撹乱しつつ敵に囲まれたら問答無用でアストロクラッシュだ、いいな?」
「う・・・うん」
「・・・・御意」
「ワシまで動員とはやれやれ・・・」
3人の中でプロトの翁だけはやる気が無い様だ・・・無理に動くと腰に来る。そう悪態はつくが参加はするつもりらしい・・・・。
「作戦開始はあそこの大時計が9時を知らせた時だ・・・鐘が三回鳴ったら開始だ!!作戦名は『ネコネコネコ!!妹奪還大作戦!!』ぬかるなよ!!」
・・・・その作戦名もどうかと思うぞ兄よ・・・・。
明らかに全員が呆れた顔をしたが、それも一瞬のもので全員の顔が引き締まる。
もはやナンバ-ズとかワイリー様が自重しろと命令等もそう言うものは関係ない。ここにいる全員がフィーネの・・・愛する妹の為に集まっているといるのだ。
(フィーネ・・・待っていろよ。すぐに助けてやるからな)
私はフィーネが監禁されているアジトを見ながらそう心に誓っていた。
「後、10秒ほどで鐘が鳴る・・・心しろよ!!」
「・・・・了解!!」
兄の言葉に通信機越しにそれぞれ確認の声が聞こえる・・・。
夜空には風の音しか聞こえない・・・まるで嵐の前の静けさの如く・・・。
ゴーーーン!!
ついに一つ目の鐘が鳴る。
私も含めた全員に緊張が走る・・・。
ゴーーーーーーン!!
二つ目・・・・・・・。
・・・・そして。
ゴオオォォォーーーーーーーン!!
「作戦開始!!」
兄の言葉は鐘の音に消され殆ど聞こえない。
私は体を球状に変形させるとそのままギャングのアジトの大きな門に大穴を空けながら中に進入した。
「な・・・なんだ!!」
門の外側と内側それぞれ2人ずつ見張りがいたが私はそのまま内側の2人を武器を構える暇も与えず一瞬で叩きのめす。
外側の見張りも今頃、兄とエアーマンが対処している事だろう。
「キイイイイーーーーン!!」
「天が導き!!地が叫び!!嵐が呼ぶ!!拙者こそが天下の体現者、テングマンであーる!!」
見ればヒートマンとテングマンはそれぞれアジトの2階と3階へと突っ込む・・・アジトの中は大混乱となっているのが手に取るように分かる。
「貴様ら何者だ!?」
機関銃を装備したギャング達と旧式ながらそれなりの火器を装備した戦闘用ロボットが出てくる・・・・。
「アイム・・・パンクとだけ言っておこう!!」
私はそう答えるとギャング達目掛け間合いを詰める。
戦闘用ロボット達が銃弾を浴びせるがそれはことごとく空を切る。
「エアーシューター!!」
「どけどけ!!」
私の後ろからエアーマンと兄が遅れて現れる・・・。
敵の数は予想よりも多いがそんな物大した事でもない・・・むしろちょうどいいハンデである。
最初こそギャング達は数を生かし我々を防戦に追い込むが・・それも一時的な物で少しずつ、性能で勝る我々とギャングの戦いは徐々に逆転していく。
そして・・・・・。
ドガアァーーーーン!
いきなりアジトの中庭に穴が開いたかと思えば中から全身重火器のロボットが二体現れる。
意表をつかれたギャング達はあっという間にナパームマンとマースにのされ、戦闘用ロボット達も遅れて現れたストーンマンとメタルマンの2人にあっさりと撃退される。
私はその場は彼らに任せると入り口をそのまま蹴り破る。
侵入した私に機関銃の銃弾が振りそそぐがそんな豆鉄砲どうと言う事は無い・・・。
一人、そしてまた一人と私は殴りつけ戦闘能力を奪っていく。
彼らも腐っているとは言え人間である。彼らは彼らなりの人間の法と言う奴で後々に裁かしてもらおう。
「死ね!この化け物野郎!!」
「・・・・・・!!」
見ればロケットランチャーを構えた男が半狂乱気味に私に狙いを定める。
正直、銃弾ぐらいなら問題はないがさすがにそれは無傷と言うわけにはいくまい・・。
私はそれを避けるべく体の全身に緊張を高めるが・・・・。
男のロケットランチャーが糸で釣られたように上に浮かぶとそのまま天井に溶け込むようにして消え去る。
唖然とする男の前で壁からすり抜けるようにして現れる一人のロボット。
「お・・・おばけだぁーーー!!」
男はいきなり壁から這い出るように現れたアストロマンにびびり勝手に転げて気絶した・・・・。
むしろ脅かした本人であるアストロマン自身が男の声に驚いていたのだが・・・・・。
オロオロしていたアストロマンは意を決したように私に話しかける。正直こう言う時はさっさと言ってほしいものである。
「あ・・・・フィーネちゃんだけどここの地下にいるみたい。そこへここのボスみたいな人が逃げていきました!」
「・・・アストロ、案内しろ!!」
「・・・・うん!!」
アストロマンの案内で私はアジトの地下へ足を進める。
私が地下室の鋼鉄の扉をこじ開けるとそこは以前金庫だったのだろうか?
かなりの広さがある空間である。
「おにいちゃん!!」
フィーネの声が空間に木霊しながら響く。
フィーネの体はクレーンのような物にくくりつけられたロープにつるされており、そこにはスキンヘッドで小太りのいかにも組織のボスと思しき男が立っていた。
悪名高き組織のトップであるドン=ドフォーレその人である。
「勝手な事をすればこの娘の命はないぞ!」
彼はフィーネを人質にとるつもりらしい・・如何にも三流の悪役が考えそうな事だ。
「妹を返してもらおうか・・・!」
私は彼の忠告を無視しそのまま歩み寄る。
「ならば!ルムガビースト!こいつをかみ殺せ!」
「グルルルゥゥーーー!!」
私の目の前に大きな犬型のロボットが姿を現す・・・。
「こいつはな・・・とある裏のルートから仕入れた奴だ!!お前ごときには倒せぬわ!!ワッハッハッハ!!」
「こいつごとき・・・なめられたものだな私も」
「なに?」
ドフォーレの言葉に私は嘲笑を浴びせる・・・目の前の現れた犬型のロボット。それは我がワイリー軍団で使われていたフレンダーを改造した物であった。
しかも見たところ大して性能も上がっていないように見える・・・この程度の物が裏ルートでしか入らないとは笑うしかない。
「おのれえ行けえ!焼き殺してしまえ!」
ルムガビーストの炎が私の体を包み込む。
「いやあぁぁぁーーーーー!!」
フィーネの絶叫があたりに響くわたる。
「ハハハッハ!!わしに逆らう者がどうなるか分かったか!!」
ドフォーレの嘲笑が響く・・・・。
「・・・正直この程度の温度で私を倒そうなど片腹痛いぞ・・・」
「なに・・・!!」
ルムガビーストは相変わらず火炎放射を行うがそのまま私は体を球状に変形させると回転しながら相手の火炎放射など構わずに口を目掛け体当たりをかます。
相手の体を突き抜け地面に降り立つ私の背でルムガビーストは爆発し四散する・・・・。
「な・・・なにぃ!!」
「さあ遊びは終わりだ・・・」
私は一歩、また一歩と間合いを詰めていく。
「寄るな!!これ以上近づけばこの娘の命はないぞ!!」
銃を取り出すドフォーレ・・・しかもそれは対ロボット用に貫通力を高めた銃弾がセットされているのが確認できる。
家庭用となんら変わらないフィーネに当たれば致命傷は避けられないだろう・・・そう当たれば。
「好きにするがいい・・・!」
私は一向に構う事無くドフォーレに歩み寄る。
「おのれえ!ならば小娘の無残な姿を見るがいい!!・・・・ヘッ?」
ドフォーレは後ろに振り返りロープにつるされたフィーネを狙おうとするが・・・そこに既にフィーネの姿は無い。
私がドフォーレと話をしている間にアストロマンが彼女を救出していたのである。
「アストロ!!彼女を安全な所へ!!」
「・・・はい!!」
そう言うとすぐにフィーネと一緒に異空間へと消え去るアストロマン。
「ななな・・・!!何者だ!!一体・・・貴様は!!」
「お前さんはいらん相手に喧嘩を売った。ただそれだけだ」
私はそう言うとそのまま彼の顔にパンチを一発(無論手加減した)を叩きこむ・・・私の鉄拳を受けた彼はそのまま意識を失った・・・。
気絶したドフォーレを引きずりながら外へ戻ると既にあれほど豪勢な造りだったアジトは瓦礫の山と化しており我々によって縛り上げられたギャング達が庭に並べられていた。
「この借用書とか言うの燃やしていい?」
「いいぞ、ヒートどんどんやっちゃえ!!」
ヒートマンの言葉におそらくアジトの酒を飲みながら、飲めない分を持ち帰ろうと集め始めているメタルマンが喝采にも似た声をあげる。
ヒートマンはそのまま手形の入った借用書を一枚一枚、丁寧に燃やし始める。
これによって彼らに苦しめられている者も救われるのだろうか。
「よーし!!すぐにずらかるぞ!ここに警察が向かっている様だぜ。て言うか俺が呼んだんだけど」
兄の言葉どおり遠くからはあの聞くのも嫌なパトカーのサイレン音が聞こえてくる。
しかも音からしてかなり数である。これだけの騒ぎを起こせば無理もないだろう・・・・。
「作戦成功!!撤収~撤収!!」
そのまま私達は夜の闇へと消えた。後に瓦礫の山を残して・・・・。
「ちいぃ!!遅かったか!!」
現場にジョージとヤマトマンが辿り着いた時には既にパンク達が去った後だった。
抜かりの無いジョージはロボットポリスにギャング達の身柄の確保を命じると縄で拘束されたドフォーレの元へと歩み寄る。
「ドン=ドフォーレ殿。貴方を銃器取り扱い違反、及び危険ロボット不許可所持の現行犯で逮捕する。ついでにこの前の誘拐事件についてもゆっくり聞かせてもらいますよ」
「・・・・くそっ!おのれぇ・・・・!」
ドフォーレは観念したかのようにがっくりと肩を落とす。
「今回も彼らにやられましたな」
「言うなヤマトマン・・・まあ今夜はあいつらに感謝だ」
そう言うとジョージは踵を返しロボットポリス達に命令を出し始める。
ヤマトマンはその光景を複雑な心境で見ていた。
(彼らが悪であるのは間違いない・・・その悪が我らが裁けなかった悪を裁くとは皮肉よな・・・)
ヤマトマンはそう自嘲気味に心の中で呟くと自らもロボットポリスを率い現場の調査へと赴いていった。
・・・・そして同時刻。
シャドーマンはアジトの跡地を見下ろせるビルの屋上に立ちながら全員の退却を確認し終えていた。
「・・・総員の退却を確認」
一言呟いたシャドーマンは後ろを振り返る。
「・・・そろそろ出てきたらどうでござるか?拙者からはそうそうと気配は消せぬでござるよ」
闇に向かい言い放つシャドーマンの前で闇が揺らめく。
そしてやや間があって・・・・・。
「ふむ、さすがはワイリー軍団の諜報活動を総括する立場にあるだけの事はありますね」
そう一言、声を出した闇は形をとり始め・・・黒衣のローブで全身を包み込んだ一体のロボットに姿を変える。
「お主・・・先ほどの我らの活動を見ていたとなると。ギャング共に雇われた者でござるか?それとも・・・」
「いえいえ、ただ面白そうだった・・・それでは理由にはなりませんか?・・・おおっと私の名前はファントムマン、以後お見知りおきを」
シャドーマンの質問に驚くような仕草で答え、自らの名前を名乗ったファントムマンは優雅に一礼をする。
「質問に答える気はないか・・・ならば!」
「お互い闇を・・・この状況を最大限に使えるもの同士。まともにやればただでは済みそうにないですね。ですがここは退きませんか?お互いに」
「ほう、面白い」
シャドーマンとしてはようやく姿を現した相手の正体はなんとしても突き止めたいところである。
おそらくパンクや一部の者が感じたと言う気配はこの者のであろう・・・。。
例のカブキマンの事件然り・・・近年続発するロボット暴走事件が発生する前後に黒い影を見たという目撃証言がシャドーマンの調査の結果、判明している。
これが単なる偶然であるはずが無い。おそらくは全ての事件にこのファントムマンが関わっているのだろう。
「一つだけ聞きたい・・・続発するロボット暴走事件はお主の仕業か?」
「はい・・・そうですよ」
シャドーマンは一瞬あっけにとられた・・・相手がまさかあっさりと認めるとは思わなかったのだから。
「・・・ふむ、こちらも質問に答えましたので一ついいですか?」
「なんでござるか?」
「貴方達にとって兄弟とは・・・こういう風に体を張ってでも守ろうとするほど大事なものですか?」
「・・・は?」
相手の意図がまったく分からないその質問にシャドーマンは目を白黒させた・・・。
「・・・・拙者はともかく。同じナンバーズ同士、仲間意識が出来ているのは確かであろうな」
「ふむ・・・どうやらそのようですね」
シャドーマンとしては先ほどの質問で完全に勢いがそがれた形になったが相手を逃がすつもりなど毛頭無い。
シャドーブレードを手に取ると相手との間合いをジリジリと詰めていく。
「やれやれ・・・・仕方ない」
ファントムマンもシャドーマンに呼応するように構える。
(こやつ・・・なかなかやりおるな)
シャドーマンは一切の殺気を感じぬ敵に違和感のような物を感じていた。
どんな者であれ気配を完全に消す事などできるはずが無い・・・。
まるで名前の通りの亡霊・・・・シャドーマンの頭の中にはそんな考えが浮かぶ。
「まずは・・・シャドーブレード!!」
「フッ・・・ダークマタークラッカー!!」
シャドーマンがシャドーブレードを放つと同時にファントムマンは右腕から闇色の鉱物らしき物体を放つ。
ガキンッ!
鉱物が砕ける音が辺りに響き渡る。
お互いの攻撃が相殺される形になりシャドーブレードも鉱物と一緒にきえさるが・・・砕けた鉱物はそのままシャドーマン目掛け勢いよく飛び散る。
「・・・・ッ!反射弾としての性能もあるのか!?」
無論そんな物は俊敏さではナンバーズの上位に入るシャドーマンに当たる事はなかったが予期せぬ攻撃を避けた為、体勢は大きく崩れる。
(しまった・・・)
シャドーマンは内心舌打ちしていた・・相手は自分とほぼ同等の実力を持つ。この隙を逃すはずは無い。
しかし・・・・。
ファントムマンは何もせずに体を中に浮かせると体の全身をゆがませ始める。
徐々にではあるがその体は闇に溶け始める・・・この場から脱出する気なのだろう。
「今日は戦いに来たのではありません・・ここらで退散するとしましょう」
「ぬぬぬ・・・」
恥辱に体を震わせるシャドーマンにファントムマンは意に介さずと言う風に言葉を続ける。
「いずれまたお会いしましょう。ではこれにて・・・・」
そう一礼するとファントムマンは完全に消え去り辺りには闇が残るばかりである。
「この借りは必ず・・・」
そう言うとシャドーマンもまた姿を消す。
眼下にはジョージにより連行されていくドフォーレファミリーの面々の姿が映し出されるのみである。
こうしてドフォーレファミリー壊滅の記事は次の日の新聞、ニュースで大きく取り上げられる事となる。