「・・・姫様」
恭しく自身に片膝を衝くナイトマンら一同の姿にプライドが申し訳なさそうに顔を逸らす。
文字通り合わせる顔が無いと言った所か、唇をギュッと噛み締めたプライドであったが意を決した様にナイトマンらに頭を下げる。
「心配をかけて本当にごめんなさい。私は・・・一国の姫として恥ずべき事をしたわ」
「いえ・・・まあ確かに姫の我儘は度が過ぎる事もありましたが」
あの高慢ちきで有名なプライドが自身らに頭を下げるなど思いもしなかったが故に驚いたナイトマンであったが。
「見つけたら引っ叩いてやるとか言っていなかったか」
後ろからヤマトマンが面白そうに言ったのもあり、ナイトマンは慌てて立ち上がる。
「あ、いやそれはあくまでも勢いで言ったまでで。そんな事をすれば傷害罪どころか不敬罪でかよくて国外追放。下手をすれば廃棄処分だ」
ワイリーの変装であったMr.エックスによる世界ロボット選手権の一件で、寛大な処分で許された事もあってナイトマンは文字通りカンパネラ公国に足を向けて眠れない立場にある。
「引っ叩かれても文句が言えないぐらいの迷惑を・・・」
「いえ・・・とにかくご無事で何よりです」
ナイトマンが怒るのも当然と反省した様に再度頭を下げるプライドにナイトマンは冷や汗を掻きながら、首を振り続ける。
無骨な人物である彼の狼狽する姿など滅多にみられる物ではない。
「まあもしも婚約者が酷い奴だったら、俺らに連絡入れろッス。ワイリー軍団総出で攫いに行ってやるッス」
バラードの言葉を受け表情を輝かせるプライド。
当然ナイトマンは険しい顔をしたのは言うまでもない。
「バラードも色々と心配させてごめんなさい。私を助けようとしてくれてありがとう」
そう言いつつ彼の頬に口づけをしたのもあってナイトマンが鉄球を片手に殺気を生じさせるのだが。
「いやいや俺からじゃないッスよ」
慌てる様にその場より後ずさるバラード。
「まあでも確かに姫個人の幸せを考えるのであれば悪くは無いか・・・その場合は私も殴り込みに混ぜてもらおうか」
「ちょっと・・・ナイトマン」
「公国には忠誠を誓っているが姫への忠誠もまた別に持っております。ともあれ我ら一同姫の事を第一に考えておりますので」
困った顔となるプライドにナイトマン以下アイアンナイツの面々が片膝を衝く。
「フン・・・その婚約者とやらがロクデナシである事を祈ろうかの。そうすれば小娘のみならずナイトマンも手駒に加えられるわい」
ワイリーがそれを横目に悪態を衝いたのはさて置きである。
次に廃工場よりパンクとネプチューンにアースが姿を現した事でメタルマンらが駆け寄っていく。
パンクにお姫様抱っこの形で運ばれるアースの姿に勘の良い者は何かを感じ取ったのだが、それはまあともあれである。
「ヘイヘイ~何とか無事に帰って来れたんだYO~」
オイルスライダーで滑りながらレントをパンク同様にお姫様抱っこで運ぶオイルマンの姿にライト、ワイリーナンバーズ双方が色めき立つ。
「ん?お主はライトのロボット・・・と言うかうちのレントとどう言う関係じゃ?」
どう言う経緯で二人が知り合ったのか知らないワイリーが目を点にしながら二人に問う。
「博士、それに皆さん。本当に本当に申し訳ないのですが・・・私、私っっ皆さんに伝えなきゃいけない事があるんです」
目を閉じながら叫ぶように話すレント。
「俺っち達、実は色々あって付き合う事にしたんだYO~!!」
締りの悪い笑みを浮かべ堂々と交際を宣言するオイルマンに時が止まった。
冗談抜きで面々が数秒程、思考を停止させた後にワイリーが震える指をオイルマンへと向ける。
「レントは次の世界征服計画の要じゃぞ!!お前の様な抜けた顔のロボットにましてライトのロボットなんぞに可愛い娘をやれるか!!」
当然の如くベタな頑固親父の勢いそのままに二人の交際を反対するワイリー。
「オイル、お前絶対に騙されてるぞ。確かに可愛い子だけど相手はワイリーロボ、どんな凶悪な本性を隠し持っているか」
カットマンがライトナンバーズを代表とする形で反対の意見を口にするのだが。
「フッ・・・カットマン。俺っちはやってから後悔する男だYO~」
締りの悪い顔で気障っぽくポーズを決めるオイルマン。
「お互いの家が交際を認めてくれないなら世界の果てまで滑って行くぜ」
「はい、どこまで付いて行きます!!」
そう言うや否や一目散にその場より走り去っていく二人にワイリーが指を突き付ける。
「ええい!!何が何でも連れ戻せ!!」
メタルマンらに指示を飛ばしながらワイリーは暫しの間、肩を弾ませていたのだが。
「はあ・・・ともあれじゃ」
溜息を吐きながらワイリーは何時も以上に険しい顔をしていたパンクに目を向ける。
「ワイリー様、フィーネの件で報告があります」
その言葉にロールも反応を示す。
「そう言えばフィーネちゃんは?どこにも居ないけど・・・」
彼女の顔を見て複雑そうな表情を浮かべるロック。
二人は簡潔にファントムマンの正体がフィーネであった事を説明する。
「そんな・・・」
ロールが衝撃的な事実を知りショックを受ける中、ワイリーは顎に手を置いたまま黙り込む。
「・・・そう言えば件のカブキマンの暴走事件の際はまだフィーネは完成しておらんかったの」
「・・・はい。まだ一度も稼働すらしていません」
ワイリーの言葉に彼の足元よりシャドーマンが口を開く。
「にも拘わらずファントムマンと思しき存在の動きは確認出来た・・・と言う事は」
そこまで言って後は己の中で情報を整理し始めるワイリー。
「それにボーンダインと言うかもう一体のスカルマンの事も気になるが、全てにおいて関係しておるのは悪のエネルギー・・・となれば」
「ちょっと分かるんだったら説明しなさいよ」
ぶつぶつと一人で話し出すワイリーにロールが文句を口にするが、彼は眉間に皺を寄せるのみで答えようとはしない。
「シャドーマン。フィーネの電子頭脳を含めたボディその物は何時頃完成しておった?」
「博士が逮捕された後に起こした事件の後にボディは完成しているでござる。学習進化プログラムの完成が遅れた為に稼働が遅れましたが」
足元のシャドーマンに問いつつ勝手に頷きながら、頭の中で答えを導き出すワイリー。
「どう言う事よ?」
ロールの方は足元に目を向けシャドーマンに問うが彼も影に沈んだまま無言を貫く。
無視され続け不機嫌になるロールだが、結局ワイリーが丁寧に説明する事は無かった。
「おい・・・スカル」
スケルトンジョー達と共に無言でその場を去ろうとしたスカルマンにダイブマンが仁王立ちで立ち塞がる。
「あのボーンダインはお前の事を空っぽって言いやがった。あいつとお前はどう言う・・・」
問いかける彼の言葉を無視しスカルマンはスケルトンジョー達と共に装甲車の荷台に乗り込もうとする。
「オメーらが知った所で意味がねえ事だ。そして俺にも・・・な」
そうとだけ言うスカルマン。
主であるコサックやカリンカ以外の存在には極めて素っ気ない態度を取る性格のスカルマン。
自身らに限らず彼が他者との対話を拒絶するのは何時もの事ではあるのだが。
「・・・だが」
荷台に足を掛けながらスカルマンが振り返って来たのでダイブマンが思わず目を見開く。
「あいつが俺を空っぽと言った事は紛れもない事実だ。俺には何も無い。今もこれからも」
「おい・・・それはどう言う」
スカルマンの答えに驚くダイブマンだが、それ以上は答えを得られる無く彼らは荷台に入って姿を消してしまう。
彼は去り行く装甲車の姿を見送る他、何も出来なかった。
廃工場での戦いから一週間経とうとしていた。
「むはははは!!体の調子はどうじゃ!?」
作業台から起き上がったばかりのアースにワイリーが得意げな顔で問うてくる。
あれから戦いで負傷した面々を修理していたワイリーはプロトがとある場所で手に入れた超エネルギー元素を使う事でアースの修理にも成功していた。
修理が成功と言ってもアースがワイリーに回収された時点での戦闘能力を取り戻したに過ぎず、そう言う意味で完璧な形での修復とは言い難い。
「完璧です。これで本来の任務に戻る事が出来ます」
以前よりも地球産のパーツの割合が多くはなったが、それでも戦闘能力を喪失していた時よりも遥かに全身を漲るエネルギーにアースは微笑む。
「お主にはワイリースターの管理を任せておるからの。あそこの次なる計画の重要拠点な訳で・・・」
とワイリーが口を開いた矢先に作業室に何人かのロボットが雪崩れ込んでくる。
「ブモッッーー!!アース隊長!!何はともあれご無事で」
バキッッ!!
一室に入るなり近寄って来るウラノスを鉄拳で吹き飛ばすアース。
天井に顔だけが突き刺さったままの状態となるウラノスをさて置き、アースは仲間達を見つめるとその顔に満面の笑みを浮かべるのであった。
「今まで迷惑を掛けたな。お前達、これからもよろしく頼むぞ」
滅多に笑顔など浮かべる事が無いアースに驚きつつも、ジュピターやサターン達もまんざらでもない顔で照れる。
「無事に復帰出来そうで何よりだ」
アースに対しそんな言葉を吐くのはパンクだ。
笑みを浮かべ不愛想な彼の胸に肘を突き付けるアースに一同が驚いた顔をする。
アースが自分から他人にそれも異性に触れるなど、今までには考えられなかったからだ。
「それはそうとだ・・・お前には一応の借りがある。だから今からちょっと付き合え、その・・・なんて言うかデートとやらで貸し借りは無しにしてやる」
片目を閉じながら話すアースの言葉にルーラーズの面々が混乱したのは言うまでもない。
「ブモォォォ!!デートだと!!そんな事は俺を倒し・・・」
床に降り立ちながら叫ぶウラノスだが、今度は作業室の壁にめり込む。
「はぁ~アオハルね~」
その中でただ一人作業室の外で話を聞いていたネプチューンがやれやれと言った様子で口を開く。
ワイリーもさっさとその場より退避し眠そうな顔で欠伸をしていた。
「伯父様、私もそろそろお暇させて頂くわね~」
ニコニコと笑みを浮かべながら手にした荷物を片手に挨拶に来るのはエストである。
勝手に来て勝手に帰る姪に『好きにしろ』と言った態度を取っていたワイリー。
彼女はすっかり仲良くなったジョー達やヒートマンなどと別れの挨拶をするや、そのまま来た時と同じく嵐の様に去って行く。
<それでは次のニュースです。襲撃事件から姿を見せていなかったプライド姫ですが、数日前に姿を現し昨夜帰国の途に着きました>
メディアの報道でプライドの近況が告げられ、コメンテーターなどがあれやこれやと憶測を口にしているが本当の事を知る者は僅かしかいないであろう。
それを興味無さげにワイリーが聞いていた時であった。
突然鳴り出すワイリーのプライベート用端末。
ワイリーから掛けるのであれば分かるが、逆に掛かって来るなど滅多にある事ではない。
面倒臭げに溜息を吐きながらワイリーが端末を手にする。
「・・・ワシじゃ」
と開口一番に言い放ったワイリーであったが、相手からの声と言うか笑い声に驚いた様な反応を見せる。
横目でその反応に視線を向けるネプチューンであったが。
相手からの通信に暫し頷いていたワイリーはそれを切るなり、ゆっくりと立ち上がる。
「スマンがちょいと出かけてくる。他の者にはそう言っておいてくれ」
とだけ言ってその場を離れるワイリーにネプチューンが手を振って送り出した時だった。
<そう言えば帰国前の記者会見でプライド姫が言った。『例の約束』とはなんだったんでしょうね?>
テレビの向こうでコメンテーターが首を傾げるのが見える。
「まさか許嫁に酷い目に遭わされたら攫いに来る約束だなんて。口が裂けても言えないわよね~」
どこか皮肉気に口元を歪めながらネプチューンはテレビの電源を落とすのであった。
一足先に本拠地へと撤退したフィーネは己よりも先にヴォイドが居た事に驚く。
自身を見ても無反応な彼に苛立ちを覚えつつも彼女は真っ先にその場に跪いた。
「申し訳ありません。ロックマンを仕留め損ねたばかりか正体までばれてしまいました」
フィーネの言葉に反応するかのように薄暗い一室に光が灯る。
<ふむ・・・やはり我が宿敵。簡単には倒せないか。まあロックマンが強いのは想定通りだったがね>
一室にあるスピーカーを通して主の声が響く。
愉快気に笑うその声だったが不意にそのトーンが落ちる。
<私としてはファントムマン・・・いやフィーネ。君には大人しく内部に潜入していてもらって欲しかったんだよねえ>
僅かながらも棘のある言葉を発する主にフィーネは地面に平伏する様に頭を下げるしかない。
額から冷や汗が流れ落ちるのを感じつつも、そのまま動けなくなる彼女。
暫くするとボーンダインにソロー達もその場に戻って来る。
その間、フィーネは平伏したままなのだが失態を犯しただけに簡単に顔を上げる事は出来ない。
「それでどうするのだ?既にプライドの生体データは手に入れた。一応の鍵は手に入れたのだが・・・」
ヴォイドが平伏するフィーネに見向きもせずに口を開く。
そんな彼の態度に歯を軋ませるフィーネ。
<既に種も蒔き終えたし次で王手と行くか。ここに来てアルゴスが戦闘不能になったのは痛手だが>
その言葉に現在コアだけの状態となっているアルゴスに一同の視線が向く。
「おいたわしやアルゴス様。下等な機械の分際で貴方様の仇はこのエキドゥナが必ずや・・・」
溢れ出る涙をハンカチで何度も拭きながらエキドゥナがコアだけとなったアルゴスに向かって口を開く。
「我は・・・まだ死んでいないぞ」
とアルゴスが声を出すのは半ばスルーされる。
<とりあえず次は私も出るぞ・・・先程も言ったが王手と行こうじゃないか>
「・・・!!」
<何時までも引っ込んでいる訳にもいかないからね。ロックマンに挑もうと思った彼女の気持ちも分からんでもない>
主の言葉に反射的に顔を上げるフィーネであったが、再び視線を向けられた様な気がして慌てて頭を下げる。
<むはははははっっ!!とりあえずヴォイド・・・手筈通りに事は進めておいてくれ>
「・・・分かった」
主の言葉に頭を下げながらその場を後にするヴォイド。
ほくそ笑む主に怪訝な顔となるフィーネだが、その意味を問う事はついぞ出来なかった。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇プライドについて
どっちかというと今回アースよりも彼女の方がメインヒロインとなってしまった。
まあリブート前は影薄かった所もあったのでこれはこれでありかなと思ってる。
いずれにせよ婚約者がまともな人物である事を祈るばかりである。
じゃないとワイリー軍団総出で襲撃を受ける事になる。
〇オイルマンとレントについて
やっぱりと言うか駆け落ちしてしまった。
あの後、数日は逃避行を続けた後にそれぞれの所に連れ戻されている。
ロミオとジュリエットになりそうだがその後も普通にあってるのでとりあえず付き合いは認められている。
とりあえず爆発しろである。
〇アースについて
完全に復活。少なくとも地球に来てからの状態ではあるが。
あの後、パンクとデートをしたらしいがリブート前同様に観覧車に閉じ込められてやばくなったらしい。
彼女がパンクをデートに誘ったのはフィーネが裏切っていた事で傷心気味な彼を慰める為な所もある。
この辺の僅かな挙動からメンタル面を把握出来るのは彼女が管理職だと言う所も大きい。
何だかんだでパンクとはいい関係である。
〇黒幕について
アルゴスの穴埋めに主自らが動くらしい。
とりあえずエキドゥナも戦える状態ではないのは付け加えておく。
〇今回のアース編について色々と
元の話から殆どを改変した結果、実質的に新作となってしまった。
バラード編よりも一話分が長くなり、ある意味で従来のボリュームに。
アース編と言うべきかちょっと疑問な編となってしまったのが反省点。
バラード恋編でも良かったのかもしれない。
ともあれ一旦はここで〆させてもらう形となる。
次回はこの続きでは無く、ブレイクマンことプロトジョーがとある場所で色々やっていた事の話を数話程書く予定。
それが終わり次第、一旦キラーズまとめ編は完結と言う形にし、新作としてこの話の続きを書く事になると思います。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。