ファントムマンことフィーネを退けたロックにパンク、バラード、ネプチューンは先を進む。
エキドゥナの手によって各所に分断されそれぞれの敵と戦う事となったが、最優先は人質となった女性達の救出である。
ややあって進んだ先に人一人が入れる程の金属製の箱が目に入る。
恐らくジャミングの効果もあるのだろうが、箱の中から微弱ではあるがエネルギー反応が感じ取れる。
「あ~もしかしなくても隊長かしら?」
箱に手を当てながらネプチューンが呻く。
普段は陽気な彼が珍しく困った様な顔をするのでロックらが首を傾げるのだが。
「実は・・・隊長って人間で言う所の閉所恐怖症なのよね。ちょっと出す時が大変かも」
「・・・は?」
ネプチューンの言葉にバラードの目が点となる。
そうでなくても色々な悪癖持ちのアースなのだが、まさか狭い場所まで苦手とは思わなかったからだ。
「ギリギリエレベーターぐらいなら耐えられるけど。隊長の場合、修復用のカプセル入る時も速攻でスリープモードになるから」
ネプチューンが掌を広げ説明する横でパンクが箱に付けられた端末を操作していく。
「どちらにせよ放っておく訳にはいくまい。多少無理矢理でもここから連れ出す・・・」
そう言って端末を操作し箱を開くパンクだったが。
バキッッ!!
箱が開くなり自身の顔面に何かが飛んできたのもあってパンクは反応しきれずにそれを正面からまともに受けてしまう。
幸いと言うべきかそれで負傷するなどと言う事は無かったのだが、突然の事に反応出来ず目を白黒させる。
もしもネプチューンより説明聞いていなければ更に混乱しただろう。
ブンッッ!!
次いで飛んでくるのは飲み干され空になったエネルギーパックだ。
それを軽く手で払いながらパンクは箱の中を覗き込もうとするのだが。
またしても飛んでくるのは先程と同じくアースの足である。
「アース。私だ・・・パンクだ。もう大丈夫だから出て来い」
こう言う場合、相手が出て来るまで待つのも一つの選択肢なのだがある意味で彼らしい行動と言えよう。
次いで自身に手が飛んでくるのだが、それを軽々と受け止めるパンク。
先程の蹴りもそうだがもしも彼女が本来の戦闘能力を発揮できる状態であったらと考えるにゾッとしてしまう。
グッ・・・。
腕を掴まれた事でアースの喉から小さな呻き声が聞こえる。
そんな中でパンクが強引に腕を引っ張り彼女を箱から外に引き摺り出す。
「あ・・・ぐうっ」
外に出されたアースの体に目立った傷は無い。
だが助けに来た面々に向けられるのは殺気の籠った視線だ。
泣き腫らした真っ赤に充血した目で睨み据えてくるアースだが、その姿はあまりに弱々しい。
ネプチューンの言う通り狭い場所に閉じ込められた事で精神をすり減らしてしまったのだろう。
暫しの間、パンクらを睨み据えていたアースだが次第に冷静さを取り戻して来たのかその顔がクシャクシャに歪む。
手で顔を覆い嗚咽交じりに泣き出すアース。
彼女を隠す様にパンクが彼女を抱きかかえる。
「・・・ちょっと」
アースの悪癖などお構いなしの行動にネプチューンが非難する様に声を上げるのだが。
「誰彼構わずに泣き顔など見られたくないだろうからな。こいつのプライドの高さを考えれば猶更だ」
パンクに抱かれたアースは怒った様に拳を叩きつけてくるのだが、殆ど力など入っていない。
暫くして殴るのを止めたアースはパンクの胸の中に顔を埋めると大声で泣いた。
「こんな言い方も癪に障るだろうがここの所のお前は偉かったぞ。戦闘能力を失っても不貞腐れる事も無く料理が出来る様になろうと努力しようとした。私だったらロールにしごかれた時点で投げ出している。まあ誰だって苦手な事はある・・・狭い所に閉じ込められれば怖いもんな」
ニコニコと笑みを浮かべながらアースの背を擦るパンク。
肩を震わせるアースがパンクの言葉に頷く様に何度も嗚咽する。
「とりあえずアンタ達、先に行きなさいよ」
そう言ってロックとバラードをネプチューンが促す。
「アタシとパンクはここで隊長が落ち着くまで待機してるから」
ネプチューンの言葉にロックとバラードは互いに顔を合わせる。
「しゃあねえッス。行くッスよ!!」
「・・・そうだね」
バラードに肩を叩かれロックは力強く頷くと一緒になって駆け出していく。
彼らを見送った後、ネプチューンはパンクに振り返る。
「普通だったらアンタも行かせてるけど・・・」
「まあそれが妥当な判断だろうが・・・心遣い感謝するぞ」
そう言って息を吐くパンク。
彼の声は何時に無く弱々しい。
ファントムマンの正体がフィーネであり、彼女がワイリー軍団内でスパイとして動いていた事に教育係でもあった彼は少なからずのショックを受けていた。
それを僅かな挙動から感じ取ったネプチューンは彼をこのまま待機する様に促したのだが、それは半ば正解であったと言えよう。
「まさかフィーネが・・・これが夢なら覚めて欲しいものだ」
「ううっ・・・何もしてなくてごめんなさい。すれ違いざまに舌打ちしないで」
溜息を吐くパンクだが、アースが泣きながら謝り出したので呻く他無い。
未だに混乱の極みにある彼女が二人の会話を正確に理解した訳では無いのだが、フィーネの名前が出た事で思い出したのだろう。
「うわっ・・・あの子、本当に性悪ね」
はっきりと言うネプチューンの言葉に教育係であったパンクは更に肩を落とすのであった。
「データ送信完了・・・これによって何時でも準備は整った」
<お勤めご苦労・・・漸く私も我が身の戒めを解く事が出来ると言う物だよ>
端末越しに主と会話をするアルゴス。
「・・・・・・」
<おやどうしたかね?>
「いや・・・どうやらエキドゥナが退けられた気配を感じたのでな」
不意に黙り込んだアルゴスは問いかけてくる主にその理由を口にする。
<ふむ・・・ともあれここでの仕事は終わったと見るが>
「確かにそうだがこのまま黙って退くのは癪だ。相手がロックマンであれば尚更な」
<彼に関しては私に譲って欲しいのだが・・・まあ好きにしたまえ>
苦笑気味にそう言いつつ通信を切られた事にアルゴスは気にした風もなく近づきつつある者を待ち構える。
「来たな・・・ロックマンよ」
巨大な目を僅かに細めアルゴスは自らの宿敵に向かって口を開く。
「アルゴスッッ!!プライドを返せッス!!」
アルゴスの姿を見るなり真っ先に声を上げるのはロックと共にその場にやって来たバラードだ。
僅かに遅れる様にしてロックが姿を現す。
「そこの小娘がそれ程までに大事か・・・」
気を失ったままのプライドを手で掴むや楯にする様に掲げるアルゴス。
「てめえ、卑怯ッスよ」
「人質は有効活用すべきだと思うが。戦いに卑怯も何も無い・・・!!」
バラードの言葉に淡々と言いつつアルゴスはロックだけを見据える。
文字通りアルゴスはロックにしか眼中に無いと言わんばかりの対応だ。
「全ては我が主・・・ラ・ムーン様の為に」
宣言するかのように主への忠誠を口にしながらアルゴスが目から巨大なビームを撃ち放つ。
「うわっっ!!」
慌ててスライディングで避けるロックだったが予め左右に伏していた眷属達が追い打ちをかける。
ボアアアァァァァァ!!
「炎を素体にしたフレイムデビル・・・そしてこちらは雷を素体にしたボルトデビルだ」
バチバチバチバチッッ!!
自身の能力であるデビルクリエイションで生み出した眷属達の名前を口にしながらアルゴスがほくそ笑むが、その顔面にバラードクラッカーが炸裂する。
先の戦いでもその驚異的な耐久性を見せつけているアルゴスだが、バラードクラッカーの直撃にまで耐えきる姿にはロックも驚きを禁じ得ない。
「貴様・・・邪魔だ!!」
ズンッッ!!
バラードに向かって歩を進めるアルゴス。
巨大な体である事もあり、小回りが利かないアルゴスからバラードが距離を取ろうとした時であった。
バチンッッ!!
一瞬ではあるがアルゴスが放った電磁波にバラードの膝が折れる。
全周囲に長時間電磁波を展開する形では電磁波に対するコーティングがなされているワイリーナンバーズには効き目が薄いと判断したアルゴスは、指向性の強力な電磁波を一瞬だけではあるが放つ事でバラードの動きを妨害する事に成功。
続けざまに大きく振るった拳によってバラードの片腕が粉々に砕ける。
「・・・くっ!!」
「不完全な機械の分際で我に勝てると思ったら大間違いだ」
拳が当たる瞬間、その先を硬質化させる事で威力を何倍にも高めたアルゴスはバラードに向かってそう言い放つ。
前後をフレイムデビルとボルトデビルに囲まれたロックを見据えつつ、尚も抗戦の意思を捨てようとしないバラードの前にアルゴスは巨大な壁の様に立ち塞がる。
シュババババババッッッ!!
バラードの背中より無数のミサイルが放たれるがボディを硬質化させたアルゴスの前に悉く防がれる。
液体金属で構成されたボディを持つ事で殆どの攻撃その物を無力化するアルゴス。
ボーンダインとは方向性は違えど、ボディの特性を用いる事で彼もまた半ば不死身に近い耐久性を持つと言えよう。
「愚かなり・・・その無力さを呪いながら死ねっっ!!」
バシュウウウゥゥゥゥ!!
二体の眷属に追い込まれ退いたロック目掛けて巨大なビームを撃ち放つアルゴス。
それに気づいたように振り返って来るロックだが、直撃は免れない。
勝利を確信しつつもアルゴスは最後の最後まで油断はしなかった。
「ミラーバスター!!」
咄嗟にエンカーの特殊武器を使用し巨大なビームを受け止めるロック。
フィーネとの戦いで使用した時と違い膨大なエネルギーを受け止めた事でロックのボディに激痛が走る。
「くぅぅぅぅ!!はああぁぁぁぁぁ!!」
痛みで半ば意識が朦朧となりながらもロックは天井部に向かって巨大なビームを撃ち返すのであった。
ドガアァァァァァァンッッ!!
「フン・・・やってくれる」
ビームが当たり半ば崩壊する天井部を目にするやアルゴスがそこより跳躍し、外へと飛び出る。
自身の巨体では屋内では小回りが利かず動きにくいと判断したからだ。
事実アルゴスはバラードからの攻撃を無理に回避しようとせずに、防御に徹し耐えきる選択をしている。
「プライドを返せッス!!」
崩れ落ちる瓦礫から這い出る様に飛び出したバラードが叫ぶ。
アルゴスは今に至るまでプライドを拘束し続けている。
「アイアンナイツッッ!!陣形を整えろ!!姫を極悪非道の敵から取り戻すのだ!!」
外に飛び出した自身やフレイムデビル、ボルトデビルを見るなり騎士の姿をしたロボットが部下達と共に身構えるのが見える。
「愚かな・・・不完全な機械共が」
吐き捨てる様に言い放つアルゴスだが既に外の防衛戦力が壊滅している事を即座に把握する。
認めたくは無いが外に居る面々もその実力は極めて高いと判断する他無いであろう。
「デビルクリエイション!!」
自身の片腕を足元へと落とし即席の眷属を造り上げるアルゴス。
次の瞬間、周囲の床や地面が大きく脈打つ。
「なんだとっ!!」
突然地面が隆起した事でナイトマンやアイアンナイツの面々の陣形が崩される。
「・・・遊んでやれ」
眷属を生み出す為に失った片腕を再び再生させながらアルゴスはナイトマンらにフレイムデビル、ボルトデビルも加えて彼らにけしかける。
その上、頭部を破壊され倒れ伏していたメカザウルスの姿を見るや指を弾く様に自身の指先を飛ばしこれまた自らの眷属と化す事で再び再起動させる。
「ウッワアアァァァァ!!」
咆哮を上げながら頭部をデビルシリーズ特有の単眼に変えたメカザウルスが起き上がる。
「ふはははは・・・廃工場の壁や床を素体に生み出したブロックデビルの恐ろしさ思い知るが良い!!」
僅か十数秒の間に即席の戦力を生み出しつつ、アルゴスは瓦礫の中から姿を現すロックを見据える。
「アルゴス・・・プライド姫を解放するんだ」
「嫌だと言ったら?」
バスターを向けるロックに楯にする様にプライドを持った手を前に出すアルゴス。
他の面々ならいざ知らず心優しい、アルゴスから見れば甘すぎる性格のロックでは今の自身に全力で攻撃できないとアルゴスは判断していた。
ミラーバスターで撃ち返した一撃を己に返さなかったのもプライドを傷つける可能性があったからだろう。
しかもそのせいで今のロックは重傷に近い傷を負っている。
そもそもフィーネとの戦いで消耗しながら自身と連戦しているのである。
もう一人バラードと言うロボットも居るが既に片腕を失い戦闘能力も低下している。
全てにおいて己に有利な状況である事を確認し、アルゴスが笑みを浮かべた時であった。
ズドドドドドドドッッ!!
頭上より降り注ぐのは無数のミサイル。
それらを浴びたメカザウルスのボディが大きく弾け飛ぶ。
自身の眷属化している事もあり、足りない箇所は液体金属で補おうとするメカザウルスだが、続けざまに放たれる銃弾に頭部のコアが貫かれる。
「YOYO~復活再生したデカブツなんてそんなモンなんだYO~!!」
空に浮かびながら陽気な声を上げるのはオイルマン。
「オイルマン・・・?」
ロックが困惑気な声を上げる中、オイルマンは空を飛ぶ物体にぶら下がりながら彼に親指を立てる。
「バラードさんにロックマン。援護します!!」
そう言って身の丈ほどあるライフルを振り回しながら宙に浮かぶのは一人の少女。
「え・・・?もしかしなくてもレントッスか!?」
何時もの重厚なアーマー姿とは違い背に巨大なブースターを背負う形で空を飛ぶレントにバラードが驚く。
ジェットキングロボを参考に生み出されたキングの後継機たるレントだが、その装甲の重さ故に火力は凄まじいが敏捷性には著しく難点があると言うのがバラードの認識であったのだが。
「今の私は高機動形態(プレーンモード)です。普段は重装甲形態(タンクモード)なんですが状況に応じて変形する事が出来るんです!!」
どこか得意げに話すレントの顔は普段のオドオドした表情と違い非常に明るい物であった。
ジェットキングロボをロボットのサイズにまでダウンサイズ化を図ったレント。
南米支部に到着した当初は一種の試験配備的な所もあり、武装が完成していなかったパッショナー同様に未完成の状態であったがワイリーによる修理及び最終調整を受ける事でその真価を発揮する事が可能となっている。
シュバババババババッッ!!
宙を舞いながらディバインミサイルをメカザウルス目掛けて撃ち放つレント。
「ええい・・・おのれ!!」
爆散するメカザウルスの姿にアルゴスがカッと目を見開く。
シュバアアァァァァ!!
目より巨大なビームを撃ち放つアルゴス。
巨大なブースターを用いる事で宙を舞うレントだがその動きは極めて直線的だ。
しかも今のレントのボディは重装甲形態と違いブースターなどに装甲の大部分が移動しており、防御力が低下している様に見えたのだが。
バチバチバチバチバチッッッ!!
彼女の周囲を舞う装甲の一部がバリアー機能を持ったビットとなる事でアルゴスの一撃を完全に防ぎ切る。
変形した事によって装甲が薄くなった欠点を補うには十分な武装と言えよう。
ダンダンダンダンッッ!!
両肩のガトリング銃で牽制をしつつ、レントが手にしたライフルから銃弾をアルゴスへと次々と撃ち放つ。
当然の事ながら片腕に握られているプライドは避ける形で銃弾はアルゴスの額を正確に貫いていた。
「ぬう・・・!!」
その威力にアルゴスの巨体が後ろへと下がる。
「強すぎ・・・ッスね」
キングの後継機である事は分かってはいたが殆ど弱点など無いのではないかと言うレントにバラードが引いたように呻く。
次なる世界征服計画の切り札とされている彼女だが、ワイリーの並々ならぬ意気込みが窺い知れよう。
「・・・不完全な機械の分際で!!」
バチンッッ!!
放たれる指向性の電磁波にレントの首がガクリと下がる。
一瞬目を白黒させる彼女に続けざまにアルゴスが目を見開く。
並のロボットであれば一度目で昏倒させられるであろう電磁波を連続で受け、レントの意識は吹き飛ぶ。
「・・・・・・ウッ!!」
「あの~レント。だ・・・大丈夫・・・じゃねえYO~!!」
宙で意識を失ったレントがそのまま雑木林の中に落下していくのを見据えながらアルゴスは全身より無数の目玉を出現させる。
「忌々しいぞぉぉぉぉ!!」
バシュバシュバシュバシュバシュッッ!!
それぞれの目から無数の光弾を放つアルゴス。
自身が有利な状況にも拘わらず思う様に事が進まずに苛立ちを募らせるアルゴスは誰彼構わずに攻撃を仕掛けるのだが。
「クールタイムゥゥゥゥ!!」
全身に氷を纏ったパッショナーがダルセニョーと共にフレイムデビルに突撃を仕掛け全身の炎を消失させ凍り付かせる。
「押忍!!」
そのまま槍の一撃を繰り出されフレイムデビルは粉々に砕けてしまう。
「邪魔だどけっっ!!」
ボルトデビルの電撃を物ともせず強引にナイトクラッシャーを放つナイトマン。
ヤマトマンもそれに続きアイアンナイツの面々がコア目掛けてそれぞれの武器を叩きつけた事でボルトデビルのコアは文字通り粉砕される。
ズドドドドドドドドッッ!!
地震の様に床や壁が揺れ動く中、地面に映し出されるのは巨大な目玉だ。
「さっきから邪魔してくるのはおまえかよ!!」
カットマンがローリングカッターを投げるのに続いてエレキマンらもそれに続く。
意思を持った様に飛来する瓦礫や光弾はナイトマンらが身を楯にする事で防がれる。
いずれにせよ戦いの形勢は徐々にではあるがロック達の方に傾きつつあった。
「であれば・・・」
己の不利を感じたアルゴスが手にしていたプライドを高々と掲げた時であった。
フッッ・・・。
一瞬の内に己の手から消え去るプライドにアルゴスは自身の目を疑う。
僅かだが己の腕に違和感を感じたと思った瞬間、プライドの身柄は数メートル離れた箇所に移動していた。
「これでもうお前達の負けは確定した。これ以上は時間の無駄です」
自身の特殊武器タイムスローを使用し一瞬の内にプライドを救出したのはタイムマン。
彼は宙に放り投げる様にしてプライドを投げるのだが、それを受け止めるのは二人のアストロマンだ。
「二人は姫を連れて異空間に離脱してください。迷っている時間はありませんよ」
タイムマンに指示を受けアストロマン達は慌ててその場より姿を消してしまう。
元より自身の戦闘能力は他の面々に劣っている事を認識しているのか、タイムマンは己の役目は終わったとその場から一目散に離脱してしまう。
去り際にほくそ笑む様な顔を浮かべた事でアルゴスを苛立たせたのだが、それも彼なりのやり方であろう。
「ぬぬぬ・・・おのれぇぇぇ!!」
地団駄を踏みながら怒りの声を上げるアルゴス。
血走った目でロックらを睨み据えるのだが先程までの余裕は微塵も無い。
「だーっはっはっはっはっはっは!!いい気味じゃのうラ・ムーン・・・いやアルゴスと言ったか」
そんな折に無数のスナイパージョーを引き連れ、自身はUFOに乗りながら姿を現すのはDr.ワイリー本人だ。
ダークマンやプロトらも引き連れ現状で持ちうる全ての戦力を引き連れながら、彼はスピーカーで声を響かせる。
「Dr.ワイリーか」
「ランファント遺跡群でこのワシを利用しあろう事か世界滅亡の片棒を担がせようとした恨み。今こそ倍にして返す時じゃぁぁぁ!!」
以前にラ・ムーンがランファント遺跡群より放った電磁波によって世界は滅亡寸前にまで陥れられたのだが、自業自得ではあるがその片棒を担がされたのがワイリーである。
自身の世界征服計画の為にラ・ムーンを利用したつもりが逆に利用された事への恨みは、プライドが人一倍高いワイリーにとってこの上ない屈辱であり、今がそれを倍にして返す為の絶好の機会とワイリーは判断していた。
「言っておくがお主の相手はワシではない。こやつじゃあ!!」
ザッッ!!
ワイリーに促されその場に姿を現すのは漆黒のボディに無機質な顔を持った一人のロボット。
バラードも含め殆どの者が首を傾げる中、メタルマンやヒートマンにロックがそのロボットの姿に驚く。
「「「ラ・・・ラ・トールっっ!?」」」
三者三様に口を開く中、ラ・トールと呼ばれたロボットは無言のままアルゴスへと接近する。
「お前はラ・トール・・・!!」
バチバチバチバチッッ!!
無数の電撃弾がアルゴスへと叩きこまれていく。
「あの時の様に・・・我が意思に従え!!」
呻きながらもラ・トールに命令を下そうとするアルゴス。
かつてラ・ムーンが掲示したデータを基に製作されたラ・トールなのだが、結果として支配権をラ・ムーンに奪われ先兵として使われてしまった経緯がある。
あの時と同様にラ・トールを自身の戦力にせんとするアルゴスだったのだが。
アルゴスの念を無視するかのようにラ・トールの蹴りが強かに決まる。
「だーっはっはっはっは!!当り前じゃがそっちの対策はバーッチリしておるわい!!かつて自身の手駒にしたラ・トールに今度は逆にボコボコにされるが良いわ!!」
後ろの方でワイリーがアルゴスを挑発し続けるがそれはさて置きである。
「なにはともあれ・・・」
「・・・だね」
バラードがロックと顔を見合わせるやアルゴスに向かっていく。
「うおおおぉぉぉ!!このまま寝てられっか!!」
重傷を負いながらも飛び跳ねる様に起き上がったフォルテがゴスペルと合体しながら飛び出してくる。
「お前・・・邪魔だ!!」
それを阻止せんと地面より目玉が浮かび上がるが、その目玉はフォルテのバスターに問答無用に撃ち抜かれる。
その勢いのままフォルテがアルゴスにバスターを撃ち放ち、ロックやバラードそしてラ・トールも無言のまま続く。
「ぬおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!」
絶叫を上げながら爆炎に包み込まれるアルゴス。
「不完全な機械共に・・・」
呻き声を上げるアルゴスの全身に亀裂が生じ始める。
「ぬううぅぅ!!馬鹿なっっ!!」
ドガアアァァァァァァンッッッッ!!
火柱を上げながら爆発炎上するアルゴスの姿にロック達が互いに頷く。
「・・・・・・」
無言ではあったがロックに会釈する様な仕草を見せたラ・トール。
言葉こそ発しないがあの時とは違い彼自身の意思がある事がその辺りの挙動からも分かる。
「おい・・・てめえは初めて見る顔だな」
新顔と見るや真っ先に噛みつきに行こうとするフォルテだが、ラ・トールの方は軽く掌を向けると別の方向に目を向ける。
ロックもそうだが外に居た面々もアルゴスが出現した事ですっかり忘れていた。
彼らの激闘を他所に二体の骸骨が戦いを繰り広げていた事に。
ドガッッ!!
崩壊した廃工場の天井部で回し蹴りを食らい敢え無く転倒するのはスカルマン。
転倒した彼は拳銃を取り出すやそれをボーンダインに頭部に向けて躊躇なく放つのだが。
「ど~した?その程度で死ぬ事は無いとさっきも教えたつもりだが」
弾丸が自身の頭部を貫くのも気にせずにボーンダインは肩を震わせスカルマンを挑発する。
「・・・スカルマン!!」
慌ててロック達が駆け付ける中、最も早く接近したのはラ・トールである。
「・・・・・・」
瞬時に懐に飛び込んだラ・トールにボーンダインが目を細める。
ガキッッ!!
放たれた拳を受け止め蹴りを放つのだがそれも空いた腕で軽く捌かれる。
「ほう・・・やるな~。空っぽのこいつよりも戦い甲斐があるっっ!!」
ボーンダインがほくそ笑みながら懐よりマシンガンを取り出すが、ロックを姿を見るやそれを仕舞う。
「久しぶりだなロックマン。お前と会うのはあの時以来だな~・・・最も今の俺はボーンダインなんだが~」
ボーンダインの言葉にロックは思わず首を傾げる。
今のボーンダインは色が黒くなっただけのスカルマンであり、その姿や言動から以前のスカルマンを連想してしまうのだが。
ダッッ!!
対してボーンダインの注意が逸れたのを見るやスカルマンが起き上がり攻撃を加えようとするのだが。
「スカル接近戦ってな~!!外連味の~ねえ奴は嫌われるぞ~」
ガシッッ!!
突き出された拳をあっさりと受け止めボーンダインは逆にスカルマンの腕をへし折る。
腕が折られた事でスカルマンが反応を示す事は無かったが、己の攻撃が悉く見切られている事に内心で動揺を覚えていた。
「オレが悪のエネルギーを有しているから勝てないとか思って~いるのか?」
ボーンダインの指摘に初めてスカルマンが呻く。
「それは~大きな間違いだ。アレはあくまでも力を増幅させるモノでしかない。そして今のオレのスペックはテメーと大して変わらねえ~。じゃあなんで勝てないのか~」
「・・・経験値?」
ボーンダインの言葉に答えるようにロックが口を開く。
「そう言う事だ~正にその経験値を上手く使って戦い抜いているロックマンご本人だけに~物分かりが良い~」
スカルマンを指差しながら笑った彼は戦いが終わったと見たのかその場に駆け付け始めた面々の目を向ける。
「まあ詳しくは~コサックに聞け~」
どこからともなく黒マントを取り出しそれを羽織るやボーンダインがその場より飛び退く。
「やられたなあ~アルゴス」
<だま・・・れ>
喉を震わせるボーンダインの背後で人の顔程の目玉が浮かび上がる。
ボーンダインの言葉から判断するにアルゴスのコアだ。
<この借りは必ず返すぞ・・・>
シュンッッ!!
瞬時にその場より消え去るアルゴスにボーンダインが続こうとした時だった。
「・・・・・・」
「逃がさねえよ!!」
対してラ・トールとフォルテが追撃せんと飛び掛かるのだが。
薄笑みを浮かべたボーンダインの全身が大きくぶれる。
と思った瞬間には二人の体は地面に叩き伏せられていた。
「あの御方より授かった『歯車』の力を使えばこんな~モンだな」
手にした端末を操作しながらボーンダインはほくそ笑む。
「ま~た~会おう。今度は手加減も一切しねえからな~」
次の瞬間にはボーンダインの姿は消え去る。
簡易転送装置を使ったのだろう。
ややあって張り詰めていた殺気が四散しロックは思わず息を吐く。
思うに連戦に次ぐ連戦だっただけに彼は思わずその場に座り込む。
「ボーンダイン・・・彼は一体」
問いかける様な視線をスカルマンに向けるが彼の方はロックと目を合わそうとはしなかった。
「だーっはっはっはっは!!」
そんなロックの杞憂は余所にUFOから飛び降りるやスピーカーを片手にワイリーが瓦礫の上に立って笑い出す。
「見よ!!我がワイリー軍団の力を。キラーズやスペシャル、更にキングの後継機にラ・トールっっ!!万全の体制を整えればラ・ムーンの化身やその仲間なんぞワシの敵では無いのじゃ~」
どこか能天気に笑い声を響かせるワイリーの姿を見ていると、少々の憂鬱気な考えが飛んでしまいそうになるのは何故だろうか。
長年の宿敵ではあるがどこか憎めない悪の天才科学者にロック以下の面々が呆れ果てた時だった。
<ロック無事だったか・・・>
ロックが手にする端末に映し出されるのは生みの親であるライト博士の顔である。
「このワシも参戦したんじゃ無事で当り前じゃろうに」
画面越しにライト博士に鼻を鳴らしながらワイリーは腕を回しながら背を向ける。
「さあて勝利の凱旋と行こうではないか~。じゃがその前に・・・」
ワイリーは二人のアストロマンに抱えられる形で地面に降り立つプライドとナイトマンらの姿を横目で見据え掌を広げる。
「やるべき事があるみたいじゃの・・・」
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇捕らわれていたアースについて。
潔癖症に男嫌い、でもって閉所恐怖症な悪癖持ちなのはリブート前と変わらず。
色々と生々しく書こうと思ったのだが、それやるとそれだけで一話分くらいになるので結構端折っている。
リブート前がデート時のトラブルで観覧車に閉じ込められると言う展開だったのが、こっちはこっちで物理的に出れないのでアースにとっては下手に拷問とかを受けるよりもショックが大きい事に。
普通に精神崩壊のリスクもあった訳で、相手の嫌がる事は絶対にしたら駄目だと言う事は付け加えておく。
作中で箱から出て来た時は一種のパニック及び癇癪を起している状態。
正直、パンクの強引なやり方も勧められた物ではない。
結果としてリブート前のデートはオイルマンとレントのシーンに凝縮される形となった。
〇アルゴス戦について
次々と眷属を生み出すアルゴス。
基本的に何か物体があれば無限に軍勢を生み出せる彼も色んな意味でチート。
ボーンダインの硬さ&再生能力とは違い特性で相手の攻撃を無力化しているだけで、彼の液体金属の強度もそこまででは無く結構ダメージは食らっている。
その巨体もボーンダインと違い回避に転じるには不利な結果に。
因みに彼が腕を切り落として工場内の床や壁を眷属化した際に出来たのはブロックデビルと言う設定。
ロックマン10に出て来たものの試作品的なポジション。
〇レントの高機動形態について
彼女は作中にもある通りジェットキングロボをダウンサイズしたロボットでタンクモードとプレーンモードを使い分ける事が可能。
今回のワイリーの調整で変形が可能となりお披露目となった。
高機動形態ことプレーンモードとなると背中や肩のジェットエンジンで空を飛べるのだが、元々の重量もありかなり強引な飛行となっている為、動きが直線的な動きとなるのが欠点。
その際に装甲が薄くなるのだが装甲の一部が自立して飛行し、バリアー機能を持ったビットとなるので大体の攻撃は無力化出来る。
敵陣に一気に接近して重装甲形態となって降下、そのまま敵陣を壊滅させるのも一つのコンセプトだったりする。
彼女自身の性格はともあれ一騎当千の兵器であるのは間違いない。
〇ラ・トールについて
スパアドにおいて新ワイリーナンバーズとして生み出された彼。
ラ・ムーンに制御が奪われた彼だが古代文明の技術を用いて生み出された事もあり、パワーはウッドマン、ハードマンの三倍、スピードはクイックマンの二倍(当社比)と言う驚異的なスペックを誇る。
上記のスペックは公式のではあるが、小説内ではパワーがウッドの装甲がハード、スピードがクイックのそれぞれ倍と言う設定。
とは言えあくまでもカタログスペックなので必ずしも彼らに勝てる訳ではない。
そんな彼はスパアドの事件後に修復されたのだが、動力炉となる超エネルギー元素が確保できず今の今まで起動に至らなかった。
余談ではあるが彼の開発が後のルーラーズの修復ノウハウの基礎となっている設定。
今回は制御に関する対策も施されており、アルゴスに操られる事は無かった。
性格的な特徴はとにかく無口な事。彼は滅多な事で口を開かない。
ただ単に口下手なだけなのかもしれないが、他のナンバーズの言葉には頷いたり首を振るなどの動作で意志を示すようだ。
それと事件の後でやっぱりフォルテに喧嘩を売られたらしい。
〇ボーンダインについて
やはりというか歯車の力を持っていた。
瞬時にフォルテとラ・トールを叩き伏せたのはそれによる所。
スカルマン相手には殆ど素手で圧倒している。
余談ではあるが今回の話は良い感じに〆れる場所がなくかなりの長さとなってしまった反省する次第である。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。