「今日こそ・・・今日こそだ!・・・ここがてめえの墓場だ!ロックマン!」
青色のボディをした少年に向かってバリヤードスピアを構えエンカーが言い放つ。
「ルーラーズだがなんだかしらねえが・・・!お前を倒すのはこの俺だ!」
「エンカー!僕は無駄な争いはしたくない!僕はワイリーを止めなきゃならならいんだ・・・そこをどかないと僕は・・・!」
「おもしれえ!退かないとどうなるんだ?てめえだってわかってんだろ?さっさと来い!」
エンカーはバリヤードスピアを繰り出しそこから生じた衝撃波がロックマンに真っ直ぐと向かっていく。
「・・・クッ!やるしかないのか・・・」
ロックマンはかろうじて衝撃波をかわすとバスターをエンカーに向けて放つ。
エンカーはロックマンにバリヤードスピアを向ける・・・すると槍の先にロックバスターが吸い寄せられるようにして消えていった。
「言っておくが、今までの俺と思うなよ!一発のバスターの威力を増幅してチャ-ジショット並みの威力で返せるまでに今の俺は強化されてるんだよ!・・・・ありがとよ!倍返しだ!」
エンカーの槍の先から次々とチャ-ジショット級のミラーバスターを放たれる。
ドガガガガガガ!
「うわぁぁぁ!」
さすがにこれは避けきれず壁まで弾き飛ばされるロックマン。
「奴らに殺される前に俺と戦って死ね!」
こうして宿敵を目の前にしてもエンカーの心中は穏やかではない・・・内心は焦っていたのだ。
それはワイリーが古代の地球外技術により作られたロボット達を発見した事に端を発する。
スペースルーラーズ事件・・・・・。
地球とは違う文明によって作られた彼らは一体一体が自分達に匹敵する高性能なロボットであった。
・・・そして何より彼らとは同じくして発見された「サンゴッド」なるロボット。
自分達と同格の実力を持つルーラーズですら表には出さなかったものの、彼らはそれに恐れに近い感情を出していた。
ワイリーは最終兵器と呼んでいたが果たしてそれが本当に有効に使えるのか定かではない・・。
そしてコンピューターによる解析により導き出されたサンゴッドのスペックは並みの戦闘用ロボットを遥かに凌駕していた。
「このロボットが最終兵器ねえ・・・」
研究室でエンカーはカプセルに眠るロボットを小馬鹿にしつつ壁にもたれかかっていた・・・・
(スベテヲ・・・ハカイスル)
エンカーの頭の中に突然響いた声にあたりを見渡したが、ここには今、自分と生みの親であるワイリーしかいないはずである。
(・・・我が前には破壊のみ・・・・・)
カプセルの中から響く声、しかし電源は入っていないはずだ。声以上にエンカーが感じた物それはある種の恐怖だった。
「だーっはっはっはっは!これさえあれば憎きロックマンを倒せるぞ!ここをロックマンの墓場にするじゃ!」
エンカーは歓喜する生みの親を目の前にして言い知れぬ不安が目の前を駆け巡っていた。
これが制御できる云々の問題ではない。このサンゴッドを解き放って本当にいいのだろうか。
暴走した時に止められる者がいるのだろうか。
思案にふけるエンカーであったが何かをする暇もなく、宇宙要塞であるワイリースターにロックマンが進入した事を告げる警報が辺りに鳴り響く。
(ワイリー博士がロックマンに追い詰められればサンゴッドを起動させるに違いない・・・)
そんな焦燥感より、何より準備もなしに起動させれば暴走してワイリーの身に危険が及ぶ可能性も捨てきれない。
あの危険なロボットを起動させられる前に自分がロックマンに勝つしかない・・・だからこそ焦っていた。
自分こそがロックマンを倒すのだとその手柄は自分の物だと、その為に自分は生み出されたのだ。
「この程度か?まだだろう立ち上がって来い・・・!」
エンカーは早くしろと言わんばかりの表情だったがその顔が一変する。
「何!?・・・これは!」
エンカーの左腕にロックマンの新装備ロックンアームが喰らいつく。
そしてそのままロックンアームはエンカーの左腕を握りつぶしていた!
ビキッ!ビキッ!
金属が砕ける耳障りな音と共にエンカーの体に激痛が走った。
「なにぃ・・!バスターだけじゃないのか!こんな物理攻撃まで・・・!」
「エンカー!君が強くなったように僕も強くなった!だから僕は負けない!誰も傷つけたくない!だから皆を守るんだって僕は誓ったんだ!」
ロックマンの言葉にエンカーはいきり立ち
「ふざけるなぁ!元家庭用が・・・!甘えた事言ってんじゃねえ!!
ミラーバスターが有効活用できぬのならこちらも直接攻撃をとバリヤードスピアを風車のように回しながらエンカーは飛び掛る。
エンカーは見た、ロックマンに何者にも屈しない不屈の魂がその瞳に宿っている事を・・・自分には無いその力の源を。
(その目だ!その目に俺は・・・!お前ならあるいはあの化け物を・・・・・!)
その瞬間エンカーの胴体をロックンアームが貫く・・・そしてエンカーの意識は途切れたのである。
激しい振動と熱気で目が覚めた・・・どうやらワイリースターが崩壊を始め自分は爆発に吹き飛ばされたようだった。
「クソ・・・・また負けた!何故だ何故勝てない奴に・・・!」
ともかくこの場から脱出せんと腰に装備してあるエスケープユニットを使おうとするが反応が無い。
ならば確か近くにある転送用のカプセルを探そうと動こうとするが体が動かない。
体には大穴が開き、左手は先の戦いで使い物にならない・・そして上半身より下は・・・・無かった。
ロックマンに敗れた際に吹き飛んだのか基地の爆発に巻き込まれた際に無くなったのか・・・。
その状況を理解すると思い出したかのように体に激痛が走った。
基地は崩壊始めている脱出装置もないその上動くことすらもままならない・・・。
「俺もここまでか・・・やってらんねえな・・・」
仰向けになり上を見上げるエンカー、傷口からオイルが大量に噴出すがもはやそんな事どうでもよかった。
ロックマンに徹底的に敗れた・・・その事実が虚しさとなってエンカーの胸に去来した・・。
そして突如天井が崩壊しエンカーめがけ降り注ぎ顔のすぐとなりに鉄柱が突き刺さる。
もしも当たれば即死だっただろう・・・・。
「・・・これ当たれば楽だったのにな!つくづくついてねえや」
エンカーは一人自嘲気味に笑いその声が基地の崩壊の音と合わさっていた。
正に終焉ともいえる光景だろう。一人のロボットの終わりにしては上出来だ・・・立派な喜劇だ。
勝てるわけねえ・・・自分のプライドだけで戦う奴が自分以外の者の為に全てを投げる者に敵う事など出来る訳がない・・・。
彼は静かに悟り目を閉じようとしていた。
・・・しかしその目の前で突如壁が飛び散り一個の大きな鉄球のような物が入ってくる。
それは瞬く間に人型に変形すると全身を真っ赤に染め上げたロボットへと姿を変えた・・・・。
エンカーと同じキラーズのパンクである。
「む・・・!ここで誰かの声を聞いたと思ったがエンカーの兄貴だったか・・・」
「パンクか!いよう・・・!お互いついてねえな」
パンクの姿を見てエンカーは動く右手で会釈をする。
彼もまた無事とは言えず、全身が傷つき右腕が折れた状態だった。
「俺なんてどうでもいいから早く逃げろよ・・・転送装置がこの辺に・・・・」
「兄貴を置いて逃げられん!大体俺達は兄弟だろ・・・それを見捨ててまで生き延びようとは思わん!」
パンクは胸を張って答え
「奥でバラードが生き残ったルーラーズ達と一緒になんとか壊れた脱出艇を動かそうとしている。ちょっと痛むかも知れんが一気にそこまで行くぞ!」
「仕方ねえ奴だ・・・・まあ痛みなら慣れっこだ、俺は我慢強いんでな」
パンクに運ばれながらエンカーは一人考えていた・・・。
(俺にも仲間がいるんだな・・・それに俺みたいな奴でも死んだら博士が悲しむか・・・・。そうだ借りはいつか返せばいい・・・100回負けても101回目で勝てばいいじゃねえか・・・)
それはある意味、エンカーにとっての決別でもあった。過去の自分との。
ワイリースターの脱出艇のドッグにたどり着いた時、脱出艇の修理はほとんど終了しようとしていた。
「バラード!作業はどうだ!?」
パンクはドッグの入り口でスペースルーラーズの一人、マースと相談事をしていた重装甲のロボット、バラードに声をかける。
無論彼らの体もロックマンとの攻防、基地の崩壊でボロボロであった。
「パンクの兄貴か・・・今マースの奴と相談していた所ッス。ここに来て最悪な事にドッグの入り口が開かねえんッスよ」
「・・・・で今、俺とバラードで入り口を壊す為に爆破しようと話していたんだが」
バラードとマースの顔は曇りがちだ。
「ドッグの入り口は頑丈に作られているッス。今ある爆薬の量で壊せるか微妙なんッスよ。最悪また俺が自爆するしかないッスかね~?」
バラードが遠い目をして呟くがそんなことは許さんとパンクに睨まれ慌てて冗談だよ、と言う仕草をして後ろに一歩下がった。
「なら・・・俺の槍を使え、こいつはエネルギーを増幅することができる。エネルギーを増幅させて爆薬にぶつければ威力も数倍に跳ね上がるぞ・・・」
エンカーのミラーバスターは対ロックマン用に作られた武器で、あらゆるエネルギー系を吸収しそれを増幅し打ち返すと言う相手の攻撃を利用した武器なのであるが。
しかしバリアーの形で敵の攻撃を吸収する際、自身もダメージを負ってしまうと言う欠点があった。
今の満身創痍のエンカーがそれを行えばそれは火を見るよりも明らかだった・・・・。
「エンカーの兄貴!そんな事をしたらエンカーの兄貴が!」
パンクはエンカーの意見を否定するがエンカーの決意は変わらない。
「このまま、ここにいればどの道全滅だ!だったらやるしかねえだろ・・・俺は我慢強い方な筈だ・・だから信じろ俺を」
パンクはまだ何か言いたげだったがそれ以上何もいえなかった。
「マースさんよ・・・あんたらのところでビームとか電気とかでもいいんだ・・。・・・そういうの武器にしている奴はいねえか?そいつらの協力を仰ぎたい」
「・・・分かった、あんたらのその気持ちには負けたよ・・・確かジュピターの奴がまだ動けたはずだ。まったく地球製のロボットの根性には負けるぜ・・・・。」
マースもエンカーの気持ちを受け取ったようだった、そのままジュピター達を呼びに脱出艇の中に入っていく。
「・・・エレクトリックショック!」
ジュピターの腕から放たれた電撃をエンカーがミラーバスターへと変換しはじめる・・・。
「っ・・・まだまだたまらねえな・・・もっとだ!」
「・・いいのか?これ以上すれば・・・・」
「・・・いいから俺の事は気にするな!」
エンカーは大きく肩で息をしながらもジュピターの電撃を吸収していく・・・。
「爆薬のセットは完了した!特にする事の無い者は早く中へ!」
バラードとマースが言いながら脱出艇の中へ入っていく。
「よし・・・これぐらいでいいだろう・・・」
「兄貴・・大丈夫か?」
パンクは心配そうにエンカーを見つめるが
「ロックマンを倒すまでは俺は死なねえよ・・・い・・今からあの爆薬に槍を投げるからな・・・準備しておけよ」
ジュピターの電撃などを吸収したエンカーはパンクに支えられながらバラードとマースがセットした爆薬に向けて槍を力の限り投げつけた。
(まだやり残した事がある・・・こんな所で死ぬわけには行かないんだあぁーーーーー!)
その瞬間エンカーのチャ-ジスピアによって数倍のエネルギーに高められた爆発で見事ワイリースターのドッグの入り口を破壊することに成功したのである。
そのままエンカーは宇宙空間に吸い込まれそうになったがあわててパンクが体を引っ張りそのまま脱出艇の中に押し込められた。
その後バラードの操縦する脱出艇は、崩壊するワイリースターから離れゆっくりと地球に向かい進路を取っていった。
「なんとか・・助かったな・・・」
脱出艇の中の廊下に横たわるようにしてエンカーは呟く・・・。
もはや体は既に限界を超える負荷がかかっている・・・。
視界も壊れかけたテレビのように映像が途切れ途切れになり聞こえてくる音も耳に入ってないようである・・。
「兄貴!死ぬなよ・・・。地球に戻って博士に修理してもらうまでは!」
「あ・・ああ・・ま・・まだ死ねねえよ・・・。だけどちょっと疲れた・・・地球に着くまで休ませてくれ・・」
エンカーは目を静かに閉じた・・・そしてパンクの問いかけに反応を示さなくなったのである。
「あ・・兄貴!兄貴!返事をしてくれ!」
パンクはガタガタとエンカーの体を揺らすが反応は無い・・。
「エンカー!」
「エンカーさん!」
周りにいる生き残った仲間達も必死に声をかけるがエンカーは動く事は無かった・・・。
・・・・・・・・・・。
どれくらい長く眠ったであろうかずいぶんと長く眠っていたような気がする。
エンカーは目を覚ますと生みの親であるワイリーが自分を見て喜んだ様子で語りかけてくる。
「エンカー!ワシじゃDr.ワイリーじゃ!この事が分かるな?」
エンカーはこくこくと頷く、どうやら生き残ることができたらしい・・。
「お主はワシが見た時、半分以上死にかけておったぞ・・・幸い電子頭脳が無事じゃった故になんとかなったがの」
「博士、今回の作戦も・・・」
「む・・・ハハハ・・今回も失敗じゃったわい。だが次こそは必ずやロックマンを倒してやろう!」
エンカーの問いにワイリーは意気揚々と答える。
「お主が目を覚ましたことをさっきこの基地にいる者には伝えたのじゃが・・・遅いのう。どれワシが直接呼びに・・・」
そう言ってワイリーは皆を呼びに研究室のドアに手をかけるが・・・それよりも先に慌てて入ってきたパンク以下ナンバーズの面々が勢いよく扉を開けて入ってきた。
「兄貴!目が覚めたんだな!あの時はもう本当に死んだんじゃないかと!」
パンクは嬉しさそのままにエンカーに話しかけてくる。
「ああ・・・皆ごめん、俺のせいで心配かけちまった・・・」
エンカーは申し訳なさそうに答えるが部屋の入り口から発せられる殺気に目を向ける。
そこにはさっきあわててパンク達入ってきたせいでドアと壁に挟まれる形で悶絶していたワイリーがすさまじい殺気を全身より巡らせながら立っていた。
ワイリーが一歩足を進める毎にナンバーズの面々が一歩下がり始める・・・・。
「お・ま・え・らぁぁぁぁーーーーーーー!今日という今日は許さんぞーーーーー!」
烈火の如く怒りだしたワイリーに皆が逃げ始め部屋は大パニック状態になってしまった。
「お前ら全員!スクラップ工場行きじゃああああーーーー!」
その日、ワイリー基地からは1日中、老人の怒号が聞えたと言う・・・。