「押忍ッッ!!気を失って居たでありますっっ!!」
「ヒヒーーン!!」
瓦礫を押し退けダルセニョーと共に起き上がったパッショナーが真っ先に目にしたのは残骸と化したテュポンの姿であった。
「おや・・・これはこれは!!何時の間にか撃破されているとは流石はフォルテ殿にバラード殿!!感服する次第で・・・」
自身が気を失っている間に強敵が撃破された事もあって、フォルテらの強さに感心しパッショナーは一人で拍手をし始めるのだが。
「・・・おや?何か様子がおかしいでありますな」
単純な思考の持ち主ではあるが場に漂う不穏な空気と殺気にパッショナーはすぐさに異常を察知する。
見れば己から横に数メートル先の街が直線状に消し飛んでいる。
如何に嵐を起こす事が出来たとは言えここまで街へ被害をもたらす事をテュポンは勿論の事、仲間であるバラード達が行った事ではないと彼は即座に判断する。
どの様な状況でも即座に思考を切り替える事が出来る事が、パッショナーの一つの特徴である。
まあ弊害として物事を深く考えない単細胞に近い思考パターンとなってしまっているのだが。
「レント~!!何があったでありますか!?おや・・・そこの御仁は?」
その場に棒立ちの状態のレントを見つけるや一目散に駆け寄るパッショナー。
「パ・・・パッショナー。無事だったんですね」
ゆっくりと振り返った彼女の顔は恐怖で青ざめていた。
そんな彼女を守る様にキングが佇んでいたのだが、彼の方はパッショナーを見ると僅かに口元を緩める。
「成程・・・Dr.ワイリーは私をモデルに新しいナンバーズを生み出したと聞いていたが」
「お前はキングでありますね。ワイリー博士に生み出されながら博士を裏切った愚か者と記憶しているであります!!」
自身を値踏みする様に見るキングにその拳を構えるパッショナー。
彼らキングの後継機は反乱防止も兼ねて予めキングに対する予備知識(と言ってもワイリー側から見た偏った物ではあるが)を与えられて製作されている。
その為、自身のオリジナルに対する嫌悪感はかなり強いのだ。
「待ちたまえ・・・今、君と戦うつもりは毛頭無い」
パッショナーを手で制しながらキングはカースマンやハンジョー達に抱えられてくるバラードとゴスペルに振り返る。
「キングカ・・・本来デアレバ貴様ヲ逮捕シタイトコロダガ」
ジロリと単眼でカースマンがキングを睨み据える。
対してキングは身構える事はしなかったが僅かの間、カースマンとの間で緊張が走る。
ロボットでありながら自らの意思で反乱を起こしたキング。
ある意味でワイリー以上に連邦政府が身柄を確保したい存在だ。
人間上位の政策を掲げる連邦政府にとって彼の存在は許されざるモノなのだから。
「ダガ今ハソンナ事ヲ言ッテイル暇ハナイカ」
クルリとキングに背を向けカースマンは端末を手にする。
彼は端末を通じ住民の避難を続けるように要請を出していた。
仮に彼がキングの存在を報告すれば、連邦政府に属するロボットアーミーの大軍が送り込まれこの街が戦場と化すのは言うまでもない。
彼なりの配慮にキングは恭しく一礼をしていた。
「野郎・・・言うまでも無く強すぎるッス」
胸部に空いた蹴りの跡を見据え地面に腰を置いたバラードが呻く。
「まさか悪のロボット・・・自らが名乗るに暴君ソローかとんでもないロボットが降りて来たものだ」
地面に下ろされたバラードの胸部に掌を向けながらキングが苦笑を浮かべる。
「じっとしていたまえ・・・データ参照。ボディ・・・リビルディング」
ぶつぶつと専門用語を口にするキングが何をしようとしているのかバラードには分からなかったが、淡い光に包まれるとともに胸部の傷が塞がっていくのを見て驚く他無い。
「あくまでも応急処置だ。無理は禁物だ。後で基地に帰ったらちゃんと直した方が良い」
クルリと背を向け今度は完全に伸びているゴスペルの傷を修復していくキング。
「もしかしなくてもその力を応用する為に世界中のロボットのデータを奪ったんスね」
「恥ずかしながらそう言う事になる。データと必要な素材さえあれば無から有を生み出す・・・それが私が持つ力、ロイヤルリビルディングだ」
キング事件が起こる前後に世界中のロボット研究所や博物館においてロボットのデータや展示されていたロボットのレプリカボディが、大量に盗まれると言う事件が発生したのだが全てはキングのこの力を活用する為の手段だったのである。
突如として現れ急速に強大な軍隊を用意できた事にもある意味で納得と言えよう。
「尤もルーツを辿ればこの力も・・・彼らのそれと同質なのだろうな」
自嘲気味にキングは己の掌とぶつかり合うロボット達を交互に見つめる。
ドガアアァァァァァンッッ!!
巨大な拳が大地を抉り吹き飛ばされそうになるのを辛うじて堪えたフォルテがソローに迫る。
「おっ・・・と!!
自身の顔面に向け飛んでくる光弾をソローは大きく身をよじり回避する。
僅かにオーラを纏ったフォルテの放つ光弾を前にわざとボディで受け止める様な事をソローはもうしない。
未だに不完全だが先程の様に力に振り回される事無く、確実にその力を己の攻撃に乗せてくるフォルテに油断をすれば己の敗北に繋がる事を理解していたからだ。
バシュバシュバシュッッ!!
己の背後で放たれる無数のレーザーを視認している余裕は無い。
ヤマカンで背後に拳圧を飛ばしながらアースのスパークチェイサーを相殺しつつ、ソローは腰を大きく落とし巨大な右腕を前面に出す構えを取る。
「ガーッハッハッハッハッハ!!楽しいじゃねえかぁぁぁ!!」
ズンッッズンッッ!!
足元の瓦礫を粉砕しながら全身にエネルギーを纏ったソローがフォルテに体当たりを仕掛けてくる。
「ジェノサイダータックル!!」
攻撃としては単純明快な物であるがその巨体と身に纏うエネルギーも相まって強烈な一撃となる。
迫り来る小山の様な巨体を前にフォルテは真っ向から拳を構え立ち向かおうとするのだが。
グンッッ!!
不意に首根っこを掴まれフォルテの視界が暗転する。
次に視界が定まった時にはソローの巨大な背が見えた。
「何をしている?」
自身の首から手を離し舌打ちをするのはアースだ。
彼女は自身の首を掴んだ手を何度も払いその顔を大きく歪める。
「てめえ・・・何を」
今にも詰め寄りそうな勢いで口を開くフォルテに向けられるのはわざとらしいまでの溜息。
「真っ向から奴にぶつかるなど馬鹿か?まあ死にたいのなら好きにすれば良いが」
明らかに自らを見下している様子のアースにプライドの高いフォルテは額に青筋を浮かべる。
もしもソローと戦っていなければアースと事を構えていただろうが、振り返りざまに拳圧を飛ばされフォルテとアースは弾かれた様にその場を飛び退く。
「フン・・・仲間を助けるとは。らしくねえ事をするじゃねえか」
笑みを浮かべるソローにアースは小さく舌打ちをする。
「勝手にこいつがした事だっての!!」
他人に助けられた事に苛立ちを覚えフォルテがソローに向かって反論をする。
「こんな奴でもワイリー様が製作したロボットだ。そうでなければ誰が助けるものか」
フォルテを触った手を嫌そうな顔で見据えながらアースも言う。
スペースルーラーズを指揮するアースだが、彼女には一種の病的な欠点として極度の潔癖症と言う点が挙げられる。
最初からそうだったのかはフォルテも知らないが、数少ないワイリー軍団の女性ロボの中にあってその点は極めて残念と言えよう。
彼女以外にも綺麗好きだったり神経質なナンバーズは居るには居るが、戦闘時も含め他者との接触を極端に避ける人物と言うのはなかなか居ない。
ともあれ今のフォルテにとって彼女が援軍として駆け付けてくれたのは幸運であったと言えよう。
結果的に控えでキングが居るのもそうである。
まずにアース個人が以前の戦いからソローの力をある程度把握している事。
そしてもう一つは。
バチッッ!!
「パラライザー・・・」
アースより放たれた不可視の電磁波によってソローの巨体が僅かに硬直する。
通常のロボットであれば数秒間は無力化できるのだが、ソローに対しては文字通りの一瞬でしか効果は無い。
「クレッセントキック!!」
僅かに動きが止まった瞬間を狙い、フォルテの飛び蹴りがソローの顔面に強かに決まる。
続けざまに放たれるレーザーはソローの障壁を貫通し、そのボディを確実に傷つけていた。
詳細は不明としか言えないが彼女を始めとするスペースルーラーズの動力炉には未知のエネルギーが使用されている。
かつて超兵器ガンマを巡っての戦いで争奪戦となった超エネルギー元素にも似た物であるらしいが、生憎この手の話は極めて苦手なフォルテは殆ど記憶に留めていない。
ともあれこれらの物を動力炉に用いる彼女達は悪のエネルギーを源とするソローの障壁に対抗できるのである。
先程とは打って変わり劣勢な様子さえ見せるソロー。
「スパークチェイサー!!」
そんな彼に対し淡々と屈折するレーザーを放つアース。
肩口を貫かれ呻き声を上げていたソローであったが不意に目を見開く。
「しゃらくせえぇぇぇぇ!!」
シュンッッ!!
巨体に見合わぬ速度でアースの眼前に姿を現すソロー。
今の今まで隠していた素早さにフォルテも驚く他無い。
(な・・・あの野郎。あれだけの強さでまだ本気じゃねえのか?)
ヴンッッ!!
アース目掛けて振るわれた拳が空を切る。
瞬時に間合いを詰めたソローが拳を振り上げた時には、確かにそこに居た筈だったのだが彼女の姿は瞬時に消え去っていた。
距離にして僅かに数メートルと限定的ではあるが、アースには自身と触れた対象をワープさせる事が出来る能力を持つ。
振り返りざまに蹴りを入れるもそれも外れる。
逆に背にレーザーを撃ち込まれ危うく片膝を衝きそうになるのをソローは辛うじて堪える。
グルンッッ!!
ソローはまるで上半身をそのまま旋回させたかのような動きでアースが現れた先を向く。
アースも攻撃を行わず即座に消え去るのだが。
「いち・・・に・・・の」
ブツブツと数字を数えるソローにフォルテが怪訝な顔となる。
「・・・さんっっ!!」
ソローが全身よりエネルギーを放出したのとアースが姿を現したのは殆ど同時であった。
この際、無防備な状態で相手の攻撃に晒される事となるのは彼女の方だ。
「うあぁ!?」
小さな悲鳴を上げその場に浮き上がったアースを残忍な暴君が見逃す筈も無い。
先程の様に一瞬で距離を詰めたソローは宙に浮かぶアースへとその拳を容赦なく叩きつけた。
ドガアァァァァァ!!
あらぬ方向に体が曲がったように見えたのは気のせいか。
並のロボットであれば即死してもおかしくない一撃を受けアースは背後の瓦礫に突っ込んでしまう。
割れた瓦礫の隙間より溢れ出るのはどす黒いオイルだ。
「まずは一人・・・さあて続きと行こうか小僧」
ニヤリと笑みを浮かべるソローにフォルテの中で何かがこみ上げる。
「てめえぇぇぇぇ!!」
咆哮を上げるフォルテ。
だが先の様な暴走ではない。
それに言うのもあれだが別にアースに対し仲間意識などこれぽっちも抱いていない。
が同族嫌悪なのだろう。
他者に力を見せつけ悦に浸るこの男に純粋なまでの怒りが沸いた。
ガキィィィッッッ!!
真正面から両の腕を伸ばし互いの腕が絡み合う。
「俺様と力比べだと・・・笑わせ・・・るぅ!?」
己の膂力には絶大な自信を持つ筈であったのだが、目の前の少年に僅かに体を浮かばせられ言葉が途切れる。
「おらぁぁぁぁぁ!!」
そのまま強引に投げ飛ばされソローはこの戦いで初めて地面に腰を落とす事となる。
「なにぃぃぃ!!」
驚愕する間など無い。
すぐさにフォルテがバスターを向けていたのだから。
バシュウウウッッッ!!
放たれる巨大な光弾を前に舌打ちをしながら巨大な腕で払い除けるソロー。
真横に弾かれる光弾。
だがそれはUターンをするかの様に自身の下へと戻って来る。
「んだとぉぉぉ!!」
あらぬ動きをする漆黒の光にソローが絶叫を上げる。
眼前に迫る漆黒の光弾を掴み取ろうとするソローであったが、まるで馬鹿にするかのように光弾が掌からすり抜ける。
彼が血走った目で瓦礫の中から延びるアースの腕を睨み据えたのと、フォルテのスパークチェイサーのエネルギーを纏った一撃が胸部を貫いたのは殆ど同時であった。
「てめえらあぁぁぁぁぁぁ如きぃぃぃっっ!!」
ぽっかりと胴体に大穴を開けたソローは愕然とした表情のままその場に倒れ伏していた。
「へっ・・・ざまあみろ」
倒れ伏した暴君に中指を立てながらその場に腰を落とすフォルテ。
戦闘と言う極限の状態から解放された事もあって、緊張の糸が解れてしまったのだろう。
再び暴走してしまうと言う醜態は晒してしまったが、今まで制御が出来なかった悪のエネルギーを由来とするこの力を少しだけではあるが己の制御下に置けた事は間違いない。
「やっとだ・・・この力を多少なりとも操れるようになった。今度は嘘とは言わせねえ」
打倒ロックマンに向けて確かな手応えを感じた少年は満足げな顔を浮かべていた。
「フォルテ殿ぉぉぉ!!」
そんな自身に全速力で駆け寄るのはパッショナーだ。
ガッッ!!
「自分、感動したであります!!打倒ロックマンに向けてよくは分かりませぬが奥の手を隠し持っていたとは!!」
両肩を掴みガクガクと問答無用で揺らしてくるパッショナーにフォルテの意識が何度か飛びそうになる。
「うるせえ・・・反動で体が動かねえんだよ」
テュポンだけでも相当だと言うのにソローと言う強敵と続けざまに戦ったばかりか、悪のエネルギーを解放した事でフォルテの消耗は著しい。
暫くは傷の修復に時間が掛かる事をぼんやりと考えた時だった。
「フォルテ・・・あんまり無理するなッスよ」
自身に歩み寄り笑みを浮かべるバラード。
キングによる応急処置もあってか一見するとフォルテよりもバラードの方が大丈夫なように見える。
「無理を恐れて戦えるかってんだ。あいつに蹴られただけで動けなくなった奴に言われたくねえよ」
「まあそれを言われちゃ何も言えねえッスけど。いや・・・でもあれはお前を」
「誰も助けてくれなんて言ってねえよ」
悪態をつくフォルテにバラードが大きく溜息を吐く。
その態度を馬鹿にされたと感じたのかフォルテが額に青筋を浮かべる。
何時まで経っても変わらない出来の悪い弟に兄であるバラードが再び溜息を吐く。
「て・・・敵の方は!!」
基地内の電力の復旧に手間取った事もあり遅れて現場に駆け付けるのはニードルマン以下の面々だ。
「お前ら・・・遅えよ!!」
「万が一の事を考え基地のデータのバックアップを取っていたんだが予想よりも時間が掛かってな」
今更のように駆け付けた支部基地の面々にフォルテが声を上げる。
ついでとばかりにフォルテは宙に浮かぶクラウドマンと先程から固まってるレントにも指を差す。
「バラードと伸びてたパッショナーはともかくお前ら二人もな!!」
「フン・・・お前が勝てない相手に僕が勝てる訳ないだろ」
フォルテの糾弾にクラウドマンは開き直ったかのように言葉を返す。
実際、彼はテュポンとの戦いの際もそうだが殆ど戦闘経過の観測に回ってしまっている。
このデータは後々に活かされる事を祈るばかりである。
ともあれ一応のやる事はやっているクラウドマンとは違い、一度は援護に回ったもののソローに睨み据えられた後は本当に縮こまってしまったレントの方はフォルテの非難にビクリと身を震わせ俯いたままだ。
「キングの後継機が聞いて呆れるぜ。・・・て言うかキングの野郎は!?」
吐き捨てる様に言い放たれる言葉にレントがぎゅっと目を閉じるのだが、フォルテの注意は別の方向へと向く。
「そういえばッス・・・あれ?」
思い出した様に振り返ったバラードだがそこにロボットの王の姿は既に無い。
端末を手に仲間達に連絡を入れていたカースマンに視線が集まるも、表情に乏しい彼からは何も読み取れない。
「兎にも角にも事件はこれにて解決ッス。レントもフォルテの言った事をいちいち気にしちゃ駄目ッスよ」
茫然とその場に佇むレントにバラードがフォローを入れた時であった。
瓦礫の中からアースがゆっくりとした動作で起き上がる。
宇宙に居る筈の彼女がその場に居た事にニードルマンが驚くも、それに対し特に質問する事は無かったのだが険しい表情のままのアースに彼は僅かに目を見開いた。
彼女はグルリと周囲を見渡すと倒れ伏したままのソローを睨み据える。
「っっ・・・バラード。それにお前達もだ。すぐにこいつのボディを原型を残さずに破壊しろ」
折れ曲がった足を引きずったアースが、その場にいるバラード達に声を上げる。
あのフォルテですらアースが何を言っているのかすぐに理解は出来なかった。
「跡形も無くってちょっと酷すぎじゃねえッスか?」
彼女らとソローの間に何があったのかは知らないが、彼女の言う事は憎い相手にするにしてもあまりにも過剰だとしか言いようがない。
苦虫を噛み潰したようにアースが理由を説明しようとした時。
ドガッッ!!
反射的に動いたのはレントであった。
彼女はアースを抱える様に押し倒すやビームバリアーを展開していた。
そのビームによる障壁がグニャリと曲がるのを間近で見据え、恐怖から再び目を閉じるのだが幸いそれ以上障壁が破壊される事は無かった。
驚く間もなく一同が見たのは倒れ伏したはずの暴君が上体を起こした姿。
ニヤリと殊更残忍な笑みを浮かべ彼はわざとらしくゆっくりと起き上がっていた。
「寝起きの一発はあんまり力でねえな・・・だがよく動けたな小娘」
今のソローは胸部に大穴が空いており、本来であればロボットが持つ動力炉を失っている筈なのである。
普通に考えて動ける事など出来る筈が無い。
出来る筈が無いのだがソローは己の胸に開いた穴からその先の景色を眺め大きく息を吐くのであった。
「まさかぁ・・・ここまでやられるとはな。予想外も予想外だったぜ」
己が破れたと言うのに屈託なく笑う暴君に誰もが言葉を失う。
「ま、普通に考えれば死んだと思うよな。俺様もそう思うんだが・・・生憎死なねえのよ。そこの小娘はその辺の事をようく理解してやがる」
アースを指差しながら笑う傍でソローの胸部の傷が徐々に塞がっていく。
「力の根源がある限り、俺様は無敵だ。俺様を倒したかったらサンゴッドかデューオを呼ぶんだな」
「ぐっ・・・ちくしょう」
巨大な右腕を握り締めほくそ笑むソローにフォルテが歯噛みする。
ブォォォンッッ!!
無造作に振るわれた剛腕が衝撃波となりバラード達を問答無用で吹き飛ばす。
「ニードルキャノン!!」
「スパークショット!!」
「ハッ・・・効かねえな!!」
ニードルマンとスパークマンがそれぞれ針状の機関銃と電撃弾を放つがそれらは悉く障壁で防がれる。
「ガトリングジャブッッ!!」
無数の拳の連打に割って入るのは同じく巨体を誇るジャンクマン。
「ジャンクシールド!!」
周囲の瓦礫を集め障壁を生み出したジャンクマンだったが、それでもソローの拳圧を相殺しきれず半ば己の身で受け止める事となる。
側面よりウェーブマンの放つウォータウェーブを受けるもその身は僅かにしか動かず、ジェイロマンのジャイロアタックも同上で全く以って効果が無い。
「おぉぉぉフレイムソード!!」
ガキンッッ!!
ソードマンの振り下ろす燃え盛る刀身を巨大な拳で受け止めるソロー。
「その剣・・・俺様の障壁を突破するか」
博物館よりワイリーが強奪した古代文明の大剣はソローの障壁を易々と突破していた。
振り払うように振るわれる拳を逆に受け止め距離を取るソードマン。
「雑魚共が雁首揃えても無駄と言いたいが・・・ちと骨が折れるなぁ」
己の周囲をワイリーナンバーズを囲まれたソローは冷静に己の不利を悟っていた。
殆どの者達は己に傷を付ける事すら難しいがフォルテやアースは勿論の事、何の変哲が無さそうなソードマンの剣を始めある程度の対抗策を持つ者が何人か居る。
流石の彼も複数を同時に相手取れば、個々への注意が散漫になり不覚を取ってしまう事は認めざる得ない。
更にである。
バラードの真横で突然空間が歪む。
「おわわわ・・・!!」
驚くバラードの隣で顔を出すのはプルートとウラノスである。
二人に続いてマーキュリー、ビーナス、ジュピター、サターンと続く。
恐らくサターンの能力を使い宇宙から直接ワープして来たのであろう。
自身らに有効打を与える事が可能な者達がアースに続いて現れた事にソローは大きく舌打ちをする。
そんな彼の顔が最後に姿を現した人物の姿を見るや凍り付く。
「てめえ・・・」
正しく突然の出現にさしものソローも僅かばかり思考が止まる。
「ソロー・・・貴様を倒しに来たぞ。宇宙の平和の為に貴様を討つ!!」
巨大な左腕を握り締め宇宙の守護者デューオが言い放つ。
「ガハハハ!!デューオ・・・デューオじゃねえか!!」
驚いたのも一瞬、ソローの顔が歓喜に染まる。
「久しぶりだな!!なんか姿は変わったがすぐに分かったぞ。折角ここで会ったんだ再会を祝して~今から茶でも飲むか?あ?」
今にも駆け寄り肩などを叩きそうな勢いではあるが、どこかふざけている様な態度のソローにデューオは無言だ。
「あ~お前は昔っからそうだよな。こっちが折角言ってるのに本当にノリが悪いんだよ・・・だから人付き合いが出来ねえんだ」
両の手を広げながら肩を揺らすソローにデューオが静かに間合いを詰める。
「こりゃ・・・拙いな。遊び過ぎたか」
油断ならぬと思っていた敵に宿敵まで加わった事で状況は明らかに単独のソローの不利と言えよう。
明後日の方向を見ながら口笛を吹き始めるソロー。
彼は何食わぬ顔で後ずさるも当然、それを見逃す面々ではない。
「おおい・・・ヴォイドに皆~。助けてくれねえ?」
周囲に目を向けながら仲間の存在を口にした時であった。
ヴォォォンッッ!!
不意に今の今まで気配を感知させずに舞い降りたのは黒衣を纏った一人のロボット。
「・・・!!」
バチンッッ!!
黒衣に全身を隠したロボットは手に何かを持ちそれを振るった様にしか見えなかった。
先程ソードマンの大剣を受け止めたのと同様に相手が放った光の刃を剛腕で受け止めるデューオ。
「光・・・ビームの刃だと?」
ニードルマンが刺客が手にする武器に小さく呻く。
あのロックマンのロックバスターを始めとして昨今ビームを用いた兵器は当たり前となりつつある。
だがビームを一つの形、目の前のロボットが手にする様に刃などの様に形に留める技術は現代において未だ確立されていない。
政府軍は勿論の事、彼らの生みの親Dr.ワイリーすらも採用には至っていない新兵器を有する敵の存在に彼らの隠し持つ技術力の高さが垣間見えよう。
「・・・・・・」
光の刃・・・ビームセーバーを手にしたロボットは刃を弾きデューオとの間合いを取る。
「ヴォイド・・・ありがとよ」
「・・・遊び過ぎだ」
ソローに対しヴォイドと呼ばれたロボットは素っ気なく言い放つ。
どうやら彼はあまり会話が得意ではないようだ。
漆黒のアーマーと武者や騎士を思わせるメットを身に着けた彼の顔は仮面に覆われ、何より半ば虚空を見据えた瞳からは感情が一切窺えない。
「双幻夢・・・!!」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ!!
ヴォイドの全身が大きくぶれるや無数のヴォイドの姿が周囲に現れ逆にデューオ達を取り囲む。
「・・・アルゴス」
「任せておけ・・・」
無機質な声で更に姿を隠していた仲間の名を呼ぶヴォイド。
彼の呼びかけにソロー以上の巨体が倒壊したビルに降り立つ。
「滅せよ!!」
身に纏ったローブがはち切れんばかりの巨体を持つアルゴスは全身より無数の目玉を生じさせるやそれらが次々とビームを放つ。
突然自身らを襲うビームに対し面々は慌てて散り散りになって逃げ惑う他無い。
「退くぞ・・・」
「ガーッハッハッハッハ!!じゃあなまた会おうぜデューオ!!」
ヴォイドの言葉にソローが笑いながら宙に浮かび上がる。
「逃がさんっっ!!」
アルゴスの放つ攻撃は未だに続いており、その中でデューオだけが同じ様に空へと舞い上がるのだが。
バサッッッ!!
追撃せんとするデューオの行く手を身を覆うマントを漆黒の翼へと変形させたヴォイドがビームセーバーを手にし遮る。
ガキィィンッッ!!
振り下ろされた一撃を軽く弾きそのまま勢いをつけて宿敵を追わんとするデューオ。
体格差もあり大きくその身を吹き飛ばされるヴォイドだが、その彼も即座に空中で体勢を立て直す。
「ガーッハッハッハッハッハ!!持つべき者は友達だってなぁぁぁぁ!!」
漆黒の光にその身を変えその場より飛び去ろうとするソロー。
ボアアァァァァァァ!!
それを追わんとするデューオであったが、そんな彼の眼前で突然が眩い光と猛烈な熱が集まり始める。
「ぬ・・・これは!!」
周囲に放たれる熱線を反射的に防御したデューオは光の中で形成される存在に呻く。
それはアースを含めたルーラーズも同じであり。
「馬鹿な・・・あれは!?」
驚愕するジュピターは太陽の如き熱量を発しながらその腕をデューオに伸ばす存在を確かに見た。
「ワガナハ・・・アポロゴースト。ワガマエニハ・・・ハカイアルノミ!!」
自らを亡霊と名乗った存在はデューオを軽々と地面へと叩きつける。
「・・・ソローの離脱を確認した。続いて我々も退くぞ」
「・・・ワカッタ」
「・・・了解した」
既にソローの姿は見えなくなっており、ヴォイドの言葉に続いてアポロゴーストとアルゴスもその場より一瞬で消え去る。
「また会おう。ワイリー軍団の者達よ」
僅かに口元に笑みを浮かべヴォイドも簡易転送装置を使ったのかその場より姿を掻き消す。
一瞬の内に現れ己らを手玉に取った正体不明の敵に一同は愕然とする他無い。
「ぬぅ・・・待て!!逃がさんぞ!!」
既に相手を見失ってしまったが追跡を諦めぬデューオはそのままソロー同様に空の彼方に消え去ってしまう。
後に残されるのはバラード達を始めとする面々だ。
「ええと・・・」
困惑気な顔で廃墟と化した街を見渡すバラード。
「退かせた・・・いや退いてくれたと言うのが正解か」
「・・・ちくしょう」
声を絞り出すニードルマンに言われるまでも無い。
ソローだけでなく彼の匹敵する者達を何人も隠し持っていた相手が本気になれば、全滅していたのは自身らの方であっただろう。
その事を自覚するあまりフォルテは声を震わせていた。
騒ぎが収まり次第にロボットポリスや政府軍などが集まり出す中、混乱に乗じる形で面々はその場を後にするほか無かった。