ロックマンキラーズ纏め編   作:グルルre

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vol.3 芸ってなんだ?

「エンカー殿達は3階の自由席ですな、フフフフ!拙者は中央先頭の指定席!高い金を払い手に入れたかいがあったというものです」

「俺達の安月給じゃあ!3人分の自由席で限界なんだよ!」

鼻を突き上げるテングマンの自慢話にエンカーが怒鳴り散らす。

一度は事件を起こしたものの社会に復帰し現在は世界ロボット連盟などの要人の警護などをしているヤマトマンはまだしも、ただでさえ安い給料のほとんどをワイリーの世界征服としての資金に回しているエンカーにはほとんど余裕が無いのである。

今回のだってヤマトマンに金を借りて何とかチケットを手に入れることができたのである。

そんな事を知ってか知らずか意気揚々と会場に入っていくテングマンを忌々しげに見る事しかエンカーはできなかった。

「まあ我らも会場に入るかエンカー殿?席は違えど見えるものは変わりますまい」

「ああ・・・そうだなクソッ!絶対にいつかあの鼻をへし折ってやる・・・!」

「お主らも気苦労が耐えんな・・・・」

怒りを隠そうとしないエンカーの後ろをヤマトマンがやれやれとした表情で共に会場に入っていった。

 

 

西暦20XX年

ロボットが人間社会に進出し、危険な場所での作業や精密な技術が必要な仕事は今やほとんどがロボットの独壇場である。

一部の職人と呼ばれた人間達は淘汰されそれがさらなる機械と人間の溝を形成していた。

 

 

しかし現在のロボットでは困難な事もある・・・・それが芸である。

ロボットには人間の様に歌に感情をこめて歌う事や演技をする事が難しいのである。

仮にできたとしてもそれはどこか作られたものの様なものであった。

無論ロボットに感情が無いわけではない、彼らにだって好みもあれば嫌な物もあるし馬鹿にされたら腹が立つだろう。

実際に演技用のロボットとしてロボット工学の父といわれるライト博士やワイリーなどが作ればあるいはそれも可能かもしれないが・・。

現在の一般化されているロボットの技術では難しい事なのである・・・。

いやむしろこれこそが人間にとって最後に残されたある種の聖域であるが如く。

 

 

3階からエンカーが眼下に見える舞台を覗くと黒子に扮したロボット、クロコボットが舞台の道具を忙しそうに運び始めていた。

さすがは歌舞伎の大舞台、次々と迫力の演技が展開され。

先ほどの怒りはどこへやらそれを生で見れたエンカーは少年の様に目を輝かせ見入っていた。

それに先ほど途中まで前列中央で座っていたテングマンだがどうやら席の列の番号が間違っていたのだろう。

警備ロボットに注意されみるみる後ろに下がらされ結局はエンカー達とあまり直線距離にして変わらない位置にまで下がらされる一幕があった。

「ハハハハ!!腹がいてぇ・・・!あいつ高い金まで払ってって!騙されてんじゃん!」

「1階という意味では負けているがあの場所ではここと大して変わらんな・・・・無駄金を払ってない分、ワシらの方が得だな」

エンカーは腹を抱えて大笑いしヤマトマンは勝ち誇った顔で笑みを浮かべる。

「ふむ・・・正に油断大敵でござるなエンカー殿」

「ブーーーーー!」

いきなりとなりから声をかけられエンカーは飲んでいたE缶を噴出しかけた。

「これはシャドーマン殿よく間に合ったな。てっきり欠席かと思っておったぞ」

ヤマトマンはあまり驚きもせず話しかけるが喉が詰まりそうになったエンカーはそれどころではない。

「フッ・・!これもワイリー博士から与えられた特別任務でな・・・」

「ゲホッ!ゲホッ!・・・て・・てめえいきなり話しかけるな!」

気配も感じさせぬままいつの間にか着物を着た忍者型のロボット・・・エンカーと同じワイリーナンバーズの一人シャドーマンが隣の席に座っていたのである。

「大体・・!任務とか言ってお前もこれを見たいだけだろうが!」

「これも特別任務でござるよ・・・・・」

シャドーマンは意に介さずと言った表情で受け答え・・・

「まあエンカー殿、シャドーマン殿、喧嘩は後にして今は歌舞伎を見る事に集中しよう」

「喧嘩なんかしてねえよ!

「これも任務でござる、それに拙者喧嘩なぞしておらぬ。」

ヤマトマンが仲裁に入るがエンカーはなおも声を張り上げるが・・・。

周りの客の冷たい目にエンカーは気づき・・・

「す・・・すいません・・・・」

急におとなしくなったエンカーは黙って席へと座った。

そして会場から大きな拍手が鳴りエンカーはハッとする。

ついにエンカーが憧れる、ある意味唯一のロボットが登場するのである。

 

 

大きな髪をひるがえし顔にはくまどりをペイントしたロボットが舞台に上がった。

ロボットの名前はカブキマン、エンカーが憧れ今、世間でも話題のロボットである。

彼の特徴はなんと言っても人間と同じように歌舞伎を演じる事ができるのである。

今までロボットには不可能とされて来た、芸の世界に乗り込んできたロボット。

エンカー自身歌舞伎や舞、歌などなんども自分でやろうと努力をしやってきた

踊りや歌を完璧にできても何か決定的な物が足りず人間が行うそれとは何かが違う・・・。

それを彼はやってのけるのだ自分と同じロボットである彼は。

だからこそ自分も希望が持てるいつか自分達も人間と同じように演じる事ができるのだと・・・。

待ち遠しかった時間はあっという間に過ぎいつしか歌舞伎の公演は終幕となっていたのである。

 

 

「いやはや!カブキマンのあの演技とても我らには真似できまい!」

「はいはい!すごかったのは認めるよ・・・」

テングマンの話に半ば辟易しながらも歩き続けるエンカー。

そしていつの間にかシャドーマンはいなくなっていた。

「まったくあいつ逃げやがったな・・・」

エンカーはいなくなってしまった仲間に恨みながらある店の前で立ち止まった。

「気を取り直して・・・さーて!今日はここで飲んで行こうぜ!」

「フム・・では参ろうか、テングマン殿、エンカー殿」

ヤマトマンは居酒屋の扉を開けた。

今時珍しい引き戸でガラガラガラッと粋な音を立てながら扉が開く。

その後エンカーは歌舞伎を見た興奮をそのままに一気に酒(ロボット用のアルコール入りオイル)を飲み始め。

飲んでいる途中で店を何件もハシゴしてやって来たメタルマンとストーンマンがやって来てそのまま大盛り上がりで夜は更けていった。

勢いに乗ったテングマンとメタルマンが飲み比べ勝負をし、あっさりとテングマンが轟沈しまたしても周りの笑いを誘う。

「こいつもよええなぁ~」

「この若造がぁ・・・!このナンバーズの底なし沼メタル様に勝とうなど百年はええよ~ん!」

やや呂律の回らなくなった口調でエンカーとメタルマンがとなりで爆睡するテングマンをこつく。

そこへ店に新たな客が入ってきた。

その客を見て一気にエンカーの酔いが醒めた。

それもそのはずあの憧れの歌舞伎ロボット、カブキマンが店に入ってきたのである。

 

 

カブキマンは店を見渡し、ヤマトマンを見つけると彼に声をかけた。

「ひさしぶりだなヤマト。俺の公演を見に来てくれたのか」

「フッ・・・お主の演技なかなかの物よ、人間に勝るとも劣らぬ演技ではないか」

いきなり現れた憧れの人物にただただ動揺するエンカーだったが意を決し話しかけた。

「俺はエンカーって言う名前です!カ・・カッ・・!カブキマンさん!さ・・・サインもらってもいいですか!?」

酒が入っていた事もあるがほとんど呂律の回らない言葉でサインをねだるエンカー。

快くサインに応じてもらい、エンカーは色紙にひとつ自分への宛名つきでサインをもらい大喜びで飛び跳ねていた。

聞けばカブキマンはヤマトマンと同じ製作者が作り出した、用途こそ違うが彼らはいわば兄弟のようなものなのであるそうなのだ。

公演中にヤマトマンを見つけたカブキマンは彼らがいる店を人づてに聞きだしやって来たと言うのだ。

「あんたの演技は正にロボットの演技とは思えないほどの凄さです!俺感動しました!」

エンカーは本人を目の前にべた褒めだったが

「いやいや、俺の演技など本物とは比べ物にはならんよ。日々精進!それが俺の日々の言葉よ。俺には目指さねばならん高みがあるそこにたどり着くまでにはまだまだかかりそうだがな」

カブキマンはまだまだ己は未熟と謙遜な態度をとっていた。

「だが人間ならまだしも俺と同じロボットに歌舞伎を見に来る奴がいるとはな・・・正直、ヤマトぐらいだと思ったぞ」

そんな折、エンカーとカブキマンの間に割って入る様に一つの影が床から伸びる。

「いやはや同じロボットとして実に誇らしいでござる・・・ついでに拙者にもサイン下され」

「だあぁぁぁぁーーー!だからシャドー!いきなり話しかけんな~!」

 

ガタガタガタ・・・・ドッシャン・・・!

 

いつの間にか話の輪に入っていたシャドーマンに驚いたエンカーは酔いもあってかそのまま椅子から転げ落ちてしまったのである。

「エンカー君とかいったな、その気があればいつか君も俺と同じ舞台に立てる日も来るかもしれんぞ」

「はぁ・・・恥ずかしい格好ですが機会があれば是非・・・」

逆さまになって転げ落ちたエンカーを見ながらカブキマンは笑みを浮かべながら言った。

もっとも自分が歌舞伎に出れるレベルにまで達しているとは到底思えないのだが。

(今度ワイリー博士に相談しよう・・・)

エンカーは酔った頭でぼんやりと考えていた・・・。

 

 

「ウラァァ!そこの赤いの俺にけんか売ってんのかぁ!?」

メタルマンがふらふらしながら工事用のカラーコーンに喧嘩をしようとしている。

真夜中になり明日も仕事があるからとヤマトマン、公演中であり準備で忙しいカブキマンも店から去り。

「拙者も任務故に御免!」

そう言ってその場から消え去るシャドーマン。

今残っているのは完全に酔っ払ったメタルマンとテングマンそれにエンカーとストーンマンである。

「ヒッヒヒ・・ヒック!拙者先に基地に帰っているでござるよ!」

「オイオイ!テング!お前ふらふらしてるのに大丈夫か?」

「心配無用!このテングマンの飛行能力を有すればあっという間ににに!ワハハハハッハッ!

ストーンマンの心配をよそに空を飛びあっという間にかなたへと消えていくテングマン・・・しかしその動きは上下に不自然なまでに揺れその上ジグザグに飛んでおり帰路で事故を起こさないことを祈るばかりである。

そして酒癖の悪いメタルマンはなぜか赤いコーンが自分と同じ赤いロボットに見えるらしく見かけるたびに喧嘩を売りはじめ、挙句の果てにはそのコーンを頭にかぶり眠り始めるという悪酔いぶりだった。

ようやく都市郊外にあるワイリー基地(仮)についたころにはもう日付も変わっていた。

「おつかれさん!ストーン、メタルの奴を部屋まで頼むわ」

「あいよ!エンカーさんも早く寝ろよ!」

エンカーはストーンマンと部屋の前で別れを告げストーンマンはそのままメタルマンを片手で持ち上げると奥の廊下へと歩いていった。

自室へと入ったエンカーは今日一日の疲れもあり部屋に入ると倒れる様にしてそのまま眠りについたのであった。

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