「ようしっっ!!これで今までの鬱憤も晴らせるぜ!!」
漆黒のアーマーを身に纏った少年が握り拳をしながら作業室より飛び出て来る。
目を覚ましたワイリーによって武装の修理を終えたフォルテである。
彼に続いてバラードもアーマーを身に纏った姿で出て来る。
正体不明の敵に連れ去られた女性達を救う為に多くの者達が出払っている事もあり、普段はロボット達で往来が激しいワイリー基地もがらんとしていた。
「留守は我々が預かる・・・お前達は言うまでもないが」
「ひと暴れして来るッス!!」
ワイリー基地において留守番を任されたエアーマンが見送る中、バラードとフォルテがそれぞれ飛び出していく。
「レントの追加装備の調整も出来たし。むはははは・・・奴らのデモンストレーションには丁度良いわ」
と作業室から出て来たワイリーがほくそ笑む。
追加装備の調整など何時の間にと思われるが、どうやら寝る前に作業用の機械に自動で組み立てておくように設定していたらしい。
基地から出て行ったバラード達と入れ違う形で基地内に戻って来るのはサングラスを掛けた黒コートの青年。
ダークマンⅣを背後に伴った彼はワイリーに向かって恭しく一礼をする。
「それで・・・報告は聞いたが」
「はい・・・無事に手に入れてきました」
ワイリーの問いに青年ことプロトジョーは手にしたアタッシュケースを開く。
ケースを開けた瞬間、辺りに淡い光が生じるのもあってエアーマンが反射的に身構える。
「博士・・・これは?」
「プロト達にちょいとお出かけしてもらってな。兎にも角にも超エネルギー元素と同質の物体を手に入れてもらって来た訳じゃ」
ケースの中に入っているのは拳大程の光を放つ水晶。
それに手に恍惚気な笑みを浮かべるワイリー。
よくよく見ればダークマンⅣやダークマンⅡもプロトと同じアタッシュケースを手にしている。
「本来であればランファント遺跡群に取りに行きたかったがあそこは政府軍が目を光らせておるし、アルゴスなる者が居る事を考えるにそこには行かんで正解じゃったな」
喉を震わせながらワイリーは掌で水晶を転がす。
「いずれにせよこれでアースを修理出来ると言うものよ。奴だけでなく他の者もな・・・まあアースの方の修理は救出された後で良いとしてまずはあれよな」
懐に水晶を入れながらワイリーは顎でエアーマンを促す。
どうやらワイリーは超エネルギー元素と同質の水晶を使い誰かを修理するつもりの様だ。
プロトとダークマンⅣもエアーマン同様に作業を手伝うべく彼の後ろをついて歩く。
「長年動力炉の問題が解決せんかった故に長らく封印されていたんじゃが・・・サプライズで復帰させるには丁度良い。ましてラ・ムーンの従者とか言うアルゴスにぶつけられればあの時の仕返しも出来るしのう」
そう言って作業室の機械を操作し奥の格納庫より一つのカプセルを作業台まで移動させるワイリー。
「こ・・・こいつは」
エアーマンが驚いたような声を上げるのも無理は無い。
ランファント遺跡群での戦いで失われていた筈のロボットがカプセルの中で眠りについていたのだ。
「さて・・・超エネルギー元素改め超エネルギー結晶の取り付け作業を行うとするかのう」
手早く作業服に着替えながらワイリーが工具を手にする中でプロトが彼の耳元で何やら囁く。
「ほう・・・現地には奴が居たのか?時刻で言えば式典での襲撃事件があった頃の筈じゃが・・・となれば」
一瞬だが思案する様な顔をするワイリー。
「あの娘が攫われたとなればコサックもあれを投入せざるえまいに・・・これは面白くなって来たのう」
再び薄笑いを浮かべながらワイリーは目の前の作業に集中し始める。
エアーマンらはそれを慣れた手つきで手伝い始めるのであった。
「早かったじゃねえか」
バラードとフォルテが集合地点に辿り着いたのを見るやメタルマンが片手を上げて彼らに声を掛ける。
敵が拠点としているらしい廃工場から数キロ程、離れた資材置き場を集合場所とした面々。
「避難は完了したか・・・分かった」
端末を手にしたリングマンが部下からの報告に頷きながら一同に振り返る。
「一般市民の避難は完了した。表前はキング事件の際に生じた不発弾の処理と廃工場内に残された警備ロボットの処理としている。まあ普通に暴れても多少はOKと言う訳だ」
「てかあの工場ってなんなんスか?」
リングマンが説明する中でバラードが尤もらしい疑問を口にする。
長年都市郊外に放置されたままの廃工場。
バラード達もある事は知っていたが思うに自身らも含め殆どの者が再利用する事も無かった。
「あそこは何時ぞやの一件でお前達が潰したマフィア・・・ドフォーレ・ファミリーが所有していた。施設自体は組織が壊滅する前から打ち捨てられていたみたいだがな」
『裏取引』をするにはうってつけの場所だっただろうと最後にリングマンは付け加える。
ともあれ持ち主不在となった廃工場は今や正体不明の敵が潜伏する一種の魔境と化している。
ワイリー軍団以外にもリングマンも始め多くの高性能ロボットが集まるが、敵の実力を考えるに過剰とは言えないだろう。
まして人質を取られている事を踏まえれば人員は一人でも多く確保しておきたい。
「全員そろったのだな?」
今か今かと逸る気持ちを抑えていたナイトマンが口を開く。
それぞれのロボット達が互いに顔を見合わせる。
この期に及んで臆する者は誰も居ない。
「君と一緒に戦うのはシンフォニーシティ以来だね」
「フン・・・まさかまた組むとはな」
遠慮がちに微笑むロックにフォルテは鼻を鳴らす。
「互いの立場は異なるが拉致された者を救いたい気持ちは一緒と思いたい。連携して事に当たる事が何より重要だ」
「まあ俺らが組めば勝てない相手は居ないさ」
パンクとエンカーの言葉にロックが力強く頷く。
「おおおぉぉぉ行くぞストーン」
「了解だガッツ!!」
力自慢が売りのガッツマンとストーンマンが拳を重ね合わせた時だった。
「それでは・・・各自作戦を」
コサックが端末を手に作戦に開始するロボット達に向かって合図を送ろうとする。
「開始するっっ!!」
彼の言葉を合図に一斉にロック達が動く。
<火力支援を行うぜぇぇぇ!!>
端末越しに響くボンバーマンの声。
事前に工場を見下ろす小高い崖に陣取ったボンバーマン、ナパームマン、マースにレントの四人による砲撃が廃工場周辺に降り注ぐ。
ロール達の身に危険が及ぶ可能性があるので工場その物には攻撃は行えないが、砲撃は敷地内にある壁などを破壊し障害物を強引な手段で取り除いていく。
「GO~!!ダルセニョー!!」
「ヒヒーン!!」
真っ先に先陣を切るのは馬型のサポートメカに跨ったパッショナー。
彼に続く形で敏捷性に優れるリングマン、ファラオマンが先を進む。
稼働する防衛兵器を勢いそのままに破壊するパッショナーに追随する二人に遅れる形で、ナイトマンが騎士団を率い廃工場に迫る。
「アイアンナイツ、陣形を保ちつつ突撃っっ!!」
ナイトマンが号令を出し楯を持ったロボット達が砲撃で破壊された壁の箇所から敷地内へと踏み込んだ時であった。
ドォォォォンッッ!!
破壊された工場の壁をぶち破りながら姿を現すのは巨大な恐竜を模したメカだ。
「メカザウルスだとっっ!?」
驚愕するナイトマンらを尻目にメカザウルスを先頭に複数体のヤドカルゴまで姿を現す。
「こやつらは確か・・・」
炎を吐き出すメカザウルスにナイトクラッシャーを食らわせつつ、ナイトマンがメタルマンに振り返るが。
「いやいやメカザウルスはそっちが量産化してるじゃねえか。てかヤドカルゴの方も俺らは知らねえよ」
大きく手を振るメタルマンであったが跳躍したヤドカルゴに危うく押し潰されそうになる。
「同士討ちにだけはなるなよ。とにかく足を止めるなっっ!!先に行ける奴は先に行け!!」
メタルマンの言葉を聞いてか聞かずかメカザウルスを相手取るナイトマン、ヤマトマンらの脇をすり抜ける形で何人かが先を進む。
「ったく・・・馬力と装甲はあるが所詮は単純な思考回路しかもたねえ奴だ。俺らが負ける要素はねえ!!」
メタルブレードを連射する彼に続きガッツマン、ストーンマンがヤドカルゴを殴り伏せる。
「キャハハハハッッ!!燃えるっっ!!」
複数体のヤドカルゴを前にメタルマンを中心にしたメンバーがそれぞれの武器を敵に向けていた。
「この先にロールちゃんが!!」
半ば崩れかかった工場内にロックらが入った瞬間、工場内の灯りが灯る。
反射的に身構えるロックらの眼前で液体が大きく盛り上がる。
何時ぞやの式典と同じく水を素体としたアクアデビルがその巨体を揺らすのだが。
ズドドドドドドドドドッッ!!ドガァァァァンッッ!!
言葉も無くバスターを連射したフォルテとバラードの放ったバラードクラッカーをそれぞれコアに食らい瞬時に爆散するアクアデビル。
「・・・邪魔だ」
「でっかい雑魚を相手にする暇はねえッス!!」
唖然とするロックらを尻目に先を進むフォルテとバラード。
彼ら二人は人質の救出なり強敵の撃破をロックと競うつもりなのか。
そんな彼らに苦笑するロックであったのだが。
ヴヴヴヴヴヴヴヴッッ!!
不意に周囲の風景がぶれると思った瞬間、ロックが空間の割れ目に飲み込まれる。
「一名様ご案内~!!」
笑い声と共にどこかふざけた調子で声を上げるのはエキドゥナである。
「なろ・・・てめえ!!」
両手の周囲を歪ませるエキドゥナにフォルテが食って掛かろうとするがその彼は自ら飛び込む形で姿を消してしまう。
「飛ばされたい方はどなた~?ハイハイハイ~♪」
次々と掌より歪曲させた空間の割れ目を発生させるエキドゥナを前にフォルテに続いてバラードやエンカー、パンクも成す術無く飲み込まれる。
彼女は遅れてやって来たエレキマン、カットマンにアイスマン、ファイヤーマンに目を向ける。
「さあ貴方達も私の力で彷徨いなさいな・・・永遠にっっ!!」
クスクスと笑いながら再度空間を歪ませるエキドゥナであったが。
「・・・?」
自身の放った歪みが掻き消され彼女は目を大きく見開いた。
反射的に目を鋭くさせる彼女に同じく空間の割れ目より顔だけ出したロボットが泡を吹く。
「あわわわわっっ!!」
「やばいよやばいよっっ!!」
互いに見合わせながら恐怖に体を震わせるのは二人のアストロマンだ。
元々異空間を操る能力を持つ彼らはエキドゥナの力を相殺する事が可能としていた。
まごまごしてしまいがちな臆病な性格故にロックやフォルテらを守る事は出来なかったが、これ以上の被害を増やす訳にはいかないと勇気をふり絞り干渉を行ったのだ。
「なんだか分からねえが・・・」
「そっちの方は任せたぞ」
ローリングカッターを手に身構えるカットマンに続きエレキマンが頭上のアストロマンに声を掛ける。
自身の力で飛ばす事が出来ないと判断したエキドゥナは指を弾き、伏せていた自身の部下達に合図を送る。
直立歩行した爬虫類を思わせるロボットとも普通の生命体とも判断出来る者達がカットマン達を取り囲む。
それと同時に周囲に霧が立ち込めてくる。
屋内にも拘わらず不意に出現した霧にエレキマンが低く呻く。
当然ながら自然現象ではないのは薄笑みを浮かべるエキドゥナの顔を見るに明らかだ。
「一応言っておくけどヴォイドとファントムマンに頼まれたのよ。標的のロックマンやフォルテにキラーズが現れたら各々が待つ場所に運べとね。まあ残り物の貴方達は私とガード達でお相手するとしましょうかしら」
異空間に飛ばされたと思われたロック達が無事である事を面白げに語るエキドゥナ。
「それにしてもまさか自分から異空間に飛び込んでくるなんて、ロックマンとか言う不完全な機械も意外に好戦的よね。あと口も少し悪かったけど目的の場所には運べたからヨシね」
独り言の様に呟く彼女の言葉にアイスマンが首を傾げる。
「あの~すいません」
今にもエキドゥナガード達が襲い掛かってきそうな中、アイスマンが手を上げて質問をする。
「は~いどうしたのかしら?遺言でも残したくなった?」
「その好戦的だったって言うロックマンって黒かったですか?」
ニコリと屈託無くとんでもない事を聞く彼女にアイスマンが困惑気に問う。
「確かに黒かったけどロックマンってラ・ムーン様を倒したのだから、あれくらい血の気は荒いんでしょ?」
「ああ・・・なんて言うか別に良いです」
(フォルテとロックを勘違いして覚えてるなこの人・・・)
きょとんとした顔で首を傾げてくるエキドゥナにアイスマンが内心で呆れつつも、質問を打ち切り彼は目の前の相手に集中するのであった。
箱の中に閉じ込められてどれだけの時間が経ったのか。
音も響かぬ中で自身の体内にある時計だけが虚しく現在の時刻を告げる。
無駄なエネルギーの消耗を避ける為にスリープモードに移行しようかと考え始めていたロールであったが、不意に己を閉じ込めていたはずの箱が開いた事もあり困惑する。
恐る恐る外に出た彼女が見たのは黒衣を纏った一人のロボット。
「あ・・・あんたは?」
「外ではロックマンのみならずワイリー、コサックナンバーズ達が我らと交戦を始めている。奴らを誘き寄せた時点で人質としての貴様らの役割も終わりだ」
マントを翻し己に背を向ける形でロールに状況を説明するのは。
「我が名はヴォイド。虚無の者にしてまつろわざる存在・・・」
無機質な声を響かせるヴォイドにロールは警戒する様に身構える。
目の前に確かに相手が居るのは分かるのだが、エネルギー感知器に一切反応がしないどころか目を閉じてしまえばそのまま居なくなってしまうのではないかと思わせるぐらいに目の前の相手は普通とは違う気配を身に纏っていた。
「警戒するな。先にも言ったが既にお前には人質としての価値は失われた。だからと言って殺すつもりも無いから安心しろ・・・寧ろ私としては感謝したいぐらいだ」
「か・・・感謝って」
「何度も言うがお前の存在のお陰で奴をこの場に引っ張り出す事が出来たからな。我が宿敵をこうして迎え撃つ事が出来るのだから・・・」
ヴヴヴヴッッッ!!
困惑するロールを他所にヴォイドが一室の頭上で空間が歪むのを見るや、小さく笑みを浮かべる。
「貴様とこうして戦うのも随分と久しい・・・」
今までの無感情な姿とは対照的にどこか恍惚気な笑みを浮かべたヴォイドであったのだが。
ドスンッッ!!
「いてええぇぇぇぇ!!あの野郎・・・何をしやがった!?」
尻餅を衝く形で地面に降り立ったのはフォルテ。
そんな彼の姿を見るなりヴォイドの顔から感情が消え失せる。
「エキドゥナめ・・・私は奴を所望したのだが」
遅れてその場に飛ばされてくるエンカーに視線すら向けずにヴォイドは大きく舌打ちをする。
「てめえは・・・あの時の」
「・・・・・・」
自身を指差すフォルテに興味など無いとばかり鼻を鳴らし彼は懐より小さな柄を取り出す。
ヴンッッ!!
柄の先より生じるのは光の刃。
現代において携帯用の兵器として未だ実用化されていないビームセーバーだ。
「お前が南米で色々やってくれた奴・・・か」
エンカーがバリヤードスピアを構えつつじっとヴォイドを見据える。
一瞬だが怪訝な顔となるエンカーだがその彼を押し退ける様にフォルテがバスターを構え前に踏み出す。
「クソジジイのお陰で今の俺はあの時と違って万全の状態だ。あの時はテュポンやソローの後だったから満足に戦えなかったが・・・」
「だからどうした?万全の状態だから私には勝てる・・・と言いたいのか?」
得意げな顔で己に口を開くフォルテに対するヴォイドの声には僅かながらの怒気が孕んでいた。
「手にした力すら満足に扱えぬくせによく囀る」
吐き捨てる様に言い放たれる言葉にフォルテの眉間に皺が寄る。
「なんだと・・・」
「もう一度言ってやろうか?フォルテよ・・・お前は弱い。今のお前ではロックマンの足元にも及ばぬ・・・そしてこの私には絶対に勝てん」
煽る様に口を開きながらヴォイドが腰を落とす。
そんな彼にフォルテもバスターを突き出しながら身構えるのであった。
「エキドゥナの空間を渡る力を封じ込めるとはな・・・不完全な機械とは言えなかなかやる様だな」
アストロマン二人の干渉もあって当初の予定通り廃工場内の各所に攻め込んで来た者達を誘い込む事が出来なくなったアルゴス達。
無数の眷属達と共に一室で待ち構えていた彼だったが、後が続かないと判断した後は拘束したプライドを引き連れ仮設の司令室で施設内の様子をモニター越しに見つめる事となった。
言うなれば様子見なのだが元より待ち構えるつもりだっただけに多少の時間の余裕が出来たと言う事にも繋がる。
「既にこの娘の生体データは送り届けた・・・もはやこの場で戯言を興じる必要はないのだが」
「ロックマンを始めとする邪魔者は一人でも多く潰しておきたいってか?」
何時の間にか己の背後に居たソローにアルゴスは目を細める。
「エキドゥナの一件に関しては詫びておこう」
エキドゥナの手で石にされてしまった事を根に持っていると判断し、アルゴスは普段の不遜ぶりからは意外なほどにあっさりと己の非を詫びる。
「何時ものお前さんらしくねえなぁ・・・どういう風の吹き回しだ?」
「異星の人造神たるお前と戦うほど我には余裕が無いのだ。仮に貴様と戦うのであればロックマンらを倒した後だ」
己とは戦う意思を見せようとしないアルゴスにソローも『フン』と鼻を鳴らすのみでそれ以上は何も追求しようとはしない。
彼はアルゴスの隣に並び立つと複数のモニターに目を向ける。
「今回俺様は何もしねえからな」
「了解した。寧ろ貴様には次の一手で動いてもらうつもりだ」
ソローの言葉に相槌を打ちつつアルゴスは巨大な目を蠢かせる。
「コサックナンバーズ共がパッショナーと先行か・・・体よく柔らかき人間共を閉じ込めている箇所に近づきつつある」
アルゴスが司令室にあるパネルを操作しほくそ笑む。
「目には目を・・・コサックナンバーズにはコサックナンバーズを当てるとしようか」
モニターに映される拘束カプセルを遠隔操作で起動させるアルゴスにソローは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「グオオオオォォォォォォッッ!!」
施設内のどこかで聞き覚えのある獣の咆哮にロックがハッと目を覚ます。
エキドゥナによって成す術無く別の場所に飛ばされた彼は強引に飛ばされた事もあってか転移先で意識を失っていた。
慌てて上体を起こす彼だが目の前を光弾が掠めていくのを見るや即座に起き上がる。
「ロックマン・・・起きたか」
「早く起きろッスよ!!」
安堵する様に息を吐くパンクに炸裂弾を放つバラードがそれぞれ声を掛けてくる。
バシュバシュバシュバシュッッ!!
次々と自身らへと光弾を放ってくるのは黒子の姿をしたジョー達。
便宜上クロコジョーと言うべき存在の彼らは、ジョーシリーズにはあるまじき軽快な動きで周囲を飛び跳ねる。
通常のスナイパージョーと違い楯を持っていない事から防御力や耐久性には劣る様子だが、トリッキーな動きが厄介なのととにかく数が多い。
パンクとバラード両名を相手取りながらもジリジリと包囲網を狭めていくクロコジョー達。
「寝ていた分、働けッス!!」
「分かってるよ」
バラードの言葉にロックは苦笑しつつもその場で跳躍する。
「パンクにバラードっっ!!伏せてっっ!!」
瞬時にボディカラーが変化するのを確認するまでも無く、二人はその場に倒れ込む様にして伏せる。
「ライトニングゥゥ!!ボルトォォォッッ!!」
ロックの叫び声に呼応し辺りに電撃の嵐が吹き荒れる。
キング軍団の幹部であったダイナモマンが使用した特殊武器をロックはクロコジョー達に向けて放っていた。
一瞬の内に半数近くが破壊されるクロコジョー達。
彼らが楯を装備したスナイパージョーであればもう少しだけ被害は少なかったかもしれないが、敏捷性を得る為に防御力を捨てた彼らにとってロックらを包囲した事が却って裏目に出てしまう結果となる。
「やるッスね」
「ともあれ包囲網は崩れた・・・後は何とでもなる」
バラードとパンクの称賛の言葉に笑みを浮かべるロック。
一瞬の間でこの場の状況はあっさりと状況を一変させられた形となるのだが、クロコジョー達は仲間達の屍を乗り越え尚もロック達に光弾を撃ち放ってくる。
「このジョー達。カブキマンが暴走を起こした時にも居たジョーだ」
見知った顔と言える敵にロックが声を上げた時だった。
「・・・ダークニードル」
ぼそりと呟く様な声が響いた瞬間、ロックはその場より跳躍する。
ズドドドドドドドドドドッッッ!!
数体のクロコジョーをも巻き込みながら先程までロックが居た場所に無数の棘が地面より出現する。
数秒後には四散する棘を横目に彼はその場に舞い降りる黒衣を纏ったロボットに身構える。
「全く・・・お二人が居なければそもそもクロコジョー達を繰り出すまでも無くロックマンを始末出来たと言うのに」
舌打ちをしつつファントムマンは宙に浮かびながらロック達に恭しく一礼する。
「私の名前はファントムマン。ロックマン、貴方とこうして出会うのは・・・初めてですね。カブキマンの一件ではお世話になりました」
フードの向こうで笑みを作りながら全身より闇を放出するファントムマン。
ファントムマンが軽く手で合図をするや奥の方から伏せてあったクロコジョー達が姿を見せる。
「このままジリ貧に追い込もうと思いましたが先程の系統の特殊武器を使われると分が悪いと判断しましたので、私自らが出る事にしました。やはりあの御方の敵と言うだけの事はあります」
目を細めロックを見るファントムマン。
「てめえ・・・何者ッスか!?」
「見ての通りの者です。名前は先程名乗りましたよバラードさん」
バラードの啖呵をファントムマンは小馬鹿にする様にして返す。
そんな敵に歯噛みするバラードはさておきとパンクがじっと視線を向ける。
「貴様がファントムマンか・・・こうして会うのは初めてな筈だな」
「・・・そうなりますね」
探る様なパンクの言葉にファントムマンが僅かに瞳の色を変える。
目深にフードを被っている事もそうだが、相手の全身より噴き出す闇色の煙によって外から相手の表情を窺うのは難しい状態だ。
ビキビキビキビキビキッッ!!
「いずれにせよ貴方達には死んで頂きます」
先程の一撃と同じ特性なのか自身から噴き出る闇を掌の上で結晶化させていくファントムマン。
その水晶が勢いよく回転したと思った瞬間であった。
「ダークマターニードル!!」
突如として弾け飛んだ無数の欠片が銃弾の様に辺りに吹き荒れていた。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇タイトルについて
余談だが遂にと言うか前編と付くようになった。前編があると言う事は後編があり、もしかすれば中編があるかも知れない。
普通は他国籍連合VS○○としたい所だが敵の方が組織名を名乗っていないと言うかそもそも組織なのかも不明なのでこういったタイトルとなった。
〇ワイリーについて
フォルテとバラードは速攻で修理し描写は省いたがパッショナーとレントにも追加装備を預けている。
プロトジョーことブレイクマンをとある場所に派遣していたのだが、彼は無事に超エネルギー結晶を入手して帰ってきている。
色々伏線を出しているのだがそれはまた今度となる。
〇廃工場について
以前のあとがきにも書いたが地元では心霊スポットとして有名であった。
運営していた会社倒産後にドフォーレファミリーが買い取り、裏取引の現場に使っていたが彼らがパンク編で警察に逮捕されマフィア組織も壊滅。
そのまま打ち捨てられていた所をアルゴス達が仮の拠点として使う事となった。
工場跡地ではメカザウルスやヤドカルゴなどの巨大ロボが居るなど、かなりの戦力が潜んでいた。
突入前にボンバーマンらが火力支援を行った事で半ば無力化されたが、ブービートラップ的なトラップも無数に仕掛けられていた。
〇各キャラの状況について
描写していない面々も居るのでここに記載する。
火力支援組はボンバーマン、ナパームマン、アース、レント。それの護衛にオイルマンとタイムマン。メガガンダーラーズからバスターロッドとハイパーストームが待機していた。
メタルマン、ヒートマン、ストーンマン、ガッツマン、ナイトマン、ヤマトマンVSメカザウルスとヤドカルゴ達。
エレキマン、ファイヤーマン、アイスマン、カットマンとアストロマン二人VSエキドゥナとそのガード。
フォルテとエンカーVSヴォイド
ロック、パンク、バラードVSファントムマンとクロコジョー多数。
パッショナーとリングマンらは先行、現状では最も奥に居る形。
それと描写していないがネプチューンとダイブマン、メガウォーターの三人は下水道からの侵入を行っている最中となっている。
〇エキドゥナについて
彼女の空間転移の技は予備動作が僅かに空間が歪むだけと言う事もありロックらを再び連れ去る事に成功。
ロール達を拉致した時と同様にロックらを廃工場の各所に飛ばしてしまった。
作中でアストロマンに干渉され妨害されたが、技術的には別系統の技である。
アストロマン二人の存在もあり、エレキマン達を実力で排除せざる得ない状況となる。
本来はエレキマン達をアルゴスの居る場所に送り込む予定であった事は記しておく。
〇ヴォイドについて
やはりというかロックと戦いたかったがエキドゥナの大雑把な転移もあってフォルテが送られてきた。
彼からすると大外れも良い所である。
だが彼はこの結果を知っていた筈なのだが。それでも少しは変わるかなと期待していたらしい。
〇ファントムマンについて
遂にと言うかエンカー編で出て以来の本格的な対決となった。
彼女が全身から吐き出す闇色の煙は悪のエネルギーからくるもの。
それを結晶化させたり硬質化させたりしての攻撃を得意とする。
部下はクロコジョー。性能は作中の通り装甲を犠牲にして敏捷性を高めている。
素体そのものはスナイパージョーの使いまわしだが、人格はオミットされている為か台詞は無い。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。