主の命令を受けた事もあったのだろうがザウラーガード達が神殿の各所に戻り始めるのが見える。
元より氷の彫像その物の姿をしているだけあって、彼らの姿は神殿内の風景に完全に溶け込む。
「ガルルルルルッッ!!」
虎や狼を思わせる肉食獣の彫像が唸りながら一同の脇を通り抜けていく。
彼らは扉の左右に待機するやそのまま微動だにせず固まってしまう。
「戦いを回避出来た事を不幸中の幸いとすべきか・・・」
プロトが胸を撫で下ろしたのは言うまでもない。
パシャ!!パシャッッ!!
冷や汗を掻くプロトの思いを知ってか知らずかニコライとナターリヤは二人で記念撮影をし始めるので頭痛が酷くなる。
「スカルちゃん。あの調度品も撮って~」
「・・・・・・」
ナターリヤの命令に従い無言で写真を撮るスカルマン。
今は夫妻を主人と認識しているとは言え文句一つも言わない辺りは感心する他無い。
「・・・・・・」
そんな自身らを振り返りながら渋い顔で見つめてくるのはユミールだ。
彼らを神殿の奥まで案内する命令に納得していないのは、顔を見るまでも無く明らか。
既にボディの再生を完了させている彼がその気になれば自身らなどあっと言う間に殺されてしまうだろう。
ユミールとの戦いを終えたプロトらは一部の面々を後に残して神殿の奥に足を踏み入れている。
ユミールのフィンヴィルヴェドによってジョー達の多くが凍結した事もあってそれらの復旧もあるが、特にバーナーマンが重傷を負っており現在夫妻に同行しているのはプロトにクイント、スカルマンとパイレーツマンの四人となっている。
「はいは~い。氷の虎さんとピース」
「・・・ガウッ?」
扉の左右に立つ彫像の顔に抱き着きながらナターリヤが写真を一枚。
アポストルと呼ばれる虎の彫像が困惑気に顔を傾げていた。
生贄にされそうになった時、あれだけ騒いでおきながら今やすっかり観光気分なのだから笑えない。
この能天気さはどこから来るのかと思うのだが、ニコライの方も興味深げにビデオカメラを回している。
いずれにせよ自身らは前人未到の古き神々の聖域に足を踏み入れているのだ。
その点に関しては興奮の様な物を覚えるのは分からないでもない。
ドクンッッ!!
不意に心臓の如き鼓動が響いたのを聞きプロトが足を止める。
クイントらも同様の様子であった。
身構えた一同を見てユミールはその口を僅かに歪めた。
苦笑を浮かべたと言う事なのだろうか。
「安心しろ・・・まだ奴らは稼働状態では無い。まあ仮に先の戦いで私が倒されれば動き出しただろうがな」
そう言って左右の壁に埋まる形で眠りに付くのは二人の装甲に全身を覆った存在。
「エイリークにアダマスだ。私と同じくマキナ様に仕える従者・・・現在は活動期間を終え眠りに付いている」
ユミールの説明にパイレーツマンが反応を示す。
「赤毛のエイリーク・・・北欧のバイキングで有名な奴やないか~当時はアメリカ大陸にも到達したやらなんたらで聞いとるで」
「ああ・・・柔らかき生物の伝承ではそうなっていると本人が言っていたな」
若干興奮気味なパイレーツマンは余所にユミールは興味無さげだ。
「くぅ~伝説の海賊が目の前におるのに。財宝の在処の一つや二つを教えてもらいたいもんやのう!!」
目を輝かせながら話す彼にユミールは呆れた様な顔を見せる。
元より無機質な彫像を思わせるユミールだが、よくよく見れば感情らしい物があるのが見て取れる。
「先程の話を聞くに君達やその神とやらは幾度と無く我々の前に姿を現していると言う解釈で宜しいかね?」
メモを取りながらニコライがユミールに問う。
対してユミールは肩を竦める様にして笑みを浮かべる。
「全てでは無いが・・・貴様らが神話とする出来事や神、悪魔、英雄などの幾つかはかつて地上で活動していた我々だと言えような」
「・・・どうも見た所、君達には休眠期間は必要の様だが食事などが必要とは到底思えない。だが地上で活動するのには訳があるのかね?かつてのラ・ムーンの如く、人類の抹殺が目的という訳ではないのだろう?」
ユミールの言葉を受けニコライが率直な質問をぶつける。
かつてランファント遺跡群で目覚めたラ・ムーンは人類を滅ぼすべく活動し、ロックマンの手によって破壊されたのだがユミールやマキナなる存在をがこうして今の今まで健在であった所を見るとそれが目的であるとは到底思えない。
と言うかそもそも今に至るまでに活動を始める機会は幾らでもあった訳で、その時点で人類など彼らの手によって容易く滅ぼされてしまったであろう。
ニコライの顔を真っ直ぐに見つめユミールが黙り込む。
ややあって背を向けたユミールは奥の光を指差しこう言うのであった。
「その質問であればマキナ様に直接聞くが良い。私が貴様らに直接言うべき事ではないわ・・・」
そのまま無言で進む一同の中でナターリヤが写真を撮る音だけが響き渡っていた。
「マキナ様・・・ご命令通りお連れしました」
恭しく一礼をしながらユミールが神殿の最深部へと足を踏み入れる。
最深部と言っても些か語弊があるかも知れない。
そこが開けた空間であったからだ。
広大な空間の中で真っ先に目に入るのは氷で出来た巨大なピラミッドを思わせる建築物であった。
(ランファント遺跡群にあった月の神殿と同じだ)
先程までの遺跡以上に似た様な様式を持つ建築物にクイントが内心で思う。
『ご苦労であったぞユミール』
従者に労いの言葉を掛けるマキナなる神の声が響く。
『神殿の中に来るが良い・・・我はそこに居る』
その声に促され一同はユミールと共に階段を昇った先にあった神殿中心部へと足を踏み入れる。
ドクンッッ!!
心臓の様な鼓動を時折響かせながら御神体の如く鎮座するのは、巨大な目玉を持った球体上の金属の物体。
奇しくもかつてロックマンであったクイントが見たラ・ムーンと同じ存在であった。
まあ同じと言っても色が青白かったりと多少の違いがあるのだが。
『今より少し前にソフィーアなる者が我が声に導かれこの地を訪れ・・・その血を受け継ぐ者が帰って来たか。柔らかき生物と不完全な機械よ・・・一応はそなたらを歓迎しよう』
(少し前て・・・普通に数百年前やぞ)
その言葉にパイレーツマンが内心で突っ込んだのはさて置きである。
『我が名はマキナ・・・マキナザウラー。虚空の闇より舞い降りし古の神にして凍てつく軍団の長たる存在』
自らの名前を名乗ったマキナザウラーに一同は圧倒されるばかりだ。
殺気こそ発してはいないが対応を間違えれば瞬時に消される。
そんな危うい空気を目の前のマキナザウラーは放っていた。
『手荒な歓迎となった事は詫びよう。だがソフィーアの血族よ・・・貴様らは何故にこの地を訪れた?我が力を頼って来たのか?であれば相応の対価を求めるが・・・』
目を細める様に光を発光させつつマキナザウラーがナターリヤに問う。
「それには不肖ながらナターリヤの夫である私が説明致しましょう」
コホンと咳払いをしつつニコライは話す。
まあ話すと言っても先にプロトらにした様に自身らが家に伝わる先祖の古文書から個々の場所を割り出し、前人未踏の地に一番乗りを果たしたい欲求に駆られ事を身振り手振りを見せつつ彼はマキナザウラーに正直に話すのであった。
パシャパシャッッ!!
そんな夫とマキナザウラーをカメラで撮るナターリヤ。
角度が気に入らないのか彼女はかなりきわどい位置から撮ろうとする。
普通に考えてマナー違反でありユミールが今にも声を上げそうになっているのが分かる。
「南極の奥地には古の神と呼ばれる存在が住まう古代遺跡があった。凄くロマンだと思うわ~」
『ロマン・・・つまりは冒険家魂とやらか?』
「あら、そんな言葉を知ってらっしゃるの?」
ナターリヤに呆れる事無くマキナザウラーが極めて冷静に返す。
『かつてここを訪れたソフィーアがそんな事を言っていたのでな。あれも誰も見た事が無い風景を見る為に外の世界に飛び出したらしい・・・』
どこか懐かしむ様に話すマキナザウラー。
当たり前だが彼が話すソフィーアは普通に考えている生きている筈が無い。
「ところで・・・質問いいかな?」
遠慮がちに口を開くのはクイントである。
「貴方とラ・ムーンは一体どう言う関係なのかな」
プロト含め多くの者が疑問に抱いているであろう質問にマキナザウラーが一瞬だけ黙り込む。
『ラ・ムーンがランファント遺跡群にてこの星の不完全な機械にしてやられた事は把握している』
ジロリと見据える様な視線を向けつつマキナザウラーが言う。
『あれと我は似て異なる存在。虚空の闇より生まれこの星へ舞い降りた事は共通しているであろうがな・・・同族やそなたらの言葉で言う兄弟や家族なのかと言われれば些か語弊がある』
「つまりは我々の言う超エネルギー元素並びに悪のエネルギーと呼ばれる物でボディを構築し自在に操る事が出来る存在と解釈すれば良いかの?」
『それで構わぬ。生憎だがそなたら下等な種に上手く説明できる舌は持っておらぬ』
若干見下した言葉であるが実際に聞いていても理解出来ないのは間違いない。
まあ彼らの主である悪の天才科学者であれば別であったかも知れないが。
『ラ・ムーンは急ぎ過ぎた。自らの力で柔らかき生物の文明を発達させておきながら、そやつらが愚かと判断するや自分諸共文明を滅ぼしてしまったのだからな』
呆れた様な口調でマキナザウラーはラ・ムーンの事を話しだす。
ラ・ムーンの力によって超古代マヤ文明なる存在が南米で発達したらしいのだが、残された石板や古文書などの記録によれば人々の争いに怒った神(ラ・ムーン)によって文明は地の底へと沈んだらしい。
それがどう言う訳か地底より突然浮上しランファント遺跡群となり、世界滅亡寸前に至りかけた戦いとなったのだが。
『我は奴の様に完璧は求めぬしラ・ソールの様に庇護しようとも思わぬ。それにまだ収穫の時ではないのだからな』
何を収穫する気なのか聞けば恐ろしい事になると判断しプロトはその言葉を流す。
「それはそうとマキナ様。私の障壁を消したばかりか体の一部を崩壊させた杖ですが・・・」
ナターリヤが手にする杖を見据えるユミール。
『まだ健在か・・・であれば良かったな。聞けば柔らかき生物の科学者を利用してラ・ムーンは月の神殿の機能を修復させたと聞く。そもそもその杖があれば必要無かったのだが・・・奴もそう言う意味では運が無い』
どこかほくそ笑む様に言葉を響かせるマキナザウラー。
「ご先祖様はこの杖を南米の古代遺跡で。恐らくランファント遺跡群で見つけたと古文書には書いてあったのだけれど・・・」
『そなたの考え通りそれは紛れも無くランファント遺跡群なる場所で見つけられた物だ。そしてかつてそれを手にしたソフィーアを我がここへ導いたのだ。その杖を手元に置いておこうと思ったのでな』
ナターリヤの先祖であるソフィーアが偶然にも手にした杖を確保しようとしたと言うマキナザウラー。
碌な装備も無い時代に彼女が南極に赴いた訳を考えれば、ある意味で自然と言えようか。
『これはな・・・ラ・ムーンの戦闘端末のコア。正確には起動させる為の鍵となる物体だ』
「戦闘端末・・・?」
『今、お前達が目にしている私の姿は制御端末。柔らかき生物で言えば頭脳に相当すると言えよう。そして戦闘端末は肉体、その杖は心臓だ』
ドクンッッ!!
マキナザウラーの言葉に呼応するかのように足元で鼓動が響く。
その音に釣られふと足元に目を向けた一同は見てしまう。
氷で造られた床の中に埋まる形で眠る巨大な恐竜・・・否、怪獣と言うべき存在に。
彼の言葉を借りればこれがマキナザウラーの戦闘端末なのだろう。
『いやはや愉快であった。ラ・ムーンの奴め戦闘端末を起動する鍵を文明を崩壊させた際に紛失してしまったのだからな。そのまま奴が眠りに付いていたのもあるがそれ故に我がソフィーアを招く事が出来た』
その時の事を思い出したのかマキナザウラーの声に笑いが含まれる。
今考えてみれば月の神殿の奥で眠っていたラ・ムーンは、ワイリーが遺跡に迷い込むまで何も出来ないでいた。
あれだけの絶大な力を見せながらも戦闘も含め他人頼りであった理由もそれで説明が出来る。
ラ・ムーンは動かなかったのではなく動けなかったのだ。
『我はソフィーアにその杖を持って来た褒美に望む物は何でもやろうと言った。それが我が手にあればラ・ムーンに対し優位に立てるのでな。だが奴はなんと答えたと思う?』
愉快気に話し出すマキナザウラーは当初と違い饒舌だ。
自身に匹敵する存在を抑止する切り札と言うべき物を持って来たソフィーアにマキナザウラーが大盤振る舞いになるのも分からないでもない。
『奴は巨万の富であれば自分で稼ぐし、不老不死も退屈だからいらない。挙句に世界を支配するなど面倒臭いだけと言い放ちよったのだ。代わりに自分の子孫が末永く好き勝手に生きられるようにして欲しいと言うのが奴の願いであった』
「あら~ご先祖様らしいわね~』
『故に叶えてやったぞ。あの女とその子孫が末永く生きられるように加護を与えてやったわ。それと本来であれば杖は代わりに頂くつもりであったが割に合わぬのでソフィーアに持たせたままにしてな』
互いに笑い声を響かせるマキナザウラーとナターリヤ。
どこか常識とはずれた感性を持つ二人に一同が溜息を吐く。
その溜息の中にユミールのが混ざっていたのは言うまでもない。
『さてソフィーアの末裔よ。我はあの時と同じ問いをするとしよう。そなたは我に何を望む?可能な限りで願いを叶えてやろう』
「ん~」
マキナザウラーの言葉に暫し考えるナターリヤ。
相手は文字通りの神であり恐らくはどんな願いすらも叶えてくれるだろう。
俗物であれば永遠の命だの巨万の富を求めるであろうが。
ピッッ。
己の目尻を指差すナターリヤに一同の注目が集まる。
「まだ二十代なんだけどこの目の下の皺がちょっと気になって。それを消してくださらないかしら?」
『わはははは!!良かろう!!』
ピカアアァァァァ!!
ナターリヤの全く以って欲の無い願いにマキナザウラーは笑いながら光を放ち、彼女の目尻の皺を消し去るのであった。
「やったわ~これで化粧で誤魔化す心配がいらなくなったわ~」
「はっはっはっはっは!!私も妻の美しさが保たれて満足だよ」
鏡で目の下を確認し皺が消えたと見るや夫とハグをするナターリヤ。
『願いは以上か・・・?』
「以上で~す」
マキナザウラーの問いに屈託の無い笑みを向けるナターリヤ。
まあ色々あったが目尻の皺を消してもらい彼女としては良い事尽くめであったのだろう。
「ふうむ・・・報酬は現地払いと聞いたが」
思い出した様に口を開くプロト。
「そうだったわね。何かその手の物があれば良いのだけれども」
報酬の話となり困った表情を浮かべるナターリヤ。
確かに考古学的には価値のある発見ではあるのだが、はっきり言ってこの嵐の神殿には金銀財宝に相当する物が一切見受けられない。
そもそもここに居る者が人間などの類ではないだけにその手の物に価値を見いだせていない点も大いにあろう。
『報酬か・・・久しく愉快な気持ちになった礼もある。我が代わりにこ奴らに代価を支払うとしよう。して貴様らは我に何を求める?』
太っ腹と言うべきかマキナザウラーはプロトを見据え問う。
「であれば・・・我らワイリー軍団としては」
そう言いつつマキナザウラーに見せる様に端末の画面にある結晶の映像を表示させる。
「この超エネルギー元素或いはそれに匹敵する物体を幾つか譲って頂きたい。これがあればこの星と異なる文明で生み出された仲間の修理が捗るのでな。恐らくと言うべきかお主らはこれに値する物を持っている筈と我らは推測する」
『ほう・・・貴様はワイリーなる存在に仕えておる者だな?』
マキナザウラーの問いにプロトは恭しく頭を下げる。
『ラ・ムーンが利用する程の力を持つ存在か・・・我も興味がある。良かろう・・・それを所望するのであればくれてやる』
喉の奥を震わせる様な声を響かせながらマキナザウラーはユミールに視線を向ける。
「・・・はっ」
主の意を受けユミールは神殿内の装飾の一部を取り外すとそれを掌の中でバラバラにしてしまう。
やがて出来上がったのは大小様々な形の淡い光を放つ水晶であった。
「さあ。持って行くが良い」
ユミールよりそれらを受け取るプロト。
と言うかこうもあっさりともらえてしまうとは思わなかっただけに拍子抜けしてしまう。
『その杖もそなたらに預けたままにしておこう・・・だが気を付けるのだな。先の一時的な復活もあってラ・ムーンの眷属達が活動を始めておる。もしもそれの存在を知られればお前達は真っ先に狙われるぞ』
「ラ・ムーンの眷属・・・?」
『先の戦いにおいてラ・ムーンも万が一の事を考えたのだろう。奴は戦いの裏で即興で新しい戦闘端末を創り上げ、それに自我を与えて野に解き放った。本来の器を起動させる鍵が現存すると分かれば見逃す筈が無いからな・・・』
警告の言葉に一同が首を傾げる中、クイントだけは『成程』と一人頷くのであった。
「つまりはイエローデビルやラ・トールとは違う分身を生み出したと言う事じゃな・・・」
『そう言う事だ。奴の目的はラ・ムーンの復活及び戦闘端末の再起動であろうな』
「あら?ラ・ムーンと言えばそこのロックちゃんが倒しちゃったんじゃ・・・?」
『我らに死と言う概念は無い。例え粉微塵に破壊されようとも知能ある者共の恐怖と絶望を食らい復活する事が出来るのでな』
ナターリヤの言葉にマキナザウラーが当たり前の事だと言わんばかりの口調で言い放つ。
既に確認するまでも無いが目の前に居る存在は、この世の理から外れた物と言えよう。
『さて・・・他の者達は』
と聞くマキナザウラーだがスカルマンは静かに首を振り、パイレーツマンも数秒程だが思案するも彼も首を真横に振っていた。
「身の丈に合わん願いなんぞ言うても碌な事が無いのがお約束やでな。まあ一つあるとすればそこの彫像やないエリークが目覚めたら、酒飲みながら武勇伝を聞きたいって事ぐらいやな」
『ふむ・・・であればその時に伝えよう』
欲深いが意外な所で冷静なパイレーツマンはそう言うと一足先にその場から帰ろうとする。
「言うまでも無いが・・・」
「ここでの事を私や妻も世間に公表する気は無いよ。そもそも話が壮大すぎて誰も信じてくれんだろうさ。まあ記録には残すがあくまでも我が家に伝わるお伽話になるのがオチだろう」
ユミールの言いたい事を察したのか手を振りながらニコライが苦笑する。
南極の氷の底に古代の神殿がありそこに神と従者が居るなど、聞いた所で誰が信じるであろうか。
仮に行こうとしてもナターリヤの持つ杖が必要であるし、物理的に行こうとなると南極と言う極限な環境もあってロボットでも嵐の神殿がある層まで進むのは困難だ。
結論からすれば現状では余程の事が無い限り、誰もここへ辿り着く事が出来ないと言う事になる。
「では古き神よ。そろそろお暇させてもらうよ」
『うむ・・・息災でな。恐らくは二度と会う事は無いであろうが』
一同はマキナザウラーに別れを告げ、再びユミールが案内する形で来た道を戻っていく。
『・・・・・・』
ただ一人残されたマキナザウラーはゆっくりと視線を一室の隅へと向けていた。
『して・・・そこに居るのは誰だ?』
マキナザウラーの声に反応するかのように闇が立ち昇る。
<お初にお目にかかる。いやはや突然の訪問、無礼を詫びさせてもらうよ>
『ほう・・・貴様は』
徐々にだが人の形を形成する闇にマキナザウラーはその瞳を僅かに細めていた。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇嵐の神殿について
古の神マキナザウラーが眠る神殿。様式は月の神殿の氷版と思えば分かりやすいか。
殆どが氷或いは水晶で造られており、普段はガード達が維持管理を行っている。
内部はかなり広大であり、ユミールやガード達は勿論の事、侵入者対策のセキュリティのフルコースとなっており、ユミールの案内が無ければ生きて帰る事は難しかったことだけは付け加えておく。
同じ存在であったランファント遺跡群に関しては一度崩壊しており、ワイリーによる補修も極めて限定的であった事を付け加えておく。
とは言え月の神殿内部も硫酸のプールなどの罠もあり、侵入者対策はある意味でバッチリであったが。
〇眠っている従者について
元ネタはデルザー軍団の磁石団長とヨロイ騎士。
時系列的にXシリーズの時代になってから活動を開始する予定。
以前の歴史にも名前が残っていたりとかつて何度か外で活動をしていた期間があったようだ。
〇マキナザウラーについて
ラ・ムーンと似て異なる存在。一応の姿は青白いラ・ムーン。
自らを古の神と名乗るユミールの主。
リブート前は登場しなかったが後のXシリーズの小説で出たので逆説的に今回の登場となった。
登場こそしたが恐らく今後の登場はほぼ無いと言える設定だけの存在。
ぶっちゃけると動いていないだけのラスボスと言える。
くだらない争いを繰り広げる人間を愚かと断じ粛清しようとしたラ・ムーンと違い、彼の場合はあくまでも中立を保っているが時折従者を外に解き放ち歴史に介入するだけと言うスタンス。
動機としては単に楽しそうとかそう言う側面が強く。文字通りの神様目線で被害を被る者達への配慮は全く無いので非常に性質が悪い。
ラ・ムーンとは似通った存在になったが出自も含め全く以って違う存在と言う設定。
外宇宙より飛来し地球にやって来たと言う点のみ共通している。
その正体は自我意識を持つ超エネルギー元素或いは悪のエネルギーと同等の物を凝縮して含んだ金属の塊と言うと分かりやすいか。
思考的には傲慢な点も含め神であり、知能ある生き物の恐怖や絶望を食らう事で力を保っている。
負の感情を食らうと言う点ではギガミ版のダークムーンに近くこの点は眷属のユミールも同様である、因みにアルゴスもエキドゥナも同じく。
彼らには死の概念は無く、マキナザウラーも作中で見せた球体上の制御端末を粉々に破壊されても、長い時間は掛かるが幾らでも再生可能であり文字通りの不死身の存在である。
ラ・ムーンも同様であり彼も生きてはいる様だ。
〇ソフィーアについて
大航海時代に中南米で海賊をしていた際に偶然ランファント遺跡群に到達。遺跡の罠を掻い潜り彼女とその一団は不思議な金属で造られた杖を見つけたのだが、当時のラ・ムーンは整備不良もあって休眠中であった。
代わりに杖を介してマキナザウラーが彼女にコンタクトを取り南極へと導いた。
杖が発する結界によって彼女ら一行は南極の寒さからも身を守っており、そのまま嵐の神殿へ。
自身の対抗馬の切り札を確保した事もあって彼女に褒美とばかりに願いを叶えようとするが、作中に語られた通り彼女の願いは自身の様に子孫が末永く好き勝手に生きられますようにと言う漠然とした願いであった。
ラ・ムーン程では無いがマキナザウラーも人間の愚かさには辟易としていた所もあったのだが、思わぬ彼女の願いを面白いと思い快諾。
彼女ら一行に祝福を授けたばかりか回収すべき杖もそのまま持たせて返してしまった。
ソフィーア自身はその後、カリブのとある島の総督になった男性と結婚し、好き勝手に生活したらしい。
この祝福と言うのはかなり漠然とした加護であり、絶対ではないが一種の危険回避的な運の良さを得たと解釈して頂けると有難い。
例えば車の事故でも軽傷で済む、しゃがんだ時に上の方を鉄パイプが飛んでいく等々。
それこそ戦争に巻き込まれても命だけは助かると言った具合。
加護は加護でも絶対でもない為に死ぬ時は死ぬのであしからず。宝くじが当たると言った凄い力ではない。
殆ど摩訶不思議な物だが、神に等しい存在であるマキナザウラーだからこそ与えられる力と言っても良いだろう。
因みに彼女の願いによっては、マキナザウラーは彼女の願いを聞かずに殺すつもりだった事は付け加えておく。
マキナザウラーはその子孫のナターリヤにも同じ様に願いを聞いたのだが、彼女の方は目尻の皺を消してほしいと言うしょーもない願いだったのでこれまた聞いてあげた。
意外に太っ腹なのかもしれない。
因みにプロトらに超エネルギー元素を含んだ水晶を与えたのは、彼らにそれを渡せば新たな争いが起こると解釈した為である。
争いが起これば負の感情が増える事になり、マキナザウラーにとっても悪い事ではない。
この時、プロトらが得た水晶はアースとラ・トールの動力炉に使われている。
〇戦闘端末について
多少ロックマンDASHな所もあるが、スパアドのラ・ムーンは制御端末だけの姿だったと言う設定。
人間で言えば頭脳だけの状態であった為に物理的に動く事が出来ずワイリーやラ・トールを利用し、更に即興で生み出した新イエローデビルと言った戦闘端末を間接的操って戦う必要があった。
自業自得なのだがラ・ムーンは超古代マヤ文明を滅ぼした際に戦闘端末の起動するコアを紛失してしまっており、それも数百年前にソフィーアに持ち去られてしまっていたので、戦闘端末を動かせずにいた。
つまりはランファント遺跡群のどこかにラ・ムーンの戦闘端末があると言う訳で、これが起動してしまえばたちまち大事件となるのは言うまでも無い。
と言うかエフレーモフ夫妻は当初ランファント遺跡群に行く予定もあったので、行ったら行ったでとんでもない事になっていた可能性があった。
現在はランファント遺跡群は政府軍の管轄にあるのでこの点は幸運に恵まれたと言えよう。
マキナザウラーが持っていた戦闘端末は神殿床の氷の底にあり、怪獣を形容すべき威容を誇っていた。
分かりやすく言うと某怪獣王のメカその物。
動き出したら人類の文明は崩壊するかも知れない。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。