「スクリュークラッシャー!!」
パンクが高速回転弾をクロコジョー達に投げ放つ。
貫通力に特化したこの武装はメタルブレードと同じ材質の物理的なノコギリとエネルギーによる物の二種類がそれぞれ搭載されている。
対ロックマン用ロボットと言う事もあるが仮に相手がどちらに有効な障壁を張ろうとも、放つ武器の属性を使い分ける事が出来ればたちまち無意味なものと化す。
ワイリーが宿敵撃破の為に賭ける執念の一端が垣間見えると言えよう。
何体かのクロコジョー達がスクリュークラッシャーに身を貫かれる中、ロックがファントムマンに肉薄せんと跳躍する。
先程全身より無数の棘を放ってきたファントムマン。
咄嗟に崩れた壁などを障害物を楯に難を逃れた三人であるが、一瞬でも遅れれば今頃致命傷を負っていただろう。
そして未だにその能力の全貌を見せぬ相手にロックは慎重に対処しようとするのだが。
「ハイパーロックバスター!!」
宙に浮くファントムマンに光弾を放つロック。
それを前にファントムマンは避けようとせず迫る光弾をじっと見据えていた。
ロック自身も半ば牽制の為に放った一撃であり当たるとは思っていないだけに相手の動きに首を傾げる。
バチンッッ!!
迫る光弾に掌を翳しそれを弾くファントムマン。
その衝撃に僅かに後方に退くのだがローブの向こうでファントムマンが目を細めたのがロックには分かった。
「成程・・・これがハイパーロックバスターの威力。一撃として見れば大した事は無いですが何度も食らう或いは弱点に当たれば致命傷は避けられませんか」
反芻する様に頷きながらファントムマンがロックを見据える。
四度目のワイリーによる世界征服計画よりロックに搭載されたロックバスターのチャージ機能。
現在では当初よりも改良が加えられハイパーロックバスターとなっているが、単純な威力で言えば高性能ロボット達の武装には劣る面が多々ある。
まあ単純な数値的な強さがロックマンとしての強さではない事は付け加えておく。
「スクリューアタック!!」
「・・・フッ」
自身のボディを弾丸に変え突っ込んでくるパンクに足元の闇に姿を消す事で回避するファントムマン。
壁に跳ね返り人型に戻るパンクの背後を衝く形でファントムマンが掌を広げる。
ズドドドドドドドッッ!!
両手より放たれるのは漆黒の光弾だ。
色こそ違えどロックバスターなどのビーム系の光弾と思われるそれを前にパンクが身構えるのだが。
「リーフシールド!!」
パンクとファントムマンの間に割って入ったロックが放たれた光弾を防ぎ切る。
「ぬう・・・礼を言うぞロックマン」
「気にしないで」
小さく頭を下げるパンクにロックは遠慮がちな笑みを浮かべるのだが。
「馬鹿ですね。パンクなど構わずに私に一撃を加えれば良かったものを」
「それを言うって事は僕が君に攻撃を加えた際の対応策を持っていたと言う事だよね?」
見下した様に口を開くファントムマンだったが、逆にロックに己の考えを見透かされ低く唸る結果となる。
(良い具合に煽るな・・・)
と内心でパンクがロックの言動に苦笑する。
彼自身の性格を鑑みるに狙ってやっているつもりは無いだろうが、ライトナンバーズを洗脳して行った最初の世界征服計画よりロック自身の戦歴はある意味で他のあらゆるロボットを超える物と言えよう。
それ故にロックはその性能以上の実力を発揮する事が出来る。
彼の強さは武器トレースシステムによって他のロボットの弱点を衝く事が出来るからと評する声もあるが、パンク自身はそうではないと考えている。
先も言った様に彼の強さの根源は数々の激戦を制した末に手に入れた経験による戦術眼とそして何より。
(私の様な本来であれば敵である者にすら助けに入ってしまう優しさを持つ事か・・・私達には到底手に入れる事が出来ん物だ)
尤もその優しさは時として仇となるのだが、その辺りもご愛嬌と言うべきだろうとパンクは考えている。
当初こそこの辺りの考えは気に食わなかったが、今では普通に受け入れてしまっている事にパンクは彼の影響を受けてしまったと思う。
「兄貴にロック。俺は雑魚共を相手にするッス!!二人はそいつに専念しろッス!!」
周囲の炸裂弾をばらまきながらバラードが叫ぶ。
見ればバラードは周囲に瓦礫の山を作る事でクロコジョーとファントムマンを分断していた。
「・・・了解した!!」
バラードの言葉に短く相槌を打ったパンクがスクリュークラッシャーをファントムマンに投げ放つ。
「ダーククラッカー・・・!!」
対するファントムマンも硬質化させた闇を掌より放つ事でスクリュークラッシャーを相殺する。
パキパキパキパキッッ!!
パンクの一撃を相殺したばかりか破片となり周囲に拡散するダーククラッカーに二人は回避に転じるのだが。
「ファントムブレード!!」
その隙を衝く形で一瞬の内に懐に踏み込んで来たファントムマンにロックが目を見開く。
振り下ろされる硬質化された刃から致命傷を避けられたのは、ロックの持つ膨大な戦闘経験からの反射的に体が動いたからだろう。
「・・・チッ」
小さく舌打ちをするファントムマンはその場より退こうとするが。
ガシッッ!!
その腕をロックが掴み取り動きを封じ込める。
相手が振りほどこうとするのもあったが振れた先の腕の感触に違和感を覚える。
意外と言うべきか相手の腕に対し細いと言う印象を持ったのだ。
とは言え戦闘中である事もありロックはそんな自身の考えを頭の隅に追いやる。
「ロックアッパー!!」
至近距離で相手の顎先に決まる強烈な拳。
並のロボットであれば一撃で昏倒するであろう打撃を受けながらも、ファントムマンは宙で態勢を立て直すやキッとロックを睨み据える。
ロックアッパーで吹き飛ばされた事もあるのだろうか、ファントムマンの頭部を覆う闇色の煙が僅かに晴れていた。
それ故に一瞬だが垣間見えたその瞳にロックはまたしても違和感を覚えてしまう。
正確には既視感か。
どこかで見た事がある様な気がしたのだ。
ズドドドドドドドッッ!!
ファントムマンの背後を衝く形でパンクが体当たりを仕掛けようとする。
「もう見切りましたよ。貴方の動きは極めて単純だ」
勝ち誇った様に言うファントムマンの全身が文字通り透ける。
闇と同化し一撃をやり過ごしたファントムマンはパンクが通り抜けたのと同時にその背に向かって硬質化させた物体を投げ放つ。
「ぐおっっ!!」
背に反撃を受けパンクが呻きながら倒れ伏す。
「パンクッッ!!」
声を上げながらバスターを放つロックの攻撃もあっさりと掌で受け止められる。
「無駄ですよ。貴方達の動きは既に見切らせてもらいました」
喉の奥を鳴らしながらファントムマンは起き上がろうとするパンクを冷ややかな目で見つめる。
起き上がり際に無数のスクリュークラッシャーを放つパンクだが悉く空を切る。
ロックが追撃にと放ったスプラッシュドリルも同様に回避される。
「・・・ぬう」
パンクが思わず唸る。
当初は様子見の様な行動が目立ったファントムマンだが、自身の動きが見切られつつある状況にパンクは焦りを覚える。
パンク自身も認めざる得ないが彼の動きは極めて単純明快。
武装のスクリュークラッシャーやスクリューアタックなどは直線的な軌道を取っており、予め対策を施されると途端に欠点を露呈してしまう。
これはパンクに限らずエンカーなどにも言える事であり、ある程度武装を換装するなりして変更できるバラードには劣る点と言えよう。
「食らいなさい!!ダークニードル!!」
地面にファントムマンが拳を叩きつけ直線状に無数の棘がパンクに迫る。
それを跳躍して回避したのを計算してかファントムマンがダーククラッカーを放ってくる。
直撃こそ回避したものの周囲に飛び散る破片に体の各所を傷つけられパンクは思わずその場で片膝を衝く。
「私の動きを見切ったと言うのは嘘ではないか・・・」
「大丈夫?パンク」
片膝を衝くパンクにロックが駆け寄る。
「あのロボット。異常なまでに学習能力に優れているな・・・」
短時間の戦いで自身の動きを見切った相手にパンクが呻く。
彼の感想にロックも頷く。
一般的な生物のそれとは違うがロボットにも学習をする事で新たな能力を得る事は可能だ。
最近の事で言えば今まで料理が出来なかったアースが猛特訓の末に最低限の料理が作れる様になったのが一つの例と言えよう。
「まあ私の動きが直線的な動きなのはお前との戦いで嫌と言うほど理解してはいたがな。こうもあっさりと見切られると傷つくな」
苦笑を浮かべるパンクだがその瞳に絶望感は無い。
寧ろ目の前の敵に対する闘志が漲っていた。
「だが動きが見切られようとも私のやる事は変わらん。目の前の敵に全力でぶつかるまでの事だ。お前もそうだろう?」
「うん・・・そうだね」
パンクの問いに頷くロックは互いを支え合う様にファントムマンに対し身構える。
「既に貴方達の行動パターンは把握させて頂きました。もはや貴方達の勝ち目は・・・」
ダッッ!!
二人を見据え嘲笑うファントムマンを尻目に弾く様に飛び出すロックとパンク。
真横から光弾を放つロックの一撃を掲げた手で軽く弾いたファントムマンは真正面から来るパンクに視線を向ける。
「スクリュークラッシャー!!」
至近距離から次々と高速回転弾を放つパンクだが、それらの軌道を見切っているファントムマンは回避或いは闇と同化する事で攻撃をやり過ごす。
続けざまに後方から再度光弾を放とうとするロックにダーククラッカーをぶつけるのだが。
フッッ。
投げ放った硬質化された物体は空を切り後方の壁に衝突する。
見れば吹き飛ばしたと思われたロックの全身が大きくぶれる。
「立体映像・・・コピービジョンですかっ!?」
キングに再生させられたアストロマンより得た特殊武器によって発生した質量のある立体映像にファントムマンが呻く。
その上である。
「ミラーバスター!!」
続けざまにパンクが放ったエネルギーのスクリュークラッシャーをロックがエンカーの特殊武器で弾く。
立体映像に気を取られた事で初動が遅れ避けた筈の一撃が背に決まる。
「ぬぐうっ・・・!!」
くぐもった呻き声を上げるファントムマン目掛けてパンクが跳躍する。
「スクリューアタック!!」
ギュルルルルルルッッ!!
体を変形させ弾丸の如く突っ込んでくるパンクにファントムマンが紙一重で回避しようとするのだが。
ザンッッ!!
すれ違いざまに突如として伸びる刃にファントムマンの肩口が抉り取られる。
「なん・・・だとぉ!?」
フードの向こうで目を見開くファントムマンが見たのは、パンクの両腕より伸びる三十センチ程の光の刃だ。
「次の世界征服計画の際に対ロックマン用の追加武装だ。この様な形で使う羽目になるとは思わなかったが」
両腕より伸びるビームセーバーを消しながらパンクがほくそ笑む。
片腕に滴るオイルが地面に染みを作っていく中、思わぬ手を使ってきた敵にファントムマンは苛立ちに全身を震わせる。
未だに携帯式のビームセーバーは実用化されていないと言うのが世間の常識だが、パンクに搭載されている物はワイリーが開発した試作式のビームセーバーである。
と言っても常時刃を出せる訳も無く、長さや強度も試作式の域を出ない物な上に燃費も非常に悪い代物なのだが、パンクの体当たりと合わさる事でロボットに対し有効な一撃となっていた。
「なまじ私の動きを見切った事で必要最小限の動きで避けようとしたのが仇になったな」
すれ違いざまに光の刃を出す事でその射程を伸ばしたパンク。
まんまとその策に嵌った事もありファントムマンが苛立ちを露わにした時だった。
ジュウウウウウッッッ!!
不意に地面が溶けだした事に宙に浮いていたファントムマンが気づいたその時だった。
ガタンッッ!!
「はあぁ~い!!皆さん、お待たせ~!!」
溶解した床を突き破り床下の配管から飛び出してくるのはネプチューンだ。
下水道を通り他の面々とは別ルートで侵入した彼は頭上で戦いが繰り広げられているのを察するや、ソルトウォーターで床を溶かし強引な形で乱入するのであった。
当然の事ながらファントムマンが学習能力に優れると言ってもこれに反応出来る筈が無い。
「はい。毒霧殺法みたいな~」
両腕より発生させた濃硫酸の液体を息に混ぜる形で霧状にしてファントムマンに浴びせるネプチューン。
「ああああっっ!!」
真下からそれも至近距離で浴びせられたファントムマンが悲鳴を上げる。
「今だ・・・ハイパーロックバスター!!」
宙で大きく仰け反ったファントムマンにロックが渾身のチャージショットを撃ち放つ。
ドガアアァァァァァァッッ!!
この戦いにおいて初めて決まるロックの一撃にファントムマンが背後の壁に叩きつけられる。
ネプチューンのソルトウォーターを食らった事もあり、黒衣のローブはフード部分を始め多くの部分が千切れボロボロになっていた。
「おのれ・・・よくもっっ!!」
その素顔を露わにしながら鋭い視線を向けるファントムマン。
牙城が揺らぎつつある相手に追撃を仕掛けようとしたロック達だが、その下にあった素顔に呆然となる。
カブキマン暴走事件の裏で暗躍した正体不明の敵ファントムマン。
不気味なそのローブの下に隠された素顔はロックらにとって見知った顔の少女の物であった。
「え・・・フィーネちゃん?」
少女の名前を口にし思わず構えを解いてしまうロック。
対するファントムマン・・・否、フィーネの方も己が素顔を晒している事に気づいたのか反射的にその顔を隠そうとするが生憎ローブはボロボロになっている。
「し・・・しまった」
狼狽する様に声を上げるその声は先程までの男性の声とは違い少女の物となっていた。
この様な状況で追い込まれる事もそうだが、正体を露呈してしまう事を想定しなかった為かフィーネは表情を引き攣らせながらその場より飛び退く。
「こ・・・こうなったら仕方が無いわ。ファントムマンとはこのフィーネの仮の姿。私は偉大なるあの御方に仕える従者が一人だったのよ」
若干早口で開き直ったように己の正体を話すフィーネ。
対してネプチューンがジト目で溜息を吐く。
「なんか威厳とか怖さが足りないわね」
「うっさい!!オカマ半漁!!」
「いやん!!オカマじゃないわ乙女よ~」
ネプチューンの突っ込みにフィーネが顔を真っ赤に反論するがそれも彼に軽く受け流されてしまう。
「ロックお兄ちゃんやパンクお兄ちゃんはともかく。アンタはそんなに驚いてなさそうね」
呆然となる両者はともあれ特に反応を示さないネプチューンにフィーネが指を突き付けるのだが。
「そりゃそうよ。あれだけうちの隊長へ馬鹿にした様な視線を向けてたら、『ああ、あの子。いい子ちゃんの皮被ってるけど腹黒いわね』って思うに決まってるでしょ」
海の家でのバイトの際に時折フィーネが向けていたアースへの視線は極めて厳しい物が含まれていた。
他の面々がそれぞれの仕事に忙しい中、監視員をしていた事もあってか多少の余裕があったネプチューンは彼女のその視線に気づいていたのだ。
「フィーネ・・・どう言う事だ?」
問いかける様に口を開くパンクにフィーネは小馬鹿にした様に鼻を鳴らす。
「どうもこうも私が言えるのは今の今までの姿は全部演技だったって事よお兄ちゃん。私は貴方達の所に潜り込んだスパイと言えば分かるかしら?」
幼い顔に妖艶な笑みを浮かべるフィーネ。
彼女の教育係に任じられた事もあってか明らかに動揺の色を隠せないパンク。
「謝るなら今の内よ~。お尻ペンペンで許してあげるわよ~」
「さっきからうっさいわよアンタ!!」
尚も自身にふざけた言動をするネプチューンにフィーネが大声を上げるが、やはりと言うか先程までの余裕はあまり感じられない。
「フィーネちゃん。僕には君の事情は分からないけど・・・今すぐにそんな悪い事は止めるんだ」
じっと己の瞳を見据え語り掛ける様に口を開くロックにフィーネが反射的に顔を逸らす。
「私に説教なんて・・・」
と言いかけたフィーネだが鳴り響く端末の画面を見据えるや忌々しく舌打ちをする。
「くそっ・・・それにしてもこんな事になるなんて。覚えてなさいよ!!次はこうはいかないから!!」
己の正体が判明してしまうと言う失態もあってかフィーネは、これ以上戦う事無くその場より姿を掻き消してしまう。
バラードと対峙していたクロコジョー達もそれに続く形で転送装置を使い消えてしまう。
「ちょ・・・兄貴にロック。ファントムマンの正体ってあのフィーネだったんスか!?」
敵が居なくなった事もありバラードが駆け寄って来る。
対するロック達は無言だ。
思わぬ相手の正体に言葉に出来ないだけの衝撃を彼らは受けていた。
滅多な事で動揺しないパンクは暫しの間、虚空を見据えていたのだがやがて頭を振ると己に言い聞かせる様に頷く。
「フィーネの事は後だ。今はロールやアース達を助けるのが先決だ」
冷静さを取り戻したパンクの言葉に一同は頷き先を目指すのであった。
「・・・弱すぎる」
ぼそりと呟かれた言葉を聞きながらフォルテの体が地面に吸い込まれる。
全身に傷を付けられたフォルテを前にマントを翻しながら背を向けるヴォイド。
『絶対に自分には勝てない』と相手が宣言した通り、フォルテの攻撃は悉くが見切られ逆に反撃を食らい続け今の状況となっている。
普段はフォルテ自身がそのプライドもあってか滅多に使わない特殊武器を使っても目の前の敵は揺らがない。
「所詮はその程度だ。どうせなら使いこなせない力も使ってみたらどうだ?」
煽る様に口を開くヴォイドにフォルテが歯噛みする。
言葉通り悪のエネルギーを解放すれば戦いを続けられない事は無いが、目の前の敵にはそれをしても無駄と思わせるだけの実力差を見せつけられてしまっている。
フォルテからすればそんな事を考える状況も腹立たしい。
「文字通りの完封か・・・」
結果的にロールを守る形で対決を見守る事になったエンカーが口を開く。
「ちょっとどうして助けないのよ」
高見の見物を決め込むエンカーにロールが当然の様に非難の声を上げる。
対するエンカーは顎の裏を掻くのみで動こうとはしない。
「一対一の勝負に割って入るのはちょっと無粋だ。それに・・・な」
ヴォイドに意味深な視線を送るエンカーにロールがもう知らないとばかりに小さく唸りながら駆け出していく。
ヴンッッ!!
倒れ伏す自身に突き付けられる光の刃。
ヴォイドは多彩な攻撃を仕掛けたフォルテをこの武器一つで制している。
当然の事ながら本気を出していない事は明白なだけにプライドの高いフォルテにとっては屈辱極まりない。
「さて・・・どうする?このまま死ぬか?」
「ふざ・・・けんなっ!!」
己を嘲笑うヴォイドにフォルテが震える体を必死で抑えながら立ち上がろうとするのだが。
ドンッッ!!
脇腹に強かに決まる相手の拳にフォルテの膝が折れる。
両の手を地面に衝き呻くフォルテをヴォイドは冷ややかな目で見下ろしていた。
「弱い・・・弱いのだフォルテよ。今のお前はただの強がっている子供同然なのだ」
失望の念を露わに光の刃を上段に構えるヴォイド。
それが振り下ろされれば相手に殺されると認識したフォルテだったが、その前にロールが両手を広げ立ち塞がる。
「もう勝負はついているじゃないの。これ以上は止めてよ!!」
「・・・どけ小娘」
戦いを止める様に言うロールにヴォイドが底冷えする声を響かせるのだが、ロールはその場より一歩も動こうとしない。
暫しの間、対峙する両者であったがフッと笑みを浮かべたヴォイドが刃の柄を握り締める。
「世界最強を名乗る癖にこんな小娘に庇われるとは笑わせる。ではまとめて死ぬが良い!!」
そう言い放ちヴォイドが刃を振り下ろそうとした時だった。
歯を軋ませ立ち上がったフォルテが真横にロールを突き飛ばす。
続けざまに振り下ろされた刃を片腕で受け止めたフォルテは空いた腕でヴォイドの顔面に拳を叩きこんでいた。
僅かに後方に退くヴォイドに息荒くフォルテが睨み据える。
「舐めるなよ・・・俺が世界最強のロボットだ。お前なんざ今からすぐに倒してやる」
初めて相手に決める事が出来た一撃を放った拳を握り締めるフォルテ。
ビームセーバーを受け止めた方の腕は刃が食い込んだ事もあり大きく損傷しだらりと下がっていた。
「・・・フン」
鼻を鳴らしながらヴォイドは構えを解くとビームセーバーを懐に仕舞う。
マントを翻し背を向けるヴォイドにフォルテが顔を真っ赤にする。
「てめえ・・・逃げるのか!!」
「そう取るならそう取るが良い。ましてお前が来た時点で私としては目的を果たせなくなったのだからな」
簡易転送装置を用いその場より姿を消すヴォイド。
相手に見逃してもらった形となりフォルテが歯噛みする。
彼は思い出した様に自身が突き飛ばしたロールの所に向かうのだが。
「なんで俺を助け・・・」
敵である筈の自身を庇う様に相手との間に立った事を問おうとしたフォルテだったが、それよりも早くロールの平手打ちが頬に強かに決まる。
痛みに顔を顰めるフォルテが怒鳴り返そうとするも、ロールの目から溢れ出る涙にその勢いが削がれる。
「馬鹿!!たまたま相手が見逃してくれたから良いけど、あのままだったらアンタ死んでたでしょ」
「お・・・女なんかに庇われて俺の面子が」
「面子なんかよりも大事な物があるでしょ。男の面子なんてドブにでも捨てておきなさい!!」
泣きながらも己に声を上げるロールにさしものフォルテも押され気味だ。
そんな二人を前にエンカーは苦笑を浮かべる他無い。
「とりあえず・・・ロールに礼の言葉と謝罪はしておこうぜ」
エンカーの指摘に顔を真っ赤にするフォルテだが、ロールに泣かれてしまった事とここで強情になっても更に面倒になると判断したのか彼にしては素直に頭を下げるのであった。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇VSファントムマンについて
ここを読んでいる人は分かっている筈なのとリブート前のを知ってる人も同上なのでネタバレするがファントムマン=フィーネである。
エンカー編の際にはロールアウトしていなかったのだが、悪のエネルギーの力を使う事で精神体だけを飛ばしてファントムマンとして活動させていた。
自身のボディが調整用のカプセルに入っていたからこそ出来た技であり、現在の彼女はボディと精神体を分離させる事は不可能となっているのであしからず。
前回のバラード編にて活動が難しくなったと言っていたのは、上記の事情と本体での活動が忙しくなった為。
本人の言う通りワイリー軍団内に潜むスパイであり情報は彼女を通じてダダ洩れだった。
本性を現す前からパンク編などで垣間見えていた事だが、天真爛漫に見えて結構腹黒く一部のナンバーズにはファントムマンとしてはばれていなくてもその辺は悟られていたらしい。
この辺はワイリー製のロボたる由縁と言えよう。
ボディの性能自体は非武装のロックやロールとほぼ同レベルなのだが、悪のエネルギーで全身をコーティングする事で高性能ロボットに匹敵する実力を有している。
その上、ラーニングシステムのプロトタイプを搭載しているので相手の行動パターンを把握し自身に最適化する事が出来るので理論上この時代においては無限大の力を有するなど色んな意味でチートなのだが、百戦錬磨のロックを相手にするにはまだまだ経験不足と言うのが現状。
精神的な意味で幼い事も突発的な事や思わぬ切り札に弱い事に繋がっていたりとした。
エキドゥナの拉致に全く反応出来なかったのもこの辺が原因。
因みにボディの性能は大した事が無いのに背中にスクリュークラッシャーを受けたりしても平気なのは、悪のエネルギーに由来する障壁を張っている為。
彼女が身に纏っているローブにも同様の機能があったのだが、ルーラーズのネプチューンの攻撃は中和されたので無力化出来なかった。
リブート前と違いかなり早い段階での正体判明となったが、大きな違いはパンクが普通に居ると言う事であろうか。
寧ろリブート前同様にパンクに止めを刺しに来た時に正体を現すのもありだったが、個人的に唐突であった事もあってこの辺も変更となった。
正体がばれた後の彼女は口の悪さも含め何故かロールにそっくりな気がしたが、現実の女子もこんなモンなのかなと思う次第である。
〇ロックの特殊武器とその他武器の描写について
基本的にロクフォルのボスの武器を持っているがリーフシールドを持っていたりとある程度はバランスを考えて持って来ている。
パンクのスクリュークラッシャーは池原版だとエネルギー、公式だとノコギリの刃となっていていまいちはっきりしないので両方撃てる事にした。
これはロックがどっちのバリア系の特殊武器を持っていてもダメージを与えられるように使い分けられると言う設定。
ロックがミラーバスターで弾いたのはエネルギー系のスクリュークラッシャー。
一応と言うかミラーバスターで実弾系は弾けないと言う解釈でお願いしたい。
パンクのビームセーバーはワイリーが開発した試作品、射程は僅かに三十センチで出せる時間も数秒とまだまだ実用化には程遠い。
一応と言うかロックマンシャドウが武装として持っていたのを参考にしている。
ネプチューンが口から霧状にしてソルトウォーターを放ったのは、完全に悪役レスラーのノリ。
敵とは言え女の子にするにはかなり酷いなと書いてて思ってしまったが絵になるのでそのまま描写した。
〇VSヴォイドについて
今回の話は殆どがファントムマンことフィーネに取られたが、その煽りを受けたフォルテVSヴォイド。
と言っても作中に書いてあった通りフォルテの完封負けなので書いても面白くなかったと思われる。
因みにエンカーは既にヴォイドの正体に感づいている。
その為、敢えて手出しをする事は無かった。
なんかフラグが立っている様な気もするがロールはロールでフォルテ相手でも泣ける程度に優しいです。
まあ公式とかと違いすぐに手が出るのだが・・・。
〇次回についてとちょっとしたお詫び
前回からの話とあとがきを見て気づいたのだがダストマンとゴスペルの存在を失念していた。
一応と言うかダストマンはリングマンらに遅れてつつも先に先行しているのでご了承を。
ゴスペルに関してはフォルテよりも若干に出遅れ、現在はエキドゥナと対峙するエレキマンらと一緒に居る事にしておく(汗
すっかり忘れていたので平謝りな次第である。
次回はボーンダインとの再戦となる予定。
コサックナンバーズの虎の子と言える彼も遂に出る・・・筈。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。