地球連邦防衛軍司令部の指揮所に現れた芹沢は、軍の高官らに囲まれた。
「うるさい! 邪魔だ、どけ!」
一喝すると、芹沢は真田を呼び寄せた。
「役立たずは放っておけ。今の状況と作戦を改めて確認しよう」
真田は、これまでの経緯と現在の状況を簡潔に説明した。
「作戦失敗の場合のリスクは?」
「大使の死亡によるガミラス政府との関係悪化や、爆弾の起爆で日本及び周辺諸国の人間が全滅することでしょう」
「作戦を実行しない場合のリスクは?」
「彼らの組織に人類全体が支配されるのを阻止するため、地球連邦政府は、日本に核攻撃などの強硬な手段で解決しようとすると予想されます。やはり、大使らは死亡、そして日本人にかなりの被害が出るでしょう」
芹沢は笑った。
「馬鹿馬鹿しい。我々のリスクが大きすぎる。しかし、作戦実行以外の選択肢はあり得ん、ということはわかった」
真田は頷いた。
「私も同意します」
芹沢は時計を見た。
「三分後に作戦開始。すぐ関係者全員に連絡しろ!」
「はっ!」
真田は敬礼で応えた。
連絡を受けた星名は、時計を見た。
あと一分で作戦開始の時間だった。
救出部隊は、兵員輸送車から降り、各員が病院の死角で待機した。
斉藤も時計を見た。士官控え室の扉から今にも艦橋内に飛び出しそうなメルダと山本を抑えながら、扉を僅かに開けて、そっと内部を確認した。
中央で、ガゼル司令と、バルデス艦長が拘束されていた。艦橋の士官らは、別の場所に連れて行かれたのか、そこには居なかった。
士官の一人だけは、拘束されずに火器管制システムの制御席に着き、一人の空間騎兵隊の男に銃を突き付けられていた。
他に二名の空間騎兵隊の制服を着た者たちが、艦橋の入り口にいた。
中央には、北川が立っており、ガゼル司令に銃を突き付けていた。
「なるほど。四人か」
斉藤は、山本とメルダを呼び寄せて、作戦を話し合った。
「時間だ。行くぞ!」
星名は、部隊の全員に前進を指示した。
武装した彼らは、病院の前の歩道を一気に走り抜けた。通りを歩く人々は、軍服を着た集団に驚いて悲鳴を上げた。隊員らは、避難するように声がけしながら走った。
二手に別れた部隊は、正面玄関と裏口にまわった。一方の部隊が裏口に到着すると、そこは閉鎖されていた。
正面玄関にいた星名は、裏口の入り口を爆破するように無線で指示した。
一人の隊員が、裏口の扉に爆薬をセットした。彼らは、少し離れて屈むと、すぐに起爆した。
何かが破裂するような甲高い音がして、扉を閉鎖していた電子錠が破壊された。
正面玄関と裏口にいた隊員たちは、星名の指示で一斉に一列で中に入っていった。
裏口から侵入した隊員たちは、入り口にあった病院の警備の受付の内部を確認した。誰もいないことを確認して進もうとするが、先頭の隊員が、後ろに止まるように指示をした。廊下を横切るように、足元にトラップと思われる細いケーブルが張られていた。それを跨いで行くように、各員に合図して進んだ。
正面玄関から侵入した隊員らは、小銃を構えて周囲を確認した。そこは、病院の受付の待合所となっており、奥に受付の長いカウンターがあり、手前に患者らが座って待つ為のソファーが数列並んでいる。隊員たちは走ってソファーの影に隠れて、安全を確認すると、後方にいた隊員が、更に前の列のソファーの影に隠れた。星名は、少し右側にあった柱の影に走って隠れた。
先頭の隊員は、ソファーの最前列から、病院の受付カウンターに進んで内側を確認しようとした。すると、受付カウンターの内側に、銃を持った男達が何人も潜んでいた。先頭の隊員は、そこに向けて銃を撃とうとするが、待ち構えていた敵の男達の方が早かった。頭を撃ち抜かれた隊員は、その場で仰向けになって倒れた。
それをきっかけに、受付カウンターを挟んで激しい銃撃戦が始まった。
斉藤は、時計を確認した。
「時間だ。嬢ちゃんたち、うまくやれよ・・」
艦橋の中央にいた北川は、右舷の士官控え室から、大きな音が響いたのを聞いた。そして、入り口の見張りの男に合図して、確認に向かわせた。
見張りの男が、右舷の士官控え室に入ると、メルダが一人だけ床に座っていた。口にテープも貼ってあり、手も後ろに回っており、拘束は解けていないようだった。
「もう一人はどうした!?」
「こっちだ!」
すると、天井の配管に掴まっていた山本が、突然男の上に飛び降りてきた。男の首に跨がると、首を中心に体を捻って回転して引きずり倒した。後頭部を強打した男は、動かなくなった。
「メルダ!」
男と一緒に床に転がった山本が叫んだ。
メルダは、立ち上がってその男が持っていた小銃を奪った。
「どうした!?」
北川たちは、その異変に気付き、小銃をそちらに構えた。入り口にいた見張りの一人も、そちらに気を取られて小銃を構えた。
その時、斉藤が真ん中の扉を開けて艦橋内に飛び込んで来た。そして、入り口にいた見張りの男の背後に回り、両腕で服を掴んで思い切り頭の上まで持ち上げた。
「うおおお!」
斉藤は、叫び声をあげると、そのまま、持ち上げた男の体を北川の方へ投げつけた。
北川は、投げられた男がまともにぶつかり、持っていた小銃を落としてしまった。投げられた方の男の体は、手足が逆の方に向いて折れ曲がっていた。
メルダは、小銃を構えて火器管制システムの制御席へ走った。そこにいた男が小銃を乱射したが、メルダは咄嗟に転がって男の足を小銃で撃ち抜いた。男が倒れると、すぐにメルダは起き上がって走った。そして、その男の頭に銃を突き付けた。
メルダは、ガミラス人の士官に叫んだ。
「火器管制システムをロックしろ!」
慌ててその士官はシステムの操作盤を弄った。
「ロックしました!」
斉藤は、通信機を掴んだ。
「永倉、火器管制システムは停止させたぞ!」
永倉はすぐに応答した。
「了解!」
ガミラス艦の上空一万メートルにつけていた空間騎兵隊の大型輸送機では、永倉が大声で怒鳴っていた。
「隊長がやってくれたぞ! 野郎ども! 行け!」
輸送機の後部の扉が開くと、そこから空間騎兵隊の隊員が、次々と外に飛び降りていった。
ガミラス空母の甲板で見張りをしていた三人の男達は、空から無数の人が降下するのを発見していた。慌てて上空に小銃を乱射するが、ガミラス艦は、波で揺れており、狙いが定まらなかった。
永倉は、先行して飛び降りた隊員たちに怒鳴った。
「あんな新人どもの弾に当たった奴がいたら、全員飯抜きだ!」
「そりゃぁ、ねえぜ姐さん! おい皆! 当たった奴がいたら、俺がぶん殴る!」
先行していた隊員たちは、空から小銃を連射した。そして、確実に甲板の男たちを仕留めていった。
そして、バックパックの小型ロケットを操作して降下速度を落とし、次々に甲板に着地した。
「いいぞ! 数名づつ固まって、艦内を制圧しに侵入しろ!」
永倉は、降下しながら、ガミラス艦に接近するボートが向きを変えて港に引き返そうとしているのを見つけた。そして、バックパックのロケットを操作して、そのボート目指して降りていった。
「やっぱりそうか」
ボートに接近すると、そこには藤堂長官の姿が見えた。ボートには、他に三人の潜水服が見えた。永倉は、上空から小銃で狙いをつけて、一人づつ狙撃していった。
藤堂長官は、自分を運んでいた本土防衛隊の潜水服の連中が、次々と倒れて行くのを目の当たりにした。そして、上空から、一人の空間騎兵隊の隊員が降りてくるのを見守った。
永倉は、見事に小さなボートに着地した。
「長官、怪我は無いかい?」
藤堂長官は、呆気に取られていたが、いつものように冷静に言った。
「よくやった。私は問題無い」
艦橋を制圧した斉藤は、小銃をその場に投げ捨てた。そして、北川の前に歩み寄った。
「北川、俺を騙すとはいい度胸だ」
北川は、落とした小銃を拾おうと、銃に向かって飛び込んだ。斉藤は、北川の手を思い切り踏みつけると、小銃を足で蹴飛ばした。
北川は、恐ろしいものを見るように、斉藤を見上げた。
「立てよ。ほら、かかってこい」
斉藤は、右手をつきだして、指を手前に曲げた。
北川は意を決して、斉藤を倒そうと、足に向かって飛び込んできた。斉藤は、腰を屈めてそれをがっちりと受け止めると、襟元を左手で掴んで引きずり上げた。
「桐生隊長が守った空間騎兵隊を汚しやがって! 制裁を加えてやる!」
そして、思い切り右の拳を顔面に叩き込んだ。
北川が床に転がって気を失うのを確認して、斉藤は通信機を掴んだ
「こちら斉藤。ガミラス艦の艦橋を制圧した! まだ作戦は継続中だが、爆弾が爆発する危険は去った!」
その頃、軍の総合病院に正面玄関から突入した星名らの部隊は、一階の受付にいた敵を、射殺するか戦闘不能にして排除した。
裏口から入った隊員らは、一部の隊員を裏口に残して、非常階段を一列になって二階へと向かった。
星名たちは、一階の各部屋を確認し、小部屋に押し込められている医師や看護師、患者らを発見した。彼らに逃げるように指示をし、続けて同じように残りの部屋もしらみ潰しに確認していった。
医師や患者らは、逃げようと飛び出したところで、一階が激しい銃撃戦の跡で傷だらけになっており、受付カウンターが破壊されているのを見た。そして、カウンター内に血を流して倒れている男たちを見て、悲鳴を上げて外に飛び出して行った。
星名は、隊員たちを受付カウンターのところに集めていた。
「この建物は十階建てだ。二階は、検査や診察室、その上は入院患者用の病室がある。八階に事務所や会議室があり、その上は、犯罪者向けの病室がある。敵は、事務所のある八階に陣取っていると推測される。それから、大使らからの情報では、恐らく最上階の十階か九階に彼らは、隠れていると推測される。裏口から行った隊員に低層階の各階をしらみ潰しに確認してもらうので、僕たちは上層階に向かう」
星名は、隊員の中でも精鋭のメンバーを指差して選抜した。
「僕たちは、まず八階に向かい、敵の主要メンバーを排除する。然る後に、大使らを保護しに九階と十階に向かう。残りの二名は一階に残って逃げ出す敵がいたら対応してくれ。何か質問は?」
隊員たちは、無言か首を振っているのを星名は確認した。
「よし! では作戦行動を開始する!」
星名たちは、一列になって階段を登り、先頭の隊員が安全を確認すると、後方の隊員と交代しながら、少しづつ上層階に登って行った。
裏口から入った隊員らは、二階の各部屋をしらみ潰しに回っていくと、診察室や、各種の検査用の設備がある部屋が多数あった。そこでも、医師や看護師や患者らが多数見つかり、彼らは、向けた銃を降ろすと、速やかに外に出るように指示をした。隊員の一部が、避難誘導を行って、彼らを外に逃がして行った。
三階に進むと、入院患者向けの部屋が並んでいた。各部屋を確認して行くと、動けずにベッドにいる患者が何名か残っていた。一部の隊員が、ベッドごと移動して、エレベーターで階下に運ぶことにし、一階の隊員と連携して、移動は速やかに行われた。その間も、しらみ潰しに各部屋を確認して行った。
すると、ある部屋でベッドの布団を被って隠れている患者を見つけた。危険だから逃げるように声をかけるが、そこにいたのは敵の男たちだった。四つのベッドから、一斉に四人の敵が現れ、銃撃を受け、二人の隊員が負傷して倒れた。二人を部屋の外に引きずり出すと、別の隊員が、部屋に銃撃を加えた。
八階の大会議室に、世界独立解放戦線の主要メンバーが集まっていた。
「ガミラス艦を占拠した空間騎兵隊の連中に連絡がつかない」
男は、自分の携帯端末を会議机に放り出し、椅子に倒れ込んだ。
「まさか、やられちまったのか?」
「かも知れん。港にいる本土防衛隊の連中にも連絡がつかなくなった」
中央の椅子に座っていた伊東は、戦況を聞いて怒りを露にした。
「もう、下の階の仲間にも連絡がつかない。大使らを見つけないと、俺たちはここで終わりだ。こうなったら、全員で九階と十階を捜索するぞ!」
男たちは、皆、立ち上がって、部屋を出ようとした。その時、大きな音をたてて、部屋の扉が爆破された。近くにいた仲間が爆発で飛んで来た扉に当たってその場に倒れた。
「もうここまで来たのか!?」
彼らは、屈んで後退し、会議机と椅子の影に隠れようとした。すると、部屋に何かが投げ込まれた。それが、大量の煙を吐き出し、僅かな時間で部屋中に煙が充満した。
「不味いぞ!何も見えない!」
彼らは、パニックに陥っていた。
星名らは、熱源探知スコープを装着して会議室内に侵入し、彼らを次々に銃撃して倒していった。
伊東は、一人、僅かな隙を見つけて会議室を飛び出して逃げていった。
「僕が追う! 皆、後を頼んだぞ!」
その頃、ランハルトたちは、追っ手から逃れる為、九階と十階の部屋を転々として逃げており、今は十階の小部屋に戻っていた。
「大使。何だか嫌な予感がします。この感じが、さっきからおさまりません」
ケールのいつもの笑顔が消え、不安そうな表情をしていた。
「嫌な思いをさせてすまない」
ランハルトは、彼の鋭い感覚が、このような危機的状況では、休まることが無いであろうことを気遣った。
「ランハルト、下の階が騒がしいから、救出部隊が近付いて来てるのは確か。あともう少しの辛抱だと思う」
そう言いつつも、雪も不安そうな表情をしていた。先程からぎりぎりの状態で逃げ続けており、皆、疲れきっていた。
「雪。俺を狙った事件だというのに、巻き込んでしまった。すまなかったな」
雪は、疲れた笑顔を浮かべた。
「でも、ここにいるのが、ユリーシャじゃなく、私なんかで良かったでしょ?」
ランハルトは、雪を見つめたまま、考え込んだ。
「そうだな……」
「そうよ」
ランハルトは、彼女が自分を元気付けようとしているのがわかっていた。こんな状況にもかかわらず、笑顔を向けて気を遣う、彼女の強さ。それが愛おしかった。
「そうだな。雪がいてくれて、本当に良かったと思っている。何とか無事にここを抜け出したら、君と……」
そう言いかけて、ランハルトは黙り込んだ。
「あら、遂に呼び方が、きみ、になったね。大分大切にされるようになったかな?」
「茶化すんじゃない」
ランハルトは、少し恥ずかしそうにしていた。
雪は、表情にこそ出さなかったが、彼が何を言い出すのか、内心では困って慌てていた。
「雪、ケール。思いきって、脱出しないか? 階下は大分混乱しているようだ。俺は、今がチャンスだと思う」
雪とケールは、顔を見合わせた。
「雪さん、僕は今、正常な判断が出来る状態じゃないと思います。お二人で決めて下さい」
雪は、ランハルトの方を見つめた。
「さっきは、エレベーター前に二人の見張りが立っていた。奴らを倒して、一気にエレベーターで一階に行くんだ」
ケールは、その案について考えていた。
「なら、僕が囮になってエレベーター前から、この部屋の傍に誘き寄せます」
雪は、ケールを心配して言った。
「危険じゃない? 見つかったら、すぐに撃たれるかもしれない」
ケールは、僅かに笑って言った。
「出来るだけ、上手くやるので、後はお願いします」
ケールは立ち上がって、そっと部屋から出ていった。
「ランハルト」
「わかっている」
ランハルトと雪は、部屋から何時でも飛び出せるように入り口で待機した。
ケールは、ワインの栓抜きがぶら下がったネックレスを首から外して手で持っていた。廊下の曲がり角の先に、エレベーターはあった。ケールは、角から少し様子を窺った。
そこには、先程と変わらず二人の見張りが立っていた。
ケールは、手に持っていたネックレスを、エレベーターの傍に投げ込んだ。
驚いた見張りたちは、周囲を警戒して銃を振り回した。
ケールは、角からわざと体を出して、彼らに見つかるようにした。
「あそこだ!」
見張りの二人が、猛然とケールの方へ向かって走り出した。
ケールは、踵を返してランハルトと雪が待つ部屋の方へ全力で廊下を駆けた。
ケールが部屋の前を駆け抜けたのを確認したランハルトは、雪に目配せして、見張りが通りかかるタイミングでスライドドアを開けた。
見張りの二人が立ち止まって振り返ろうとした瞬間、ランハルトと雪は、一人づつ背後から襲いかかった。雪は、男の腕を取ると、捻りを加えて引きつけ、自分の腰に見張りの体を乗せると、その体は宙を舞って、床に叩きつけられた。
ランハルトは、もう一人の見張りの足を蹴り上げ、仰向けに倒れたところに、体重をのせて首もとに肘を叩き込んだ。
ランハルトは、雪の無事を確認しようと振り返ると、彼女が投げつけた男が、倒れたまま、朦朧としながらも、落とした銃を拾って雪に向けようとしていた。
「雪!」
ランハルトは、狙いを外そうと慌てて雪に飛びかかって押し倒した。男が放った銃弾は、ランハルトのこめかみをかすめて外れていた。
そこに戻ってきたケールが、見張りの男の腕を蹴ったため、銃は床を滑って遠ざかった。ケールはそのまま、見張りの背中に尻から思い切りのしかかった。
「大使! 大丈夫ですか?」
「ああ、問題無い。雪は、無事か?」
雪は、ランハルトのこめかみから、血が流れているのを見た。
「ランハルト! あなたこそ、血が出てる!」
ランハルトは、起き上がって、自分のこめかみに触れた。
雪は、ランハルトを心配そうに見つめていた。彼は、微笑んで言った。
「かすり傷だ。心配無い」
ランハルトは、ケールと一緒に見張りの二人を引きずって、囚人用の病室に放り込み、外からドアをロックした。
「よし、脱出しよう!」
三人は、エレベーターの前に走って行った。
ケールがエレベーターのボタンを押すと、エレベーターが稼働する音がしていた。皆、焦っていたため、エレベーターの到着は酷く長い時間に感じられた。
エレベーターが到着し、三人は中に乗り込んだ。ケールが一階のボタンを押したので、ドアが閉じようとしていた。
その時、ドアの外から、誰かの手が差し込まれ、ドアが再び開いた。
そこには、伊東が立っていた。伊東は、ランハルトが銃を向けようとしていたため、すぐにその腕に銃弾を撃ち込んだ。
「うっ……!」
「大使!」
「ランハルト!」
ランハルトは、腕から血を流して、持っていた銃を床に落とした。雪も、持っていた銃を伊東に向けようとするが、彼は、ランハルトの頭に銃を突きつけていた。
「銃を捨てるんだ、異星人め!」
伊東は、やっと見つけた獲物を捕らえて、にやりと笑っていた。
雪は、仕方なく銃をその場に捨てた。
ランハルトは、ゆっくりと撃たれていない方の手で雪を庇い、彼女の前に進み出た。
「ほう、面白い。ガミラス人が、イスカンダル人を敬って大事にしているというのを噂で聞いていたが。噂は本当なんだね?」
ランハルトは、痛みを堪えながら、伊東を睨み付けた。
「この人は、ユリーシャ様では無い。地球人だ。貴様が、用事があるのは俺のほうだろう?」
伊東は、呆気に取られた後、笑いだした。
「これは傑作だ。そんな嘘で彼女を守ろうとするとはね」
「嘘じゃない。彼女は、今回の件に無関係だ」
雪は、小声でランハルトに言った。
「私なら大丈夫だから」
「君を守ると俺は決めた。俺が勝手にやっていることだ。気にするな」
伊東は、頷いた。
「そうやって、異星人同士仲良くやってるってわけか。だが、俺はガミラス人には興味が無い。俺が用事があるのは、イスカンダル、お前の方だ!」
伊東は、ランハルトに向けて銃の引き金を引いた。銃弾は、ランハルトの右の胸に命中し、彼は、口から血を吐いてその場にゆっくりと倒れた。
「大使!」
ケールは、倒れたランハルトの体に覆い被さった。
「ランハルト!」
雪は、真っ青になって、屈んでランハルトの傷を見ようとした。
「おっと。イスカンダル、お前は俺と来るんだ」
伊東は、雪の頭に銃を突き付けると、雪の腕を引っ張って、エレベーターから引きずり出した。
「ゆ……き」
ランハルトは、苦しそうに雪を追おうとして、エレベーターの外に倒れ込んだ。
ケールとランハルトが、見守る中、伊東は、雪を連れて屋上へ向かう階段を登って行った。
続く…
注)pixivとハーメルンにて同一作品を公開しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。