ロックマンキラーズ纏め編   作:グルルre

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vol1 招かれざる客

「お嬢さん・・・動くんじゃねえぞ」

スナイパージョーを数人引き連れたメタルマンが開かれた扉の向こうに居た女性に警告を発する。

 

ジジジジジジッッ!!

 

メタルマンらが現れたと言うのに尚も電子扉の操作盤に工具を突き付けるのは、分厚い眼鏡をした白衣姿の女性である。

火花が散る操作盤を見据えメタルマンの顔が険しくなる。

「あのな・・・これ以上うちの設備を壊さないでくれるか」

呆れながら話すメタルマンの言葉に漸く女性の方が気づいたのか操作盤より工具を外す。

 

シュンッッ!!

 

恐らくは半ばロックが外れかかっていたのだろう。

メタルマンが開けたのとは逆に勢いよく閉まる電子扉。

「イテテテテテッッ!!」

後ろに居たスナイパージョーの一人が足を挟まれ悶絶したのはさておきである。

ワイリー基地のカモフラージュされた入り口をあっさりと見つけたばかりか、工具を使い強引に電子扉を開けて中に入って来た女性にスナイパージョー達が無言で銃口を向ける。

メタルマンを始め戦闘用ロボット数人に取り囲まれれば絶体絶命と考えるだろうが、こんな所に押し入ろうとするのだから普通の反応を示す筈も無く。

「貴方、メタルマンね。ワイリーナンバーズの記念すべき第一号機!!こうして見るのは初めてだわ」

分厚い眼鏡を指で押し上げ足取り軽く近寄って来る女性。

その手に工具が握られていた事もあり、メタルマンは反射的にメタルブレードをその首筋に押し当てていた。

「あのな・・・俺は動くなって言ったからな」

「あら?ごめんなさいね。動いているロボットを見たらつい興奮して」

ギロリと睨み据えるメタルマンだったが女性の方はそう言って笑うだけであった。

何とも言えない不気味さを感じながらメタルマンは指でついて来る様に女性を促すのだが。

「この楯・・・意外に軽いのね。何かコーティングでもしているのかしら?」

ワイリーの下に連行する間、女性がスナイパージョーが持って居た筈の楯を手にしていたのでメタルマンは思わず声を上げそうになる。

その隣で青い顔となるのは関節ごと分解されて楯を取り上げられてしまったスナイパージョーの一人だ。

「あわわわわわ・・・」

工具を用いた目にも止まらぬ速さで腕の関節を切り離されたスナイパージョーが情けない声を上げる。

所謂ワイリー軍団において戦闘要員として多数配備されているスナイパージョーだが、かの有名なブルースを簡易量産化したロボットでありその戦闘力は決して低くない。

現在政府軍で正式採用されている戦闘用ロボットに比べ数こそ少ないが性能は上であり、仮に生身の人間が重火器などを用いても簡単に勝てる様な存在ではない。

と言うのが一般的な常識なのだが。

「はい・・・ありがとう」

外れた腕ごと楯を返され茫然となるスナイパージョー。

「次はバスターの構造を・・・」

「「や・・・やめてください!!」」

ぼそりと呟く女性にスナイパージョーが隊列を乱しかける。

ワイリー軍団が誇る戦闘用ロボット達が女性の早業にすっかり及び腰だ。

(このお嬢さん・・・博士の身内とか言ったが誰なんだ?)

恐れをなして涙目となるジョー達はさておき。

油断無くその目を光らせるメタルマン。

「さて・・・この部屋に博士が」

と言いかけたメタルマンだが額の刃が僅かに緩んでいる事に気づき、即座に指で押さえる。

 

パシッッ!!

 

ついでに反射的に腕を動かし女性の工具の先を弾くのだが、一瞬遅ければ指の一本でも外されていたとメタルマンは判断した。

女性の口から小さく舌打ちの声が響いた様な気がしたが聞き間違いではないだろう。

「・・・自分の武器に二回刺さると行動不能になるって話を聞いたのだけれども」

「へえ・・・懐かしい話じゃねえか」

油断していたつもりは無かったのだが、それ以上の動きを見せる女性にメタルマンは苛立ちを募らせ女性を部屋に通す。

それを見てスナイパージョー達が安堵の息を吐くのを見るにメタルマンは何だか情けない気持ちで一杯になるのであった。

 

 

「どうもお元気そうで何よりでございますわ。近頃の季節は・・・」

「世辞は良い・・・で何の用じゃ?」

基地内の一室に入って来た女性に主であるワイリーはズルズルとカップ麺をすすりながら無愛想に呟く。

突然の訪問ではあるがどう見ても歓迎している様子が無いワイリーと女性の間に沈黙が流れる。

と言っても険悪な空気ではない。

互いにその腹を探っていると言うべきか。

「・・・フンッ。ヴァイスか・・・あの愚弟はお主の親は元気にしとるか?」

「ええ・・・おかげさまで。今日もどこかで食べ歩いてますわよ」

ワイリーが口にした名前にメタルマンが眉を動かす。

「ヴァイスって言いますと例の博士の弟ですかい?」

メタルマンの問いにワイリーがカップ麺の汁を飲み干しながら頷く。

「こやつはその弟の娘・・・言ってしまえばワシの姪じゃよ。昔のワシと同じローバート大学に通っていると聞いてはいたが」

眉をピクリピクリと動かしながらワイリーは女性を割り箸で差す。

「まさかそっちの方に進むとはな・・・で話は戻すが何の用じゃ。お主が身内でなければ痛い目に遭わせて追い返していた所じゃぞ」

「実は私、大学の休みを貰いまして。この期間に是非とも伯父様からロボット工学を学びたくここを訪れました」

「ワシなんかよりもライトの所へ行けば良かろう・・・ワシは他人に物を教えるのは苦手じゃ」

ワイリーは鼻を鳴らしながら自身の下で学びたいと志願する姪に迷惑そうな態度を見せる。

(確かに博士が他人に何かを教えるのは想像も出来ねえな)

生みの親自らが口にした事ではあるが妙に納得してしまうメタルマン。

ライバルであるライト博士と違いあまりにも独自性と自らの我が強すぎるワイリーが、効率良く他人に何かを教える姿は正直想像が出来ない。

ワイリーの言葉通り何か教えを乞うのであればライト博士の方が適任であろう。

知らず知らずの内に頷いてしまっていたメタルマンにワイリーが横目で睨み据えて来た事もあって、メタルマンは慌ててその目を逸らしていた。

「あら?ライト博士のヌルすぎるロボット工学なんて大学でいくらでも学べますもの。せっかくの休みなのだから普段学べない事を学ばないと・・・」

分厚い眼鏡を光らせ不敵に笑う女性。

他者を寄せ付けぬ独特の空気を醸し出す姪にワイリーはまたしても眉を動かす。

「まあ・・・好きにするが良い。ただしうちのナンバーズは気が荒い奴もおるからの。下らぬ三原則なんぞには縛られておらぬから、下手な事をして酷い目にあっても知らんからな」

「それは覚悟の上ですわ。私も私で三原則に縛られないロボットがどう言う事を考えて動くのか興味ありますので」

優雅に礼をする姪を視界に捉えつつワイリーは端末に目を向ける。

「ともあれじゃ。今はそれどころではなくてな・・・お主の泊まる場所などは後で手配しようかの」

端末に表示されるのはこの場所に近づきつつあるエアガッパーの位置だ。

「博士・・・もう間もなくエアガッパー到着します」

敬礼をしながらエアーマンがワイリーにその事を告げる。

大きく頷いたワイリーが椅子から立ち上がりエアーマンと共に出て行った事もあり、一室にはメタルマンと女性が残される事となる。

「ところで・・・だ」

「・・・何かしら?」

メタルマンに振り返り首を傾げる女性。

「アンタの名前を聞いていなかったんだが・・・なんて名前だ?」

彼の問いに女性は満面の笑みを浮かべていた。

「エストよ。エスト=W=ワイリー・・・宜しくね」

一見すれば魅力的な笑みと共に自らの名前を名乗るエストであったが、メタルマンはその笑みから背中で何かが走るのを感じていた。

思い返すにそれが何であるかメタルマンは即座に察していた。

『これは博士がロクでもない事を考えた時と同じ笑みだ』だと。

 

 

 

「予定時刻より数分早く到着しましたぞ!!」

テングマンが指揮する機動戦艦エアガッパーが隠しドックに到着するなり、基地内の慌ただしさは最高潮となる。

「・・・で詳細は?」

「それはここに」

詰め寄る様に近寄るワイリーにデータチップを差し出すテングマン。

ワイリーはデータチップの中身を端末を用い確認をする。

時折ピクリピクリと眉を動かす間にジョー達がエアガッパーの格納庫から担架で傷ついたロボット達を運び出す。

「フォルテ、バラードの修理は予定通りに行え。軽傷のレントとパッショナーも同上じゃ」

「・・・ジジイ」

担架の上で呻くフォルテにワイリーはフンと鼻を鳴らす。

「例のエネルギーを再び使ったか・・・ともあれ今は黙っておれ」

若干棘が残る言葉を向けられフォルテは反論をしようとするが、半ば意識が朦朧としている事もありジョー達が持つ担架にそのまま運ばれていく。

南米のゼーネルシティにおいての戦いで受けたワイリー軍団の損失は甚大だ。

ワイリーからすれば街の被害はどうでも良いが、スペシャルワイリーナンバーズに名を連ねるバラード及びフォルテが重傷を負ったのは極めて想定外と言えよう。

程無くして次なる世界征服計画を行おうとしている時期と言う事もあり、今は一人でも使える戦力は確保しておきたい。

その事もありワイリーはキングの後継機の運用テストを一旦切り上げて傷ついたナンバーズの修理を優先しようとしていた。

「自分らがいながら・・・申し訳ないであります」

「す・・・すいません」

パッショナーとレントがワイリーに向かって頭を下げる。

主にテュポンとの戦いで損傷を受けた二人だが、幸いにして軽傷で済んでおり動いている所を見ると短時間の修理で終わりそうである。

次なる計画の主力と位置付けている二人が破壊されなかったのは、戦った相手があのソローと言う事もあると運が良かったと言えよう。

そんな彼らに軽く声を掛けつつワイリーは鋭い目で最後に格納庫から降ろされる人物に目を向ける。

緊張気味な動きで担架ではなく医療用のカプセルを押すのはウラノスだ。

彼の後ろに部下のルーラーズ達が続く。

運ばれてくるカプセルの中で昏々と眠り続けるのは彼らの隊長であるアースだ。

悪のエネルギーを解放したフォルテすらもあしらうソローとの戦いに駆け付けたアースであったが、圧倒的な実力を誇るソローとの戦いで重傷を負いこの基地に運ばれてきている。

傷の度合いで言えば彼女もフォルテやバラードと同じレベルと言えるのであるが。

アースを含めた宇宙ロボであるルーラーズはメンテナンス面での事情がやや複雑だ。

何せ現在の地球の物よりも数段上の文明の副産物であり、そもそも適合するパーツがあるのかさえ分からない。

ワイリー自身も彼らの体の構造を地球上において誰よりも理解している自負はあるが、本当にそれで正解なのかは正直分かっていないのだ。

そんな事もあってアースの方はワイリーの指示で医療用カプセルに押し込む形で本人に負担の無い形で運ぶ事となる。

「アースの修理はワシ一人でやる。他の者達はマニュアル通りに動け、分からない事があればすぐにワシに言うのだぞ」

軍団内の技術班に所属するジョー達にそう指示を出しつつ、ワイリーは眠り続けるアースに目を向けていた。

 

 

「何があったのだ?」

ツインテールの少女と外出から帰って来たパンクが慌ただしくなった基地内を見てヒートマンに尋ねる。

「キャハハハハ。南米で悪のロボットと戦ったフォルテとバラード達が大怪我したんでワイリー博士が帰って来たんだよ」

「フォルテとバラードが・・・?」

ヒートマンの言葉にパンクが眉を吊り上げる。

軍団内の問題児とは言えその実力は折り紙付きなだけにフォルテらが重傷を負ったのが信じられない。

そんな顔を浮かべたパンクを心配そうな顔でフィーネが見上げる。

「それにルーラーズのアースもだって。ホラ・・・」

ヒートマンが指差す先でルーラーズの面々が落ち着きなく佇んでいた。

特に目立つのはルーラーズでもかなりの巨体を誇るウラノスだろう。

彼の顔を見るまでも無く事態の深刻さが垣間見える。

 

・・・ダンッッ!!

 

電子扉を開けて勢いよくメンテナンス室より出て来るのはワイリーその人。

ピクリピクリと眉を動かした彼は基地内の自室に入っていく。

普段から資料や機材が散らかり放題であり開かずの間と化している場所だけに、何やら物がひっくり返される音が響き渡る。

暫くして出て来たワイリーが手にするのは普段使っている端末とは別の端末だ。

「あの時、繋いだ配線は間違いだったか。いやそうであるなら動力炉のエネルギー効率は・・・」

ブツブツと自身の考えを口にしながら端末の画面を指で払うワイリー。

若干血走った目で画面を見るワイリーにアースの事が心配なルーラーズすらも声を掛けれずにいた時であった。

「伯父様・・・ナンバーズの皆の修理作業は順調かしら?」

そんなワイリーに若干空気を読まずに話しかけるのは与えられた一室に荷物を置いて出て来たエストだ。

神経を逆撫でする様な質問にジロリと睨み据えられるエストだが、彼女の方はキョトンと首を傾げる始末だ。

「・・・丁度良い。お主の腕を確認する良い機会じゃ!!ちょっと一緒に来い!!」

端末を閉じ半ば強引にエストの腕を引っ張るとワイリーはメンテナンス室に連れていく。

途中で何度かワイリーが声を出していたが何をしているのか問う事など誰も出来る筈が無い。

エストが作業服姿のまま疲れた顔で出て来た時には数時間が経過していた。

因みにパンクと一緒に居たフィーネはとっくの昔に眠りについていた。

「ねえねえ・・・彼女ってなんで動いてるの?」

一人のスナイパージョーに出されたコーヒーで一息ついたエストが状況を聞こうとしたジュピター達に逆に問う。

「なんで・・・と言われてもな」

そう答えるジュピターの顔は歪んでいた。

「だって配線の類も普通のロボットと全然違うし、あれって貴方達の文明で言う所のコンピューターの基盤なの?私には美術館にある様なコインや石板の欠片にしか見えなかったんだけど」

エストが修理中に見たアースの内部機構について話し出す。

先にも言ったがスペースルーラーズを生み出した文明の技術力は地球のそれを超えており、ルーラーズ自体が動くオーパーツその物と言っても過言ではない。

それを地球産の部品で代用しつつも運用しているワイリーがおかしいレベルなのだが、エストには作業中にワイリーが何をしているのか殆ど分からないと言った状態であった。

「伯父様もかなり苦戦していたし。こんな事を言うのもあれだけど同じ文明から生み出された貴方達が何とかしたらいいんじゃないかしら?」

自分達でアースの修理作業をすれば良いのではと言う尤もな指摘にルーラーズの顔色が変わった。

流石の彼女もその変化を前に思わず瞬きをしていた。

「・・・出来ないのだ。我々も我々自身が如何なる原理で動いているのか正直分からんのだ」

絞り出すような声でジュピターが呻く。

その言葉にパンクは無言で目を閉じる。

黙り込むルーラーズの面々に代わって口を開くのはメタルマンだ。

「こいつらには何かを造るって言う概念が元々無かったんだ」

それは圧倒的な性能を持っているが故に彼らの創造主が持たせた枷なのだろう。

曰く彼らにとって必要な物資は後方より送り届けられてくる物であった。

曰く彼らにとって何かを造るのは専らそれ専用の製造マシーンの仕事であった。

曰く彼らにとって損傷を受け動けなくなった仲間は足手纏いに過ぎず、状況次第ではその場で破壊処理をする対象であった。

ともあれ異星人がルーラーズとその同型機達を支配する為に、彼らに物を創造する概念を与えなかったのは極めて合理的な考えと言えよう。

自身らに対し彼らが反逆を起こさないのは勿論の事、敵に鹵獲され自身らの兵器を利用されない為と言う対策もあったらしい。

だが巡り巡ってその対策は今も悪い意味で有効に働き、ワイリーを苦しめる事になるのだから笑えない。

「マースなどが良い例だがこの星に来てからモノ作りにハマった奴もいるくらいだしな」

ルーラーズで随一の火力を誇るマースを引き合いにメタルマンが苦笑を浮かべる。

「ともあれ我々は自らの体の構造を何も理解していないのが現状だ。もしかすれば本星やその周辺の衛星にあった施設にはデータなどが残っているかも知れんがな」

渋い顔をしてジュピターが言った時であった。

「・・・どうもッス」

メンテナンス室から出て来るのは非戦闘形態になったバラードだ。

一連の戦いでアーマーが大きく損傷した事もあり、アーマーの殆どを取り払われてしまったのだろう。

今の彼は一見するとロボットと分からぬ風貌となってしまっている。

「傷の方は大丈夫なのか・・・」

「パンク兄貴ッスか。キングの奴に応急処置をしてもらったからフォルテ程、酷くは無かったんスけどね。まあこの機会だから次の作戦の為にアーマーを強化するとかで外してもらったッス」

パンクの言葉にバラードが何時もと変わらぬ表情で受け答えをする。

彼自身が言った事だが思った程、重傷では無かった様だ。

「それでアースは長引きだろうけどもう一人の弟は・・・?」

一応と言うべきなのか暇そうな顔をして残っていたエンカーがバラードに問う。

「ああ・・・それなら」

エンカーに促される様にしてバラードがさっき出て来た部屋の扉に目を向ける。

ややあって出て来たのは一際青ざめた顔をした一人の少年。

特徴的な漆黒のアーマーは無く彼は苛立つ様に両腕を握り締める。

「あのクソジジイ・・・あの女の修理に手間取っているからって手を抜きやがった」

バラードの様にアーマーどころかバスターを始めとする武装まで外された事に怒り心頭なのはあのフォルテだ。

ベースがあのロックマンと言う事もあってか、彼の今の姿は人間の少年と殆ど変わりが無い。

「怒るなよ。我が弟よ~ってな。レディーファーストって奴だ」

メタルマンが横で笑う中で一瞬の内にフォルテに間合いを詰めるのは、やはりというか工具を手にしたエストだ。

「貴方の内部機構ならまだ理解出来るかもね・・・なんだったら私が修理してあげよっか?お姉さんに任せなさい~」

「・・・ッッ!!ってお前誰だ!?」

顔がくっ付かんばかりの距離でニヤリと笑うエストにフォルテは本能的に危険を感じ取る。

数歩、後ずさるフォルテだったがエストの笑みはますます深くなる。

「くそっっ・・・覚えてろ!!」

脱兎の如くその場から逃げ出すフォルテの背にナンバーズの笑い声が響くが、それに構っている暇は無い。

どちらにせよ捕まれば何をされるか分からない相手を前に無謀な戦いを挑むほど、フォルテの方も馬鹿ではない。

「ついてくるな~!!」

「待って~大丈夫痛くしないから。ちょっとだけ・・・ちょっとだけだから」

叫ぶフォルテの後を人間と思えぬ速度で追いかけて来るエスト。

手には電動の工具が握られておりどう見ても無事に済みそうにはない。

それから数時間の間、ワイリー基地内でフォルテがエストの魔の手から逃げ惑う事になったのは言うまでもない。

 

 

 

一方その頃である。

南米のゼーネルシティより遠く離れた欧州にて。

<現在北米を訪問中のカンパネラ公国の姫の動向ですが・・・>

薄暗い酒場の壁に取り付けられたモニターが最近のニュースを取り上げる中、男は無言で手にしたグラスを傾ける。

「お前も・・・何か飲むか?一杯ぐらいは私が奢ろう」

男の問いかけに黒いコートを着た青年が席に座りながら苦笑を浮かべる。

「王と呼ばれた男の奢りとあれば断る訳にはいかないな」

「王か・・・今の私にとっては重い名前だな」

王と呼ばれた男が苦笑を浮かべる。

「この店のおススメを一杯・・・」

男の言葉に店主が無言で頭を下げ酒を用意し始める。

向かい合う様に座り互いの顔に浮かぶのは苦笑いだ。

思うに奇妙と言えるのだろう。

南米での騒動の後に一目散にその場から離脱したキングは、見計らった様に連絡を入れて来た知り合いと落ち合っていた。

知り合いとは言っても普通の友人では勿論無い。

二年前の戦いにおいては彼は敵であった。

あちらからすれば自分は体を真っ二つにした存在であり、普通に考えれば恨まれてさえいるであろう。

「ここで会えたのも何かの機会だ。南米に現れた不可思議な連中の映像を渡しておこう」

そう言って一枚のデータチップ受け取ったコート姿の男はそれを手にした端末に入れる。

「1997年物のローズバットです」

店主がグラスに液体を注ぎ、その場を去る中で男が身に着けるバイザーに端末の映像が反射する様に映り込む。

「宇宙の暴君或いは破壊者と呼ばれしソロー。そればかりかヴォイドにアルゴス。更にはアポロゴーストなる存在が例の気象兵器の裏で動いていた。由々しき事態と言えるだろうな」

「確かにな・・・」

キングの言葉に男は淡々と答える。

暫しの間、映像を早送りで見続けていた男はある場所で映像を一時停止させる。

「お前も気になったか・・・ブルース」

笑みを浮かべるキングにブルースは無言で頷く。

宇宙から舞い降りて来た存在であるソローはキング達の常識を遥かに超える存在であり、自身らよりも同じ宇宙ロボであるスペースルーラーズの方が知っている事は多いであろう。

最後の方に現れたアルゴスとアポロゴーストに関しては情報が少なすぎる。

それ故にブルースはヴォイドなるこの時代には不釣り合いなビームセーバーなる武装を持つロボットを注視した。

「語るに及ばずだが私も記憶しているデータを照合したのだがね・・・彼のとほぼ一致したよ」

「このヴォイドとか言うロボットは間違い無く・・・」

キングとブルースが互いの視線を合わせる。

「「ワイリーナンバーズ・・・だよ(だな)」」

殆ど一緒の言葉を互いに言い放った後、キングは手にしたグラスを一気に飲み干す。

ブルースの方は僅かにグラスを傾けるがすぐには口を付けない。

ややあってブルースがゆっくりと液体を喉に流し込むのを見据えながら、キングは己の頭の中を整理し始める。

「現行の技術ではビームセーバーはまだ実用化されていない・・・となれば」

現代においては実用化されていない兵器。

と言う点に着目すれば一つの答えは出よう。

「・・・さてと私はそろそろ失礼させてもらうよ。色々と調査する必要が出て来たのでね」

ゆっくりとした動作で席から立ち上がるキング。

そんな彼を遮る様にブルースも立ち上がる。

「あの時の様に邪魔をするのかね」

冗談っぽく口を開くキングにブルースが微笑む。

「お前が行こうとしている所で何が起こるか分からない。幾らお前でもたった一人では危険だろう」

そう言ってブルースはキングを遮るのではなくその真横に並び立つ。

若干酒場の通路が狭い為に互いの肩がぶつかりそうになるのはご愛敬。

「一緒に来てくれるのか。私としては正直有難いな」

「元々そのつもりだったのだろう?」

「そうじゃなくても一応の行き先を示せば、私が帰って来なかった時にそこに何かがある事を知らせる事が出来ると思ってね」

「人に頼る時には遠慮なく頼れ」

言葉通りキングがここでブルースと会ったのは自身の動向を伝える為であり、万が一の時にはブルースに後を託すつもりであった。

だがキングの予想よりもこのブルースと言う男は黙ってじっとしているタイプではないらしい。

「今は君が味方で良かった」

ブルースの言葉に笑みを浮かべていたキングだったが、不意に足を止める。

横目でチラリと席に座る二人の人物に目を向けるが、彼らは手にした端末や雑誌をわざとらしく掲げその視線から逃れようとする。

「君達の主にもそう伝えたまえ・・・」

そう言いつつ代金を支払いその場を後にするキングとブルース。

場の空気が僅かに和らぐ中で両者を監視していた二人組は頭に被っていた帽子をテーブルの上に置く。

「バレバレか・・・まあこっちはそれも承知で居たんだがな」

大きく溜息を吐くのはワイリー軍団に所属するロボット、スネークマンだ。

南米から姿を消したキングを監視する過程で思わぬ人物と合流するのを目撃した事になるのだが、二人ともどこへ行くかは一切口にしていない。

恐らく店内や路地裏にサーチスネークを設置していた事もばれていたのだろう。

付け入る隙は極めて少ないと言える。

「どうする・・・追跡を続けるか?」

スネークマンと向かい合うのは電子頭脳をそのまま剥き出しにした様な不気味な姿をしたロボット。

複数居るダークマンと呼ばれる諜報専門のロボットで彼はその二号機だ。

「いや・・・止めておく。途中で振り切られるのがオチだ」

「了解した。盗聴した会話はすぐにワイリー様の下へ送っておこう」

無機質な声を響かせるダークマンに頷きながらスネークマンは深々と溜息を吐く。

「正体不明の敵か・・・デューオと言いキングと言い。最近この手の敵が多すぎねえか。ワイリー博士は何か対策でも考えてるのかねえ」

偉大ではあるがどこか抜けている生みの親が笑う顔を思い浮かべながらスネークマンは頭の裏を掻くのであった。




前回より結構間が開いてしまいました。
殆ど新規に書いてるからってのが大きすぎるのですが。

とまあそんなこんなで勝手に女性化しちゃったなアース編始まりました。
この辺りから女性キャラ増えていきます。ハイ。
まあ元のロックマンがあんまり女性キャラ居ないからさw

実質ガールズ編とも言えるかもですが。
いつも通り旧版から大筋は変えずにのんびりと書いていきたいです。
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