「ハッハッハッハッハ!!古文書に書かれた出来事は本当だったみたいだね」
ニコライが笑みを浮かべながら出現した階段とその先にある空間を指差す。
「そう言う訳で皆。早速だけどお宝目指してレッツ&ゴー」
一同を前にして拳を突き上げるナターリヤだが反応を示したのはコールドマンにマジシャンウーマンぐらいで反応は極めて薄い。
如何に能天気な彼女でもその反応の薄さに首を傾げ。
「この先に古代の遺跡があるとして・・・やで。金銀や宝石を含めた財宝をワシらが手に入れた場合は・・・」
「モチのロンでパイレーツちゃん達の取り分になりま~す。と言うかワイリー軍団の皆さんにも報酬は現地での現物支給よ」
「ホンマか・・・じゃきにぃ!!放火魔やないけど燃えてきたで!!」
ナターリヤの言葉にパイレーツマンがやる気を見せ始める。
強欲な彼らしい反応にマジックマンとバーナーマンの視線が痛いが、それを彼が気にする素振りは見せない。
「改めて頑張って~お宝を目指すわよ~」
再度上げられるナターリヤの掛け声に今度はパイレーツマンが加わったのは付け加えておく。
「嫁はあんな事を言っとるが・・・良いのか?」
一応確認と言う形でプロトがニコライに問う。
エフレーモフ家の家長はナターリヤではあるが、主に財産の管理を行っているのはニコライである事を知っているからなのだが。
「我々としては別に財宝には興味が無いので構わんよ。そもそも財宝なんて探さなくても十分な資金はあるし、ただ未開の古代遺跡に一番乗りを果たすと言う体験がしたくて今回の探査の同行を君達に依頼した訳でね」
あっけらかんと金に興味が無いと口にするニコライにプロトは一瞬だが思考が停止する。
なんでも古代遺跡の手がかりが見つからなかった場合は、自腹を切るつもりであったらしくその点では古代遺跡が見つかって損をせずに済んだと言うニコライ。
いやそもそも南極に来ている時点で莫大な出費が生じている訳なのだが、この夫妻は遊園地のアトラクションに挑むのとさして変わらぬ気持ちで古代遺跡を探査しようとしていると言うのか。
と色々考えた所でプロトはニコライに何か言うのを止めた。
ワイリーもそうだがこの世界には常識と言う物差しでは測れない人間がそれ相応の数で居る。
その事実を改めて突き付けられた気がしたプロトであった。
「スネークマンもそうじゃが寒冷地で活動がしやすいフリーズマンなんかも連れて来るべきであったか」
氷の下にある巨大な空洞内を歩きながらプロトが口を開く。
あくまでも任務は探査と聞いていただけに限られた戦力しか連れてこなかったのがあまりにも痛い。
もしもランファント遺跡群に匹敵する古代遺跡に行くと聞いていれば、言葉通りフリーズマンらも動員していたのは言うまでもない。
「もしも博士に話したら、先に乗り込まれるかもしれないでしょ~」
自身の不満を見て取りナターリヤが笑いながら言う。
確かにワイリーがこの事を知っていれば夫妻に先んじて調査を行おうとしただろう。
夫妻も奇人変人の部類に当たるだけあり、この手の読みはおおよそ当たりとなっている。
空洞の中を進む事、時間にして約数分。
ややあって開けた場所へと出た所で場の空気が重くなる。
『・・・立ち去れ』
辺りに響く低く重い声は音では無くその場にいた面々の脳裏に直接響いた。
「漸くお出ましやな」
パイレーツマンが鈎爪を鳴らす中、更に空気が重くなる。
『悪い事は言わぬ。柔らかき生物よ・・・そしてそれに従う不完全な機械共。命惜しくばそのまま立ち去るが良い』
再度響く警告の声に夫妻は揃って能天気な笑い声を響かせた。
「古代の遺跡にそれを守る守護者の警告。いや~実に探検家モノの醍醐味だねえ」
「更に価値のある財宝があれば尚、完璧よね~」
『下らぬ物欲が為に我らが聖域に足を踏み入れるか・・・これは最後通告だ。今すぐ・・・』
夫妻の言葉に不快感を生じさせながら声は警告の声を放つのだが。
「酒・金・女~。飲む打つ買うの三拍子がモットーのワシらにそんな声だけで脅すなんて片腹痛いで!!」
中指を立てながらパイレーツマンが声を遮る様に叫ぶ。
「なんか堂々としてるけど・・・」
「言っとる事はヒトとして最悪の部類じゃの・・・」
苦笑するクイントの言葉を受けプロトが大きく肩を落とした時であった。
『そうか・・・であれば我らが神の怒りを思い知るが良い。己の心の醜さに呑まれて・・・死ねいっ!!』
文字通り呆れた様な息を含みつつ、声が力ある言葉を口にした瞬間であった。
ヴンッッ!!
言葉を合図に足元に不気味な模様が浮かび上がる。
何かの魔法陣の様だとクイントが思った瞬間、彼の意識はその場で途切れる事となる。
「プロト様の反応が途切れた?」
プロト達より遅れてその場に辿り着いたダークマンⅣとダークマンⅢは困惑気に辺りを見渡す。
一部のジョー達を後方に待機させた後に手勢を率いて空洞内を進んだ彼らであったが、ある地点で突如として先行したプロト達の反応が消え失せる。
何が起こったのか分からずに周囲を見渡す彼らだが、重々しい音と共に巨大な扉が開かれていく。
ザッザッザッザッザッザッザッッ!!
『まだ居たのか・・・愚かな者達よ』
誰の声かも分からぬが重厚なそれが脳裏に響くが気にしている暇など無い。
氷の彫像と表現する他無い人型の物体が斧や槍などを手に隊列を組み姿を現したからだ。
『ザウラーガードよ・・・一人残らず始末するのだ』
その声に頷いたのかは分からぬが応じる様にザウラーガードと呼ばれし者達が一斉に武器を構える。
「どうしますか・・・?」
ダークマンⅠが怖気づいたように声を震わせる。
「ナンバーズと呼ばれる者達が居なくて不安か?なあにあれぐらいの連中など我らだけでも何とかなる」
感情の伴わない声を響かせながらダークマンⅣはジョー達と共に身構える。
「・・・ロック」
一体どれだけ気を失っていたのか分からないが自身の体内時計が正確であればそれ程の時間は経っていない。
辺りは闇に閉ざされているがその声だけははっきりと聞こえた。
もう二度と聞くとは思っていなかった彼女の声だ。
「・・・ロック」
再度響く声と同時に闇の一部が晴れた。
ブロンドのポニーテールが特徴的な少女が自身に向かって微笑む。
「ロック、何をしているんだい?早くこちらにおいで」
恰幅の良い白衣の老人も己の名前を呼ぶ。
彼ばかりではないそこにはライトナンバーズを始めとする兄弟達が佇んでいた。
「ロック・・・どうしたの?」
「ロック~!!早くこっちに来いよ」
次々と自身に投げかけられる声にクイントはかつてロックと呼ばれた少年は足を前へと踏み出す。
あのまま彼らの下に愛する兄弟達の下に駆け寄れば、懐かしい暖かさを感じる事が出来るのであろうか。
「・・・ロックマン」
背後で響くその声にクイントは振り返った。
己の背に立ち尽くすのは無数の傷ついたロボット達。
ロボット達ばかりでは無く人間達もまるで山の様に積み上がる地獄絵図。
(ああ・・・これは僕が破壊して来たロボット達や救えなかった人達だ)
目を覆い耳を塞ぎたくなる光景だが、それをしなかったのは彼が自身の責任だと認識していたからか。
「ロックマン・・・どうして殺した?」
「人間を守る為にロボットであるお前が同じロボットである俺達をどうして殺す」
「バラバラにされても修理すれば元通り?痛みや恐怖は感じると言うのに」
「人間達は俺達を平気で傷つけるのにどうして人間を傷つけちゃいけないんだ?」
ロボット達か次々と呪詛の言葉が投げかけられる。
「どうして俺がロボットに殺された時にお前は来てくれなかったんだ?」
「お前が早く来てくれれば私やお母さんが死ぬ事は無かった」
「正義の味方なんだろう?それなのにこの役立たずがっっ!!」
人間の男性が少女が様々な年代の者達がロボット達の呪詛に続く。
「ロック、そんな人達なんて放っておけばいいのよ」
「彼らは勝手な事を言っているだけだ。彼らが死んだのもお前達の責任ではない」
「俺達は俺達だけで楽しもうぜ」
ロールがライト博士やカットマンが自身を慰める様に招く様にそれぞれ口を開く。
今にも動力炉が停止しそうな動悸を覚えていたクイントであったが、背後で響く見知った者達の声に薄笑みを浮かべる。
「あの声は・・・己の心の醜さに呑まれよと言った。成程・・・これがそう言う事か」
クイントはゆっくりと片腕をバスターに変えるとその銃口を人々へと向ける。
「これは幻だ。僕の心を投影した・・・ね」
次々と放たれる光弾は人々を形作っていた闇を掻き消していく。
最後に生みの親と兄弟達にクイントは何の感情も宿さない瞳を向ける。
「もしもこれがが本当にライト博士だったらそんな事は絶対に言わない。だから・・・消えろ!!」
バシュウウウウッッッ!!
放たれた巨大な光弾に闇が切り開かれたと思った瞬間であった。
額に冷や汗を掻きながらクイントは目を見開く。
思うに先程見た光景も幻であったのか。
周囲を慌てて見渡すとそこはそこら中に無数のクレバスが走るトラップルームであった。
絶えず隆起を繰り返し、一歩でも足を踏み外せば奈落の底に真っ逆さまと言う残忍な罠にクイントは苦笑いを浮かべる他無い。
並の者であれば幻を見せられた時点で自滅するのは明白。
「・・・おっと」
足元がぐらつき始めたのを感じ跳躍するクイント。
思うに自分も正気に戻らねば今頃、死んでいただろう。
「全く・・・なんと悪趣味な」
自身と同じ様に意識を取り戻したのかプロトが不快感を露わに口を開く。
「君は何を見たんだい?」
彼が無事なのに安堵しつつも思わず好奇心からそれを聞いてしまった事にクイントは内心で後悔する。
「お前が見たものをワシに言えるのであれば言ってやらん事も無い」
一瞬だけ間があった後、プロトにそう言われてクイントは両の手を広げ背を向ける他無い。
プロトもそんなクイントの姿から察したのだろう。
それ以上は問う事も無く彼は周囲を見渡す。
「じ・・・自爆スイッチ!!それだけは勘弁してくれぇぇぇ!!」
隆起する氷の上でバーナーマンが涙ながらに叫ぶがそこには誰も居ない。
「大丈夫ですよ~自爆スイッチなんてありません」
今にも走り出しそうになる彼を羽交い絞めにして抑えるのはコールドマンだ。
彼もトラウマ級の幻を見たであろうが至って平然としていた。
「いやあ~世界中が温暖化で暑苦しくなる夢を見ました。まあ私の冷気で冷やして差し上げましたが」
ニコニコと笑いながらコールドマンはバーナーマンを引き摺りながら安全な場所まで歩いていく。
「金が・・・預金の残高がナニモンかに引き下ろされる夢やったわ」
青ざめた顔でパイレーツマンがクイントらに告げる。
彼は真剣な顔であったがある意味でこの男らしいとプロトらは呆れ果てる他無い。
「オデよりも大きなロックマンに見下ろされる夢だったガー」
「僕は空中ブランコから落ちる夢だったぞ」
フロストマンとクラウンマンがそれぞれ口を開く。
彼らも彼らで何とか持ち直したらしく全身から冷や汗が噴き出ていた。
「ハァ・・・ハァ」
幻を見せられた面々で今にも崩れ落ちそうなのはマジシャンウーマンだ。
「大丈夫ですか?」
「だ・・・大丈夫。キャハハハ・・・」
師であるマジックマンに抱えられる形の彼女は笑みを浮かべるのだが、その頬を止め留めなく涙が流れ落ちる。
「無理はしなくてもいいよミュゼット」
笑みを浮かべるクイントにマジシャンウーマンはキョトンとした顔をするのだが。
「あっ・・・そっか。君は未来から来たロックだったんだね」
「まあ今の時代の僕は君がマジックマンの弟子になった事を知りもしないだろうけどね」
屈託なく笑うクイントに僅かながらも調子を取り戻すマジシャンウーマン。
それはそうとして彼らはその存在をすっかり忘れていた事にこの時になって漸く気づいていた。
下手をするとすでに奈落の底に転落した可能性も大いにあるだけに、プロトらは無言で互いの顔を見合わせるのだが。
「は~い皆さん~ご無事かしら~」
最悪の事態も想定した時、一人の女性の声が響いた事でその場にいた全員が胸を撫で下ろした。
「ちょっと夫がダウンしてるけど気にしないでね~」
「う~ん・・・埋めないで」
スカルマンにお姫様抱っこされる形で安全な場所に降り立ったナターリヤは気を失ったままスケルトンジョー達に抱えられるニコライを指差す。
未だに虚ろな表情で譫言を口にする彼だったが、数秒後には飛び跳ねる様に起き上がる。
「はっ・・・走馬灯が過った!!」
慌てて周囲を見渡すニコライだが誰にも構われない辺りは哀れである。
「ところでご婦人も幻を・・・」
「え・・・?何が?」
確認の為、質問をするプロトだがナターリヤは首を傾げる。
「いきなりこんな危険な場所に落とされてどうしようと思っていたらすぐにスカルちゃんが来てくれたのよ」
スカルマンに礼を言うナターリヤ。
彼女に恭しく頭を下げるスカルマンは眉一つ動かさない。
「さあさいきなり閉じ込められた訳だけど、ここから逆転目指して頑張るわよ~」
拳を握り締め上に掲げるナターリヤにプロトが溜息を大きく吐く。
見た所、一室には出口らしい箇所はどこにも無いのだが。
「おっ・・・ここら辺が脆そうやで」
海上での略奪の際に頑丈な船の底に穴を開ける事を得意としているパイレーツマンが目聡く壁の一部を目にする。
「グランドが居れば楽が出来たのでしょうけど」
溜息を吐くマジックマンを他所にパイレーツマンが氷の壁に爆弾を放り投げる。
リモートマインによる爆発は頑強な氷の壁に亀裂を生じさせる。
徐々にだが大きくなっていく亀裂を前にクイントがパイレーツマンの肩を叩きながら前に出る。
「後は僕のサクガーンで・・・と」
削岩機を模した武器を取り出しながらひび割れた氷の壁にサクガーンを突き付ける。
「流石は未来のロク坊~面白い武器持っとるやないか」
面白うに笑うパイレーツマンに笑みを返しながらクイントはサクガーンを起動させた。
ズドドドドドドドドドドドドッッッ!!
全身が大きくぶれるのを感じながらクイントはサクガーンで氷の壁を削り取っていく。
下手をすれば今、自分達が居る足元も崩してしまう可能性もある為に慎重に前へ前へと進んでいく。
サクガーンを起動させて十数分が経った頃、掘り進んだ穴から風が吹き飛んでくる。
穴が別のエリアに突き当たったと理解するやクイントは一旦サクガーンの動きを止める。
「よしゃっ!?任せとき!!」
止めとばかりにリモートマインを投げ放つパイレーツマン。
爆弾の爆風と共に別のエリアへの道が開け、プロトらは一斉に穴から外へと飛び出す。
「・・・ふう」
サクガーンを使い続けていたクイントは消耗が激しかったのか一番最後に穴を抜ける中、プロトらが目にしたのは。
「すっご~い!!見て、あなた~南極の底に氷で出来た神殿があったわ~」
「これは世界遺産登録間違いなしだね~しかもまだ現役だ。はははは~前人未到の場所に我々は立っている~!!」
巨大な氷の結晶で造り上げられた神殿の姿にナターリヤが携帯端末を取り出し写真を撮り始める。
興奮気味に叫ぶ彼女とニコライはすっかり旅行気分なのだが、そんな声を上げればすぐさに気づかれる訳で。
「なに・・・あの場より生きて帰って来るとは!?」
驚きの声が自身らに向けられる。
先程とは違いその声は自身らと同じく音を通して聞こえる物であった。
鎮座していた祭壇よりゆっくりと起き上がるのは巨大な氷の彫像を思わせる姿の存在であったが、それを何と表現すれば良いのかプロト達には分からなかった。
プロト達が見た存在は右半身は内部機構剥き出しの機械でありながら、左半身はそれとは真逆の人体模型を思わせる剥き出しの神経が露わとなった異形の姿をしていた。
ロボットでも無ければ当然の如く自然界に居る人間を含めた動物でも無い存在。
「成程・・・そもそもこの聖域に足を踏み入れたのだ。並の者ではないと言う事か」
全身から冷気を放出しながら巨人はその口を歪ませる。
人型ではあるがその身長は長身のマジックマンよりも遥かにでかい。
単純に数メートルはあるであろうか、彼の全身を覆う氷の厚さから体重もトンは超えよう。
「まずは名を名乗ろう。我が名はユミール・・・偉大なる神マキナ様に仕える従者にしてこの嵐の神殿を守護する存在である」
重々しく口を開くユミール。
「これ以上、この場を汚す事は許さぬ。命惜しくば・・・」
再び自身らに去る様に命じるユミールであったが。
「アホか先にそっちからやっとるやろが!!あんなチンケな幻まで見せられたんや、宝石の一つや二つ持ち帰らな収まりがつかんわい!!」
歯を軋ませながらパイレーツマンが噛みつく。
「やっぱりここに神様が居るのは本当みたいね。やっぱり私の御先祖様が神様に会ったのも本当だったのね」
「こうなったら神とやらの御尊顔を拝しないといけないね。申し訳ないけど君~拝観料は幾らだね?」
「・・・拝観料だと?」
後ろで騒ぎ出すエフレーモフ夫妻に首を傾げるユミール。
「貴様ら下等な存在が我らが神に会えるとでも思うたか!?身の程を知れ!!」
一瞬だけ黙り込んだユミールであったが、すぐさに彼は怒りに身を震わせ巨大な腕を横に振るう。
それを合図に氷の彫像の如き姿をした兵士達が次々と神殿の内部より出て来る。
「クイントや・・・あのユミールなる者。かなりの強敵と見た」
「そればかりか彼がマキナと言った神だけど・・・恐らくはラ・ムーンに準ずる存在だね」
プロトの言葉にクイントは静かに頷く。
神殿の壁に刻まれた模様や装飾を見るにかつてランファント遺跡群にあった月の神殿に似通った部分が見受けられる。
「僕がここでの出来事を知らないのも無理は無いか。ここにこんな物があるだなんて後世に記録として残す訳には行かないよ・・・全く」
呆れた様に溜息を吐きながらクイントは片腕をバスターへと変形させる。
「死ねい・・・!!」
ズドドドドドドドドドッッ!!
ユミールが地面に拳を叩きつけた瞬間、地面より生えた無数の氷の柱がクイントら目掛けて迫り来る。
それぞれ散開する形で攻撃を回避するクイントらであったが、結果として左右に戦力を分散される形となる。
ズンッッ!!
クイントが見たのは一瞬の内に自身らへと間合いを詰めるユミールの巨体。
「ヒャッハッッ!!燃えろ!!」
その動きに反応を示したバーナーマンがチェインバーナーを顔面に見舞うが、ユミールの氷は溶けない。
「・・・笑止!!」
残像を残しながら放たれる蹴りを食らいバーナーマンが後方に吹き飛ばされる。
「やりますねえ・・・ではアイスウォール!!」
「くだらんな!!」
コールドマンが形成した氷の壁を軽く足蹴にする形でユミールが破壊する。
続けざまにマジックマンが放ったマジックカードもユミールのボディを覆う氷に阻まれる。
ドガァァァンッッ!!
再度顔面に放たれるパイレーツマンのリモートマインの爆風にも一切動じた様子も無い。
「その程度の力で勝てると・・・」
「まあ僕一人だったら勝ち目は無かっただろうけど」
ほくそ笑むユミールであったが、自身の頭上より声が響いた事で見上げるがもう遅い。
ユミールが最初に生み出した氷の棘を足場変わりにしサクガーンを手にしたクイントが、彼の脳天目掛け急降下を仕掛ける。
「仲間が居るんだから付け入る隙はある!!ましてマキナなる神が後ろに控えているなら尚更だっっ!!」
クイント渾身の一撃を受けユミールは勢いよく地面に顔から突っ込む事となる。
普通に考えれば致命傷と言える一撃であったのだが。
「おのれ・・・!!」
苛立ちを露わにユミールが起き上がった瞬間、クイントの体は神殿の壁に叩きつけられていた。
壁に叩きつけられたままピクリとも動かないクイントを一瞥し、ユミールは後頭部を手で触れつつ、先程以上の殺気を放ち始める。
「不完全な機械共よ・・・私を怒らせたな」
そう言い放った瞬間、ユミールの全身は消え失せマジックマン達は容赦なく吹き飛ばされていた。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇エフレーモフ夫妻について
南極探査の目的は金とか学術的な物では無くただの好奇心&一番乗りしたいだけと言う理由。
この夫婦からするとガイドに高い金を払ってヒマラヤを登っている程度の間隔なのかもしれない。
そもそもヒマラヤに登る時点で相当な前準備が必要なのだが。
〇南極の地下空洞について
南極の氷の層の下に空洞がある設定になっているが、南極全体には無くあくまでもそこだけにある。
空洞の奥にある神殿は実際の南極大陸の大地の上に立っているのだが、現実に氷の厚さは最低でも1.6キロ以上あるのでそのぐらい深い場所にあると考えて頂ければ幸いである。
神殿内部はランファント遺跡群及び月の神殿に酷似した様式となっていた。
因みに神殿内は謎の技術で温度調節がされているのか比較的過ごしやすい。
神殿名は守護者によって嵐の神殿と呼ばれている。
〇トラウマルームについて
入り口近くの魔法陣を起動させる事で乗っている対象を送りだせる通称折檻部屋。
強制送還と同時に来た者のトラウマを呼び起こす意地の悪い仕掛けが施されており、部屋の内部ではクレバスで出来た氷の床が絶えず隆起しており、大抵の者は幻に呑まれるなどして奈落の底に落ちてしまう初見殺しな仕掛けとなっている。
トラウマを見てしまうのは悪のエネルギーを応用した一種の暗示であり、人間であろうとロボットであろうと効果を発揮する。
クイントの場合は己が抱いていた罪悪感が具現化したが、それらが自分の生み出した幻と判断出来た為に意識を取り戻している。
とりあえず単純なバーナーマンには効果抜群だった様だ。因みに彼が見たのは自爆スイッチを押そうとするキングの幻影だったらしい。
とは言えマイペースなコールドマンには殆ど通用しなかったりとトラウマ発動機能も万能ではない。
パイレーツマンも結構効いたらしいのだが、そもそも自分に預金らしい預金が無い事を思い出し幻覚を見ていると気づいている。
とりあえずナターリヤには同じく全く通用しなかった様だ。
同じく効果が無かったのはスカルマンもなのだが、その辺はおいおいとである。
最後にニコライが埋めないでと呻いていたのは、かつて自然動物園でクマと友達になろうとヒグマのコスプレをしていたら(するな)ハンティングをしていたナターリヤに後頭部をライフルで撃たれた事に起因する。
ヒグマの着ぐるみの中から人が出て来たのでびっくりしたナターリヤとその父であったが、あろう事か彼女の父は証拠隠滅を図るべくニコライの生死を確認せずに自宅の裏山に埋めようとしたらしい。
埋められている途中で息を吹き返し事無きを得たのだが、この辺の出会いが縁となって二人は結婚している。
と言うか夫妻もそうだが、先代の父親も相当吹っ飛んでいたのは言うまでもない。
〇マジシャンウーマンについて
彼女のトラウマについてはおいおいと機会があれば。
リブート前同様、ミュゼットは彼女の本名なのだがクイントとの会話通り彼女とロックは面識がある。まあ現在のロックはまだ知らないのだが。
〇ダークマンについて
今回はダークマンⅠ、Ⅲ、Ⅳがついて来ているが、設定では実は量産型でジョーの上に当たる一種の上級戦闘員的ポジション。
特にⅠと基本形であるⅡは相当数いるらしいがドクロボット同様にコストが高いので量産は少数に留まっておりその殆どが諜報部に居るので表に出て来る事は殆ど無い。
Ⅲは狙撃型なので数人同型機が居るのみでⅣは今回ついて来ている一人しか存在しないダークマン達のリーダーである。
メガミ版と違い暗殺型ロボットとして性格は至って真面目。Ⅲに台詞は無いがそれは彼が口下手な為。
〇サクガーンについて
クイントと言えばこれでしょと言う事で出した。壁を壊すアイテムとしては的確だったので。
ここには居ないグランドマンのスプレッドドリルをクイントが使うと言う案もあったが、サクガーンの方がしっくりする気がする。
〇ユミールについて
マキナなる神に仕える従者。作中の時間軸では丁度姿を現した段階ではあるがあのアルゴスと同じ立場と言えば分かりやすいか。
右半身が機械、左半身が生身の動物の内部が剥き出しになったボディを氷の装甲が覆うと言う異形の姿をしている。
この辺は元ネタのデルザー軍団のマシーン大元帥から来ている。
名前は北欧神話の同名の巨人からである。
属性は氷であり巨大ではあるが敏捷性にも優れると言う実力者。
キング軍団の攻撃を受けてもまともなダメージを受けないぐらいに頑強な肉体を持つ。
性格は冷酷で残忍と言えるかもしれないが侵入者に対し出て行くように警告を発しているだけ、まだ温情がある方と言える。
彼も彼で人間やロボットを下等な種族と見下しているようだ。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。