ロックマンキラーズ纏め編   作:グルルre

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vol3 思わぬ邂逅

「お久しぶりですライト博士。今回は我々の我儘を聞いていただきありがとうございます」

「いやなに・・・私が出席する事で前回の戦いからの復興を印象付けられるならお安い御用だよ」

街で一番の高級ホテルのロビーでロボット工学の父は一人の青年と握手を交わしていた。

キング事件より二年の月日が経つが、各国の復興は道半ばの状況だ。

特に最も被害の大きかった欧州では漸く復興政策が軌道に乗りつつあり、それを内外に示す為もあって欧州の要人達が世界各地を歴訪しているのだ。

歴訪の順番が回りこの都市に要人らが来た訳なのだが、言うまでも無く彼らの目的は自分と人類の英雄と言えるロックマンなのだとライト博士は悟っている。

個人的な話をすればこの手の政治的なやり取りや窮屈な場は苦手なのだが、だからと言って個人の都合で欠席をするほどライト博士も偏屈ではない。

自分と要人が話をするだけで世界中の人々が復興を感じられるのであればそれに越した事は無い。

(・・・それに)

とライト博士は思う。

(人類側に生じたロボットへの不信感を払拭する為のまたとない機会だ・・・)

キング事件が残した爪痕はあまりにも根深い。

それ以前から差別なり偏見はあったし、ロボットによる暴走事件の度にその危険性は論じられてきたが、今回の一件でロボットは人類に対し簡単に反旗を翻せる事を示してしまった。

ワイリーによる意図的な物や欠陥による暴走ではない。

彼らは自らの意思で人類に反逆したのだ。

ワイリー軍団と共闘する事で何とかキング軍団を退けた形の連邦政府だが、それによって生まれた恐怖はあまりにも大きい。

事実一部の国では知能を持つロボットの製造や配備を制限する法律が整備されようとしているとも聞く。

中には一定年数を過ぎたロボットを強制的に廃棄しようとする過激な法案を主張する政治家もいるらしい。

自身が夢見た世界が閉ざされようとしている事にライト博士は強い危機感を覚えている。

それ故に彼は慣れないこう言った場に足を運んでいた。

「それで・・・なんですが。彼はどこに居ますか?」

握手を交わした青年がライト博士の周囲を見渡す。

「ああ・・・ロックですか。式典の本番は明日と聞いてましたので今日は兄弟達と一緒に別の所に居ますよ」

ライト博士の言葉に青年の顔が残念そうな物となる。

一瞬、政治的に利用しようとしていたのかと勘ぐったがどうもそうではない様で。

「ロックマンのサインが是非とも欲しかったんですけどね」

「ああ・・・成程。そうだったら後で彼に頼んでみる事にするよ」

子供っぽい表情を僅かに見せる青年にライト博士は笑いながら答える。

「本当ですか!!是非ともお願いします!!」

先程よりも感情の籠った握手をされ苦笑いを浮かべるしかないライト博士。

二度目の握手を終えたライト博士は何人かが近づいて来るのに気づきそちらに目を向ける。

「やあこれはライト博士」

何時もの白衣ではなくライト博士同様にスーツを着た姿で挨拶をしてくるのはミハイル=セルゲイビッチ=コサックだ。

ロシアを代表とする科学者の彼も今回の式典に出向いている。

彼の傍らにはコサックナンバーズの一人でロボットポリスに属するリングマンの姿がある。

ライト博士がリングマンにも軽く会釈をする中で、青年の方が先程ライト博士にした様にコサックにも自らの名刺を渡す。

「何時ぞやは娘さんの件で伯父さんが失礼をしました。あの人は絶対に謝らないと思うので代わりに謝罪させてください」

ペコペコと頭を下げる青年に首を傾げるコサックだったが。

ロウファ=W=ワイリーと名刺に刻まれたその名前にコサックの眉が吊り上がる。

「君はもしかしなくても・・・あれの身内か」

「そう言う事になります」

笑顔で自身に頭を下げるロウファにコサックは内心で溜息を吐く。

あれは超エネルギー元素及びガンマを巡る戦いの後であったか。

カリンカがワイリー軍団により拉致された為に、ワイリーの世界征服計画に協力を強いられた事はコサックの科学者としての人生の中で数少ない汚点の一つなっている。

如何にも人質を取られ不本意であったにせよ犯罪を犯したのは事実であり、もしもライト博士が庇ってくれなかったら今頃自分はこの様な場に居る事など出来なかったであろう。

正直な所、ワイリー個人に対する恨みの念は今でも残っている。

(だがそれを目の前の彼にぶつけるのはあまりにも理不尽だ)

一瞬だが浮かび上がった負の感情を押し殺しコサックは指で眼鏡を動かす。

脳裏を過るのはキング事件の際に漸く対面をした時の事である。

 

「お前さんの娘は元気にしておるか?元気ならそれで構わんがの」

 

まるでカリンカの一件など無かったかのように話しかけてくるワイリーに内心でコサックは唖然とした物だ。

なんと最初に声を掛ければ直前まで考えていた自分がまるで道化にでもなった様な気がしてしまった。

『ああ・・・この男からすれば少なくとも他者が己に抱く感情など些末な物に過ぎないのだ』とコサックはワイリーが天才科学者と呼ばれる所以を垣間見た様な気がした。

対して目の前の青年は極めて普通に見える。

彼の父親でヴァイスカンパニーなる怪しげな会社を経営するヴァイスにも会った事はあるが、少なくとも彼には似ても似つかない。

「いやあそう言えば妹のエストが大学の夏休みを利用して偉大な科学者の所で勉強してくると言っていたんですが・・・お二人の所には」

思い出した様に話すロウファに二人の科学者は首を振る。

「ああ・・・やっぱり伯父さんの所に行ったみたいですね」

破天荒な妹の行動に頭を抱えるロウファ。

そんな彼はさておきコサックに続く形でライト博士が来賓達と何度か言葉を交わした時だった。

「あ、お父様」

ライト博士と共に居るコサックを見つけ駆け寄って来るのはドレスを着た二人組の少女だ。

一人は先程話題に上がったコサックの一人娘カリンカ=コサック。

もう一人の方はライト博士と一緒に出席しているロールである。

恐らく会場でたまたま出会った事で先程までホテル内を回っていたのだろう。

「これはカリンカさん。ええと昔の話になるのですが・・・」

本人が来たと言う事もありロウファが何時ぞやの一件を謝罪しようとした時であった。

ホテルの入り口周辺で何やらざわめきが生じたのに一同の注意が向く。

真っ先に目が行くのは重厚な鎧を身に纏ったロボット。

ロボット選手権にも出場経験のあるナイトマンを先頭に彼に似たロボット達が次々とホテル内に入って来る。

「これは・・・例のですかな」

「・・・うむ」

コサックの呟きに頷く様にしてライト博士は僅かに胸を張る様にして背筋を伸ばすのであった。

今回のVIPの中で最も影響力があると言える人物の登場に二人は若干緊張する様に息を吐いていた。

 

 

 

一方、会場となったホテル近くの道路では。

「おい通行禁止ってのはどう言うっ!!」

道を遮るロボット達に抗議の声を上げるのはフォルテだ。

そんな彼に対しアシガリー達が無言で槍の穂先を突き付ける。

背後にいるベン・K達も腰を低くし身構える。

もしもフォルテが普段通りであれば今頃戦闘になっていただろうが、今は非戦闘形態にしかなれない事もあり拳を握り締め唸る事しか出来ない。

「なんだ・・・お前達か」

騒ぎに気付いたのかヤマトマンがアシガリー達を下がらせながらフォルテや後ろに居るメタルマン達に目を向ける。

「おいヤマト。何かあそこでやってるのか?」

彼に事情を聞く様に話しかけるのはエンカーだ。

「お前達、何も知らないのか?ニュースにもなっていたはずだが・・・」

「俺は時代劇とニホンの大河ドラマしか見ねえよ。で・・・なんなんだ?」

自身の興味がない事には全く以って興味がないエンカーに頭を抱えつつ、ヤマトマンは簡潔に彼らに説明をする。

「今、欧州から来た要人があのホテルに集まって会談をしているのだ。明日にはロックマンも参加しての式典もある」

「成程ねえ・・・」

ヤマトマンの説明にエンカーが頷く。

「俺達はこの先の通りにある和風の旅館に行く所だ。で何時もの道を通ろうとしたら通行止めなんで短気な弟が怒ったって訳だ」

フォルテを指差しながらエンカーが笑う。

自身が馬鹿にされた事もあり、フォルテが何かを叫ぼうとするがすぐさにメタルマンに止められる。

「まあ最近色々あってな。ちょっとした慰安旅行的な。軽く夜をはしゃいで楽しむつもりだけなんだが」

「くれぐれも騒ぎは起こすなよ。この状況でお主らが暴れたら儂とてお前達を逮捕せざる得ないからな」

『旅館には回り道をしろ』とヤマトマンに指示されエンカーはそれを了承するや一同にその旨を伝えその場から立ち去る。

「なんであいつらの指示になんか・・・」

「止めとけ。あれだけの警護だ。仮に襲うなら入念な準備が必要だぞ」

空には無数の監視ロボットが居たし、少し離れた先にある公園にはここまでどう持って来たのかは分からないがメカザウルスが二体も待機しているのが見える。

その上、タンクCSーⅡ型と同型の戦車も数台がロボットアーミーと共に周囲を警戒していた。

「厳重すぎだなあ・・・?」

ストーンマンが呆れたような声を上げるがまあそれだけ重要な人物らが集まっているのだろう。

「メカザウルスとかってMr.Xに化けた博士が開発した物だよね~」

「あんだけ揃えられるなんて・・・羨ましい。てか著作権侵害だな!!」

ヒートマンの言葉を受けナパームマンが憤慨した様に言う。

彼らの言う通りワイリーはMr.Xに扮しヤマトマンらロボット選手権に出場したロボット達を洗脳し世界征服計画を進めた事もあったが、その際に世界中の科学者に自らの技術を提供してしまっている。

結果的に世界全体で言えばロボット開発における技術力が向上してしまい、元々はワイリーが開発したメカザウルスなどの大型ロボットを兵器として運用できるまでになってしまっている。

世界征服計画によって生じた弊害ではあるが、ワイリーが行った数少ない善行ともいえよう。

「チョサクケンってなんだ?」

「言っちまえばパクリって事だ」

地球の文化に疎いマースが問うのでナパームマンが答えるのだが。

「パクリってなんだ?」

「いや・・・他人の真似をしちゃいけないって事でだな」

「真似しちゃ悪いのか?」

真顔で問うてくるマースにナパームマンも黙り込む。

因みに他のスペースルーラーズも同じ様な顔をしていた。

「真似をするって事は他人の武器を使えるロックマンとフォルテもチョサクケンシンガイだニャ」

「うるせえ!!あれはパクリじゃねえ!!」

プルートの言葉にフォルテが顔を真っ赤にして叫ぶ。

「まあ僕達もライトナンバーズを解析して生み出されたところあるし、イエローデビルにピコピコ君とかも大元の技術はパクリだよね」

「考えると悲しくなるからこれ以上は止めるぞ」

ヒートマンの言葉にメタルマンは話題を打ち切る。

ややあって辿り着いた旅館にて早速座敷に案内された一同。

「あ~カブキマンの一件だのフィーネがゴロツキに攫われたりだの南米で色々とありましたが。今宵はその辺は忘れて・・・」

エンカーがマイクを片手に司会進行をし始める。

普段の面倒臭がりな彼にしても珍しくやる気が見られる。

ここの和風旅館が気に入っていると言うのもあるのだろう。

一部のナンバーズは酒が入り始め何時ものどんちゃん騒ぎとなり始めるのだが。

 

「ボエエエェェェェェ!!」

 

突然この世の物とは思えない声と共に音が外れたマイクの甲高い音が向かいの部屋から響きエンカーが耳を押さえる。

「あ・・・うるせえな。まあ兎にも角にも・・・」

エンカーが額に青筋を立てつつ進めようとするのだが。

 

「アアアアアァァァァ!!」

 

「ぐあああぁぁ!!耳が!!」

濁音を付けるべきか迷う恐ろしく音痴な歌にフォルテが思わず外に出そうになる。

そんな彼も酔っ払ったメタルマンに羽交い絞めにされて拘束されるのだが。

代わりに飛び出すのはエンカーだ。

「うるせえぞ!!下手くそな『男一代』を歌ってんじゃねえ!!」

苛立ちも即座に頂点に達したエンカーが向かいの部屋の仕切りを勢いよく開ける。

「「・・・ああ?」」

次の瞬間、互いが発した驚きの声がマイクから漏れる。

マイクを手にしていたのは音痴な歌の張本人、ドカヘルが印象的な作業用ロボット。

「おおい~ガッツじゃねえか。お前、帰って来てたのか?」

E缶を片手にストーンマンがガッツマンに話しかける。

共に建築関係の仕事をしている事もあって両者はナンバーズの垣根を越えて仲が良い。

「んん・・・ワイリー軍団!!」

頭にハサミを付けた作業用ロボットが刃を手に身構える。

ガッツマンと同じライトナンバーズのカットマンである。

そこに居たのは彼らだけではない。

「てめえはロックマン!!」

向かいの部屋に居た一人を見るやそう言って指を差すのはフォルテだ。

「やあ。奇遇だね」

会うなり速攻で喧嘩腰な彼にニコニコと笑みで挨拶をするのは誰であろうあのロック本人だ。

ロック以外にもカットマン、ガッツマン、アイスマン、ボンバーマン、ファイヤーマン、エレキマンに見慣れぬロボット二人を加えた面々、計九人がその場にいた。

「なんだロックマンにライトナンバーズの皆さんじゃねえか。奇遇じゃ~ん」

千鳥足の状態で彼らの方に上がり込むメタルマン。

言うまでも無くだがワイリー軍団と彼らライトナンバーズは敵対関係にある。

ワイリーによる世界征服計画が実行される度に幾度と無く衝突を繰り返してきた間柄なのだ。

それ故に決して相容れる事は無い筈だったのだが。

「この前の花火大会の爆発。ネットで見たぞボンバーマン!!」

「綺麗だった。感動した!!」

ナパームマンがマースと共にボンバーマンに話しかける。

「あの日は小雨が降ってたから万全の状態じゃ無かったんだがな」

イカゲソを酒の肴にボンバーマンはまんざらでもない顔で答える。

普段は解体工場で働く彼はボランティアで花火大会の手伝いをしており、爆発に対し独特の美学を持つナパームマンとマースはその中継に大いに感動したらしい。

これに欧州にある支部基地に居るグレネードマン辺りを加えれば爆破好きなロボットが勢揃いであったのだが。

「まあなんて言うかだ・・・」

酒瓶を片手に近寄ったエアーマンがエレキマンのカップに注いでいく。

「今日は無礼講って事だな」

エレキマンの方も笑みを浮かべつつ酒を受け取っていく。

「おいなんで敵と仲良く・・・」

気づけばライトナンバーズと合同で飲み会となる場にフォルテがただ一人反論しようとするのだが、場の喧騒に掻き消され虚しく響くのみ

思うにここまで互いの交流が進んだのはキング事件の際の弊害であろうか。

それまでもストーンマンとガッツマンなり、似た者同士の交流は幾つかあったのだがキング事件の際に互いに行動を共にする事が多くなった事で友好な関係となった面々が多く出てしまっている。

その為か酒の席と言うのもあったが誰もライトナンバーズと遭遇したからと言って、即座に戦闘になる事は無かった。

「ロック兄ちゃん~ロールお姉ちゃんはどこだニャ?」

お子様と言う事で酒類を一切飲んでいないプルートがロックに問う。

「ロールちゃんは博士と一緒にあのホテルに居るよ。僕達は明日の式典に参加する予定で折角集まったから宴会でもしようって事になったんだけど」

「まさか場所が被るとはな」

ロックの説明にジュピターが溜息を吐く。

「ワイリーナンバーズの連中は本当に世界征服をするつもりなのか時々分からなくなる」

敵対者に慈悲を持つ概念を持ち合わせていなかったジュピターが周りの光景に目を細める。

「まあこうしてすぐさに攻撃をしなくなった辺りは我々も毒されたかな」

苦笑を浮かべるジュピターにロックは笑みで返す。

見ればウラノスやマーキュリー、サターンも他のナンバーズに加わってはしゃぎ始めていた。

「でも悪くはないよね・・・」

「確かにな・・・まあ今は無礼講って奴なんだろ?」

屈託の無い笑みで言い放つ少年にジュピターはそう言いつつ皆の所に戻っていく。

「やいロックマン!!他の奴らと違って俺はっ・・・!!」

マイクを手にロックに指差すフォルテだが、後ろから酔っ払ったメタルマン達に羽交い絞めにされる。

「オレンジジュースばっかり飲んでじゃねえよ~」

「お前も大人の階段昇れッス!!」

「がばばばばばばっっ!!俺は・・・最きょおぉぉの」

バラードに酒瓶の中身を一気に押し込まれたフォルテが一瞬で昏倒する。

すっかり混沌な状況になった光景にロックは苦笑いを浮かべる他無かったのだが。

「・・・何時もこんなのなのかYO?俺っちとしては歓迎だけどな」

「状況として極めて最悪です」

若干困惑気に問うてくるのは二人のロボット。

「・・・お前ら誰?」

漸くと言うべきか見ない顔であった二人のロボットに気づいたエンカーが問う。

「ええと・・・この二人はオイルマンにタイムマン。色々あって行方不明になっていたんだけど最近発見されて。今日はその歓迎会も兼ねてたんだ」

オイルマンにタイムマン。

共にライトナンバーズではあるのだが、オイルマンはワイリーによる最初の世界征服計画の際にそしてタイムマンはロールアウト直前にタイムマシンが保管されていた研究所襲撃の際にそれぞれ消息不明となっていたのだが、

「傑作だな。そう言えばうちの方も似たような感じで行方不明になったロボットが帰って来てやがんだ。西遊記に出て来る猿、河童、豚な三人組なんだが」

「猿、河童、豚の三人組・・・?」

「俺っちのバイト先で自転車盗んだ泥棒三人組じゃねえかYO!?」

エンカーの言葉にタイムマンとオイルマンがそれぞれ声を上げる。

思わぬ所で面識があった事に嫌な予感を覚えつつもロックとエンカーはそれはそれと今の状況を楽しむ事にした。

明日は明日で何が起こるか分からないのだから。

 

 

 

「やはりと言うか帰って来なかったな」

がらんとしたワイリー基地内の食堂でパンクが呟く。

皆で集まって宴会をするのは前から決まっていたのだが、やはりと言うか出て行った全員が帰って来なかった。

何時もの事なのでパンクは特に気にした風もない。

「まあ食事の用意をする手間が省けて私からすれば結果オーライだけど」

出来上がったばかりの焼きそばをテーブルの上に置きながらエストが話す。

ネプチューン曰く海の家で余ってしまったと言う事で、先程まで彼はフィーネと一緒にキッチンで焼きそば作っていたのだ。

それ以外にも色々と余った食材を持って来てくれた事でパンク達的にも非常に有り難い。

暫くは食事に困る事は無いだろう。

まあ賞味期限的に少々危ういので早めに食べなければならないのだが、贅沢は言っていられない。

「それにしてもパンクも行きたかったんじゃないの~」

「個人的にあまり騒がしい場は好きではないのでな。誰かがここに残らねばならん」

エストの言葉にパンクは腕を組んだまま答える。

彼の言葉通り今、ここにはワイリーが滞在している上に修理中のバスターロッド達にレントとパッショナーと言う面々も居るのである。

万が一にも何者かに襲撃される危険性を考慮すれば全員が出払う訳にはいかないのである。

「奴らめ・・・」

非戦闘形態となっている面々の内、バラードとフォルテは一緒に出掛けてしまったがただ一人残る形となったアースは見るからに不機嫌であった。

「まあ昼には帰って来るんじゃないの~?うちの面々も行ってるんだし大丈夫よ」

能天気に答えるネプチューンだったがルーラーズを管理するアースの顔はやはり険しい。

アースは宴会に出かけるルーラーズ達にその日の内に帰ってこいと厳命した事もあり、結果的にそれを破られた事となる。

規律を遵守するルーラーズにとって許しがたい事なのだが。

「偶には良いじゃないの。それぞれの親睦を深めるのは良い事じゃないの」

「だがな・・・」

ネプチューンの言葉に未だに納得がいかぬと腕を組むアース。

「頭が固いな・・・時には許すと言うのも大事な事だ」

「なんだと・・・!!」

パンクの言葉にアースが今にも飛び掛かりそうな空気を発する。

対してパンクの方は溜息を吐くだけで手にしたE缶を飲み干す。

「・・・冷静になれ。私如きの小言にいちいち突っかかるなどフォルテと変わらんぞ」

ぴしゃりと指摘され若干顔を赤くしたアース。

「まあまあ・・・二人とも落ち着いて」

そんな両者の間に入る様にネプチューンが仲裁をする。

アースもアースで子供染みた反応をしてしまった事に気づきますます顔を赤くする。

(今は戦闘が出来ないから隊長の方も結構カリカリしてるわね)

元よりプライドが高い自信家でもあるアースだけに、思わぬ強敵を相手に負傷した事もそうだが今の戦闘能力を失っている状況に焦っているのだろう。

ワイリーは時間はかかるが絶対に直すと言っていたが、果たして本当に出来るか分からない。

冷静な風を装いつつも内心で焦りに焦りまくっているアースを横目にネプチューンが思案した時だった。

若干の気まずさもあったのか何気無くテレビのリモコンをエストが操作し、画面にニュース番組が映し出される。

その間、フィーネがネプチューンと一緒に作った焼きそばをテーブルに置いて食べ始めるのだが。

<現在ロイヤルホテル周辺は欧州から招かれた要人が次々と式典会場へと移動を始めており・・・>

「そう言えばそんな話もあったな」

テレビを見ながらパンクが思い出した様に声を上げていた。

露店でクレープ屋を営むローズが会場周辺で店を出すと言う話をしていたのだ。

「・・・うわ」

要人達が車に乗り込む映像が映しだされる中で一人の青年が出て来た瞬間、エストが明らかに嫌そうな声を上げる。

一同の視線が集まった事もあり、エストは誤魔化さずにはっきりと言う。

「さっきのあれ・・・うちの兄貴」

「まだ博士の身内が居るのか・・・」

エストの言葉にパンクは頭が痛くなるのを覚える。

そう言えば彼女らの父親はワイリーに負けず劣らずの人物だったと記憶していたが、エストの兄もそうなのだろうか。

まあエストもそうだし普通な方がおかしいと思った方が賢明であろう。

「いいなあ・・・私も見に行きたいな」

「私達が行ったらどうなるか。普通に逮捕されて終わりだぞ」

フィーネが少女らしい感想を口にするが、パンクが言う様に現実は甘くない。

存在自体がある意味危険としか言いようの無いワイリー軍団の一員が会場に近づけばどうなるか言うまでもない。

問答無用で破壊されても文句は言えないし良くても逮捕である。

わざわざこんな日に活動するする方が馬鹿を見ると言えよう。

「まあでも近くまで行って買い物をするぐらいは出来るんじゃないかしら?」

ネプチューンの言葉にそもそも人混みが嫌いなパンクが極めて渋い顔をするのだが。

「お兄ちゃん。一緒にいこ」

「パンクちゃ~ん。折角可愛い妹が誘ってるんだから行きなさいな。留守番はこのアタシが守るからさ」

フィーネに迫られ唸るパンクに対しネプチューンが胸を叩きながらその背を押してくる。

「なんならうちの隊長も一緒に行ってらっしゃいな」

「な・・・なんだと」

ネプチューンに話を振られアースが驚いたように振り返る。

「良いんじゃないの?今は戦闘行為が出来ないからやる事無いし」

エストの言葉にアースは唸る。

彼女の言葉通り今のアースは何もする事が無い。

ワイリースターの管理運営も一足先に宇宙に帰ったスターマンがしているし、そもそもネプチューンとマース以外のルーラーズは自分の修理の付き添いである。

言うなればワイリーが自分を完全に直してくれるまでアースは何も出来ないのである。

「だったらお前が・・・」

「私は伯父様の手伝いがあるから。それに鬱陶しい兄貴と会う可能性あるから絶対に無理~」

逆に言葉を返そうとするもそれはエストの満面な笑みで返されてしまう。

彼女の言葉から兄とは微妙な関係である事が伺える。

『行ったら?どうせ暇なんだし?』と言わんばかりのエストとネプチューン双方の笑みに押されアースはゼンマイ仕掛けの様にパンクとフィーネの方に振り返る。

パンクの方は無表情だが、フィーネの方は少女らしい屈託の無い笑みを浮かべていた。

はっきり言ってこの手の顔は極めて苦手だ。

ややあって渋々ながら頷くアースにフィーネは飛び跳ねながら喜ぶ。

「なんでこんな事に・・・」

喜ぶフィーネとは対照的にその場に項垂れるアースだがもはや後の祭りである。

 

 

 

「グウウウゥゥゥッッ!!」

目の前を横切る監視メカに黒衣を纏った人物が獣の様な唸り声を上げる。

周囲を監視用のメカ達が飛び交う中で気にした風も無く佇む三つの影。

「ボーンダイン。今は堪えろ」

己らの周りに不気味な目玉達を展開させながらもう一体の巨人が言う。

彼らが立っているビルの屋上から式典会場までは数百メートル程の距離があるのだが、当然ながら厳重な警戒網が敷かれる事となる。

地上では屈強なロボット達が配備され、空中の方も監視メカが無数に飛び交う。

本来であれば今頃、彼らの姿は監視メカに察知され通報されているのだろうが、監視メカは眼前を飛ぶばかりで何も反応を示さない。

「監視メカに触れるなよ。触れれば偽装も無意味と化す」

「分かっている・・・分かっている」

アルゴスの注意にボーンダインが唸りながら返す。

己らの周囲を漂う不気味な目玉としか思えない物体が光を屈折させ、周囲の風景から彼らの姿を隠しているのである。

監視メカからは何も見えていないだろう。

「式典が行われている中で襲撃を仕掛けるのは愚の骨頂。それが終わりターゲットがそれぞれ単独で動き始めた時を狙い我らは動くぞ」

自身らのバックアップとしてその場に赴いているヴォイドにアルゴスとボーンダインが振り返る。

「奴らを蹴散らすのは造作でもない事だが、全てを倒すのは些か骨が折れる」

巨体に不気味な目玉を浮かび上がらせながらアルゴスはほくそ笑む。

彼らの視線の先では式典が滞りなく始まりそして無事に進んでいく。

「ライトナンバーズも来ているのか。やはりと言うか今の状態で我らだけで襲撃はせぬ方が賢明だな」

ヴォイドが遠目より彼らを見据え僅かにその目を細める。

頃合いを見て彼は掌の上に立体映像を表示させる。

「今一度、作戦を確認する。よく聞くのだボーンダイン」

始めて活動をする事もありボーンダインと向き合うアルゴス。

「我らの目的は式典の出席者に危害を加える事であるが、トーマス=ライトとミハイル=セルゲイビッチ=コサックへの殺傷行為は主の命令によって禁じられている。よって狙うのは他の政府関係者となる」

「ライト・・・コサックゥゥゥ!!」

立体映像とは言え映し出される人物にボーンダインが縛り出す様な声を上げる。

「両名はターゲットではない。これは絶対に守れ・・・」

アルゴスの言葉にボーンダインは返事の代わりに唸り声を上げる。

「流石に我らでも全員を狙うのは無理だ。よってここにリストアップした者達を優先的に狙う事になる。よく覚えておけ・・・奴らを発見次第、攻撃するのだ」

十数人の政府関係者の立体映像が映し出され暫しの間、ボーンダインは唸る。

後ろに振り返り眼下の路上を彼が見下ろした時であった。

「・・・見つけたぞ」

ぼそりと呟いたボーンダインにアルゴスとヴォイドが『何を』と問う間も無かった。

「ガアアアァァァァ!!」

獣如き咆哮を上げビルの屋上より跳躍するボーンダイン。

あまりに突然の行動に面食らったアルゴスとヴォイドは互いに顔を見合わせる。

「・・・使えぬ奴め」

吐き捨てる様に言い放つアルゴスの言葉に遅れて悲鳴が響き渡る。

「襲撃は夜にした方が良いと思ったが・・・計画は変更だな」

「その様だな。忌々しい・・・私は奴を援護する」

ヴォイドの問いに苛立ちを見せつつ、アルゴスもボーンダインに続く。

「・・・了解した」

一瞬の内に静けさが掻き消された街並みを見据えヴォイドはその場より姿を消すのであった。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。


〇キング事件の被害及び政府の動向について
前回のバラード編でも書きましたが人類抹殺を掲げた事もありキング事件における人間の死傷者は普通の戦争レベルで出ています。
あんまり数の方を書くのは書いててつらい所があるので避けますが。
欧州の方にキング軍団の本拠地があった事で結果として最も被害が大きい事となっています。
各ボスの担当は以下の通り。
ダイナモマンは北米、コールドマンはロシア、グランドマンは中東、パイレーツマンは大西洋および地中海、バーナーマンは南米、マジックマンは欧州、テングマンは中国などのアジア、アストロマンは本拠地のカモフラージュ担当。
その他アフリカやオーストラリアなどの担当の居ない地域にはキングの力で生み出された大量の軍勢が派遣されているのでどっちにしろ被害は大きいです。
イエローデビルなどのワイリーステージに出て来るボスが都市部を破壊して回っていたと思っていただければ幸いです。

欧州の要人らが各国を歴訪しているのは復興に対する協力の呼びかけとそれまでのお礼も兼ねて。
何より連邦政府からするとキング事件でも政府が揺らがない事を示す宣伝でもある。
ライト博士の独白にあったロボットへの不信感は徐々にだが強まっているのが現実。
後々に政府が色々と制限かけちゃうのも止む無しな所あるよね。

〇ロウファについて
ロウファは作中にある通りエストの兄でワイリーの甥にあたる。若干胡散臭いが一族の中で一番まともで普通なのが特徴。
普通が特徴ってのも変だが、それだけ周りが吹っ飛んでいるから仕方が無い。
式典には政府関係者のスポンサー的な立場で参加している。
因みに父親のヴァイスはワイリーと表前は袂を別って居るのとワイリーが世界的な犯罪者になった時に連邦政府の市民資格を抹消された事で法律上は元身内な他人となっている。
その為、ロウファとエストが普通に表社会で過ごせるのもこれが理由となっています。
じゃないと普通は学校とか通えないので(汗)
それに仮になんか彼らに酷い事するとワイリー軍団に逆襲される恐れもあるってのもあります。

〇コサック博士とナンバーズについて
リブート前だと登場はもっと後でしたが今回は結構早めに出しました。
彼も同じく式典の出席者です。ライト博士と同じロボットと人間の関係に憂慮する者の一人となっています。
護衛の方はリングマンが担当。娘のカリンカも同行しています。
リングマンに関してはメガミックスから設定を拝借してロボットポリス所属。

〇会場の警備メカ(犯罪者なワイリーの著作権ガン無視メカ)について
メカザウルスやタンクCS-Ⅱ型など主に本家6のメカが政府の手で量産化されてます。
この辺は上記のキング事件の際の反省もあって、とりあえず使える兵器を量産だよと言う事でデータが揃っていたメカからとなっています。
コサック博士が造っていた本家4のコサックステージのボスも量産化されてる設定です。
バラード編で出たテュポンなどもこの手の類に分類されます。
万年貧乏なワイリー軍団と違い潤沢な資金を持つ連邦政府だからこそ出来る数の暴力となっております。
著作権に関しては『悪党に権利を語る資格など無い』と言うのが政府の見解。
まあワイリーも似たような事やってるからしょうがないよね。

〇ライトナンバーズについて
元々そうだったのですが今回より基本的にロックマンの事を必要が無ければロックと表記します。
別にロックマンでも長くは無いのですが、そうなっていると思ってください。
オイルマンとタイムマンのロクロク組ですがロールアウト直前或いは直後に一度行方不明になったのでナンバーズとしての番号は割り振られていない設定。
アメコミの方ではあるみたいですが・・・。
彼らはバスターロッド達と違って、各地に侵攻するキング軍団に個人で抵抗していた際にライトナンバーズと再会出来ました。
二人とも戦いの後の復興作業などを手伝っていた事もあり、本当の意味で一同が集まったのは今回が初と言う事になっています。
アイスマンやファイヤーマンなども台詞を与えたかったんですが、やり過ぎると長くなってだれるのでこの二人はちょっと省略しました。
なんて言うか自分世界のファイヤーマン、パッショナーばりの『もっと熱くなれよ!!』なキャラですんで(汗)
ガッツマンが歌おうとしていた男一代はバトチェのあれです。
歌詞を載せると問題かなと思い伝統的な『ボエェェ』にしました。ハイ。

〇怪しい連中について
パンク達の動向には特に語る事は無いので最後のシーンについて(ヲイ)
遂にボーンダインが登場?彼を入れて黒幕連中の幹部ボス全員が揃った事になります。
六人だよ。大ボスだよ。
ボーンダインに関してはリブート前のを見た事ある人には正体が殆どバレてるんですが。
とりあえず台詞の方を片言から普通のにしました。
どちらにせよ暴走気味なのでアルゴスを困らせる事になりますが。
いきなり彼が飛び出して行って次回となります。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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