「だから我々は・・・」
「無関係だと!?ああそうだな。大体がそう言うけどなぁぁぁぁ!!我らの姫に似た少女とお前達の弟が一緒にいたと言う情報があるのだ!!姫の居場所を教えてもらおうか?」
取調室にて淡々と自身らの事情を説明するエアーマンに顔が引っ付きそうなぐらいに密着して声を荒げるのはナイトマンだ。
と言うか警察の事情聴取も早々に終わったにも拘わらず今度は行方不明になった要人の件でナイトマンから取り調べを受ける事となる。
「キャハハハハ!!カツ丼頂戴~」
どこまでも自分のペースを崩さないヒートマンに呆れつつもエアーマンはナイトマンの追及に首を横に振り続ける。
「とにかくお嬢様達が無事で何よりでした」
刑事のジョージと共にワイリーナンバーズの取り調べを終えたリングマンは自身を待っていたコサックに声を掛ける。
因みに現在カリンカはライト博士らと共に研究所の方に出向いている。
ある意味で彼女が居なくて幸いであったと言えようか。
咳払いをしつつリングマンはコサックに目を向ける。
「あのボーンダインと言うロボットですが・・・私の名前を口にしました。聞けばお嬢様の名前も叫んでいたとか」
「・・・・・・」
リングマンの言葉にコサック博士は驚く事も無く無言であった。
「私の記憶違いでなければ我々コサックナンバーズにあんなロボットは存在しません。ですがボーンダインに酷似した特性を持つロボットの事は知っています」
「・・・リングマン」
追及を制する様にコサックが口を開くがそこで黙る彼ではない。
「私が博士達の護衛の為に研究所に戻った際、奴の姿はカプセルの中には無かった。奴は・・・今、どこに居るのですか?」
リングマンの追及にコサックは僅かに視線を上にしつつ溜息を吐いていた。
「彼はとある人物からの依頼である場所に派遣されている。詳しい場所やその人物の事は私の口から言う事は出来ない」
コサックの言葉にリングマンは唸る。
不満げな顔をする彼にコサックは『分かってくれ』と言うかの様にその肩に手を置く。
「彼とボーンダインの関連を疑う気持ちは分かる。恐らくは何らかの形で私の研究が悪用されたと見るべきだろう。ともあれ・・・ご苦労だった」
そう笑みを浮かべ自身に背を向けるコサックの背中はどこか寂しそうだった。
流石にこれ以上は追及を続ける事は出来ずにリングマンも己の任務に戻る他無い。
「つまりは・・・パンク達は式典襲撃の件で事情聴取を受ける為に拘束されたと」
テレビを見て慌てて出撃したエンカー達だったが、距離的に間に合う筈も無く途上で一人の少女と共に居たバラードと合流し基地へと戻って来る事となった。
「まあ普通に考えてアタシ達の仕業って考えるわよね」
ネプチューンが溜息を吐く中、バラードがその場にいる面々に頭を下げる。
「済まねえッス。結果的にパンクの兄貴達を見捨てる事になったッス」
コンセプト的にプロトタイプと言う事もありフォルテに似ている性格のバラードだが、自分の非は認められる分はまだ大人だ。
もしもフォルテの場合は逆切れしていただろう。
ともあれ理由は不明だが見知らぬ少女と共に基地へと帰って来たバラードにワイリーが気だるそうに目を向ける。
ここ数日は整備室に籠りきりであった事もあり、ワイリー自身の疲労は限界に近い。
恐らくはバラードの報告を聞いた後で爆睡モードとなるだろう。
因みに爆睡モードとなったワイリーは最低でも三日は起きないと言われるぐらいに寝る。
「・・・でそこの小娘は誰じゃ?」
何時も以上に面倒臭げな顔でワイリーが少女を見据える。
対して少女は僅かに目を吊り上げバラードの背に隠れる様に身構える。
「ええと・・・名前ってなんスか?」
今の今まで名前も知らずに居たのかとエンカーらが呆れたのはさておき、自身に振られた少女は表情を強張らせる。
「わ・・・私の名前は」
自身の名前を名乗ろうとして目を泳がせる少女を見て誰もが悟ったであろう。
絶対に本名を言う気は無いだろうと。
だがたまたま二人のアストロマンがオドオドしながら見ていたテレビが回答を示してしまう。
因みにと言うか何故アストロマンが二人いるのかと言うと分身や立体映像の類ではなく、片方が悪のエネルギーを巡っての戦いの際に用いられたオリジナルでもう一人の方はキング事件の際に残されたデータを用いて生み出されたコピーである。
正直な所、生みの親のワイリーですらも見分けはつかない。
元より臆病な性格も原因なのだが何かあるとすぐに異空間に逃げ込んでしまう事もあって、ワイリーナンバーズの面々がアストロマンが二人居る事に気づいたのはキング事件から半年以上経った頃なのだから笑う他無い。
コピーされて生み出された方もオリジナルに変わらず臆病で基本的に人畜無害な性格である事もあって、オリジナル同様にあっさりとワイリー軍団に迎え入れられている。
一度アストロマンらに自分の同型機が居てどうなのかと聞いたが『今まで基本的に一人だったので仲間が出来て嬉しい』との事だ。
まあ本人達がそれで良いのなら良いのだろう。
「・・・んんっ!?」
ワイリーが声を上げながらテレビの方に鋭い視線を向けたのでアストロマン達がビクリと背を震わせる。
<謎のロボットの襲撃事件に関連して予定されていたカンパネラ公国のプライド=カンパネラ公女の会見が中止となりました。報道官によるとあくまでも安全の都合上とされていますが詳細は不明です。尚、今回の襲撃による被害は・・・>
テレビの画面にでかでかと映る少女の顔とバラードの背に隠れる少女は言うまでも無く瓜二つであった。
「はは~ん。こりゃワシにも分かるぞ。理由は知らぬがお主があの公王の娘か・・・」
ピクリピクリと眉を動かしながら底意地の悪い笑みを浮かべるワイリー。
「悪い事は言わん。自分の足で大使館なりあのホテルに帰れ。ワシらはお主の事は知らんしお主もワシの事は知らん。これで万事解決じゃの・・・」
高笑いをするワイリーだがバラードの背に隠れる少女がそれに従う筈も無く。
「バラード。お主が拾って来たんだからお主が返して来い。これは命令じゃ・・・」
「あ、いや博士。色々と事情があるみたいだし」
「そこらの猫や犬ぐらいなら構わんがこの娘に何かがあったらワシは無用な事で欧州の国々を敵に回す事になる。今はそれは避けたいんじゃ・・・分かるな?」
少女ことプライド=カンパネラを庇おうとするバラードに笑みを浮かべていたワイリーの顔からすうっと表情が消える。
蓄積された疲労もあるのだろうが普段は喜怒哀楽が激しいワイリーから表情が消えると言う事は、冗談抜きで激怒していると言う事になる。
暫しの沈黙の後、ワイリーがわざとらしく手を叩く。
「シャドー!!シャドーはおるか!?」
「ハッ・・・ここに」
ワイリーの呼びかけに彼の足元から姿を現すのはシャドーマンである。
「この小娘を元居た場所に送り返せ!!多少手荒にしても構わん!!」
「・・・御意」
主の命令を受けシャドーマンがゆっくりとバラードに歩み寄る。
「ちょっと博士にシャドー。俺の話を聞いて欲しいッス」
「博士の命令にござるよ。手前はそれに従うのみ・・・」
後ずさるバラードにシャドーマンが徐々に間合いを詰めていく中で後ろの方から大きな欠伸が聞こえる。
苛立った様にワイリーが振り返る中で当の本人は平気な顔をしていたものだった。
「何か騒ぎになっていると思ったらこんな女の子の身柄の一つで揉めるだなんて。伯父様やワイリー軍団の名前が泣くんじゃなくって?」
姪であるエストの言葉に鋭い視線を向けるワイリー。
普通であればこの時点で黙り込むだろうがエストの方は分厚い眼鏡を光らせ不敵に笑うだけだ。
やっぱりと言うか彼女も彼女で図太い。
「伯父様は悪の天才科学者。欧州どころか世界中を敵に回す野望の男と聞いていたのに正直失望よ。まさかここまでビビリだなんて」
言葉通り呆れた様子で息を吐くエストにワイリーが肩を震わせる。
「伯父様は女の子一人の身柄すら預ける事が出来ない程、器の小さい男でしたの?」
「なんじゃとーーーーー!!貴様!!」
エストの挑発とも取れる言葉に顔を真っ赤にして声を上げるワイリー。
「このワシを悪の天才科学者たるDr.ワイリーを侮るでないわ!!良いじゃろう!!小娘の一人や二人、ワシの下で預かってやるわい!!」
そう言ったもののすぐに乗せられたと顔をしかめるワイリーだったが言ってしまった以上仕方が無い。
シャドーマンもワイリーの発言を受け確認する様に振り返って来た事もあり、ワイリーは舌打ちをしつつ手を払う。
主の命令もあってシャドーマンも下がった事でバラードがホッとした様に息を吐いていた。
暫しの間、唸り続けていたワイリーであったが矢継ぎ早に着信音を響かせる端末を苛立った様にして取っていた。
「・・・ワシじゃ」
自身の不機嫌さを隠そうとせずにワイリーは端末に向かって口を開く。
通信相手からの話を聞くワイリーの顔が先程以上に険しくなっていくのが分かる。
「・・・分かった。報告ご苦労じゃった。ちょっとワシは今から出かける!!とりあえずお主らはそこの小娘の部屋の準備でもしておけい!!」
そうとだけ言うと踵を返しどこかへ行ってしまうワイリーに誰もが首を傾げるのであった。
その頃である。
ライト研究所では普段であれば決して生じないであろう重たい空気が場を支配していた。
原因の一つは不機嫌な顔をしたままその場に佇むフォルテのせいだろう。
どちらにせよ騒ぎになると言う事もあって事情聴取を受ける事が無かった彼だが、成り行きもあり宿敵の住む場所に来てしまったのだから不機嫌極まりない。
「ええと・・・どうぞ」
「・・・いらん」
苦笑いを浮かべコーヒーの入ったマグカップを渡すロックにフンと鼻を鳴らすフォルテ。
だったらもう帰っても良いんじゃないかと思うのだが、それはそれで気に食わないらしい。
どこまでも素直ではない弟に呆れつつパンクが出されたコーヒーを口に含む。
「あ・・・あのパンクお兄ちゃんにフォルテお兄ちゃん。アースお姉ちゃん大丈夫かな?」
不安げな顔で両者を見るフィーネ。
彼女は先程からライト博士が入っていた一室の扉を見続けていた。
拘束された際に突然意識を失ったアース。
事の重大性を察したライト博士は彼女への拘束を止めさせ、すぐさに自身の研究所へと彼女を運び込んでいた。
パンクにフォルテ、フィーネはその付き添いとしてこの場に留まっているのだが。
原因はいちいち考えるまでも無いだろう。
ボーンダインが放った拳を体で受け止めた際に動力炉に損傷を負ったのだ。
普通に考えて致命傷なのだが、痩せ我慢なのかアースは倒れる直前までその辺りを表に出す事は無かった。
拘束された際に限界が訪れたのはたまたま偶然であったが、ライト博士の目の前で意識を失ったのは不幸中の幸いであったと言えよう。
「心配だろうが任せる他あるまい。トーマス=ライトは我らのワイリー様に並び称される科学者だ。間違っても悪い様にはならんさ」
不安げなフィーネを宥める様に口を開くパンクにロールも笑顔を向けてくる。
「当たり前でしょ。ライト博士はロボット工学の父って呼ばれてるんだから。それにカリンカちゃんも手伝いに入っているし・・・」
研究所の作業場となっている一室にはライト博士に自称助手のライトットに今回はカリンカも加わっている。
父であるコサックと同じくロボット工学を学ぶ彼女が自ら志願してアースの修理を手伝っている。
「フン・・・どうだかな」
両手を組みながらフォルテが悪態を衝く。
「あの女は地球外の文明が生み出したロボットだ。そもそも俺らと違ってどうやって動いているのか詳しい理屈や原理も分かっちゃいない。あの糞ジジイですら辛うじて運用を可能している代物をお前らの所のが修理できるとは到底思えねえがな」
「ちょっと~うちの博士がワイリーよりも腕が悪いって言うの!?」
「人間的には問題点は多いがお前らの所よりは糞ジジイの方が上だろ?安全第一がモットーのそちらに比べればな」
生みの親の悪口にロールが即座に噛みつく。
フォルテもフォルテで言葉で返し二人は互いに睨み合いを始める。
一応と言うべきかフォルテもフォルテでワイリーの才能は認めていると言うべきか。
「・・・子供か」
呆れた様に口を開くパンクに今度は二人が睨んでくるので彼は溜息を吐きつつ大きく首を横に振っていた。
「あ、カリンカちゃん」
長時間の作業になったので一旦休憩する様に言われたのかカリンカが作業服姿のまま出て来る。
ロールに渡された飲み物を口にしながら、カリンカはパンク達を見る。
「あの・・・聞きたいんだけど。アースの・・・彼女のボディってどうなってるの?」
以前にも聞いた事がある台詞だと思いながらパンクはカリンカやロック達にルーラーズの事を簡潔に説明する。
因みに修理作業を行う直前に一時的に意識を取り戻したアースは、何時もの悪癖でライトットに拳をお見舞いしたそうなのだがライト博士が宥められ大人しくなったそうだ。
アースに殴られれば普通の人間であればただでは済まないのだがこの辺りは人格者であるライト博士のなせる業か。
余談だがワイリーの場合は有無を言わさぬ空気を発し、逆に相手の方が抵抗する気を無くさせる状態にするタイプだ。
「まあ言うなれば古代の遺跡を元通りに修復しろと言っている様な物だ。流石にワイリー様でも完璧にルーラーズを直すのは無理だろうな」
簡潔なパンクの説明にフォルテが鼻を鳴らす。
ライト博士の力ではアースを修復するのは無理だと言わんばかりだ。
場に気まずい空気が生じる中、カリンカが咳払いをしつつ作業の手伝いに戻ろうとした時であった。
ガタンッッ!!
ノックもせずに開け放たれる研究所の扉。
挨拶すら無く大股で入って来る人物の姿にロック達も言葉を失う。
「あ・・・あんた!!ワイリーじゃないの!?」
驚く様な声で自身の名前を呼ぶロールに悪の天才科学者は眉をピクリと動かすのみで返答はしない。
「ライト達は作業場じゃな?」
ロールを無視する形でパンクらに問うワイリー。
何故ここにと言うかその辺の諸々の疑問を抱く暇も無くパンクが頷いたのを見るや、慣れた足取りでワイリーはライト博士の居る作業場に入って行こうとする。
「コサックの娘、お主も手伝え・・・これは少々骨が折れるぞい」
通り過ぎざまにカリンカにそう声を掛けてそのまま作業場に消えるワイリーに一同は茫然とする他無い。
まるで嵐が過ぎ去ったとしか言いようがない瞬間だったが、この辺の他者の反応にいちいち歯牙を掛けない辺りはワイリーが天才と称するが由縁と言えよう。
「わ・・・私、ライト博士達を見て来るわね」
慌てる様にカリンカは作業場へと戻っていく。
残されたロックやパンク達は互いに顔を見合わせ苦笑いをする他無い。
「う~ん・・・なんて言うか」
「糞ジジイらしいな」
ロックの言葉を受けてフォルテが呆れた様に口を開き、両者は口元を緩める他無い。
慌ててワイリーの後を追ったカリンカであったが、あのワイリーが作業場に入って来たと言うのにライト博士は驚く事も無くすぐさに修復作業を再開していた。
「な・・・なんなんダスか?」
口を開けたままのライトットだったがギロリと眼光鋭くワイリーに睨まれ、慌てて手にしていた部品を作業台に運ぶ。
「南米の方で負傷した事で本調子では無かったが・・・先の襲撃事件で動力炉を完全に破損したか」
「動力炉に当たる部分なのだろう。彼女が普通のロボットであったら今頃死んでいたぞ」
ワイリーの独り言にライト博士は相槌を打つ様に口を開く。
共に作業の手は休めていない。
「彼女らルーラーズの構造は理解しかねるがワイリー、お前が手を加えた所は分かるぞ。ここの配線の結び方が強引すぎる、これではオーバーヒートを起こす可能性が高まる。事故を防ぐ為にもロボットの動力炉には安定性をだな・・・」
「安定など求めればこ奴らの絶大なエネルギーを有効活用する事は出来ん。ましてワシの部下として世界征服を手伝うロボットなのじゃ。多少の無理はしてもらわねばな・・・」
互いにそれぞれの口調を論議するかのように口にする二人だが、不思議と作業の効率が上がったように思えるのはカリンカの見間違いであろうか。
聞けばワイリーもルーラーズのボディの構造を完全には理解していないと言うのに彼の動きには迷いが無い。
ライト博士もライト博士でワイリーの作業の合間に助言を行い、ワイリーも全てでは無いが幾つかの言葉には従っている様に見えた。
後半の方は殆どカリンカはライトットと共に二人に言われたとおりに部品や工具を持ってくるだけとなっていた。
それだけ二人のレベルが常識を超える物であったと言う事である。
「よし・・・とりあえずはこれで当面は安全じゃ」
掌にアースのボディから取り出した亀裂の走った水晶を手にしほくそ笑むワイリー。
彼女の動力源となっていた超エネルギー元素に似た物体である。
ライト博士とワイリーは破損した動力源の修復が現状では困難と判断するや、既存の動力炉を彼女に改めて内蔵する方向に作業をチェンジしていた。
人間でいえば合うかどうか分からない心臓を入れ替える極めて危険な作業ではあるが、二人の天才の手で作業は僅か数時間で終わる事となる。
「戦闘能力はガタ落ちじゃが。まあ命には変えられん」
作業の終わったアースをシーツで包むとワイリーは指を鳴らす。
それを合図にワイリーから影が伸びたかと思うやアースの姿はその場より消え去っていた。
「ワシの部下を助けてくれた事には礼を言うぞい。設備やら部品も使わせてもらったんじゃ・・・これは代金代わりに置いておくとするかの」
アースのボディから取り出した水晶を作業台の上に置いてその場を去ろうとするワイリー。
「ワ、ワイリー。これは彼女にとって大事な・・・」
「フッ・・・ワシを誰だと思って居る。なあに・・・これの代用品の目途が付いているとしたらどうする?」
困惑するライト博士にワイリーが不敵に笑う。
現在のこの星の文明よりも数段は上の産物である超エネルギー元素の代用品など、簡単に見つかる筈が無いのだがこの男なら本当にやりかねない。
「久しぶりにお主と仕事が出来て楽しかったぞ」
「ワイリー・・・私は」
「お主の言いたい事は聞くまでも無く分かっておる。・・・がワシはこのままで終わる気は毛頭無いのでな。いずれにせよまた会おう」
屈託なく笑いながら自身の引き留めを断りその場を去ろうとするワイリー。
「ここでの用事は済んだぞい。アースはシャドーに命じてワシらの基地に運んでおいたのでな。お前達はフィーネと一緒に帰れ・・・じゃあの」
来た時と同様に足早に研究所を後にするワイリー。
外でワイリーのUFOの音がしたので来る時も恐らくそれで来たのだろうか。
「・・・むう」
残されたパンクが唸る隣でフィーネがその顔を見上げる。
「お姉ちゃんは大丈夫なの?」
「ああ・・・ワイリー様が修理をしてくれたのだからきっと大丈夫だろう」
「なら良かった」
心配げに見つめる少女に笑みを向けるパンク。
その顔に釣られたのか少女の方も屈託なく微笑むのであった。
ワイリー基地に運び込まれたアースが目を覚ましたのはそれからまるっと一日が過ぎた後であった。
「ご無事で何よりです」
ジュピターが安堵の息を吐く中で彼に迷惑を掛けたと礼を口にしつつ、寝かされていた作業台から立ち上がろうとするアースだったのだが。
ズルッ・・・。
まずに彼女は足を滑らせて動揺する。
この辺りは意識を取り戻したばかりだからと言い訳は出来ようが慌てて立ち上がろうとした所で腰に力が入らず、アースは困惑気な顔のまま地面に座り込む事になる。
「あ~・・・説明するぜ」
ワイリーから渡されたメモを片手にメタルマンがアースに口を開く。
殆ど勢いだけで書かれギリギリ文字としての体裁を保つメモだが、付き合いの長いメタルマンはそれを一応は読む事が出来た。
「え~掻い摘んで話すと。先の襲撃事件でお前の動力炉に搭載されていた動力源は完全に壊れました。よって現在搭載しているのは間に合わせの仮の動力炉です。あのライトと一緒に作業をしたので安全第一な日常的な動作が可能なだけの代物となっております。よって今のお前は戦闘行為が一切出来ない。てかやったら冗談抜きで命に関わるのでワシの方からもリミッターを掛けさせてもらった。修理の目途は立っているのでそれまでの間、大人しくしているように・・・ともあれワシは眠いので寝ます。ワシが起きるまではゆっくり過ごす様にとの事だ」
メタルマンの説明にアースの顔色が真っ青になる。
思えば体全体が重い様な気がするのは動力炉が変わったからか、それともリミッターを付けられたからか。
「し・・・暫くは俺達が業務を代わりますので隊長はゆっくりと」
「あ・・・ああ。た・・・頼む」
ジュピターの言葉に頷くアースの顔色は真っ青のままであった。
「まあワイリー博士が修理の目途は立っているって言うんだ。博士を信じな」
メタルマンの言葉も殆ど耳に入っていない様子のアース。
そんな彼女を置いてメタルマンはさっさと部屋から出ていく中、ルーラーズの面々がアースに近づく。
「隊長~心配しましたニャ~!!」
起き上がろうとした段階でプルートに抱き着かれアースは再びその場に倒れ伏す。
何時もであれば軽く受け止めるなり避けるなどしていたのだが、今はプルートの華奢なボディすらも重く感じられる。
「ブモォォォ!!隊長が重傷を負って俺達は心配で心配で・・・!!」
ウラノスが巨体を揺らしながら鼻息が届きそうな距離にまで近づく。
心配してくれる気持ちは有難いがデリカシーの無い彼に向って、何時ものアースの鉄拳が強かに決まると誰もが思った時だった。
カンッッ!!
何時もの様に放たれた拳はウラノスの顔面に金属音を響かせたのみで大した衝撃は無かった。
当のウラノスも驚いたようにアースの顔を見つめ、他の面々に慌てて引き離される。
僅かに痺れが残る手を見据えるアースの顔が先程の様に青ざめる。
ついで言えばプルートの体すらもどかす事が出来ない事に気づいてしまう。
「プルート・・・どいてくれないか」
「ニャッ・・・ごめんニャさいニャ」
困惑気味に口を開くアースにプルートはハッとなりその場から飛び退く。
一連の状況を見ていたネプチューンがわざとらしく咳払いをする。
「ワイリー博士の言う通り仮の動力炉もそうだけどリミッターを掛けたのは本当みたいね」
「つ・・・つまりは」
問いかける様に目を向けてくるマースにネプチューンは手を広げる。
「今の彼女はこの星の家庭用ロボット並に弱くなってるって事ね」
その言葉にアースが完全に凍り付く。
「まあメタルマンの言葉を借りるまでも無くワイリー博士を信じましょ。隊長も大丈夫だから・・・」
ニコニコと笑みを浮かべるネプチューンだがその言葉が届いているかどうか。
「という訳で暫定的にジュピターが隊長の業務をしなさいな。ワイリースターに待機している他の面々に仕事を任せるのも酷よ」
ネプチューンに仕切られ心配そうにしていたジュピターらがワイリースターに戻らされ、この基地にはマースとネプチューンが残る事になる。
「ハァ~こりゃ大変ね」
「・・・何がだ?」
翌日の朝になってネプチューンのぼやきにパンクが首を傾げる。
「隊長の事よ。戦闘能力が失ってるから完全に自信喪失よ」
「修理の為に武装を一時的に外す事は我々でもよくある事だが・・・」
現在のバラードやフォルテがそうである様にワイリーナンバーズと言うかロボット達の常識からすれば、一時的に武装や装備を外したりする事はままある事だ。
人間でいえば治療の為に点滴をしたり、腕や足をギプスなどで固定する感覚に近いと言える。
確かにその間は動きが思う様にならなかったりで不便ではあるのだが。
「アタシ達のアイデンティティーが何かぐらい分かってるでしょ」
ネプチューンの言葉にパンクは彼らと自分達では価値観や認識に違いがある事を今更の様に思い出してしまう。
「戦えなくなったロボットに価値なんて無いって徹底的にプログラムに植え付けられてるんだから。幾らこの星の影響でアタシ達全体が丸くなってもその辺の事を頭から拭うのは無理な話よ」
元よりモノを作る概念を持たなかっただけにネプチューンの話す言葉は闇が深い。
「まあ隊長の場合はちょっと事情が違うけどね」
「どう事情が違うのだ?」
「・・・察しなさいよ」
自身の言葉に首を傾げるパンクにネプチューンは大きく溜息を吐く。
「戦う事が出来なくなった・・・役に立てなくなった自分の同型機が廃棄処分よりも酷い扱いを受けていたのを知っているんだから。隊長が感じる恐怖は察して余りあるわよ」
「ワイリー様や我々がそんな扱いをする事は無いのだが」
「それでも拭えないのよ。簡単にはね」
ルーラーズを造った地球外文明の事は分からぬが、彼らへの扱いを鑑みるに正直褒められた物ではない事は分かる。
文明が滅しても尚、彼らを縛り付けるそれにパンクは内心で憤慨する他無い。
そんな話をしていた所でフィーネが向かいの席に座ったのを見て二人は会話を打ち切る。
その見た目もあるが純真な彼女には聞かれたくない話は結構ある。
「あらあらフィーネちゃん。この前よりも目玉焼きが上手く焼ける様になったわね」
「うん。エストお姉ちゃんに教えてもらったから。それよりもネプチューンさん。海の家で作っている料理を教えて」
「良いわよ~。じゃあ今度、アタシの海の家に来なさいな。フィーネちゃんぐらいの子が店番をしてくれたらお客さんも増えそうだし」
先にも説明をしたがスペースルーラーズ達にモノを作る概念は元々無かったのだが、概念が無かっただけで全く何も作れない事は無い。
ナパームマンと共に兵器造りに目覚めたマースもそうだし、ネプチューンの場合は海の家を経営するのに必要な料理全般が作れる。
二人が料理の話に花を咲かせる中で食堂の一角から声が響く。
「誰かジュース買ってきなさいよ」
「押忍!!ここには牛乳しか無いであります!!どうぞであります~」
ジト目で自分達に命令をするプライドに牛乳の入ったグラスを渡すのはパッショナーだ。
「欲しかったら自分で買ってこいッス。ついで言うとジョーの皆は召使じゃ無いッス」
成り行きから彼女を庇ったバラードだったが、噂以上に高慢ちきなプライドを見るに庇った事をすっかり後悔し始めていた。
当初こそ相手はお姫様と下手に出ていたのだが、スナイパージョーをパシリに使うわ口を開けば文句ばかりと軍団内の彼女の評判は極めて悪い。
仕事とはいえそんな彼女を守らねばならないナイトマンの苦労が窺い知れよう。
「あらあら~朝っぱらからパシリをさせようだなんて、困ったお姫様ね~」
わざとらしく口を開きながらプライドに向かい合う様に席へ座るのはエストである。
聞けば二人とも社交界などの席で知り合っているとの事で、何ともワイリー軍団の面々には遠い世界の話だがエストの方はプライドに気さくに接している。
プライドの方はツンと鼻を鳴らすのだが、それで簡単に引き下がるエストではないだろう。
「ワイリー博士は起きたッスか?」
「ああ・・・さっき一瞬だけ起きたわよ。起きて速攻でトイレに行ってその場にあった水と栄養食品食べたと思ったらまた寝ちゃった」
バラードの問いにエストが言う。
連日の激務もあったが一旦爆睡モードに入るとワイリーはエストの言葉通りの寝て起きるだけの生活リズムとなる。
暫くはこれが続くであろう。
「博士が起きるまでは仕方が無いとは言え・・・」
ネプチューンの目は遠慮がちに食堂に入って来たアースの姿を追っていた。
普段のそれとは全く違うすっかり委縮した様子の彼女を見据え、ネプチューンはパンクを横目で見る。
「こうなったら気分転換を図るしか無いわね。博士が寝ている以上、ワイリー軍団の活動も休止状態なんだから。お姫様達も巻き込んで・・・行くわよ」
「・・・?」
意を決するネプチューンに首を傾げるパンクとフィーネ。
そんな彼らにネプチューンは一見すると不気味にしか見えない笑みを浮かべるのであった。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇取り調べおよびあの人について
エアーマンとヒートマンがナイトマンから尋問を受けているが二人とも知らないのでどうしようもない。
ボーンダインに酷似したロボットと言えば彼だが、彼は現在別件で研究所の方には居ないらしい。
コサックの口から言えないのでリングマンはそれ以上追及できず。
余談だが普段の彼はメガミ版同様にカプセルで封印されている。
色々と複雑な事情がある様だ。
〇姫に関して
バラードと行動を共にしたのはカンパネラ公国の姫プライド。
リブート前だと名前はソランネでXシリーズ時代の彼女の遠い子孫がプライドだったのだが、この辺は大きく改変で別世界と言う解釈のエグゼから時代を合わせる形でプライドに。
性格の方は元ネタ及びリブート前と違って我儘かつお転婆に次いで言うとツンデレ。
見た目はエグゼの彼女を2~3歳は幼くした感じか。
ワイリーの足元には基本的にシャドーマンが張り付いている。
彼が個人的に忙しい時は別のロボが護衛を影ながらしており、基本的に完全に単体で行動する事は無い。
指名手配犯だし普通に命狙われてるだろうし。
ワイリーは世界征服を企んでいるので別に欧州の一国に恨まれようが知った事ではないが、現時点で不要な敵を作るつもりは無かったりとその辺は慎重である。
あと面倒な空気を感じ取ったのもある。
〇二人居るアストロマンについて
元ネタだとロクフォルのアストロマンはデータから復元したコピーなのでこの作品ではその解釈。漫画版だとどっちも本人だったが。
高い戦闘能力を誇るが反面非常に憶病ですぐに異空間に逃げてしまう性格が災いし、長らくキング軍団に参加しているのは本人だと勘違いされていた。
自らの意思で裏切ったテングマンと違い脅されていたと判断された事もあり、アストロマンの復帰には寛大な処置が取られたのだがそっちのアストロマンはコピーだった。
アストロマンが二人いる事に気づいたのはキング事件が終結して半年以上経ってから、たまたま基地内の食堂で二人が出くわした事で判明した。
それも当初はどっちかがコピービジョンの立体映像と勘違いされたりと非常にややこしい。
同じ姿と人格の同型機と居ると人格破綻の危険性があるのだが、二人とも友達が出来たと思っているので仲は非常に良い。
〇ライト博士について
腕はワイリーに僅かに劣るが彼も十分に天才な博士。寧ろこの手の修理に関してはワイリーよりも丁寧かつ上手い。
異性嫌いなアースに殴られそうになるが自分は敵じゃないオーラを全開にし、不承不承ながら彼女の体に触れる事が出来るぐらいに出来た人。
ワイリーの場合は『黙れ』と言わんばかり首根っこを掴んで、相手の意思など関係なしに修理を始める系。
どちらにせよアースのボディに触れれる数少ない人と言える。
ライトットは吹き飛ばされたがこの辺はお約束。
〇カリンカの腕前について
コサック博士の手伝いもあり基本的なロボット工学の知識はあるがまだまだ卵。
大学生のエストに劣るのが現状だがライト博士の手伝いが出来るだけ凄いと言えよう。
〇共同作業について
性格も正反対、方針も全く以って逆な二人だが意外にも息は合う。
寧ろ互いの欠点を補う事が出来るだけに名コンビなのだが・・・。
ロックとフォルテみたいなもんか(汗
〇修理後のアースについて
この前の負傷の際はまだ武装が無いだけで膂力などはそのままだったが、超エネルギー元素に酷似した動力源を取り除いた事もあってかなり弱体化している。
スペック的に家庭用のロックよりかは強い筈だが、携帯式の武器を持ってジョー達数人に勝てるかどうかのライン。
ルーラーズ達がその気になれば下克上も出来るが彼らも彼らでそんな気は無いのであった。
色々と隊長ラブである。
〇爆睡モードについて
当然ながらワイリーの生活リズムは不規則。数日間ぶっ通しで作業したと思えば逆に数日間死んだように眠る時もある。
とは言えその間も一応トイレに起きたり水分を補給したりはするが、それでも数分後には寝る。
ワイリーの天才故の変な所と言う所で書いてみた。
〇母星での扱いについて
戦えなくなったルーラーズの同型機は母星では解体処分されていた。また新しく生まれ変わるとも言えるがこの辺は徹底的に道具としてしかロボットを見ていなかった異星人の冷徹な合理性と言えよう。
アースの同型機達が中途半端に戦えなくなるとどうなったのかは色々と察して欲しい。
詳しく書くと対象年齢が上がる(コラ
そう言う意味で察して欲しい。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。