宇宙戦艦ヤマト2199 大使の憂鬱   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「大使の憂鬱」です。「白色彗星帝国編」の続編になります。


大使の憂鬱2 月面の墓標

 月面――。

 

 地球が空に大きく見えており、太陽光を反射して地球連邦防衛軍の月面基地を明るく照らしていた。

 かつてそこでは、地球まで迫ってきたガミラス軍と空間騎兵隊による激しい戦闘がおこなわれた。元あった月面基地は激しく破壊され、今では、小さな防衛陣地だけが残っていた。

 空間騎兵隊が死守したその防衛陣地のすぐ傍に、新たな基地が建設され、それが現在の基地となっていた。新造された地球艦隊や航空隊の基地として、今でも重要な防衛拠点として利用されているのだった。

 その防衛陣地を訪れるような奇特な者は皆無だった。そこは、宇宙から降り注ぐ微小隕石によって、既に穴だらけになっており、施設は朽ち果てるにまかせていた。しかし、その日は、二人の宇宙服を着た人間が、その陣地の傍にひっそりと訪れていた。

 その二人は、月面の岩石と小銃で作った幾つかの小さな墓の前に、しゃがんで祈りを捧げていた。

 そのうち、サイズの大きな宇宙服を着た方が、立ち上がって持っていた一升瓶の蓋を開けた。

「みんな、なかなか来られなくてすまねぇ。よかったら飲んでくれ」

 その男は、瓶の中の酒を、墓に向かって降り注いだ。重力の小さい極寒の月面では、思ったように中身が出なかったため、男は苦労して、すべての墓を回った。

 もう一人は、まだ一つの墓の前に座り込んでいた。

「お父さん、ごめんね。ここには初めて来ることになっちゃった。あたしはこの通り元気にしてるよ」

 桐生美影は、そう言って立ち上がった。

「始くん、ありがとね。連れてきてくれて」

 始くんと呼ばれた大柄の男は、酒を注ぎながら言った。

「美影ちゃんの頼みなら、いつでも歓迎だ」

 酒をすべて注ぎ切って、男は桐生を振り返った。

「俺もずっと来たかったんだ。地球に作られた墓もあるが、あいつらと桐生隊長が本当に眠っているのは、ここだからな」

 大柄の男は、月面基地の防衛を最後まで戦った空間騎兵隊の斉藤始だった。彼は、桐生の傍に戻ると、その足元の墓に向かって言った。

「桐生隊長。美影ちゃんは俺が守ってくから、心配しないで、安らかにな」

 斉藤は、前隊長の桐生とは家族ぐるみの付き合いがあった。彼は、少し歳の離れた美影を、妹のように大切にしてきたのだ。

 二人は、もう一度、手を合わせて祈りを捧げていた。

 

 斉藤と桐生は、墓を後にして、乗ってきた空間騎兵隊の大型輸送機に向かって月面を歩き始めた。

「始くん、仕事の途中だったんでしょ。本当に大丈夫だったの?」

 斉藤は、桐生の方を向いて言った。

「今は、新しく入隊した隊員の訓練をやっている。ちょうど今日で訓練が終わりだったから皆に頼んで寄らせてもらったんだ。皆良い奴でな、ぜひ行ってきて下さいって言うんだよ」

 桐生は、それを聞いて笑顔になった。

「そっか。ありがたいね。私まで乗せてもらっちゃって、ごめんね」

「いいだろ、このぐらい。桐生隊長がいなかったら、空間騎兵隊自体が無くなってたかもしれねぇ。俺たちにとっちゃ、偉大な先輩だからな」

 すると、ほんの数十メートル先に駐機していた大型輸送機が、突然ロケットを噴射して上昇し始めた。

「何だと!?」

「ええっ!?」

 斉藤は、急いで携帯通信機を肩から外して大型輸送機に連絡を取った。

「おい、何をやってる。俺たちを置いて行く気か!」

 そうしている間にも、みるみる大型輸送機は上昇し、暫くすると、肉眼でとらえることが出来なくなった。

「くそ! どうして通信に応えないんだ!?」

「始くん、どうしよう」

 斉藤は、心配そうな顔をしている桐生を見て、すぐに決断した。

「美影ちゃん、心配すんな。幸い、新しい月面基地は、こっからそう遠くない。歩いてそこまで行けばいいだろ」

「わかった」

 桐生は、腕に装着した生命維持装置のパネルを操作した。

「残存酸素量もそれなりにあるし、何とかなるね」

「だな。でも、あいつらがどうしたのか気になる。出来るだけ急ごう」

 二人は、防衛陣地から数百メートル先に見える月面基地を目指して歩き始めた。




注)pixivとハーメルンにて同一作品を公開しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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