ロックマンキラーズ纏め編   作:グルルre

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プロト編
vol1 極地にて


サングラスを付けた一人の青年型ロボットが襟を正す様に肩を動かす。

何時に無く落ち着きが無い彼の空気を察してか周りにいる者達も若干表情が硬い。

「全くワシらをこんな所にまで駆り出すとは・・・ワイリー博士の命令もあるが。些か気乗りはしないのう」

青年の姿からは裏腹な老人の様な口調で文句を言いながらプロトジョーことプロトは観測所のヘリポートに降り立つ人物に頭を下げる。

「は~い。貴方がブレイクマンちゃん?」

まずに自身らに声を掛けてくるのは厚手のコートに身を包んだ女性だ。

「ブルースを基に生み出されたと言うスナイパージョーの試作機。言うなればオリジナルブルースのコピーと聞いていたが確かに本人そっくりだねえ」

女性に続く様に恰幅の良い男性が声を掛けてくる。

彼はプロトに強引に握手をしつつ能天気に笑うのであった。

「ワイリー博士は元気かね?キング事件の際に一度会って以来だからね」

「相変わらずですよ。しかしそんな我らに依頼とは・・・ここ南極での探査とは聞きましたが」

プロトが二人の人物を迎え入れた場所はこの星の極地。

南極と呼ばれる凍てつく大陸である。

以前より国際的に中立的な地となっており、連邦政府もこの地の環境を守ると言う建前上もあってここでは殆ど開発が行われていない。

理由は不明なのだがこの二人はこの地での探査をプロト達と言うかワイリー軍団に依頼している。

その為、プロト達はこの様な地へと足を運んでいるのだが、詳細な理由を告げられていない事もあってプロト達の不満は強い。

と言うかそもそも自身らにこんな依頼をしてくる方が神経を疑うのだが、プロト達もプロト達で彼らに弱みを握られている。

「いや~何かの役に立つと思ってワイリー博士に資金援助をしていて良かったねえ」

「本当ね貴方。博士ったら依頼を引き受ける代わりに返済の一部免除を条件に付けたら、あっさりと乗ってくれたのよ」

夫の言葉に夫人が満面の笑みで話す。

男性の名前はニコライ=エフレーモフ。

ロシアでは名の知れた資産家であり、女性の方はナターリヤと言う名前のロシア選出の連邦政府議員だ。

一見するとどこか間の抜けた夫妻にしか見えないが、世界征服を企む悪の天才科学者たるDr.ワイリーのスポンサーの一人である。

でなければ世界に金持ちは数あれどワイリー軍団を雇える事など出来はしない。

「それにしても探査に同行するのは我々だけではない様子ですな・・・」

プロトの言葉に夫妻は眉一つ動かさない。

エネルギー反応から薄々気づいていたのだが、この場には自身ら以外にも高性能ロボット達が複数居る。

それも下手な軍の部隊を上回る程度に。

「流石はプロトジョー。あのブルースの完璧なコピーだ」

背後から響く声にプロトは身を翻す。

反射的に払った腕が一枚のカードを弾きプロトはサングラスの向こう側で目を細めていた。

一瞬でも反応が遅れれば指の一本でも落とされていたか。

奇術師の格好をしたロボットがおどけた風に両手を広げているのが見える。

「エフレーモフ殿・・・一応聞いておきますが」

「ハッハッハッハ。彼らも君達同様に雇わせてもらった。なかなか口が堅くて強いロボットを見つけるのも難しくてね」

そう言ってニコライは笑うがプロトは内心で苦笑いを浮かべていた。

同じ依頼人に雇われたと言っても彼らと自身らはついこの前まで互いに殺し合いをしていた関係である。

それに先程の態度を見るに友好的な関係を築くのは難しいのは明白だ。

「顔を合わせるなり喧嘩売るなんて止めとかんかい」

「あの動きに反応出来ないのであれば元より戦力外も良い所です」

海賊風の姿をしたロボットが先程プロトに襲い掛かったロボットに向かって呆れた様に口を開く。

彼だけではない後ろから来る数体のロボットにプロトは何時でも動けるように細心の注意を払う。

「ったくこんな寒い場所に連れて来やがって。全部溶かしてやりてええぇぇぇ!!」

「私は好きですけどね~。いや~許されるならずっとここに居たいです」

全身のガスボンベから炎を噴き出すロボットが苛立つ中、冷凍庫に手足を付けた様な風貌のロボットが間延びした口調で言う。

コールドマンにバーナーマン、いずれもキング軍団の幹部であった者だ。

そして先程プロトに襲い掛かったのはマジックマンでそれに呆れるのはパイレーツマン。

いずれも現時点における戦闘用ロボットの中では最強クラスの面々。

対してこちらの方はあくまでも南極の探査と言う事しか聞いていなかった事もあり、連れて来た戦力もある程度少なく編成している。

「キャハハハハハ~!!師匠に皆~なんか怒ってる?」

場の空気が険悪になる中、それを知ってか知らずか魔女の姿をした少女型ロボットがマジックマンに話しかけてくる。

「どうも~ワイリー軍さんの皆さん。師匠ことマジックマンの一番弟子なマジシャンウーマンで~す」

ピョンピョンとヘリポートの路面を蹴りながらマジシャンウーマンと名乗った少女はプロトの腕を掴むと勝手に上下に振る。

「よろしくね~」

「・・・むう」

屈託の無い笑みで挨拶をされプロトは呻く。

何を考えているかは分からないが簡単に心許せる存在ではない。

「まあまあ一応は戦いは終わったんだし、今は仲間って事で良いよね?」

今の今まで黙していた一人のロボットが被っていたフードを取りながらプロトに話しかける。

彼の素顔にマジシャンウーマン以外の面々の顔色が変わる。

「お前はロク坊やないか!?」

パイレーツマンが驚きの声を上げるのも無理は無い。

少年の顔は人類の英雄たるロックマンと瓜二つな物。

「あれ~貴方もワイリー軍団に入ったんですか?」

「いや違いますね。彼がライト博士の下を脱走したとなればすぐに噂になります」

惚けた様子のコールドマンの言葉を否定しながらマジックマンが思案する様に顎に手を置く。

あのロックマンと瓜二つでありながら僅かにその身に纏う雰囲気が異なる少年型ロボット。

「僕の名前はクイント。今の時代の僕はマジックマンの言葉通り、ライト博士の研究所に居るよ」

ニコニコと先程のマジシャンウーマンと同じ様な笑みを浮かべるクイント。

だがその笑みにはどこか憂いを帯びた物であり、その雰囲気も相まって彼がロックマンであってロックマンでない事を感じずにはいられない。

時を制する・・・時間を自由自在に操る事は人類にとっての数ある悲願の一つと言えよう。

実際にライト、ワイリー両博士も時間制御の研究に取り組んでおり、それぞれタイムマンとフラッシュマンを生み出している。

かつて連邦政府が時間制御の研究に本腰を入れた事があり、政府科学省が管理運営する時空研究所において試作式のタイムマシンが造られた事があった。

当然の事ながらその手の代物をワイリーが見逃す筈も無い。

タイムマシンの試験運転前日に時空研究所はワイリー軍団の襲撃を受け、タイムマシンは強奪されワイリーによる世界征服に悪用される事態となる。

余談だがその襲撃事件によってタイムマシン同様に開発されていたタイムマンが行方不明になった事を付け加えておく。

タイムマシンを使い過去や未来の世界に行く事が出来れば、もはや世界征服など容易い物。

手始めに未来へと飛んだと言うワイリーは未来のロックマンを・・・つまりは目の前に居るクイントを拉致し、現代へと連れ帰り洗脳する事でワイリー軍団の戦力として取り込む事を画策。

かつての自分と戦わせる事でロックを苦しめる卑劣な策略であったのだが、未来の自分を犠牲にしてでもワイリーの野望を打ち破る事を決心したロックの手によってクイントは撃破されてしまっている。

その後はスペースルーラーズ事件の際に再びロックと対決しているが、他のキラーズ同様にロックには勝て無かった。

現在の彼はコピーロックマンを素体にしたボディを有しており、以前のそれと違って首に巻いた紫のマフラー以外は殆どロック本人と変わりのない姿をしている。

「ったく・・・呉越同舟とはこの事」

と口を開きかけたプロトだったが再度、こちらに向かって飛んでくる輸送ヘリを見るや口を閉ざす。

ややあって着陸するヘリから降りてくるのは骸骨の姿をしたロボット達。

言うまでも無くコサックナンバーズの一人、スカルマンとその配下スケルトンジョーの一団である。

「うわぁ・・・戦力集め過ぎだね」

若干引いたような声を出すクイントにプロトも同意と頷く。

「いらっしゃ~いスカルちゃん」

呑気に手を振るナターリヤの前にスカルマンが進み出る。

戦う事しか考えずとにかく他者に無関心と言われている彼だが、ニコライとナターリヤ双方に恭しく頭を下げたのだからプロト以下の面々は思わず面食らう。

「博士から命令を受けている。今回の任務中、貴方達が俺の主だ」

「我がロシアを代表とするコサックナンバーズ最強のロボットとその一団を雇い入れられて私も鼻が高いね~」

ニコライが高笑いするのはさて置き。

「お久しぶりです~スカルマンさん」

キング事件の際にロシア方面を担当していたコールドマンがスカルマンに話しかけに行く。

「実はキング軍団が壊滅した後、色々ありましてね~。バラバラにされて売られた所をロシアで出会ったエフレーモフさんに買われまして」

自らの身の上を能天気に話すコールドマンであったが。

「・・・・・・」

当然の如くスカルマンは無言で無視を決め込む。

そもそもコールドマンに限らずキング軍団の幹部達はそれぞれ軍勢を率い侵攻した地域で破壊活動を盛大に行っているのである。

プロトらワイリー軍団もそうだが、お互いに戦争をした関係であり仲良く会話など出来る様な間柄ではない。

「いや~屋敷でパーティをしていたらコールドマン君達が乗り込んで来た時はびっくりしたねえ」

「そうそう二人で仮装に手間取って会場に出てきたらお客様が誰も居ないんだから」

エフレーモフ夫妻はコールドマンと出会った時の事を話す。

「いや~私も今から殺そうとした時に『とりあえずお客様が居なくなったから飲んでいって』と言われた時にはびっくりしましたねえ~」

超低体温のボディを持つ都合、電子頭脳の思考回路の動きが非常に鈍いコールドマン。

彼は地元でも有力者であったエフレーモフ夫妻を殺害すべく屋敷に乗り込んだのだが、当の夫妻もコールドマンに負けず劣らずの呑気ぶりを発揮し『どうせすぐにでも殺せるのだから』とコールドマンは会場に残された食事や酒で一服してしまう事となる。

結果としてこの間、コールドマンの指示が無い事から軍勢の動きはストップとなりそれをチャンスと見たロシア方面に派遣されていたワイリー軍団や政府軍を中心とする勢力が攻勢に出た事でロシア方面軍は壊滅している。

すっかりパーティを満喫したコールドマンが夫妻を殺害する事を忘れて、壊滅した基地に辿り着いたのは既に事が終わって数時間は経った時の事であった。

「ハァ~まさかそんな事で壊滅とは信じられんかったわい」

「そう言う貴方もネプチューンに良いようにやられたと聞いていますが?」

「フン・・・あのオカマ半漁の話はするなや!!」

パイレーツマンが呆れるが自身にとっても痛い事をマジックマンに突っ込まれ怒鳴り散らす。

彼も彼でネプチューンの海の家の経営を邪魔した事でネプチューン相手に痛い目を見ている。

「ハッハッハッハ!!バーカバーカ!!」

「放火魔~!!お前にだけは言われたないんじゃい~!!」

軍団一の猛者にして単細胞のバーナーマンが笑う中、尚もパイレーツマンが掴みかかりそうな勢いとなる。

もはや収拾がつかなくなりそうな中でプロトはわざとらしく咳払いをする。

「ともあれ任務の詳細を聞かせてもらおうかの・・・これ程の戦力を集めるとは一体」

プロトの言葉にナターリヤはニコリと笑みを浮かべると自身の持つ端末を見せるのであった。

 

 

 

「吹雪だガー吹雪だガー!!」

コールドマンと共に一同の先頭を歩くのはワイリーナンバーズのフロストマン。

当たり前だが南極での探査と言う事で寒冷地用のロボットも駆り出されている。

「寒いよ~もう帰ろうよ~」

一団が動き出して数時間が経過しているが早速クラウンマンが根を上げ始める。

「エフレーモフ殿が示した地点までもう少しじゃ。辛抱するんじゃ」

プロトが寒冷地用の装備をしたジョー達と共にソリで荷物を運びながら言う。

フロストマン、クラウンマンら二人にプロトとクイント、何体かのダークマン達にスナイパージョーが二十人と言うのが今回の任務に携わるワイリー軍団の面々である。

キング軍団は幹部四人にマジシャンウーマンを加えた五名と少数精鋭。

まあこれは軍団が壊滅した影響であるのは言うまでもない。

「やっぱり陸の上はあかん」

パイレーツマンが不機嫌に口を開くのが吹雪の音に混じって聞こえる。

「・・・・・・」

一方スカルマンは十数人のスケルトンジョー達と共に無言で前を進む。

彼らは寒さによる影響を殆ど受けていないと言うか、そもそも依頼主以外との無駄な対話は拒絶していると言った様子だ。

「・・・ところで」

プロトが横目でクイントを見る。

「お主はここで起こる結果を知っておるのか?」

未来の世界から来たと言うクイントにプロトは尋ねる。

ワイリースターでの決戦後にコピーロックマンのボディを用い修復された彼だが、過去の自身に倒された時のショックからか自らの自我を取り戻している。

ワイリーの支配から脱した彼だったが、何を思ったのかワイリー軍団から抜け出す事も無く留まり続けており、一応は軍団内の諜報部に属したまま殆ど何もせずに今に至っている。

彼の扱いには当のワイリー自身も苦慮しており、なまじ未来の事をこれから起こる事を知っているのもあって捨て置く事も出来ず居る。

まあ幸いにと言うべきかクイントは、巻き起こる事件などには一切干渉せずにただ見ているだけというスタンスを取り続けている。

キング事件の際にも慌ただしく動く仲間達やかつての自分を尻目に何もしなかった程である。

そんな彼だったが、今回の南極探査参加に自ら志願した事もあり、プロトはその真意を測りかねているのだが。

「残念だけど僕は何も知らないよ。だけど何も知らないからこそ気になるんだ」

遠慮がちに笑うクイントにプロトが眉を寄せる。

「早速だが嫌な予感がして来たのう・・・」

未来を知る筈の彼すらも知らないと言う時点でプロトは冷や汗を掻く。

それは今回の件は後の世に大っぴらに公開されていないと言う事と言えよう。

「もしかしなくてもだけど。僕やロックマンシャドウ達が過去の世界に介入した結果、僕の知っている未来とは少し変わったのかも知れないね」

クイントの言葉にますます嫌な予感しかしない。

未来は文字通りの白紙である方が良いとプロト個人は思っている。

最初から確定した結果など何の面白みがあると言うのだろう。

とプロトが内心で思った時、彼らの背後から男女の笑い声が響く。

かつて四度目の世界征服計画の際にワイリー基地で運用されたタコトラッシュを改造した雪上車が彼らの後方でゆっくりとした速度で進むのだが、その中に居るエフレーモフ夫妻がマジシャンウーマンと何やら騒いでいるらしい。

「お爺ちゃん。僕も中に入りたいよ~」

不満げに頬を膨らませたクラウンマンが文句を口にするのも分からないでもない。

タコトラッシュに続く形でガメライザーが歩行するのだが、こちらの役割は主に物資の輸送用であり生憎中に人を入れるだけの余裕は全く以って無い。

ジョーも含めた人員がそれぞれ荷物を背負う中で依頼主であるとは言え、エフレーモフ夫妻との待遇差に不満を覚えない者が居ない筈も無い。

「あの馬鹿夫妻には政府に逮捕された際に身柄を引き取ってくれた恩があるが・・・ちょいと腹が立って来たのう」

片腕の鈎爪を開閉しながらパイレーツマンが舌打ちをする。

今回の任務が陸の上と言う事もあってか彼は非常に不機嫌であった。

「あれだけ人間を攻撃したお主や他の連中が人間の雇い主にこき使われるとは皮肉じゃの」

「ケッ・・・あんな奴。キング陛下が帰ってきたらすぐに焼き殺してやるぜ」

プロトの言葉にバーナーマンが吠えるが吹雪が舞う中ですぐに炎が掻き消える。

「まあ・・・エフレーモフ氏は我がキング軍団のスポンサーの一人ではあったのですが」

「・・・はあ?」

マジックマンの言葉にプロトが首を傾げる。

人類からの独立を掲げ世界中で破壊活動を行ったキング軍団であるが、そんな組織に対し人間でありながら援助を行うなど普通に考えてあり得ない。

が全く以ってゼロであった訳では無かったようで。

「確かに中には命乞いの為に貢物を送って来る連中も居ましたね~それを見て陛下は憤慨していましたが」

コールドマンが笑みを浮かべながら話す。

金の力で物事を解決出来ると考えている連中こそ、キングが打倒すべき存在でありそんな彼らに怒りを覚えたのは分からないでもない。

「あの夫婦の場合は命乞いとかそう言うつもりでは無く、ただ単に投資をした感覚だったんでしょうね」

「まあワイリー博士にも資金援助をするぐらいだからの・・・しかし節操が無いのう」

マジックマンが掌を広げる中、さしものプロトも思わず溜息を吐く。

聞けばキング軍団が壊滅した後、マジックマンやバーナーマンを始めとする幹部達をエフレーモフ夫妻は回収して回っていたらしい。

ワイリー軍団に合流する意向のグランドマンや社会復帰をしたダイナモマンを除く、四人の幹部を手中に収めた形なのだが。

「バーナーが言いましたが我々としてはあの夫妻の命令に従っているのは当面の潜伏先を得る為に止む無くですね。キング陛下が帰られた暁には」

言葉の最後に冷たい笑みを浮かべ話すマジックマン。

当然と言うべきか彼らは夫妻に忠誠など誓ってはいないようだ。

「そのキングだが・・・確か南米のゼーネルシティに現れたらしいぞ」

「・・・なんと!?」

「あそこは私が分解されて売られていた場所ですね。いや~ニアミスですか」

プロトの言葉にマジックマンが目を見開き、コールドマンが笑う。

と面々が話をしていた時であった。

<はいは~い。皆、ストップ~>

タコトラッシュの中からナターリヤの通信が一同に入る。

<目的地に到着したよ。いやあここまでは順調だね>

ニコライが笑い声を響かせる中、防寒着を着込んだ夫妻が外に出て来る。

多少吹雪は和らいだが生身の人間であれば長時間活動するのは難しい状況だ。

「さて先も説明したが我々が探しているのは、我がエフレーモフ家に伝わる秘宝でね。衛星などからここが古文書に記された地点と言う訳なのだが・・・」

そう言ってどこまでも続く氷の大地に目を向けるニコライ。

「ホンマにここに宝があるんか?」

パイレーツマンが目を細める。

「そもそもその古文書って言うのもホンマモンなんかが怪しいわい。この手の話は大体が嘘じゃい。これやったらまだ海に沈んだ豪華客船とかを探す方がマシやぞ」

自身もがめつく宝探しを幾度となく行った経験からパイレーツマンが険しい顔で言うのだが。

「まあお婿さんの貴方には無理よね~」

「確かにそれは言えているね。古文書によると我が家の初代家長とされるソフィーア=エフレーモフが大航海時代の際に南米の遺跡であれを発見したそうでね。それに導かれるままにこの南極にまで辿り着きそこに居た神なる存在と契約をしたと言うんだがね」

ナターリヤが手にするのは不気味な球体を先に取り付けた杖だ。

「南米・・・まさかランファント遺跡群か」

「我々としてはそこに調査に行きたかったんだが・・・」

「政府軍が監視をしているから行けないのよね。それで代わりにこっちに目を付けた訳なの~」

眉唾物の古文書であるが本の内容と現実に起こった事を加味すれば、あながちデタラメでは無い事が分かる。

「ワイリー博士には感謝しているのよ。博士のお陰で古文書の話に信憑性が増したのだから」

そう言って杖の先を地面に向けるナターリヤ。

当初こそ何の変哲の無い杖であったが、僅かに光が灯る。

その光が強くなる方向にナターリヤが向かった時であった。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!

 

突然起こった地響きに目を見開く面々。

転倒しそうになったナターリヤをニコライが支える中、眼前の地面が裂け一本の道が出来上がる。

「見て見て~古文書にあった氷の底への入り口よ~!!」

興奮したナターリヤが地面の裂け目を指差す。

ご丁寧にも階段と思われる段差まであり、彼女の先祖の古文書を信じるならこの先に神なる存在が居ると言う事になる。

「・・・懐かしい空気だね」

クイントが暗くて見えない氷の底を見ながら言う。

何が懐かしいのかプロトは正直聞きたくなかったが、クイントは笑みを浮かべたまま言葉の続きを言い放つのであった。

「ランファント遺跡群で感じた肌触りを思い出すね・・・恐らくこの先はあの時のあそこと同じになっていると思うよ」




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇プロト編について
突然始まったプロト編。実質的な番外編なので手早く終わる予定。時系列としては前回のアース編の半ばに起こった事となる。
ロックマン3において当時と言うか今を以ても謎の存在であるブレイクマン。
ギガミではブレイクマン=ブルースと言う解釈で実際にゲーム内のボツデータにはブルースがブレイクマンに変身するアニメーションもあるみたいなのですが、それを実はよく似た別のキャラとして解釈したのが一応の今回の主役?なプロトジョーとなっています。
まあダークマンと言い池原版だとワイリーブルースとブルースの偽物は非常に多いのですが、彼の場合はブルースの完全なコピー。
と言うか動力炉の欠陥も無いので寧ろ後発の特権でオリジナルよりも性能は高いのですが、ジジイ口調なのからも分かるように卑屈な感じになっています。
ジョー達を始めとするザコ軍団を管理していたり、仮想敵としてロックマン役を訓練でしたりと仕事は真面目なのですが。
そんなこんなで彼含め一癖も二癖もある面々で話は進みます。

〇エフレーモフ夫妻について
彼らはリブート前には居なかった人物。そもそもエフレーモフ家自体の設定がヴァヴァ編を書いていた頃に設定したので完全に後付け。
そんな訳で逆算する形で本家時代にも登場となった。Xシリーズの時代にも政府議員をしていたりする家なのだが、夫のニコライは婿で資産家、妻のナターリヤが政府の議員となっている。
ニコライの方は何気に名前だけだが、未来の方の話に出ており今回が初登場となる。
完全に余談だがこの作品の連邦政府は国連から発展した組織であり、各国を区分分けして政府議員を選出し運営されている。
仮に日本だと議席は各地を区分して2~5ぐらい。アメリカあたりだと20~30ぐらいだろうかこの辺は人口やら国土の割合もあり。
カンパネラ公国に公王が居る様に各国の元首もそのまま存在しており、連邦政府の下に地方政府(現代における各国)がある事となる。
要はこの世界には地球全体に影響力がある連邦政府があるけどその下に日本政府があって総理大臣も居るよと思っていただければ幸い。
そのせいで以前からの各国の対立も多く残され、纏まりに欠けるのが欠点。

話が逸れたがナターリヤはロシア選出の政府議員の一人と言う事になる。
エフレーモフ家に関しては文にすると凄く長くなるのだが、自称ロシア帝国の血筋に繋がる高貴な家柄であり名門(自称だけど)
でも初代とされるソフィーアなる女性が大航海時代に南米やらを探検している様に素性が非常に怪しい。
語られる事は無いが実際にはソフィーアは南米を中心に荒らしまわった海賊の一人であったと言うのが真実であり、ロシア帝国の皇帝に連なる家柄と言うのも財を成したソフィーアの何代か後の当主ダリア(女性)がロシア革命の影響で留学先の欧州で途方に暮れていたエフレーモフ家の青年をお持ち帰りしたと言うのが事の真相。
エフレーモフ家の名前も含め、色んな意味で都合の良い様に書き換えている。
そんなこんなで二人とも能天気かつマイペースであるが、ワイリー軍団のみならずキング軍団にも援助していたと言う裏では何やってるか分からないブラックな人物なのは言うまでもない。
ワイリーのスポンサーと言うのは現実もそうだが、この手の天才に利益を求めて援助をする輩は居ると考えたので設定した。
利益と言っても少なくともワイリーが人々の役に立つ研究をする筈が無いので、大損なのだが特に気にする事も無く夫妻は資金を投資しているらしい。
自身らを殺しに来たコールドマンにも間の抜けた対応をするなど、色んな意味で肝は据わっている。

再び余談だがエフレーモフ家は男が家を潰しかけると女が立て直すと言う良く分からないジンクスを持っている。
このジンクスは世紀が変わっても変わらずであり、エフレーモフ家に女性当主が多い理由にもなっている。
因みに当主はニコライではなくナターリヤの方なのであしからず。
当たり前だがエフレーモフ家の設定含め架空であり、現実のロシア帝国などとは一切関係ないので気にせずにである。

〇スカルマンについて
答え合わせだが実はこの時、夫妻の依頼を受けて南極に派遣されていた。
夫妻はコサックにも資金援助を行っており、彼がワイリーの悪事を手伝った際に汚名返上の為に色々と協力した事もあって、夫妻はコサックナンバーズ最強のロボットたるスカルマンを借りる事が出来た。
一応スカルマンは依頼主と設定された人物には礼儀正しく対応する事が可能となっている。
ただしあくまでも任務中だけの対応であり、それが終わると何時もの様に塩対応になる。

〇キング軍団について
今回で一応全員登場となった。
当然の事ながらダイナモマン以外は全員が指名手配。見つけ次第拘束或いは破壊対象となっている。
その内、パイレーツマンは一度逮捕されたが裏取引で夫妻が政府から引き取っている。
南米で売られていたコールドマンを買ったのも夫妻である、
パイレーツマンに関してはエセ関西風な口調でがめつい性格、キング軍団に属していたのもあくまでも金目当てでありキングとは結構ドライでビジネスな関係であった。
逆にマジックマンは忠臣タイプで両者の仲は悪い。同じくグランドマンとも微妙だった様だ。
バーナーマンは政府からの刺客を返り討ちにしながら潜伏していたのだが、先に夫妻に匿われたマジックマンに案内される形で合流している。
少なくとも戦闘力だけなら軍団最強格と言う解釈でいる。実際に強いので。

〇マジシャンウーマンについて
オリキャラでリブート前はマジシャンマンだったが、現在の女性ボスの名前の法則からウーマンに。
そもそもマジックマンの初期名がマジシャンマンだった事からの名前で彼の弟子の魔女っ娘と言う設定。
彼女については色々と語りたいが、上記のエフレーモフ家同様に凄く長くなりそうなのでここでは割愛。

〇クイントについて
ロックマンシャドウと言い存在は匂わせていたが今回初登場。
現在はコピーロックマン、ロックマンロックマンにおける偽ロックマンのボディを使っており要は紫色のマフラーを付けたロックな見た目をしている。
未来で拉致されたロック本人で洗脳は既に解けているが、ライト博士の下には戻らずワイリー軍団の下に居候している。
彼は当然ながらこの先起こる事を知っている訳で、その気になれば何をするか分からないのもあって半分監視をしつつ手元に置くしかないと言うのがワイリーの対応となっている。
だが基本的に彼は何もする気が無くキング事件の際にも全く動かなかった。
過去の自分がどれだけ苦しもうが多くの人間が殺傷されようともである。
そう言った点も含めて現状のロックよりも弱体化していると言えるのかもしれない。
因みに改造の際に良心回路は取り払われており、三原則を破る事は可能となっている。
普段は決して動かない筈の彼だが、自身が知らない事と言うのもあってか今回の南極探査の任務を聞きつけ勝手に同行を申し出ている。
何度か基地内で遭遇したフォルテに喧嘩を売られているが「僕みたいなロートル相手に勝ってそれで満足なの?」と煽ってその場から逃げ去るらしい。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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